私は天使なんかじゃない






Festival






  最初で最後の祭り。
  さあ楽しもうっ!






  「あんたはずっとここにいるの、絶対に出さないわよーっ!」
  「グリン・フィス、参るっ!」
  巨大な女は鞭で床を叩く。
  こいつが誰だか知らないし言っていることもよく分からない。
  分かっているのはシェオゴラスに反旗を翻した、奴の部下、というだけだ。
  もちろんそれだけでいい。
  斬るだけだ。
  理由などいらない。
  敵だから斬る、いたってシンプルだ。
  「自分はグリン・フィス、そっちは?」
  「ハートの女王様よぉーっ! ここで我が王を殺し、私がシヴァリング・アイルズの真なる王なのよーっ!」
  シヴァリング・エイルズ。
  確かシェオゴラスが支配する世界だか島の名前だったな。
  ふぅん。
  下剋上というわけだ。
  分からない話ばかりだ、シェオゴラスが何のつもりでここにいるのか、今までの催しは何だったのか、地下にいた聖職者は何だったのか、グレイマーチもジャガラグも分からん。
  分からんが、まあいい。
  「排除する」
  「面白いわーっ! たかだか人間風情で私に勝とうだなんてねぇーっ! でも駄目よー、駄目ーっ!」
  「駄目?」
  「いきなり女王様と戦えるわけないでしょー? おいで、私の兵隊、トランプ兵たちっ!」

  ブン。

  鞭を振るう女王。
  瞬間、奴の周囲に無数の気配が生まれる。
  無数?
  無数だ。
  数は不明。
  「これは……」
  「おーほっほっほっほっ! 我が王の始末の前にお前を殺してやるわぁ、後継者にはさせない、絶対にさせないわよぉーっ! このっ! 私がぁっ! 真なる王となるのよぉーっ!」
  「ちっ」
  「やってしまいなさいーっ!」
  身の丈は自分の半分程度のトランプたちが殺到してくる。
  トランプ兵。
  トランプに手足があり、手に剣。
  何の冗談だ?

  バッ。

  大きく後ろに飛び、間合いを保つ。
  どの道敵の数が多過ぎで女王には到達できない。ならばまずは女王と間合いを取り、雑魚から始末するとしよう。
  抜刀の構え。
  兵隊は殺到してくる。
  「はあっ!」
  抜刀術。
  まずは一体。
  ……。
  ……脆いな。斬っても何の手ごたえもない。
  なるほど、こいつらは数を活かして押してくるという戦法をとる気か。
  くだらんっ!
  「そこっ!」
  ショックソードを振るう。
  その度にトランプ兵たちは次々と真っ二つになっていく。斬られた瞬間、トランプ兵は消滅する。
  弱い。
  弱い。
  弱いっ!
  「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  無双するっ!
  敵は刃を振るうこともなく、自分の刃に屠られていく。
  女王はその様を見ている。
  真っ白い顔で。
  笑みを浮かべて。
  「ちっ」
  これは、まさか、無尽蔵なのか?
  屠られては消滅するが、その度に女王の周りには新たなトランプ兵たちが召喚されていく。
  減らない。
  いや、違うな、むしろ増えている。
  自分が倒す速度よりも女王が召喚する速度の方がはるかに速い。
  間合いを取ったのは間違いか。
  一気に詰めるべきだった。
  銃を引き抜く。
  これでどうだっ!
  「私を護るのよ、お前たちぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
  「何っ!」
  トランプ兵たちは次々にジャンプして女王の盾となり、消滅していく。
  カチ。カチ。カチ。
  トリガーを引いても弾丸を吐き出さない。
  弾切れか。
  手早く弾倉を交換、剣を右手に、銃を左手に走る。
  様子見は終わりだ。
  女王を沈めるっ!
  「アギラオっ!」

  ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォっ!

  女王の手から放射状の炎が放たれる。
  当然奴の前に布陣していたトランプ兵たちは燃え上がり、炎の壁となる。
  雑魚は消耗品ってわけか。
  戦略としては悪くない。
  だがこの程度の炎の壁、突破して……。
  「食らいなさい、嵐の乱舞っ!」
  「……っ!」
  放たれる豪風。
  当然その風は炎の壁に当たり火炎放射となって自分に吹き荒ぶ。
  「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  吹き飛ばされた。
  くそっ!
  ごろごろと転がりながら、ゆっくりと立ち上がる。
  魔法耐性が高くなければ死んでいたところだ。そして耐性があったとはいえノーダメージというわけではない。
  こいつ、ふざけた感じだが、弱くない。
  「おいで、トランプ兵たちっ!」
  さらにトランプ兵を召喚。
  数は多数。
  体力的には連戦に次ぐ連戦だ、あまり体力は残されていない。
  これで自分に魔法があればまだ手があるのだが魔力は戻っているわけではない。この空間では使えるかもとも思ったが自分自身に何の魔力の波動も感じない。これでは攻撃手段が限られる。
  どうする?
  時間稼ぎしたとしても数で押されてお終いだろう。
  何とか女王を道連れに出来たらいいのだが。
  「ここまでのようねぇ、我が王のお気に入りさん。うふふ、だけどこれでいいのよ。どちらに付こうとも結局は滅ぶの、だから私が王座に就くのよ、そうしたら安泰よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
  「訳の分からんことを」
  「あんたはここで死ぬの、意味も分からずに死ぬの。さあ、やってしまいなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
  「くっ!」
  万事休すかっ!


  「待たせたわねっ!」

  「……?」
  誰だ?
  これは女の声だ。
  その瞬間、間近に迫っていたトランプ兵たちは瞬時に消し飛んだ。
  呆然とする女王。
  そして、自分。
  振り返る。
  そこにいたのは……。
































  「……っ!」
  フィッツガルド・エメラルダだとっ!
  彼女を含めて女5人。
  面識はあの女以外はないが、インペリアルの女とダンマーの女は知っている、抹殺候補にあったアルラ・ギア・シャイアとアイリス・グラスフィル。
  そしてブレトンの少女は確かフォルトな、だったか。闇の一党の裏切り者。

  「おらちょっと待てっ! 何で俺だけ画像ないんだよっ!」

  男もいる。
  妙な武器を手にしている。
  銀色の、棒か?
  先端の形状がいささか見たことがないが、鈍器?
  そして……。

  「……? また夢? 宇宙船の後は……何の夢だ、これ? スプリングベールの廃墟で寝てたような……おー、銃が10oピストルから44マグナムになってるっ! 何でっ! ……訳分からんって」

  「主っ!」
  どうしてここにっ!
  女性の内の1人は、主だ。他の面々の衣装と自分の衣装を見比べている。
  というかあれはボルトのジャンプスーツというやつだ、いつもの武装はどうしたのだろう?
  44マグナムも一丁しかない。
  どういうことだ?
  主、という呼びかけに一同反応せず。主もだ。
  ただ……。

  「おっほほほっ! 名門シャイア家当主であるわたくしに進んで従がおうとはなかなか見上げた御仁ですわねー。ブレトン娘、あなたも平伏しても良いのですわよー」
  「はっ? 冗談。名門シャイア家って没落してスキングラードにローズソーン邸差し押さえられたって人ね」
  「何ですってーっ! 喧嘩売ってますのっ!」
  「どっちが」
  「ちょっと、フィッツガルドさん、喧嘩しないでくださいよー」
  「そもそもダンマー戦士、あなたは誰よ?」
  「えーっ! はぅぅぅぅぅっ、そんなーっ!」
  「あのー、ここってどこですか? あたしはフィフスと一緒に任務に行ってたんですけど……いないし……」
  「自己紹介しますミスティです、で質問なんですけど何だって皆さん中世っぽいの? キャピタルってファンタジーものの世界ってわけ?」
  「……ちっ、やってられるかよ。ここってあれだろ、アルディリアの迷宮の階層なんだろ? 何階層目かは知らんが。旅ガラスの仲間どこだよ?」

  「……」
  何だ、この会話は?
  噛みあってない。
  まあ、主はいい。アカヴァル大陸……いや、アメリカ大陸の住人だからな。だがあの男は知らんが、フィッツガルド・エメラルダたちは顔見知りのはずだ、仲間のはずだ。このメンツの中で主の
  話がかみ合ってないのはいいんだが自分を知らないようにも見える。これはどういう意味だ?
  まさか時間軸がずれているのか?
  別の時代からそれぞれ来ているというのか?
  あり得る話だ。
  だとしたらこの会話のかみ合わない度も意味が分かる。
  「フィッツガルド・エメラルダ」
  「何よ、あんた誰?」
  「それは置いておこう。待たせたわね、ということは助けに来たのか?」
  「さあ? ノリ」
  「ノリで攻撃したのか?」
  「そう」
  「……」
  「というかあいつ何? 何なの?」
  「敵、かな」
  「何よそれ。適当ね」
  「自分にも分からん」
  「ふぅん」
  自分を知らないらしい。
  そうなると闇の一党との最終決戦よりも前の時代から来たのか。というか全員、デタラメに強いという感じがしない。随分前から来たのか?
  だが誰がこんなことできる?
  シェオゴラスか?
  奴の立ち位置が分からん。
  何がしたくてこんなことをしているのかもな。

  「危険っ! 危険を感じるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ! 駄目よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! こいつらは危険よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

  女王が吠える。
  ここは自己紹介とかしている場合ではないし、彼女は自分がライバル視していたフィッツガルド・エメラルダではない。
  少なくとも、それよりも以前の彼女だ。
  他のメンツも同じ。
  主はおそらくボルト101を出た直後なのだろう。
  まだ自分と会ってすらいない時分だろう。
  敵味方の区別というより状況すら理解できていない面々ではあったが、あのでかい女が敵というのを共通認識として持ってくれたようだ。武器を奴に向ける。
  44マグナムを構える主は、ふむ、どことなく素人だな。
  腰が引けてる。
  だが時間軸の違いなどどうでもいいことだ。
  自分は主を護る。
  それだけだ。
  「主……いや、ミスティ……さん」
  「誰?」
  「グリン・フィスと申します。自分もこの状況がよく分かりませんが、お守りします」
  「銃持ってるから、私側だよね? 他の人たちはファンタジーっぽいけど。というかあの男の人は何でゴルフのドライバー構えてんの?」
  「さあ? いずれにしてもお守りします」
  「ありがとう、グリン・フィス君」
  グリン・フィス君?
  ……。
  ……その響き、悪くないっ!

  「……ふふ……ふふふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふあははははははははははははははははははははははははっ!」

  女王は今度は笑いだす。
  何なんだこいつは。
  状況的には敵であり、シェオゴラスに取って代わろうとしているようだ。というかシェオゴラスはどこに行った?

  「ああ、おかしい、面白いわぁ。我が王が選んだ連中全てがここにいる? しかもっ! 弱いバージョンでっ! 過去のお前らを殺せば現在のお前らも消えるぅーっ! 実に楽しいわーっ!」

  やはり過去なのか、全員。
  意図的か?
  それとも別に意味はないのか?
  女王は鞭を振るう。

  「来なさいあんたたちぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! ロイヤル・ストレート・フラーッシュっ!」

  再びトランプ兵たちが出現する。
  数は100っ!
  能力は雑魚だが数が多過ぎる。
  「アルラって言ったっけ? 見た感じ魔法使いって感じだけど、ここはひとまず共闘しない? お互いに虫が好かないっていうのは置いといてさ。どう?」
  「貴族は寛容ですわ、下賤なブレトンさん。いいですわ、わたくしの魔道の力、お見せしますわっ!」
  「……険悪な女どもの話に割り込むのは嫌いだが俺も手伝うわ。さっさと仲間たちと酒飲みたいんだよ……冒険王の奢り酒を飲みそこなっちまうっ!」
  2人は分かる。
  だがあの男は誰なんだ?
  見たことがない。
  「申し訳ないが誰だ?」
  「あん? 俺か? 俺は旅ガラスのカガミ様だっ! 金貨10枚から依頼を受けているぜ? 金欠でさ、あんたも何か依頼があったら小口でもいいから頼むわ」
  旅ガラス。
  確か傭兵集団、そうか、その名は知っている、カガミという団長の名前も。
  そうかこいつが。
  「裁きの天雷っ!」
  「霊峰の指っ!」
  「おっと出遅れたっ! 雷帝・発頸っ!」

  
バチバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!

  ……っ!
  すごいな。
  トランプ兵の大半が消し飛んだ。
  カガミがどの段階から来たかは知らないが、2人の魔術師は自分が知る全盛期よりも弱い。とはいえこの高威力、ただ者じゃないっ!
  そして……。
  「魔力の糸よっ!」
  「やあああああああああああああああああああああっ!」
  「……えっ、周囲がスローに……」
  フォルトナは確か人形遣いか。
  指から伸びる不可視の糸が次々とトランプ兵を沈め、ダンマーの女戦士は不用意に突撃してきたトランプ兵を斬り伏せ、そして主は能力を完全にコントロール出来てはいないとはいえ確実に
  敵を屠ってる。銃が珍しいのか、時間を操作する能力が珍しいのか、一同唖然としている。
  「何それっ! 今のどうやったわけっ!」
  「き、消えましたわ、高速移動しましたわっ! まさか、時間を操作してたりしますのっ!」
  「凄い武器ですね。えっと、アイレイドのものだったり?」
  「あ、あたし、アイリス・グラスフィルです、今の動き教えてくださいっ!」
  「その武器良いなぁ。アルディリアの迷宮で見つけたのかよ? くそ、俺も見つけてやるぜっ!」
  主は称賛を受けつつも困った顔で自分を見た。
  「意味分かんない」
  でしょうね。
  魔法云々言われても分からないでしょうね。

  「ウザったいハエどもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

  兵隊が全滅したのを見て女王が叫んだ。
  兵隊は雑魚だ。
  数が多いとはいえ、現在こちらの数も多い。
  撃破と召喚のバランスは完全に崩れた。
  こちらの撃破の速度の方が女王の兵隊召喚よりも早い。

  「なぁぁんてにくにくにくしい連中なのかしらぁぁぁぁぁーっ! 王座は渡さなぁいっ! 私がシヴァリング・アイルズの魔王なのよぉーっ!」

  「シヴァリング・アイルズ? ……こいつシェオゴラス関係なわけ?」
  「そのようだ」
  「ふぅん。面白そう」
  楽しそうにフィッツガルド・エメラルダは笑う。
  やはりこの女、ただ者じゃない。

  ばぁん。

  44マグナムが火を噴く。
  さすがは主、それは女王の鞭を寸分違わず吹き飛ばした。
  「命中です」
  「……あ、あははー、頭狙ったんだけどなー」
  「……」
  現在レベル1のようです。
  「いやいやよくやってくれたぜ、赤毛さん。これで奴は兵隊を召喚できないんじゃねぇのか? とっとと終わらせちまおうぜ。兵隊取り上げたらこんなの簡単だろ?」
  「どうかしら、分かりませんわよ」
  「だけどこの数で押せばあたしたちの勝利ですっ! つまり正義の勝利ですっ!」
  「……ごめんなさい殺し屋なんで正義じゃないです」

  「この私にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! 女王にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! 手を出すなんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

  「何が女王。何かむかつくなぁ。お前殺すよ」
  相変わらず物騒だな、フィッツガルド・エメラルダは。
  主がビビッているではないか。
  「あのー」
  「何?」
  「宇宙船で会いませんでした?」
  「うちゅーせん?」
  「あっ、ごめんなさい、たぶん夢です」

  「ちょぉぉぉぉぉぉっとっ! 女王を無視するなんて何て不届きで不躾で下賤で下劣なのかしらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ許さないわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

  影が薄くなったな、女王。
  仕方ないか。
  何にせよここにいるのは全員が主人公を張れるほどの実力者なのだからな。

  「いいわっ! 私自ら叩き潰してやるわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! アギラオっ!」
  ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォっ!

  放射される炎。
  だが……。
  『魔力障壁っ!』
  アルラ、フィツツガルド・エメラルダ・カガミの3人が両手を前に突き出して魔力障壁を展開。
  炎は届かない。
  その間にフォルトナが魔力の糸を飛ばして女王の肩を切り裂いた。効いているようには見えないが。
  「はあはあ、そして時は動き出すっ!」
  主が叫んだと同時に44マグナム全弾が女王の体に叩き込まれた。
  さすがにこの威力だ、耐えられずひっくり返った。
  倒したか?
  いや……。

  「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! 何なのっ! 何なのよ、お前らはっ! 私は女王よっ! 女王様よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! とんでもなく偉い
  独裁者なのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 死刑にしてやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

  起き上がる。
  全く効いていないわけではないようだが、デタラメに耐久力があるな。

  「もういいわぁぁぁぁぁぁぁっ! お遊びはお終いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! さあ、真の姿を……っ!」

  「裁きの天雷っ!」
  「霊峰の指っ!」
  ……。
  ……容赦ないな、こいつら。
  闇の一党より容赦ない。
  女王は雷撃をまともに受け後ろに吹き飛ぶ。その瞬間、アイリス・グラスフィルとカガミが前に走る。

  「くぅぅぅぅぅぅっ! 話をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……っ!」

  「雷帝・発頸っ!」
  彼もまた雷撃で黙らせる。そしてそのまま走る速度を緩めない。
  ふっ。
  自分も傍観ばかりしていられないな。
  走るっ!
  「やっちまえ、ダンマー戦士っ!」
  「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  再三に渡る雷撃を浴びてフラフラの女王に懐に飛び込んでアイリス・グラスフィルが女王の腹を薙いだ。
  カガミが叫ぶ。
  「よっしゃっ! 悪いが後ろに飛べっ!」
  「えっ? はいっ!」
  「一気に決めるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

  バチバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!

  主がゴルフのドライバーと言った……ゴルフが何かは知らないが……ドライバーという名の棒状の武器に魔力が凝縮されていく。
  すごいな。
  そして……。
  「必殺っ! 悪夢の15番ホールっ!」

  「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああって、うざったいのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

  「何っ! 耐えやがったっ!」
  「きゃあっ!」
  女王が2人に手を向けると、その両の拳が鉄球に変化し、打ち出される。2人はたまらずに吹き飛ばされた。
  袖の中から再び手が生えてくる。
  この女王はやはりドレモラの類なのだろうか。
 
  「こいつでお終いにしてやるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! マハラギダインっ!」

  『魔力障壁っ!』
  極大火炎魔法は奴の手から数センチ放たれたところで全て弾かれた。
  2人のドS魔術師が防いだ。
  自分は既に奴の懐だ。
  決めるっ!
  瞬間、女王の腕が両方とも飛ぶ。自分じゃない、たぶん魔力の糸だ。最高の援護だな、このチーム、もしかして最強か?
  「斬っ!」
  渾身の一撃を女王の首に叩き込む。
  首と胴が分かれる。
  しかし女王は死なない。
  体はその場に崩れたが首だけが浮いている。
  そして叫ぶのだ。

  「これで満足かしら我が王っ! この後、真っ二つに勢力が分かれるでしょうよ、だけどどちらも結局は滅ぶぅーっ! 私だけが真にシヴァリング・アイルズを愛しているのに、あくまでも私を
  倒そうとするのですかぁっ! ほ、ほほほ、ほほほほーっ! さらに数千年、同じことを繰り返すがいいわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

  「そして時か動き出す」
  主は静かに宣言する。
  それは弾丸をすべて撃ち切ったという宣言。宣言の後、女王の首は粉々となって消えた。
  後には何も残らない。
  終わった、か。


  VSハートの女王、撃破っ!