天使で悪魔







人形姫、参戦






  その出会いは後の戦いの布石となる。
  絆として生きてくる。

  いつか、きっと。





  「寒いなぁ」
  防寒着を着込んだあたしは手を擦りながら北方都市ブルーマを歩く。狐の毛皮を使用した手袋をしているけど、寒い。
  あまり寒いのは得意ではない。
  ブルーマの街は喧騒に満ちていた。
  その意味は分かってる。
  近くの雪原に魔術師ギルドの軍団が布陣しているからだ。魔術師ギルドは不倶戴天の敵である死霊術師の組織『黒蟲教団』との決戦の為にやって来た。
  そしてあたしもだ。
  帝都での仕事(高潔なる血の一団からの依頼)をあたしは仲間達に任せて1人ここまでやって来た。
  死霊術師はあたしには関係ない。
  そもそも係わり合いもない。
  唯一敵対した死霊術師は、異世界カザルトで戦った死霊術師ファウストだけ。別にわざわざ黒蟲教団とかいうのと戦う必要性はどこにもない。
  だけど。
  だけどその戦いにはフィーさんが関っている。
  何故?
  フィーさんが魔術師ギルドの総帥に昇格したからだ。あたしにとってフィーさんは恩人であり、お姉さんみたいな人。ネズミのシチューしかない牢獄から
  あたしを救ってくれた人、そしてそれ以上に精神的に救済してくれた人。何より家族だからお手伝いしなきゃ。
  その想いでここまでやって来た。
  ……。
  ……だけど正直な話、ここには来たくはなかったかな。
  闇の一党の任務でドラニコス家の母親を暗殺した。命じられるままに暗殺をしていた時分を思い出す。別に当時の記憶を封印したいわけではないし
  償うべきは償おうと思う。だけど出来るなら、やっぱりここには来たくはなかった。

  「全隊集合せよとカリウス隊長が指令を発したぞ、急げっ!」
  「召集っ! 召集っ!」
  「急げ急げっ!」

  黄色い鎧を着込んだ衛兵達が忙しそうに叫びながら走っている。
  ブルーマ都市軍は精鋭揃いと聞いている。
  ブルーマ伯の意向で屈強のノルドを衛兵として組み込んでいるので各都市の都市軍の中でも上位に位置する精強さらしい。
  何かあるのかな?
  「急ごう」
  衛兵の事は、まあ、いいや。
  あたしにはあたしのすべき事がある。今まではあまり必要性がなかったから帯びてなかったけど今日は鉄製のショートソードを腰に差している。
  きっと激戦になる、武装は必要。
  山彦の洞穴の場所も街の人に詳しく聞いたから行ける。
  魔術師ギルドの軍勢と合流する?
  ううん。
  それはしない。
  あたしはあたしなりにフィーさんの性格を知っているつもり。きっとフィーさんは敵の本拠地にダイレクトに攻めるはず。それがフィーさん流。
  万が一そうじゃない場合は、あたしが敵の親玉を撃破しよう。
  それはそれで恩人に対する恩返しになると思う。
  さあ。
  「行こうかな」



  ブルーマを出てあたしは単身で山を登る。
  吹雪いてはない。
  今日は天気が良いみたい。山を登るには適している。……さすがに吹雪の中の行軍は勘弁して欲しいし(泣)。
  そういう意味ではラッキーかな。
  ザッ。ザッ。ザッ。
  歩くたびにブーツに雪の感触が響く。
  「ふぅ」
  少し立ち止まる。
  この山のどこかに山彦の洞穴があるらしい。だけど道は険しいし茂みも多い。迷ったかな?
  方向が分からなくなってる。
  まあ、上に上に登って行けばいいのかな。
  登る前に布陣している軍勢が視界に飛び込んできたけど、魔術師ギルドと黒蟲教団の両軍は静かに対峙したままだった。両軍、今だ激突せず。
  もちろん軍はあたしには関係ない。
  「……?」
  周囲を見る。
  何だろ、この感じ。肌がチクチクするような感じ。気が付けば鳥の声すらしない。生き物の気配がない。
  何らかの力が働いているのかな?
  魔力の糸をあたしは紡げるけど、それはあくまで無意識の能力。どうして紡げるのかの理屈はまるで分かってない。結局のところあたしは魔法や
  それに関連する事柄は完全に無知。この周辺に何らかの結界が張られているのかもしれないけど明確にはそれが分からない。
  何故?
  説明するだけの知識がないから。

 わあああああああああああああああああああっ!

  「始まった?」
  喚声が響き渡る。
  とうとう両軍が戦いを開始したのだろう。ここからは見えない、茂みが邪魔してるから。
  立ち止まってる場合じゃないね。
  あたしも行かなきゃ。
  すべき事は戦いの終結の為に全力を尽くす事。その一環として敵のトップを始末する事。トップが誰なのかは知らないけど元暗殺者のあたしにして
  みれば潜入して撃破するのは容易い。ある意味で専門だし。
  山彦の洞穴にフィーさんも向っているはず。
  合流出来たらいいな。
  仮に雪原で軍団同士の戦いを演じているのであれば、それはそれでいい。あたしはあたしで敵のトップを始末、フィーさんの役に立てる。
  さて、進もう。
  「おやおやお子様がいるぞ?」
  「ほんとだねぇ」
  「こんな物騒なところにいるなんて殺して欲しいのかな? きききっ!」
  わずかに宙に浮かぶ人影が三つあたしの視界に飛び込んでくる。
  アンデッド?
  雑魚ゾンビには見えない。ちょっと高級そうなローブを着込み、手には杖を持ったゾンビ。
  ……。
  ……あー、これがモンスター図鑑で前に見たリッチかな?
  死霊術師の望む最終形態。
  理想の姿。
  それがリッチ、らしい。
  ふぅん。
  初めて見るけど図鑑に記されていた通り知能があるらしい。その辺もただのゾンビとは異なるところかな。ゾンビは脳まで腐ってるから知能なんてないし。
  バッ。
  リッチ達は大見得切って身構える。
  「虫の隠者グランスなりっ!」
  「あたくしは虫の隠者グロウズよ」
  「きききっ! 俺様の名は虫の隠者マィリィアスだっ!」
  三体のリッチ。
  対してあたしは1人。リッチの能力は分からないけど……多分強力なのだろう。
  先制攻撃あるのみっ!
  「はあっ!」
  あたしは大きく手を振るう。
  指先から見えない鋭い意思が解き放たれる。
  ザンっ!
  「ひぃぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  迸る絶叫。
  まず一体っ!
  あたしは人形姫。古代アイレイド文明に君臨した王の1人(らしい)。手から見えない糸を発する力があたしは持っている。
  魔力の糸。
  込める魔力によって鋭さの強弱を任意で変化させ、そして意思1つで自在に動かせる。
  指先1つ振るえば放てる魔力の糸。
  そう。
  指さえ振るえれば魔力の糸は発動する。そして一度放たれた魔力の糸は自由自在に動き回り相手を翻弄し、屠る。
  「マィリィアスっ! な、何だ貴様その力は……あぐぅっ!」
  二体目っ!
  リッチといえど無敵ではないみたい。最後の一体は杖を構えると火の玉が飛び出す。
  タッ。
  大地を蹴ってあたしはその場を離れて回避。魔法耐性に関してはあたしはそれほど自信がない。普通のブレトンとそう変わらない……と思う。わざわざ
  魔法攻撃を受けて自分の魔法耐性を調べようとは思わないから正直分からない。
  ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!
  火の玉が炸裂。
  だけどその瞬間、すでにリッチは真っ二つになっていた。
  三体目っ!
  敵は全て沈黙。
  あたしは少し大見得を切って勝利宣言してみる。
  「人形姫を相手にするにはまだまだでしたね。まるでお話になりません」
  ……。
  ……格好良いかな?
  今後は勝った時の決め台詞にしようかな(笑)。
  「虫の隠者を倒した、だと?」
  「……?」
  後ろから声がした。
  振り返る。
  黒いフード、ローブを身に付けた男性がいた。胸元にはドクロの刺繍。死霊術師だ。敵は1人だけ。誰も従えていない。
  「お前は何者だ?」
  「フォルトナです」
  「フォルトナ……ああ、知っているぞ、フラガリアとかいう冒険者チームのリーダーの名だな。こんな小娘とはな」
  「年齢は関係ありません」
  「視えるぞ」
  「視える?」
  「お前は無数の怨霊に纏わり憑かれているな。殺しに対して割り切れていない。そういう人間は呪われる。怨霊が好んで付き纏うのだ、ふはははははっ!」
  「やあっ!」
  御託を聞く気はない。
  あたしは魔力の糸を放つ。割り切れてないのは……分かってる。というか割り切って良い問題じゃないと思う。今まで闇の一党に言われるがままに殺して
  きた、いつかその報いを受けるのだと思う。あたしは闇の一党時代の悪夢を常に見ている。いつかきっと罰を受けるんだと思う。
  だけど今のこの戦いは闇の一党は関係ない。
  敵は排除するっ!
  魔力の糸が敵の全身をズタズタに……。
  「魔法か? 魔法は俺には効かんっ!」
  「……」
  魔力の糸、結局は魔法の範疇。強力な防御魔法を使って魔法耐性を極限まで引き上げれば……防げるのだろう、多分。
  だけど切り裂くだけが能じゃない。
  戦いは臨機応変。
  魔力の糸で切り裂けないにしても束縛して動けなくするのは出来る。相手の体を見えない魔力の糸で雁字搦めにする。そして身動きできない死霊術師
  は凄い勢いでこちらに突進してくる。いや。正確にはあたしは束縛した死霊術師をこちら側に引っ張った。
  すらり。
  鉄のショートソードを引き抜き、そして切っ先に死霊術師が突っ込んできた。
  ザシュ。
  鋭い切っ先に死霊術師は串刺し。
  切り裂くだけがあたしの専売特許ではない。切り裂けないなら切り裂けないで別の対処法がある。
  ドサ。
  魔力の糸を消失させると死霊術師はその場に崩れ落ちた。刃を引き抜いて振るうと付着していた血が飛んだ。剣を鞘に戻す。
  「敵はこれで、終わりかな」
  周囲に敵の姿はない。
  終わり?
  少なくともリッチは幹部クラスだと思う。三体倒したわけだから結構頑張ったかな。

  
バチバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!

  「……っ!」
  凄い音が響き渡る。
  雷の魔法?
  

  
バチバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!

  数分して同じ音が響き渡る。
  誰かが戦ってるみたい。それはフィーさん?
  そうかもしれない。
  確証があるわけではないけど直感的にそう思った。フィーさんの性格的に敵の中枢に単独で突撃しそうだし。
  ……。
  ……べ、別に無鉄砲って意味じゃないけどね(汗)。
  ともかくっ!
  「急がなきゃ」
  あたしも参戦しなきゃ。
  その為にここに来た、そう、その為にここまで来た。
  山道を走る。
  正しい道?
  さあ、それは分からない。
  ただ音の出どころと思われる方向に向かってあたしは走る。
  どれだけ走ったただろう。
  不意に剣戟の音が響き渡った。
  そして声。

  「悪いけどパーティーは先に始めてたわ。今のところ撃墜数は私が上。アリス、勝負しない?」
  「望むところですっ!」
  「勝手に話を進めないでくださるっ! エースはわたくしですわっ!」

  声は三つ。
  全て女性の声だ。
  最初の声はフィーさん、次の声は誰かは分からないけどアリスと呼ばれた人の声……だと思う、最後の声は誰かすら不明。いずれにしても3人は
  善戦している、甲冑を纏った戦士達をわずか3人で圧倒していく。3人も、そして敵もあたしに気付いた気配はない。
  「何をしているたかが3人の女にっ!」
  別方面からさらに敵の援軍。
  新手の内訳は死霊術師とゾンビ&スケルトンの混成軍団、つまりはアンデッド軍団。数にして30。
  こいつらもあたしには気付いていない。あたしも参戦している事を、知れっ!
  「はあっ!」
  魔力の糸が敵軍団の首をスパスパと切断する。スパスパとね。
  「フィーさん、こちらの敵は一掃しましたっ!」
  その時、甲冑戦士最後の1人が山道に転がった。
  敵は全て沈黙。
  フィーさんはあたしの姿を見ると静かに微笑、そして気合を込めて短く叫ぶ。
  「行くわよっ!」
  「フィッツガルドさん、御供しますっ!」
  「問題なしです、行けます」
  「勝手に仕切らないで欲しいですわねーっ! 仕切るのは、わたくしですわーっ!」



  この後。
  小部隊がいくつか立ち塞がったものの、あたし達は全て粉砕した。
  魔法と剣術のフィーさん。
  そんなフィーさんとほぼ同タイプの遣い手のアルラさん。
  異世界カザルトでシャルルさんに奪われた魔剣ウンブラを何故か所持している剣術家のダンマーのアリスさん。
  そして人形姫のあたし。
  立ち塞がる敵は全て瞬殺してあたし達は山彦の洞穴の入り口に到達した。
  そこに1人のダンマーの男性が待っていた。
  手下はいない。
  よほど腕に自信があるみたい。腰には大振りのロングソードが差してある。黒いフード、ローブの緑色の肌のダンマーが立ち塞がる。その男は言う。
  「どいつが愚かなるトレイブンの後を継いだ女だ?」
  「私よ」
  どうやら敵はフィーさんご指名みたい。
  彼女は一歩前に出る。
  静かに2人は対峙。
  「そうか。お前が後継者か。思ったよりも雑魚そうだな」
  「あんたに言われたくはないわ」
  「ここまで無謀にも来た。お前は身の程知らずにも虫の王に、猊下に会うつもりか?」
  「いいえ。殺すつもりで来た」
  「謁見したいのであれば俺を殺すしかないぞ。虫の王マニマルコ様の四大弟子が1人、虫の狂者ボロル・セイヴェル。剣には自信がある」
  「あら本当? 試してみる?」
  「くくくっ! ファルカー程度の剣術だと思うなよっ! 俺は随一の剣術を誇っているのだっ!」
  「御託はいいわ」
  ゆっくりと。
  ゆっくりと緑のダンマーはフィーさんを中心に円を描くように動く。剣はまだ抜いていない、柄に手を掛けたままだ。
  フィーさんは構えてすらいない。
  ……。
  ……それにしても四大弟子かぁ。
  高潔なる血の一団の任務がなければあたしも四天王(システィナ、ケイティ、チャッピー、パーパス)を連れてきたのに。
  うー、そしたら盛り上がったのになぁ。
  四大弟子VS四天王っ!
  燃える展開だったのになぁ。
  残念。
  バッ。
  緑色のダンマーが動く。剣を引き抜こうとした。
  そしてそのまま大地に転がった。脳天から真っ二つになって。
  「……」
  あたしは唖然とする。
  フィーさんは黒い魔剣で相手を脳天から真っ二つ。相手は剣を振るう事すら出来ないまま果てていた。剣に自信があると豪語していたのにそれを
  振るう事すら出来ない幹部は最悪に尽きる。フィーさんの能力にあたしは舌を巻いた。
  凄い太刀筋っ!
  「邪魔は消えたわ。行くわよ、皆」



  四大弟子の1人を倒してあたし達は山彦の洞穴に突入。
  内部には敵がいなかった。
  少なくとも雑魚はいないみたい。
  わざわざ入り口に四大弟子の1人を配置していたぐらいだから……おそらく死霊術師のボスは幹部を洞穴内にも配置している可能性がある。
  何故?
  盛り上がるから(苦笑)。
  あたしと気が合うのかもしれないなぁ。
  アリスさんが呟く。

  「フィッツガルドさん、誰も、いませんね」
  「いえ。いるわ」
  「……何も感じませんけど」
  いる。
  あたしも感じた。ざわりと背筋が凍るような悪寒を感じた。

  「ようこそ、子猫ちゃん」

  「カラーニャっ!」
  フィッツガルドさんが嫌悪の響きを込めて叫んだ。
  闇から剥離されたかのように登場したドレス姿のアルトマーにあたしはどこか違和感を感じていた。
  何だろう、この感じ。
  本当に彼女はアルトマーなのかな?
  「猊下が奥でお待ちよ」
  「そう。待たせて悪いわね。案内して貰える?」
  「早合点ね。私を倒した後に、お待ちって意味よ」
  「ふぅん」
  「ボロル・セイヴェルを倒したようね。だからって調子に乗らない事ね。結局奴は末席。倒したからといって手柄にはならない」
  「裁きの天雷っ!」
  バチバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!
  フィッツガルドさん、先制攻撃。
  カラーニャは慌てずに呟く。
  「避雷針」
  たったそれだけで雷はそれた。
  「ご挨拶ね、いきなり攻撃だなんて。相変わらず淑女の礼儀を知らないわね、子猫ちゃん」
  「霊峰の指っ!」
  「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  バチバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!
  勝負は常に一対一ではない。
  そんな法則もない。
  こちらは4人、相手は1人、だからと言って律儀に個人戦を展開する必要はないだろう。アルラさんの攻撃は正当なもの。
  まともに雷を顔に受けてカラーニャは後ろに吹っ飛ぶ。
  だけど、アルラさん容赦ないです(泣)。
  「残念ですわね。最近の淑女は先制攻撃するものですわよ?」
  「……あら、それは知らなかったわね」
  むくりとアルトマーは起き上がった。
  顔は完全に焼死体のそれだった。
  炭化している。
  それでも動いてるし喋ってるっ!
  普通は死ぬと思います。
  「……何あれ」
  アリスさんが呟いた。どこか恐怖が帯びている。気持ちは分かる、あたしも少し怖い。
  切れた口調に変じるカラーニャ。
  「メイクが落ちたかしら? きひひひ。アルトマーの振りをするのは疲れるわぁっ!」
  「もう本性を現したのか。随分と早いな、カラーニャ」
  「っていうかボロル・セイヴェルはもう死んだ? あのおっさん、随分と呆気ないなー。あはははー☆」
  まるでカラーニャの声に呼応するかのように。
  洞穴の闇の中から2人の男性が登場。男性といってもその内の1人はあたしと同年代ぐらいの、少年だった。相手も人材を出し惜しみする必要はないわけ
  だから四大弟子なのだろう。カラーニャも当然幹部に含まれる。残った3人の弟子が全て登場ってわけだね。
  「フィッツガルドさん、ここはあたし達が相手をしますっ! それぞれ一対一、そうすれば時間のロスは避けられますっ!」
  「アリスっ!」
  「そこのダンマー娘の言葉は妥当ですわね。わたくし達も貴女のように幹部を瞬殺してから追いつきますわ。御機嫌よう」
  「同意します。フィーさんは奥にっ!」
  それぞれに出来る事をしよう。
  フィーさんは既に弟子の1人を倒した、ノルマ分の相手を倒した。残りはあたし達で対処するのが筋だろう。
  敵側の3人もその趣向に興味を覚えたらしい。
  「こいつは面白い。俺はそのダンマーの剣士をいただく。おい、付いて来いっ!」
  「じゃあ僕はあのおばさん殺すとしようかな、人形劇でねっ!」
  「きひひひっ! では私はそこの餓鬼を殺すとしようっ!」
  あたしの受け持ちはカラーニャか。
  少し怖い相手だけど相手に不足はない。そもそもあたしの素性だってかなり怖いものだと思う。
  有史以前のアイレイド文明でもっとも恐れられた王の1人、人形姫。
  さあ、勝負っ!