天使で悪魔





幸福の定義




  懲役50年。
  記憶のない間、何をしたのかよく分からない。
  どうして逮捕されたのか。
  どうして投獄されたのか。
  記憶のない間、何をしたのかよく分からない。

  あたしはこの先、ここで暮らしていく。
  あたしの新しい居場所。
  もちろんそれは正当だと分かってる。何故なら、暗殺者だからだ。
  自分が善人だとも思わないし、そう叫ぶつもりはない。
  この罰は正当であり正義なのだ。
  ……。
  ……でもあたしは自分勝手で。
  ……こんな場所が自分の新しい居場所だと考えると、怖くて震えて、泣けてくる……。






  「……」
  お腹が鳴った。
  投獄されて三日。ろくに食事を摂ってない。
  「……」
  監獄の食事は、三食ある。朝、昼、晩。
  そういう点では、あたしが持っていた価値観とは違った。三食ちゃんと付いている。
  メニューは毎日同じ。
  コップ一杯の水と、堅いパン1つと、一欠けらのチーズと、シチュー。
  栄養としては妥当かもしれない。
  ……全部食べれば。
  どうしてもシチューがあたしには食べれなかった。肉入り。それも大量に入っている。栄養の大半だ。
  ただし肉の正体はネズミ。
  ネズミ料理は確かに存在している。
  しかし大抵はゴブリンが食すものであり、もしくはアウトドア生活してる盗賊達が僅かな食料を倹約する為に
  ネズミを料理に食す程度。

  少なくとも都市で料理屋が『ネズミ料理やってます』という看板を掲げれば市民団体の抗議で潰れるだろう。
  それだけ抵抗があるものなのだ。
  ……あたしにしてもそう。
  ……初日に知らずに食べて、激しい吐き気に見舞われて胃の中のモノを戻した。
  「……」
  もろんネズミのシチュー、看守の嫌がらせではない。
  大抵監獄では出されるポピュラーな食事であり、予算の限られている監獄では出来るだけ食費を抑える為の政策。
  安いし繁殖力も高い。
  そういう意味合いでネズミのシチューは、囚人に出されている。
  「……ううう……」
  静かにベッドに座っていたあたしは、泣けてきた。
  あたしは近いうちに死ぬだろう。
  吐くぐらいなら、気持ち悪くなるぐらいなら食べたくないとシチューには手も付けてない。
  餓死か、栄養失調か。
  そのどちらかの死が、あたしには待ってる。

  ……あたしは何をしたのだろう?
  ……。
  闇の一党として人を殺してきた。
  それは理解してる。
  でも、あたしにはそれしか道が用意されてなかった。それを選ぶしかなかった。
  その結果が、今のあたしだ。
  どうして?
  どうして?
  どうして?
  ……神様、どうして優しくしてくれないのですか……?
  ……神様、どうして……。
  ガンっ!
  「ひっ!」
  檻が叩かれる。
  木製のメイスを持った、あの看守だ。
  ……怖い、怖い、怖い……。
  びくびくしながら檻の方を見る。ここに来てから、態度が悪いと何度も殴られてる。あたしは無意識に怯えていた。
  「面会だ」
  「面会?」
  「本来お前は極悪人だからな、面会は認められないが……敬虔なアカトシュの神父だからな。上も承認したわけだ」
  「アカトシュ……嫌っ!」
  「はっ?」
  「通さないで、帰ってもらってください……こ、こんなマーティン神父に姿見られたくない……」

  「ちっ、贅沢な奴だ。分かったよ、帰ってもらうとしよう」
  頭を抱えてガクガク震えている。
  あたしは神父様を毒殺しようとした。フィフスが薬を摩り替えたから、未遂だけど……どんな顔して会えばいいの?
  顔を触る。
  ……ここには鏡がないから分からないけど、右目の辺りを看守に殴られた。きっと痣になってる。
  それに今の姿は?
  会いたくない。
  会いたくない。
  会いたく……。
  「……やだぁ、やだぁ……」
  看守が嫌がらせで連れてきたらどうしよう?
  その思いが頭から消えない。
  あたしは鉄格子に背を向け、汚く薄汚れた部屋の隅でブルブルと震えていた。
  ……こんな惨めな姿見られたくない……。






  罪状。
  クヴァッチ市内における、大量殺人。
  当初、死刑にすべきだと言う意見が大勢を占めていたものの若干15歳の少女であり、長期収容に妥結した。
  懲役50年。
  陪審員の全員一致の判決により、囚人を長期収容施設に監禁。
  基本的に面会人の禁止。
  大量殺人をどのように犯行を行ったかは不明。現在調査中。
  ただそれを考慮した上で、監房から絶対に出さない事を徹底する事。






  「あの、今何時でしょうか?」
  窓すらなく時間の感覚が分からない。
  あたしは牢獄の前にテーブルを起き、カードをしている二人の看守に聞く。
  無視された。
  「……あの……」
  「うるせぇっ!」
  「ご、ごめんなさいっ!」
  元々あたしは臆病。
  ただ、フィフスがいたから強く振舞えた。そのフィフスは、今はいない。
  どこに行ったのだろう?
  ……。
  糸は出せなくなっていた。
  どうしても魔力が集中できない。精神が乱れているからか、それとも力を唐突に失ったのか。
  今のあたしはただの女の子。
  ……暴力に泣くだけのただの……。
  「ちくしょう負けちまったっ!」

  「ははは。まだやるか?」
  「ちっ、冗談じゃねぇよ。金もないし、ゲームも飽きちまった」
  怯えているあたしを見て、負けた看守はニヤニヤと笑った。
  仲間に笑いかける。
  「こいつの歳幾つだっけ?」
  「確か15とか、そんなぐらいだったと思うが」
  「へぇ。ここで半生過ごすのにまだそんな歳かよ。可哀想可哀想」
  堪らず視線を背けた。
  人として扱ってもらえないんだ。あたしはここでは檻の中の獣。
  人として……。

  「よお極悪人」
  「何ですか?」
  「まあ、自分をそんなに責めるな。それに今は退屈かもしれないが2年もすれば夜が愉しくなる。お互いにな」

  「……っ!」
  下卑た笑みを浮かべる看守の二人。
  その顔を見てあたしは戦慄した。
  言葉の意味に対して、ではない。その首が落ちたのだ。綺麗に。
  「……」
  黒いフードとローブの人物は黒塗りのナイフを、血を吸ったナイフを手にしている。
  あのナイフは……っ!
  「な、何だお前はっ!」
  「……私? そうね、不届きモノとでも看守二人を殺した女とでも呼んで」
  あのナイフは闇の一党に所属している者が手に出来る、シンボル的な黒いナイフ。
  あの人は誰?
  あの人は……。
  キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!
  看守の振り回すメイスを切り飛ばし、ナイフを突きつけたまま看守を壁際まで後退させる。
  「その子の檻を開けなさい」
  「な、何だと?」
  「もう一度言う。檻を開けなさい」
  「……」
  「これはお願いではない。命令。……断るならそれでいいのよ。あんたは永遠の休暇をもらう、私は魔法で鍵を開錠する。
  何故自分で開けないかはあんたの輝かしい業績に傷を付ける為。あんたは逃亡を手助けしたという結末を残したいだけ」
  「な、何だとっ!」
  「でも殺してもいいの。……職を失うのと命失うの、どっちがいい?」
  「……わ、分かった……」
  看守は一瞬躊躇ったものの、腰にぶら下げている鍵の束からあたしの檻を開く。

  ギギギギギギギっ。
  まるでまだ罪科が残っているだろうと、不満の声を上げるように軋みながら扉は開いた。
  あたしはまだ檻の中に。
  ……この人は誰……?

  「行きましょう」
  フードの下の顔は見えない。
  躊躇っていると、檻の中まで入って来てあたしの手を掴み、強引に連れ出す。
  そのまま看守の横を通り過ぎ、不意にナイフを一閃させた。
  ボトリ。
  落ちる右腕。
  「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  「あんたは自分の仕事をしただけ。でも少しこの子を見下しすぎだったみたいだから、お仕置きよ」
  くくくと含み笑い。
  闇の一党の刺客かもしれない。あたしは任務を失敗した、その為に刺客が送られた。
  ここで腐って死ぬ事は許されないのかもしれない。
  外に連れ出されて、殺される?
  「来なさい」
  「……」
  「来るのよ」
  「は、はい」
  謎の女性はあたしを連れ出し、そして……。









  凄惨な現場は、既に衛兵に片付けられた後だった。
  アイレイドの人形姫の殺戮の場所。
  辺りに人影はない。
  既に深夜。
  今夜は曇り空。満月も星も、その姿を隠している。
  血の臭い。
  石畳に血が染み付いている。その色も、臭いも、新鮮な鮮血を吸った地面。
  そこに立つのは……。
  「けっ。まさかお前らがフォウの正体を知ってるとは思わなかったぜ」
  「……」
  「ルールーとか言ったか? もう1人の爺はどこだよ?」
  「……」
  人形フィフス。
  あの戦いの終盤でフィーに倒され、その後姿を消したフォルトナの友人であり、親友であり、家族。
  少なくともフォウは人形としては見ていなかった。
  少なくとも……。
  「てめぇらフォウをどうする気だった? 何企んでたっ!」
  「……」
  女性は、ルールー。
  以前フォウを『魔王様♪』と追い回した、電波系の女性。
  妖艶で、残忍な笑みを口元に浮かべた。
  「いつ気付いた? ……我々がアイレイドの神官だという事を」
  「何を画策してやがる? ええっ!」
  「アイレイドの再興」
  「はっ、ふざけんなっ! アイレイド潰したの、フォウだろうがっ! あいつを再興に持ち上げてどうするよっ!」
  「違う。それは違う。あの時代、アイレイドは腐敗の極みだった。フォルトナ様は破壊し、創造するおつもりだった。破壊
  だけした後に、無思慮な連中に封じられた。再興なきまま滅び去った。我々は待っていたのだ」
  「何を?」
  「フォルトナ様の覚醒を。……あのお方を連れて行かせてもらう。仮初の人格を消去する」
  「させねぇっ!」
  バチバチバチィィィィィィィィィィっ!
  飛び掛ろうとした瞬間、フィフスに電撃が降り注ぐ。魔法抵抗のないフィフスには、致命的なダメージ。
  そのまま倒れ伏す。
  動けない。
  動け……。
  「ラト、フォルトナ様はお連れ出来たの?」
  宙に浮かぶ、老人。
  かつてフォルトナを『勇者様♪』として持ち上げていた、老人だ。
  口惜しそうに呟く。
  「監獄にはおらなんだ。……誰かが邪魔をしたらしいな」
  「何ですって?」
  「また、我々との繋がりが消えた。所在が分からぬ。……探さねばならぬ」
  「くっ」
  アイレイドの神官を自称する者達は、忌々しそうに天を仰ぐ。
  アイレイドの再興。
  それはすなわち、今の文明を潰した上に再建する事であり、途方もなく壮大な事。
  可能か、不可能か。
  ただの誇大妄想か、それとも何か策があるのか。
  「けけけ」
  馬鹿にしたような笑いが気に入らなかったのか、ルールーは電撃を浴びせた。
  電光が周囲を照らす。
  「たかだか人形の分際でフォルトナ様の恋をするとは言語道断、愚の極み。貴様のような出来損ないは消去する」
  「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  「人のつもりか? 愚かな、人でも男でもないくせに、愛が何かも知らぬくせにっ!」
  「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  「フォルトナ様を抱くか? フォルトナ様の伴侶になりたいか? 人形の分際で、生意気なっ! 不届きっ!」
  「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  絶叫と共にフィフスは宙に浮かぶ老人に飛び掛り、地面に叩き落した。
  電撃がフィフスの体を通し、老人に伝わる。
  「……っ!」
  フィフスは魔法に弱い。
  それでも人形、鋼鉄製の武器でオークに斬られても傷は負わない装甲。
  だから抵抗こそないものの非常にタフであり、外観としてはまるで無傷ではあるもののラト爺は生身。
  電撃を受けたらどうなるか?
  ……言うまでもない。
  「し、しま……っ!」
  ルールーが電撃を止めた時には既に手遅れ。
  老人は黒焦げとなり、性別も種族も判別できないほどに炭化していた。
  「フォウは俺が護る、俺が、俺が……俺の体全部と引き換えにしてもてめぇは殺すっ!」
  「アイレイドの悲願を潰すか? その遺産であるお前が? 尖兵であるはずの人形のお前が?」
  「知るかそんなもんっ! フォウが幸せでいる為にはアイレイドは必要ねぇっ! お前も俺もいない方がいいんだっ!」
  「人形がぁっ!」
  「そうさ俺は人形だ。分は弁えてる。未来永劫フォウの側にいる気はねぇよ、伴侶とか恋愛とか、そんなのも抱いていい
  わけないのも知ってるさ。だが俺の居場所の為に、本来の使命が今分かったぜ」
  「ほう、それは何だ? 戦いか? そうさお前は戦いしかない、それ以外の存在価値はないっ! 居場所もないっ!」
  「あいつが笑っていられる、それが存在価値でありあいつの為に居場所を作るのが俺の、俺にしか出来ない唯一の
  事であり俺にとっての居場所。壊れようが知ったことか、あいつの為に何かをする。それが俺の幸福の定義だっ!」
  「壊れた人形め、消えうせろっ!」
  電光と。
  咆哮と。
  その双方が響いた。
  その双方が消えた。
  そして……。






  あたしが連れて来られたのは、クヴァッチ市内にある高級ホテルだった。
  質問を受け付けてくれない。
  ただ無言であたしを連れて歩く。
  女性……口調からして女性と判断しただけだけど、女性は部屋を借りてあるらしくそのまま部屋に。
  「あの?」
  「脱ぎなさい」
  「えっ?」
  「服を脱ぎなさい。お湯が沸かしてあるから、お風呂に入りなさい。随分と臭うわよ?」
  「……」
  「……ああ、そうか。この格好が怪しいわね」
  警戒の視線に気付いたのか、女性はフードを取る。
  その顔は見知った人だった。
  「あの場面で顔出すわけにもいかないし名乗れない、悪かったわね、強引で」
  「フィッツガルドさん?」
  「フィーよ」
  「フィー、さん」
  シェイディンハル聖域の暗殺者。
  シェイディンハル聖域は浄化の儀式の対象となり、全員死んだとか聞いてたけど……生きてた?
  一度会っただけだけどあたしはこの人が好き。
  全てを包み込むような優しい人だから。
  ……あたしの悲しみも汚れも、全て理解して優しく包み込んでくれるような人だから……。
  「どうして……」
  「どうして助けたかって? ……決まってるじゃない、恩を売ってあたしの召使いにする為よ。一生私の奴隷に決定♪」
  「はぅぅぅぅぅぅぅぅっ」
  「冗談よ」
  肩を竦めて、お風呂入ればと促す。
  あの監獄に入れられてから三日間、お風呂は愚か行水すらしてない。……正確にはこの先50年も同じだったはず。
  でも気になる事がある。
  「どうしてあたしを?」
  「……ふむ」
  少し考えてから、照れ臭そうにフィーさんは呟いた。
  「昔の自分みたいだから」
  「えっ?」
  「誰も私を助けてくれなかった。手を差し伸べてくれなかった。……だから、同じような女の子の貴女に手を差し出して
  みたくなった。自己満足よ自己満足。それとも、そうする事でトラウマに乗り越えようとしたというのもあるわね」
  「……」
  「辛かったわね、でももう大丈夫。身の振り方も考えてあるわ。何も心配ない」
  「……」
  抱きつきたかった。
  だけどあたしは臭いから、あたしは汚いから。
  むぎゅー。
  「もう平気もう安心。……でもまあ、一生私に感謝なさい?」
  「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
  絶叫を上げてあたしは泣いた。
  抱かれた肩が心地良かった。幸福をくれたのは、フィーさんが始めて。
  誰もそれを許してくれなかったのに。
  誰もそれを……。
  「あなたは幸せモノよ? フォウ、私が監獄に潜入出来たのもお友達の神父のお陰」
  「神父……様?」
  「お互いに名乗らなかった。名乗るとお互い危険だからね。……アカトシュの神父が監獄に潜入する為に情報屋と話をして
  いる時にね接触してきたのよ。見取り図をくれた。それを元に私は潜入した、安全にね」
  「……」
  マーティン神父だ。
  毒殺しようとしたのに。なのにあたしを……どうしてなんだろう……?
  それはどうして……?
  「いつも泣いている、でも自分では救って上げれなかった妹を助けて欲しいって言われたのよ」
  「……」
  「ほら、お風呂入りなさい。その後でその痣に薬塗ってあげる。大丈夫すぐに消えるわ。もう、安心よ」
  「……はい」
  あたしは頷き、それから自分から抱きついた。
  あたしは……。










  人形でしかなかった俺を愛してくれて嬉しかった。
  俺は人形。
  お前は人間であり、本来相容れない間柄。
  なのにお前は俺を愛してくれた。
  俺もまたお前を愛した。
  ……お互いの持つ愛の感情は違うのは分かってる。それでも俺はお前を……。
  ……それでもお前が好きだった。
  ……それでも……。












  「……あっ」
  「どうしました、フォルトナ様?」
  「あの、エイジャさん。あたしに様はいらないですよ。その、ただの居候ですし」
  「かしこまりましたわフォルトナ様」
  「……もう」
  「ふふふ」
  ローズソーン邸。
  鏡台の前に座り、メイドのエイジャに丁寧に髪を梳かして貰いながら、あたしは違和感を感じた。
  違和感。
  ……正確には、虫の知らせ?
  誰かがあたしの名を呼んだ気がした。
  気のせいかな?
  「ほら、綺麗になりましたよ」
  「あ、ありがとう」
  こんなに優しく接してもらったり、優しく扱ってもらったり。
  あまり経験ないから戸惑う。
  どこかくすぐったい。
  皆良い人だった。フィーさんは言うまでもなく当然だけど、元シェイディンハル聖域の暗殺者の人達も、メイドのエイジャ
  さんも皆良い人。あたしも早く馴染めるように努力しなきゃ。
  フィーさんがくれた手紙を持ってスキングラードのこの屋敷に。フィーさんは仕事でコロールに。
  応対したメイドの人は手紙を一読すると優しく微笑んだ。
  その日からあたしはここで暮らしてる。
  幸福な場所。
  幸福な……。
  「フォルトナ様、何か香料でも……」
  「香料って何ですか?」
  「あら香料は初めて? 淑女の嗜みですよ? ……小さなレディの為に良い香りなのを選んであげますね」
  幸福な場所。
  幸福な……。
  フィフスはどこに行っちゃったのかな?
  一緒に幸せになりたいのに。
  「フィフスは一体どこに行ったんだろうなぁ」