私は天使なんかじゃない







happyending





  その世界は過酷。
  その世界は終末。

  だけど視点を変えたら、どこにでも優しさが転がっている。





  キャピタル独立戦争から1年後。
  キャピタル・ウェイストランド北部。オアシス。

  「たくさんありがとう、ハロルド」
  私はオアシスに鎮座する大木ハロルドに礼を言う。
  緑生い茂る場所。
  キャピタルでは唯一の場所。
  ……。
  ……まあ、一年前までは。
  私は、私たちはハロルドを囲むように座っている。お日様がぽかぽか気持ちいいですな。私たち、とは当然ながら私、グリン・フィス、アマタにスージー。
  ここへの来訪は何度目だっけな?
  アマタたちも今日が初めてってわけじゃない。
  「それだけでいいのか、ミスティ」
  「ええ」
  彼から貰ったもの。
  それはたくさんの植物のタネ。
  現在私は緑化計画を実行中なのです。
  ハロルドはこの放射能の世界の中でも存在し、オアシス周辺の緑は全て彼の存在によるもの。ならばここの植物のタネならキャピタル中で自生するのでは、と思ったのがきっかけ。
  実際タネ植えたら芽が出て、緑が生まれてる。
  広いキャピタルに本当に小さく点々とした箇所だけなんだけど、緑が生まれつつある。
  「ねえねえ、ちょっと男前な顔してー」
  スージーがハロルドの絵を描いている。
  男前な顔って言ったって、ハロルドは大木にグールの顔が張り付いている状態だ。正確には体が大木になって、名残りが顔だけって感じなんだけど、顔も木になってる。
  表情動くのか?
  いや、でも口は動いてるしなぁ。
  「こうかい?」
  「うんうん、男前ー☆」
  楽しそうで何より。
  アンクル・レオがシロディールとかいう謎の場所に旅立って一年だ。
  ハロルド寂しがっているかと思ったけど満喫しているようだ。オアシスには彼を信奉する、いや、彼の家族である人々もいるし。
  「ねぇミスティ、今日はどの辺に植えるの?」
  「どこにしようかなー」
  一か所に纏めて植えて段々と広げる形にすればいいとは思うんだけど私はそうはしなかった。
  点々と植えてる。
  一応意味はある。
  旅人たちが緑を見れるように、方々に植えてる。
  それを見てキャピタル荒野にも緑が戻りつつあるということを糧に頑張ってほしいという自己満足です。
  「なあ、ミスティ」
  「うん? 何、ハロルド?」
  「たくさん植えてくれてありがとうなー。お陰でたくさんの景色が楽しめるんだ。ハーバード……分かったよ怒るなよ、ボブ。ともかく、ボブも喜んでるよ」
  相変わらずハーバードとボブの下りは謎。
  うーん。
  「たくさんの景色って?」
  「たくさんの景色だよ」
  そのまんま返された。
  どういう意味だ?
  ……。
  ……あれ?
  このやり取り、もしかして……。
  「ハロルド、私が最初にここに来た時、あなた私が近づいてくるのが見えたって言ったわよね」
  「ああ、言ったな」
  ハロルドは大木だ。
  だけどここは岩に囲まれている。さすがにハロルドから外界は見えない、そこまでの巨木ってわけではない。
  あの時は意味が分からなかった。
  でも今は何となく分かる気がする。
  「あなたはmaster系能力者だったのね」
  「何だい、そりゃ」
  報告書ではmaster系能力者は支配した対象と視覚を同調できるらしい。
  つまり。
  つまりハロルドは他の植物を通して外界を見ているってわけだ。
  あはは、こういう言い方はハロルドは気に食わないだろうけど本当に神様じゃん、その力。
  「たくさん植えるわ、ハロルド」
  そうすれば彼の世界は広がる。
  もう寂しくない。
  だから生きていける。
  「それにしてはミスティ、持ってくのが少ないんじゃないかい?」
  「だってたくさん持ってったら、ハロルドに会う回数減るでしょ」
  可愛くウインク。
  戦争は一年前に終わった。
  エンクレイブはあれからちょっかいを出してこない。ああ。、オータム派は別。あの残党どもは帰る場所ないからか暴れてる。ごく一部はこちらに帰順してくる。喜んで迎え入れてる。今のアメリカは
  人材不足だし、エンクレイブの生き残りは有能だからバシバシ採用してる。まあ、採用希望はごく稀なんですけどね。
  一応クリス率いるエンクレイブとは無線である程度の協定は結んだ。
  捕虜返還協定。
  こっちが、連中に返す捕虜。向こうは捕虜連れて逃げかえる余裕なかったから救出済み。ともかくその関係でハークネスたちも帰国させた。
  もう1つの協定が、資産没収。
  エンクレイブがキャピタルに残した代物は全部我々が美味しくいただきました。
  さて。
  「グリン・フィス、まだ大丈夫?」
  「主、それがブッチたちが陽動に失敗したらしく。サラ殿たちがこちらに向かってます」
  「マジか」
  やれやれ。
  連れ戻されても叶わない。
  どうせ私がいなくても国は回るんだし、20歳で大統領の職務に全て捧げれと言われても困ったものです。
  別に立候補したわけでもないし。
  PIPBOYに話す。
  「マーゴット、逃走経路を算出して」

  <了解しました、大統領>

  マーゴットの機能をPIPBOY3000にリンクさせました。
  主に悪戯に使用です。
  まあ、それ以外にも有用なんですけど、最近は脱走にしか使ってないなぁ。
  「行くわよ、アマタ、スージー。グリン・フィス、車回してきて」
  「御意」
  「さあ行くわよ、スージー」
  「ちょっとアマタ、引っ張らないでよ。またね、ハロルド、続きはまた今度」



  ジープが荒野を走る。
  遠くの空にベルチバードか見える。
  サラだ。
  不味いな、こっちに向かって来るぞ。
  「グリン・フィス、かっ飛ばしてーっ!」
  「御意」
  「……相変わらずぶれませんね、あんた」
  「主も変わりませんね」
  「そうかな?」
  「出会ったままです」
  褒めてるんだか褒めてないんだか。成長してないと言われてる気がする。
  荒野を東に移動中。
  かつてデイブ共和国と呼ばれた場所は、今ではデズモンドとフォークスが農場として使ってる。人とグールが協力して発展させてる。
  旅は終わった。
  長い長い旅は終わったんだ。
  仲間たちはそれぞれ自分たちの帰る場所に帰り、生活を営み、日々を過ごしている。
  きっとボルト101では味わえなかったことだろう。
  「ミスティ、来たわよっ!」
  アマタが叫ぶ。
  楽しそうだけど。
  ベルチバードか私たちの真上を通り過ぎた。
  それからスピーカーから声が響く。

  <ミスティっ! 出歩くな、とは言わないけど、たまには私も誘いなさいよっ! 何だかんだで私ら親友でしょっ! もう、たまには私だって息抜きしたいのっ!>

  サラの叫び。
  悲痛ですな。
  「親友だって。よかったわね、ミスティ」
  「……何っすか、アマタさん、そのジト目は」
  別の人と親友になっちゃいかんのか、私は。
  えっ?
  何なんだ、この嫉妬は。
  そういうもんなの?
  「アマタはミスティみたく交友関係広げるの得意じゃないもんねー、拗ねちゃった」
  うわスージー地雷踏んだっ!
  彼女は気にしない。
  私たち周囲が、その発言による結果を恐れるのだ。
  天然っていいなぁ。
  おおぅ。
  「アマタ殿、主はいつもアマタ殿を気にかけてましたよ」
  ぱぁぁぁぁぁっと効果音が聞こえたような。
  アマタ、満面の笑顔。
  親友にNO.1とか必要なのかなぁ。
  まあいいけど。
  あくまでそれはアマタの考え方だし、私は友達たくさんいた方が嬉しい。親友は何人でも。それに、やっぱり何だかんだでアマタが一番の親友かなぁ。実質生まれた時からの付き合いだし。
  「主、ラジオでも付けますか?」
  「お願い」
  「御意」
  「……ラジオ付けるのに御意って、反応が非常に重いんですけど」
  結局変わりませんでしたね、彼のキャラ性。
  うーむ。
  サラのベルチバードはどうやら付いてくる気らしい。
  今日はオールで遊びとしますか。
  ラジオから声が流れる。
  スリードッグの声だ。

  <ここで公共放送だ>
  <何でもまた大統領が脱走したらしい、ストレスがマッハで溜まっているリオンズ議長の毛根が心配な案件だ。そこで俺から皆にお願いだ>
  <赤毛の冒険者を見つけて連絡してほしいっ!>
  <……とは言わないぜ? とりあえず見つけたら紅茶とクッキーでもてなしてウインクして送り出してやろう。ついでに、抱え込んでいる厄介ごともプレゼントしてやれっ!>
  <聞いてくれて感謝するぜ。俺はスリードッグ。こちらはアメリカ自由放送GNRだ。どんな辛い真実でも君にお届けするぜ?>
  <さてここで少し曲を流そうか。曲はhappyending>











  これにてミスティの旅は完結です。
  次回からは新たな主人公ミス・Tのお話です。
  東海岸キャピタルから離れ、西海岸モハビにお話がシフトします。基本キャピタル勢は絡みません、のでミスティとコラボることはないです。

  本編127話。
  ピット編31話。
  ルックアウト編30話。
  レジェンド編41話。
  ブロークンスティール編79話。
  宇宙船編18話。
  あー、エピソードネメシスはまだ未完ですな、この時点では。


  モハビの話のタイトルは、そして天使が舞い降りた。
  モハビを救う天使が舞い降りたのか、堕天した天使という意味なのか、的な感じのタイトル。
  ミス・T、早い段階でミスティと表記になりますけど、キャピタルミスティと同じように仲間意識を持つ者に対しては庇護欲があり、義理とか重んじる主人公です。ただモハビミスティはグリン・フィスという
  ブレーキがいない分、彼の役回りも兼任している関係もあったりするので非情であったりします。というか冷酷。打算的。少なくとも、仲間以外には。
  また記憶喪失という関係上、各勢力に関しては真っ新な価値観なので偏見がない半面、親しみも持ってなかったりします。
  あと、旅の目的が彼女にはなかったりする。
  頭の中リセットされてるから。
  だから初期状態では無欲なのですが、次第に野心的になっていったりならなかったり。


  作品の設定上、当面はリージョンとNCRは休戦状態。
  なのでベガス到着まではかなりメタル系の要素が強いかと思われます。


  かなり長くかかりましたが、今までありがとうございました。
  うん、ようやく終わったね。
  おつかれー☆

  久遠。