私は天使なんかじゃない






兄弟たちの挽歌







  悪いのは一体誰?





  コレクション品奪還。
  鍵奪還。
  オラクル救出。
  ボニエ&クライヤ撃破……いや自爆?……整備不良で自滅?
  ともかく完了です。
  シドニー絡みではなかった。
  となるとあいつはどこ行ったんだ?
  誰だか知らない女傭兵連れて私を探して回っているのか?
  嫌だなぁ。



  リベットシティ。
  コレクション奪還から1日後。
  友人が私たちが泊まっている宿に訪ねて来たのでお話し中。
  仲間は私以外は誰もいない。
  オラクルはグリン・フィスとリベットをうろうろしてるはず。
  訪ねてきたのはシーだ。
  「シドニーは?」
  「結局あれからずーっと姿見せずっすね。ミスティ探してキャピタル放浪してるんじゃないの?」
  「かもね」
  「あいつ執念深いからねー」
  「マジか」
  「マジ」
  何だって私を狙うんだ、くそっ!
  狙うなら狙うでもいいけどちゃんと話の整合性付けて襲って欲しいものだ。完全に逆恨みでございます。けっ!
  「何とか接触して欲しいんだけど」
  必要経費のキャップじゃらー。
  300ほど渡す。
  「お納めください」
  「これはこれはご丁寧にどもー☆ でも、まー、話し合いに引っ張り出すように接触はするけど、本気でキャップで解決するしかないよ? あいつ、あたしと違って守銭奴だし」
  「は、はははー」
  「何よー、不満?」
  「いえいえ。シー、引き続きよろしく」
  「何かあったらPIPBOYにメールで連絡するよ。まったねー」
  「うん、またね」
  お互いにバイバイ。
  シーが退室した後、私はアサルトライフルを手に取って通路をに出て歩きだす。どんな時でも完全武装、それがモットーです。少なくともメガトン以外ではこれがベターだ。
  とりあえずこの街にはもう用がない。
  アブラハム・ワシントンからリンカーンの記念品であるコインセットと帽子を成功報酬としていただき……だいぶ渋られたけど……今回の一件は終了。
  鍵がどこで使うかは謎のまま。
  少なくともリベットにはなさそうだった。
  どこの鍵なんだ、これ。
  価値も不明。
  シドニーの件はシーに任せよう、まあ、シドニーがいきなりアポなしで来た場合はそれなりのおもてなししてあげるけれども。
  グリン・フィスはリベットのどこかを彷徨ってる。
  どこか?
  どこか。
  ハーマンがいなくなったらしい。
  どういう関係なんだか。
  姪?
  あんまり信じてない。
  可愛い子なんだけどどこかミステリアスで底知れない。
  何者?
  まあいいか。
  ポールソンはまだ酒場にいるのかな。もしかしたらギルダー・シェイドに帰ったのかもしれない。
  ハントたちもそろそろ帰って来るのだろうか?
  「そろそろ時間かな」
  約束がある。
  酒場に行くとしよう。
  私はマディ・ラダーに向かった。
  現在この街はBOSの管理下にある。市民が選出した評議会が方針を決め、それをBOSが裁可するという仕組み。評議会メンバーでごたごたがあったからこうなった、らしい。
  なのでBOS兵士もたまに見かける。
  私を知っているのだろう、敬礼してくる。照れますね。
  「いるかな?」
  酒場の扉を開く。
  きょろきょろ。
  あれ?
  ハンニバルたちいないな。
  私にはリンカーンの品々なんて実のところどうでもいい。あくまでハンニバルへの譲渡が目的だ。
  意味?
  特にない。
  ただ、ハンニバルが喜ぶかなぁと思ってのことだ。
  結構執着してたし。
  来るまでポールソンと話でもしてようかとも思ったけど彼もいない。
  帰ったのか。
  どうしようかな。
  座って飲みながら待とうか。
  そんなことを考えていると酒場の中の喧騒が聞こえてくる。

  「てめぇっ! でしゃばるなクソ兄貴っ! ナタリーは俺の物だっ!」
  「落ち着けよ。昔みたいに泣かされたいのか?」
  「やめなよ兄さんたちっ!」

  あー、あいつらか。
  イッチ、ニール、サンポス。仲悪い3兄弟が何やら揉めている。
  ブッチ曰く、一時は仲間だったとか?
  私がいない時分の話だからよく分からないけどその時は仲良し兄弟だったらしい。
  本当か?
  まあ、今まで遭遇した限りではニールが最悪ってことかな。
  公文書館で一致を罠にはめて見捨てたのも、シェイル・ブリッジでの爆破もこいつだし。そう考えたらいまだにつるんでいるのが不思議なぐらいだ。兄弟だからか?
  サンポスはまともな部類だとは思う。
  イッチ?
  んー、へたれ?

  「ありがとう、皆。あたしを想ってくれて。でも、皆あたしの大切なお客様なの。他のお客様が怖がっているわ、やめて」

  青い髪、黄色のワンピースの女性。
  ナタリー。
  このお店のホステスさん。
  相変わらず綺麗ですね。
  そう。
  要はこの人を取り合っての喧嘩なわけだ。この人がこういう以上、これで喧嘩はお終い。3人は精算して店を後にした。
  ……。
  ……あれ、イッチが足を引き摺ってる。
  何故に?
  この間の一件で兄弟喧嘩の末に足でも痛めたのかな?
  私はナタリーに近付く。
  「ハイ」
  「あらいらっしゃい。ああ、ミスティさん」
  「ここで待ち合わせしてるんだけど」
  ハンニバルの容姿を言う。
  「知らない?」
  「来てないわ」
  「ポールソンは?」
  「先ほど帰られたわ」
  「そっか」
  どうしようかな。
  ここで飲んで過ごそうかな。
  「あら、イッチさん忘れ物してる」
  大きな袋が置かれている。
  ゴミかと思った。
  「届けてあげたら?」
  「あたしはまだ仕事だし、イッチさんたちはリベットシティの外に住んでいるのよ。廃ビルに。場所は分かっているけど、あたしにはちょっと……」
  「リベットの外に?」
  「ええ」
  確かに危険だろう。
  スパミュは完全にこの近辺から撤退したんだろうけどレイダーが巣食っている可能性もある。
  チンピラもね。
  「いいわ、私が行くから」
  時間潰しにはなるだろ。
  「えっ? いいの?」
  「ええ」
  そういえばシェイル・ブリッジでのお礼もしてないしね。
  殺しゃしないわ。
  半殺しで済ます。
  「あなたって親切なのね、はい、これ。どうかよろしくお願いします」
  「任せて」
  受け取る。
  袋の口が少し緩んでいるのでちらりと中が目に入る。手榴弾だ。それも結構な数の。
  あいつらはハンターだ。
  別に持っていてもおかしなものではない。



  リベットの外に出る。
  あの3人の住まいはリベットの西側にあるビル群の1つだという。何だってリベットに住まないんだろ。
  ナタリーに教えられた廃ビルに入る。
  居住区はその3階。
  その一室。

  「誰だっ!」

  部屋に入ると鋭い声がした。
  スナイパーライフルで私を狙っている。とはいえ距離はたかだか3mだ。そんなもので狙うまでもない。おそらく遠距離射撃が彼のスタイル故のチョイスなのだろう。
  イッチだ。
  他の2人はいないようだ。
  ビルの他の階層?
  かもね。
  部屋、といってもだだっ広いコンクリ打ちの部屋。申し訳程度に生活用品が置いてあるだけ。
  金庫がある。
  金庫は鎖と3つの南京錠で雁字搦めになっている。
  随分と厳重なことだ。
  「ハイ」
  「てめぇっ! 誰に断ってここに来やがったっ!」
  おやおや。
  結構なお言葉ですね。
  公文書館で助けてあげた恩を完全に忘れているらしい。当然、シェイル・ブリッジで爆破に巻き込んでくれたことも。爆破はニールがしたにしても、同罪だ。兄弟喧嘩に巻き込みやがって。
  「通りすがりよ」
  「だったらとっとと通り過ぎやがれっ!」
  「結構な言い草ね。ナタリーの使いよ」
  「な、何?」
  「忘れ物」
  「おお、これは確かに俺の荷物だ。俺の手榴弾だ。わざわざ悪いな、ありがとうよ」
  ほんっっっっっっっっきで私を忘れてるな。
  まあ、爆破の件は勘弁してやるか。
  ニールにぶつけてやる。
  考えてようによってはこいつも被害者だし。問答無用で巻き込まれたにしては、私は寛大な性格ですなぁ。
  さて。
  「俺はイッチだ。あんたは?」
  「ミスティよ」
  「よろしくな」
  「ここは? 何だってリベットに住まないの?」
  「ここは俺たち3兄弟のアジトだよ。カンタベリー・コモンズからここに越してきたんだ。リベット暮らしもいいが、評議会に金払わなきゃいけないし、仕事行くのにわざわざ彷徨うことになるからな。
  方向感覚狂うんだよ、あそこ。そう簡単には慣れそうもない。要は、まあ、田舎者ってことだ。ハンター3兄弟としてここを拠点に活動してるんだ」
  「手榴弾は何に使うの? 戦闘? まあ、戦闘よね」
  「戦闘でもあるが一番の理由はそこの金庫に近付く奴を吹っ飛ばすためのものさ。仕掛けは教えられねぇ。あんたがこの金庫を狙わないって保証はねぇだろ?」
  「何が入っているの?」
  別にどうでもいい。
  ただ、金庫を取り巻く南京錠は、もしかしたらオラクルの鍵で開くかも?
  ロッカーではない。
  ロッカーではないけど、それだってあくまで推測だ。もしかしたらってこともある。
  「何で気になる?」
  「実は」
  ある程度概要を言う。
  イッチは首を横に振った。
  「悪いが外れだ。こいつは俺たちが稼いだ金が入ってる。3つの鍵を兄弟で分けて持っているのさ。3人が同意しなければ開けられないって仕組みさ」
  「邪魔したわね、帰るわ」
  「ああ。ありがとうよ。ナタリーに、その、愛していると伝えてくれ」
  「それは自分で言って。それで私が口説き落としたらどうするの?」
  「ははは。確かに。じゃあな」
  特に悪い感情はない。
  まあ、彼には命狙われてないのもあるけど。助けたのにお礼言われなかったのは少し気になるけど、そんなの気にしてたら人助けなんてできない。
  そろそろハンニバルも来るだろ。
  私はイッチと別れ、マディ・ラダーに戻ることにした。



  「まだ来てないわ」
  「マジか」
  ナタリーは首を横に振る。
  ハンニバルたちはまだ来ていないらしい。
  仕方ない。
  今度こそお酒でも飲んで時間を潰すとするか。テーブル席に座る。カウンターは埋まってるし。というかお前ら働けよ、まだ日は高いぞ。
  「お勧めある?」
  「イッチさんに届けて貰ったし、ご馳走するわ」
  「本当?」
  「ええ」
  ラッキーだ。
  人助けはするものですね。
  「じゃあ……」

  「ちょっと待て」

  「ん?」
  声を掛けられる。
  振り向く。
  巨漢の男がいた。ああ、こいつかー。
  「俺は」
  「ニール」
  「ん?」
  「爆破してくれてありがとう」
  アサルトライフルの銃底で素早く腹を乱打。たまらず呻くニール。女の腕力とはいえ、これに無表情で耐えられるならスパミュになった方がいい。
  蹲るニール。
  ナタリーは小さく悲鳴を上げ、客たちはちらりとこちらを見るものの、すぐに酌婦たちと談笑に戻る。
  なかなか人情味のある街だことで。
  「ちょ、ちょっと待て」
  「何? まだ殴って欲しいの?」
  「ちげーよっ! その、頼みがあるんだ。それで声を掛けたんだ」
  「頼み?」
  「あんた、その、ナタリーに頼まれてイッチ兄貴のところに行ったんだろ? 届け物を滞りなく受け取ってもらったんだろ?」
  「拒否される謂れはないし。というかあれイッチの私物だし受け取り拒否するわけないでしょ」
  何が言いたいんだ、こいつ。
  「ちょっと待っててくれ」
  そう言って姿を消す。
  私はナタリーに肩を竦めた。
  「何あれ?」
  「ニールさんです」
  「それは知ってるけど……」
  「こいつをイッチの兄貴に届けてくれねーか?」
  戻ってきたニールは何やら長い大きな箱を持っている。
  手渡された。
  重いっ!
  「この間からくだらねぇ喧嘩ばっかりしてるからよ。仲直りの印にアジトで療養している兄貴に届けて欲しいんだ。あんた顔見知りだろ、頼むよ」
  「自分でしたら?」
  「やだよ、照れ臭せぇっ! 男同士の兄弟で、そんなこと言えるかよっ!」
  「ふぅ」
  「頼むぜ。プレゼントっていうのはタイミングが大事だからな」
  拝み倒し、押し付けてくる。
  ハンニバルはまだ来ない。
  一度宿に戻ってグリン・フィスに……いや、まあ、いいか。今度はグリン・フィスもオラクルに付きっきりだし、リベットで迷子になってるハーマンを探すという役目もある。
  やれやれ。
  イッチの所に向かうとしよう。



  再び3兄弟のアジト。
  イッチは胡坐をかいて先ほどの部屋にいた。右足を伸ばして座っている。引き摺っていた足だ。痛めてるのかな?
  「ハイ」
  「ん? 何でまた訪ねてきたんだ?」
  「それは私も聞きたいけど何か質問ある?」
  「手助けしてもらっておいてなんだが、あんまりうろちょろしないでくれよ、ここは俺たちの縄張りなんだから。それで、どうしたんだ?」
  「またお届け物よ」
  「また? もう何も忘れてないぞ?」
  「これ」
  事情を話してニールのプレゼントの木箱を手渡した。
  イッチは笑う。
  「へぇ、あのニールがねぇ。こんなこと初めてだぜ。さっそく開けてみるか。……こりゃ悪くねぇ。かなりの高級なバズーカだぜ。ニールの奴……」
  「よかったわね」
  箱の中は黒光りするバズーカ。
  ハンター兄弟のプレゼントとしては妥当なのかな。
  「気になってたんだけど足怪我してるの?」
  「ああ。この間喧嘩で痛めちまったのさ」
  「スティム打てばいいのに」
  「簡単に言うなよ、買うと高いんだぞ。俺たちは基本ミュータント生物相手のハンターだから、レイダー相手に戦って巻き上げるのとは違うんだ」
  「なるほど。プレゼント、よかったわね」
  「ああ。ナタリーに嵌まって最近はイカレちまったかと思えば、あいつにもまだ兄弟を思う心が残されてたんだな」
  「ははは」
  お前が言うのか。
  お前が。
  ナタリーに嵌まっているのはあんもだろうが。
  「確かに届けたわよ」
  「ああ、たびたび悪いな、ありがとう。ニールによろしく伝えておいてくれ」
  「ええ」
  そして。



  そして再びリベットのマディ・ラダー。
  ニールがナタリーとは別の女性相手と何やら盛り上がってはいるものの、時折ナタリーを横目で見ている。ナタリーは別のテーブルの誰かと喋っている。
  私は声を掛ける。
  「行ってきた」
  「届けてくれたか?」
  「ええ」
  「きひひっ! これでよしっ!」
  「……?」
  「ありがとうよ、お礼は、そうだな、一杯奢るぜ。好きな酒頼んでくれや。じゃあな」
  「あー、これはどうも」
  わー大金だー(棒)
  10キャップです。
  まあ、お使いですからこんなものか?
  ハンニバルはまだいない。
  どうしたもんか。
  10キャップをポケットに入れ、立ち上がる。
  その時ナタリーが喋っているのがサンポスだと気付く。あー、これはまたお使い発生ですか?
  2人に近付く。

  「兄さんたちにはちゃんと話しておくよ、ごめん、何か妙なことになってしまっていて」

  何やら弁解している?
  ナタリーは私に気付くと目礼し、その席を離れて行った。
  「何か用かい?」
  「私はミスティ。あなたのお兄さんからお使いを頼まれてた。で相談なんだけどここ最近兄弟喧嘩に巻き込まれてるんだけと何とかしてほしいのよ」
  「失礼した。僕はサンポス。この近辺を拠点にしているハンター3兄弟の末弟だ。座ってくれよ」
  「どうも」
  座る。
  「それで兄弟喧嘩……あれ、君のことは見たことがある……」
  「ここ最近何度か巻き込まれたしね」
  「すまない」
  「あなたが謝る必要はないわ」
  実際彼は無害だし。
  兄弟のブレーキ役だ。
  問題はそのブレーキが効いていないということだけど、彼は良識派だ。
  「実はあるドリンクを作ろうとしているんだ」
  「ドリンク?」
  「うちの兄弟は皆これが好きでね。最近ちょっと気まずいことがあったからこれで仲直りしたいんだ。これ飲んで冷静になれば兄弟喧嘩は終わるし、あなたに迷惑も掛からない」
  「そういうもの?」
  「そういうものさ。僕たちは、兄弟なんだから」
  「ふむ」
  ナタリーが何かを持ってくる。
  注文していたらしい。
  サンポスは企業秘密だからと言い詳しくは説明してくれなかったけど材料を見る限り特に変なものはない。それはヌカ・コーラをベースにしたドリンクだった。
  ペットボトル3本分作る。
  「サンポスさんは器用なのね」
  「少し残りがあるし、飲んでみてくれよ」
  私とナタリーは一杯分ずつそのドリンクを貰う。
  うまっ!
  何だこれっ!
  新感覚のヌカ・コーラだっ!
  ゴブがレシピ欲しがるだろうな。
  「それじゃあナタリー、兄さんたちを説得してくるよ」
  「私も行こうか?」
  結末は見ておきたいし。
  「君が? ……そうだな、もしよかったら来てくれ。第三者がいたら兄貴たちも冷静になるだろう」
  「ははは」
  冷静に?
  第三者がいたら?
  第三者ごと爆発物で吹き飛ばそうとしたじゃないですかやだー。



  3兄弟のアジト。
  本日3回目の往復イベント。ビルに入り、サンポスとともに3階に向かう。
  鈍い音が響く。
  罵り合う声も。
  「何だ、これは……?」
  呆けたサンポスの声。
  アジトの中は兄弟喧嘩の真っ最中。
  「鍵を寄越せよクソ兄貴っ! ナタリーは俺の物だっ!」
  「てめぇこそ寄越せっ! ナタリーは俺のことが好きなんだよっ!」
  「うるせぇーっ!」
  「ぐわーっ!」
  ニールの拳がイッチの胸元に決まる。
  イッチは足をけがしているかに踏ん張れないし体格差がある、そのままイッチは壁に叩きつけられた。勝ち誇るニール。
  「どうしたよ、兄貴?」
  「く、くそ」
  這いずってイッチが向かう先。
  それは……。
  「ちくしょう、やりやがったなっ! ぶっ殺してやるっ!」
  バズーカのところ。
  構える。
  マジかよっ!
  こいつに喧嘩でここまでするのかっ!
  ……。
  ……い、いや、シェイル・ブリッジでニールが爆破してたし、そもそもこの流れはあり得るのか。
  イッチも今までの流れで爆発してるのだろう。
  毎度巻き込まれたのは私なんだけれども。
  「てめぇがくれたプレゼントでてめぇを殺すことになるなんてなっ! 食らえ、このイカレ弟めっ!」
  「げへへっ!」

  
ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!
  
  止める間もなく爆発。
  ニールが?
  いいえ。
  イッチの持っていたバズーカが。
  ズタボロのイッチ。
  バズーカに細工してあったのか。
  「……な、何だこりゃ……どうなって……やがる……」
  「馬鹿めっ! 計算通りよっ! 兄貴にやったプレゼント、このために中をちょっと詰まらせておいたのさ。撃てばドカンだ、撃った本人がな、げへへっ! やった、ついてにイッチ兄貴に勝ったぜっ!」
  「……ぐふ……」
  そのままイッチは動かない。
  ニールの策は悪くない。
  イッチは足を悪くしていた、外に出て試し撃ちに出ないことを想定してのことだろう。
  悪くない。
  私を利用しなければ、だが。
  「やったぜっ! これであの金は俺の物だっ! つまりナタリーは俺の物だっ! さてと、兄貴の鍵は頂いておくか」
  「……」
  「なんだ女、その眼は? おいおいサンポスもいたのか、女の陰に隠れてたから分からなかったぜ、臆病者。お前の鍵も寄越せや」
  「まさか、まさかイッチ兄さんを殺すだなんてっ!」
  「威勢がいいな弟よ。ふん。てめぇ、俺に一回でも勝ったことがあるのか? 医者上がりの分際で生意気な」
  「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
  「えっ?」
  対応が一瞬間に合わなかった。
  体格差がある。
  性格的にもあり得ない。
  その思い込みが私を鈍重にした。サンポスが単身でニールに突っ込む。
  だが……。

  ボキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!

  ニールの振るった拳が、サンポスの首を叩き折る。
  倒れるサンポス。
  そんな弟の懐をまさぐり鍵を回収するニール。
  こいつ、狂ってる。
  「ひゃっはっはっはぁーっ! よえぇなぁっ! それでよく粋がれたもんだっ! これで鍵は揃ったっ! ナタリー、待ってろ、すぐに迎えに行くぜぇーっ!」
  「……」
  「ぎひひっ! さっさと失せな、女。分け前はやらんぞっ!」
  私を一瞥し、金庫へ向かうニール。
  絶頂から絶望に落としてやる。
  「行くぜー、開け金庫っ!」

  ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!

  「つっ」
  爆発。爆風が私の体を後ろに押す。
  肉塊が転がっていた。
  金庫は木端微塵。
  数キャップが床に転がっているだけだ。中身の大半は爆発で吹き飛んだらしい。だけどどうして爆発したんだ?
  「手榴弾か」
  そうか。
  イッチの手榴弾はその仕掛けの為だったのか。多分、あくまで盗難防止用だったんだろう。弟殺しの為ではないはずだ。金庫ごと吹き飛ばしたらナタリーと一緒になれる資金が失われるわけだし。
  とはいえ盗難防止のために金庫ごと強盗を吹き飛ばす仕組みもどうかと思うけど。
  全員死んだ。
  イッチ、ニール、サンポス。
  死んでしまった。
  サンポスの持っていたペットボトルを拾う。蓋を開けて口に含む。
  毒ではない。
  私も手伝ったし毒なはずがない。
  おいしい。
  新感覚なヌカ・コーラだ。
  結局サンポスだけは兄弟を信じ、女性の色香にも溺れなかったってわけだ。


  リベットシティに戻って、一日後。
  結局オラクルの鍵の件は空振りだったのでリベットシティを後にすることに決めた。
  宿で出発の手筈をグリン・フィスと話し合う。
  行き先?
  カンタベリー・コモンズ。
  メカニストの支援をアンタゴナイザーに頼まれたし。
  「主」
  「ハーマンが見つかったらカンタベリー・コモンズに来て。私はオラクルと一足先に行ってるから」
  「御意」
  「ところで、あの子はなんなの?」
  「め、姪です」
  「姪ねぇ」
  「何でしたら自分と主の子供にしても……」
  「死ね」
  「ユ、ユーモアです」
  「どーだか」
  結局ハンニバルとは会えず終い。
  何かあったのかな?
  旅程が狂うのは仕方がないとは思う。戦前だって渋滞があった、現在のキャピタルではスパミュやレイダーの徘徊があるんだ、遅刻は仕方ないだろ。とはいえ心配はしてない。ハンニバルは
  リンカーン記念館のリーダーであり、部下がいる。副官のシモーネもいる。部下引率で移動しているわけだから問題ないだろ。
  ハンニバルとはグリン・フィスも面識がある。
  「彼に渡して。別に見返りはいらないけど、もしくれるというなら、相手に恥かかせない程度に柔軟に応対して」
  「御意」
  これでよし。
  「オラクル、行くわよ」
  「うん」
  鍵ってどこの鍵なんだろ。
  宿で準備を整え、アンジェラにお別れの挨拶を言う為にゲイリーズ・ギャレーに向かおうと通路を歩いていると……。
  「あら、あなた」
  「どうも」
  ナタリーに遭遇。
  手に何か荷物を持っている。似合わないな、レザーアーマーと銃火器だ。
  「ああ、これ? 主人の遺品よ」
  「遺品」
  ということは未亡人なんだ。
  「市場に売りに行くの」
  「遺品なのに?」
  「見てると辛くて」
  「そうですか」
  「ところであの3兄弟どこかで見なかった? 大金を持って迎えに来るって言ってたの、イッチさんとニールさん。その、迷惑だってサンポスさんに相談してたんだけど、あれから誰も来ないの」
  「さあ」
  私は質問をはぐらかした。
  彼女に罪はない。
  あくまでイッチとニールの暴走の結果なんだけど……・それを口にすると気にするだろう、だから言わなかった。
  色々と後味が悪い一件だったな。
  ゲイリーズ・ギャレーに向かう最中、1組のカップルが私を見つけて駆け寄ってくる。
  アリーとハントだ。
  よかった。
  ハントは無事に戻ってきたのか。
  「やあ、ミスティさん」
  「あれ?」
  ハントの服装が変わってる。何というか一市民です、という格好だ。護身用程度の銃は帯びてるけど、地元にいるときは武装しない性質なのかな?
  2人は嬉しそうに言った。
  「ミスティさん、先日はどうもありがとうございました。ハントも無事にこうして帰ってきました」
  「俺、ハンター稼業を止めたんです。これからはアリーと2人で、いや、3人で一緒に生きていきます。あっ、アリーに赤ちゃんが出来たんです」
  「この子と、ハントと3人で幸せになります。それではお体にお気を付けて。旅の無事を祈っています」
  そう言ってアリーとハントは頭を深く下げた。
  誰かを救えることもあれば救えないこともある、私は万能なんかじゃない。
  私は天使なんかじゃない。
  でも。
  でも出来ることはしたい、それが私の性格なのだ。
























  「ゴンちゃん、ご飯の時間よ」
  「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!」

  To be continue