私は天使なんかじゃない






無理難題





  問題は山積み。
  総じて問題は押し付けられる。





  メガトンの街にしとしとと雨が降る。
  キャピタル・ウェイストランドは基本的には乾燥した気候だけど、全く雨が降らないわけではない。今は丁度雨月、のようだ。
  雨は初めてだ。
  私は濡れながら走り、建物の扉を開けた。
  「いらっしゃい」
  「どうも」
  入った先はクレーターサイド雑貨店。
  迎えくれたのは傭兵。
  この店の用心棒だ。
  カウンターに誰もいない。店主のモイラの声が2階からするな、彼女のプライベートルーム。別の話声もする。誰だろ。
  クロウに売ってもらったコートから水を払いながら聞く。
  「モイラは?」
  「2階だが立て込んでいるよ。随分と話し込んでいる。お前さんのとこの仲間さ」
  「ふぅん」
  お前さんのとこの仲間、か。
  ボルトの住人ってことかな。誰だろ。
  ここはメガトンで唯一のお店。
  最近は露天商がチラホラといるようにはなったけど店舗を持つ商人はモイラだけだ。
  ……。
  ……いや、彼女来マッドなサイエンティストか?
  んー、商売人ではないかもしれんな。
  「誰が来てるの?」
  アサルトライフルは置いてきたけどそれ以外は完全装備だ。なので重い。装備してなければもっと早くは知れてあまり濡れずに済んだのに。とはいえ武装なしで出歩けるほど安穏とした
  状態ではない。強制イベントを警戒はしてるけど、オラクル絡みもあるからだ。
  「ボルトの人が来てるんでしょ? アマタ?」
  「名前は聞かなかったが、そうだ、原稿用紙とペンを買いに来てたな。店主と少し話してて、話が盛り上がったのかそのまま2階行きさ。アマタって子ではないよ」
  「ああ」
  原稿用紙とペン、ね。
  スージーか。
  絵を描くの好きもんなぁ。
  アマタではないと断言したのはアマタはよく雑貨屋に来ているからだ、売買交渉しに。
  傭兵とも既に面識はある。
  「スージー?」
  「そうそう、思い出した、その子だ。前に何度かアマタって子と来てたな、思い出した。ところで何を買いに来たんだい?」
  「代行で商売してくれるの?」
  「まさか。その分の給金は貰ってないんでね」
  「酷い。期待した」
  「ははは。おーい、ザ・ブレインっ!」
  「ハッ! お呼びですかー」
  Mr.ハンディ型のロボが来る。
  なかなか因縁がある奴だったりする。カルバート教授の部下で、この間までルックアウトでバルトともども敵対していた奴だ。もっとも今のボディは当時の物ではなく、私の執事用の
  ロボのものだ。攻撃力はあってないようなものだ。フォースフィールドもない。教授にもバルトにも特に思い入れもない。そういう意味では無害なのだろう。
  演じてる?
  かもね。
  だけどモイラがリミッター掛けてるから演じてるにしても能力は封じられている。
  さて。
  「赤毛のお嬢ちゃんに商売をしてやってくれ」
  「ハッ! 面倒臭いですけど、いいですよー。何が欲しいんですかー?」
  「子供用の服。男の子の」
  傭兵がその言葉に面食らう。
  「こいつは驚いた。子供がいるのか」
  「子供はいるけど私の子供じゃないわ」
  「……そ、そうか、その……負けるなよ」
  「……」
  何か勘違いしている気がする。
  まあいい。
  「ザ・ブレイン、ある?」
  「ハッ! 在庫はありますよー。サイズは分かりますかー?」
  「えっと」
  サイズと必要な枚数を告げる。
  少々お待ちを、と言ってザ・ブレインは店の奥に消えた。倉庫にでも行ったのだろう。
  子供、私の子供ではない。
  オラクルと名乗った子供だ。歳は7つ、らしい。
  別に私が拾う義理はなかったんだけど一応は預かる形で置くことにした。ハミルトンの隠れ家での後の話、つまりは昨日の話だ。よく分からないが彼の両親は故人らしい。鍵をオラクルに託して
  殺された、ようだ。鍵、何の変哲もない小さな鍵。これが何の鍵か分からない限り、何故殺されなければならなかったのかも分からない。
  誰に狙われているのかもね。
  市長には、ルーカス・シムズにはその旨を話した。知っていることも全て。
  一応保護を任されました。
  レギュレーターとしてなのか、メガトン市長としてなのかは聞かなかったけどさ。聞けば余計な厄介ごと増えそうだったし。
  ポケットから鍵を取り出す。
  銀色の、小さな鍵。
  何の変哲もない。
  盗ってきたわけではない、私の家で待っている彼から預かってきただけだ。
  特に抵抗なく渡してくれた。
  どうもオラクル自身には何の思い入れもない鍵、らしい。つまり何の意味があるか分からないのだ。
  ザ・ブレインが戻ってくる。
  服を持って。
  「幾ら?」
  「ハッ! 120キャップでいいですよー」
  相変わらず高いんだか安いんだか分からない。
  この世界、基本的に物価はその時の気分で変動する気がする。
  支払う。
  彼は無一文だったけど、私はそれなりに資産持ちだ。
  問題ない。
  「そうだ、ザ・ブレイン、これって知ってる?」
  「ハッ! ロボ使い荒いですねー」
  鍵を見せる。
  特に何の特徴もない鍵だ。
  ザ・ブレインがいつの時代から存在しているかは知らないけど、その知識量は半端ない。原子力潜水艦を操れるほどのデータがある、たぶんこの世界で数少ない戦前のデータ持ちだ。
  「分かる?」
  「ハッ! こいつはシュール・スターリング社の鍵ですねー」
  「シュー……」
  知らないな。
  「どこの鍵か分かる?」
  「ハッ! さすがにそんなの分かりませんよー。ただ、形状が若干特殊なので社名が分かったぐらいですよー。まー、人間にはその違いが分からないでしょうねー」
  「そうね」
  実際分からん。
  「ハッ! ただ、まあ、その会社は海軍と取引していた会社ですねー。やぺー、俺ってばマジ人良過ぎー。ヒントあげ過ぎー」
  「海軍?」
  「ハッ! そうですよー。兵士用のロッカーの鍵です、軍艦は全てその会社の物を使ってたんですよー」
  「へぇ」
  だとしたら随分と的が絞れたな。
  リベットシティ、か。
  あれは空母の残骸だ。
  キャピタルであるのはあれだけだ。たぶんオラクルの両親がリベットのロッカーに何かを隠す、それを巡って殺された、と見るべきか。沈んでいる船も対象になるのかもしれないけど、その場合は
  ご両親が隠したのではなく、元々ある物を護っているとも考えられる。ともかくリベットに行ってみるべきか。
  中身はどうでもいい。
  形の上であるにしても保護している以上は私も攻撃対象になりかねない、それは面倒だ。

  ガチャ。

  「いらっしゃい」
  扉が開き、傭兵が客を出迎える。
  長い黒髪の、眼鏡の女性。
  長身だ。
  綺麗ですね。
  「失礼。ここで日用品が揃うと市長に言われたんですが」
  「店主は野暮用ですがね。ザ・ブレイン」
  「ハッ! いらっはゃいませー」
  引っ越してきた人かな?
  初めて見るし。
  私の用は済んだのでお暇するとしよう。女性の脇を会釈して通り過ぎる。
  「待って」
  「はい?」
  「あなた、もしかして赤毛の冒険者さん?」
  「ええ、まあ」
  呼び止められて立ち止まる。
  初対面のはずだ。
  向こうの対応もそうだし。
  「私はメガトン共同体の監査役に任命されたオフロディテ、と申します。あなたがあの有名な赤毛の冒険者なら、今後顔を会せる機会も多くなるでしょうから、ご挨拶を。どうぞよろしく」
  「はあ、これはご丁寧に。ミスティです」
  知的な感じだ。
  それでいて上品。
  傭兵の鼻の下が少し伸びている気がする。
  くっそー。
  私には何の反応も示さないくせに。
  「引っ越してきたんですか?」
  「ええ。元々はキャピタルの出ではないのですけどね、少々計算が出来るのでそれで抜擢されました」
  「ああ、なるほど」
  「引き止めてごめんなさい、ミスティさん。監査役として共同体を周ることが多くなるのでメガトンに留まる時間が必然的に短くはなりますが、いずれまた」
  「ええ、どうも」
  オフロディテと別れて私は外に出た。
  雨は上がっている。
  とはいえ空はどんよりとした雲で覆われていた。
  監査役、ね。
  思えば共同体も大きくなったものだ。
  雑談程度だったけど彼女は共同体に属する街々を巡ってその実態を調査したりするらしい。出身はメガトンでもなければキャピタルでもないけど、計算できるということで監査役に抜擢されたようだ。
  この時代、教養はある程度趣味みたいなものだから計算が出来ない人も少なくない。
  「じっとりしてる」
  雨は初めてだが気持ちが良いものではないなー。
  家の中で雨音聞いているだけなら楽しそうだけど、外に出たのは間違いだったかー。
  このまま帰ろうかと家に向かっていたものの、思い直す。
  母親の真似事をするつもりはない。
  保護する以上は保護するけどそこまで手を焼くのは趣味ではない。楽できる所は楽したいものだ。
  ゴブのお店でご飯買って帰ろう。
  私も食べたいし。
  あそこのハンバーガーは最高だし。もっとも、今のところキャピタルでハンバーガー食べれるのはあそこだけっていうオチもあるけれども、味が最高なのは事実だ。
  足をメガトンの酒場に向ける。
  雨が降っているからだろう、人はまばらだ。
  戦前ならいざ知らず今の時代は傘という習慣はない、そもそも傘がない。核戦争の影響だろうけど、雨期が基本的に存在しない。わずかな期間に降るだけだ。結果として傘という概念は
  定着しなかったようだ、この200年間。なので雨が降っている時は仕事も中断され、屋内に引き籠っているってわけだ。他の街は知らんけどもメガトンはそうらしい。
  だからだろう。
  「よう姉ちゃん、ちょっと顔貸せや」
  こういう世間知らずがいるのは。
  私を阻む形で5人が立ち塞がる。レザーアーマーだったり傭兵の服だったり、まあ、チンピラだ。腰にはそれぞれ単発銃。誇示する形で胸を張った。
  素人だな。
  隙だらけだ、馬鹿め。
  傭兵ってわけでもなさそうだ、ただの雑魚だろ。戦闘経験を感じられない。
  「何か用?」
  「出せよ」
  「何を?」
  「とぼけんなっ! お前が持っているのは知ってるんだよっ!」
  「何のことやら」
  追剥ぎか。
  だったら荒野のど真ん中でやるべきだったな。
  後ろががら空きですよ。

  「そこまでだ」

  チンピラの後頭部に44マグナムが付きつけられる。
  アッシュだ。
  モニカもいる。
  特に面識はないものの、2人はレギュレーター。ブッチとは一緒に冒険したりした仲らしい。私がルックアウトにいた頃の話だからよく知らないけど。
  現在はルーカス・シムズの部下としてメガトンに駐留してる。
  「な、何だ、てめぇっ!」
  「あらごめんなさい、レギュレーターよ」
  「レギュ……っ!」
  悪党に名が知れ渡っている、正義の組織。
  訂正。
  一般的に指す正義なのかは知らないけど、少なくとも悪党にとっては禁忌の組織ではあることは確かだ。
  「よろしく」
  「ああ」
  アッシュとモニカに任せて私は通り過ぎる。
  取り成しを求めるような顔をチンピラたちはしたものの私がそれに応じる義理はないし、その気もない。
  前科次第では雨が上がる前にあの世行きだろう。
  可哀想可哀想。
  歩きながら考える。
  身の程を知らない連中は任せるとして、何だったんだ、あいつら。
  持ってるものを出せ、か。
  「待てよ」
  立ち止まり、先ほどの場所を振り返る。
  保安官助手を手招きでアッシュは呼んでいる、市長としての部下である保安官助手を指示する権限があるらしい。となると保安官助手に引き渡すのか。レギュレーター案件なら射殺するだろうし。
  だとすれば尋問するのだろう。
  なら、いいか。
  私が思ったのはあいつら鍵を狙ってきたのではないかということだ。
  だけど、弱過ぎる。
  勘違いか?
  まあ、私が強くなり過ぎたという感じもするけどさ。あの手合いのレベルでも一般人からしたら強敵だろうし。それともただの使いか?
  うー。
  「アーシュっ!」
  叫ぶ。
  何だ、という感じでこちらを見た。私は手招きする。向こうは何か呟いた、当然聞こえるわけないけど。毒吐いたのかな?
  モニカがこちらに走ってきた。
  「どうしたの?」
  「手間かけてごめん。私の家にいまオラクルって子がいるんですけど」
  「知ってる、聞いてる。それが?」
  「鍵の件も含めてルーカス・シムズには話したんだけど、あいつらその関連かもって。私は食事調達して帰らなきゃだし、丁度レギュレーターもいるし、たまに楽したいかなって」
  「確かに」
  彼女は苦笑した。
  最近の私は働き過ぎなのです、最近でなくとも働き過ぎなのです。
  楽して何が悪いっ!
  がるるーっ!
  「アッシュをあなたの家の警備に回させる。それでいい?」
  「アッシュを?」
  「そう。アッシュを。雨の中に警備なんてしたくないし」
  「あははは」
  「あいつらはどうもキャップで雇われただけみたい。鍵や子供か絡みかは知らないけど、赤毛の冒険者と認識せずに襲う馬鹿はここにはいないわ」
  「そういうもんですか?」
  「そういうもの。背後関係は調べるし、街にいる限りは十二分に保護するから安心して。ただ、これはオフレコだけど……」
  「私が襲われた方が早い、みたいな?」
  「そうそう、それ」
  チンピラは末端にも満たない。
  どんな敵がいるのか、それはある程度の勢力なのかは知らないけど、焦れてチンピラの背後にいる奴に襲わせた方が確かに話が早く進む。
  物騒な話?
  まあ、その方が早い。今までもそんな感じてやって来たし。
  「警備の件よろしく」
  「任せて」





  毎度毎度のゴブの店。
  雨だからか客がいない。客はカウンターに2人。
  「いらっしゃい☆ミャハ」
  「ど、どうも」
  壁に背を預けて立っているレディ・スコルピオンが妙な声色でお出迎え。
  相変わらず顔隠してるし。
  謎な人だ。
  ブッチはいないようだ、軍曹もいないしシルバーもいない、ノヴァ姉さんは私に手を振ったので振りかえす。レディ・スコルピオンが本日は用心棒してて、ブッチは2階なのかな?
  そうかもしれない。
  何故かオカマ化したワリーがいるし、どうしてそうなったのかを話しているのだろう。
  シルバーと軍曹は、何というか大人な関係のようなので、うん、愛を確かめ合ってるんだろうなー。
  さて。
  「よう、ミスティ。久し振りだな」
  「ハイ」
  カウンターの1人が親しげに声を掛けてくる。
  私はその隣に座った。
  クレイジー・ウルフギャングだ。
  カンタベリー・コモンズのキャラバン隊の1人でジャンク品を扱っている。私がこの世界で会った最初の人間だ。
  「丁度良いところに来たな」
  そう言ったのはもう1人の客。
  こっちも知ってる。
  ケリィのおっさんだ。
  「丁度良いって? あっ、ゴブ、ハンバーガーをテイクアウトで2つ」
  「あいよ」
  「1つはスペシャルソースたっぷりでね」
  「マッドフルーツのスライスをサービスしておくよ。組み合わせてしてはかなり絶品さ」
  「ありがとう」
  「いいってことさ」
  ゴブのメニューはどれも最高だ。
  「それでウルフギャング、私に何か頼みがあるの?」
  「ミスティ限定ってわけじゃないんだ、ケリィにも頼んだのさ。まあ、ここに来たらお前さんに会えるとは思ってはいたけどさ。Dr.ホフが消息不明だ」
  「Dr.ホフ?」
  誰だ、それ。
  聞いたことはあるような名前だなー。
  「ごめん、誰?」
  「ああ、面識はないのか。キャラバン隊を差配している1人さ。医薬品を専門にしている」
  「あー」
  聞いたな、確か。
  ジャンク品はクレイジー・ウルフギャング。
  武器弾薬はMr.ハリス。
  防具と衣服はクロウ。
  医療品はDr.ホフ。
  キャラバン隊はそれぞれ専門に扱う品が決まっている。とはいえまだDr.ホフにはあったことがない。話には聞いてたけど。誰だったかな、アレフに行く際に昔Mr.ハリスに聞いたような。
  「行方不明って?」
  「死んでいる可能性もあるが何とも言えない」
  「そりゃまた物騒ね」
  「いつまでたっても帰ってこないんでね、ロエさんが捜索隊を出したんだ。カンタベリー・コモンズの南方に商品運搬用のバラモンと護衛2人の死体があったそうだ。荷物は全て奪われていたんだってさ」
  「でも」
  「そう、Dr.ホフの遺体がない。生きている可能性は捨てきれない。昔はキャラバンは襲われなかったが、最近はそうも言ってられないようでね。物騒なんだ」
  ウルフギャングは立ち上がる。
  「悪いが気にしておいてくれ。Dr.ホフはスーツを着ている、禿げ上がった男だ。少し神経質だが良い奴さ。見掛けたら保護してくれ」
  「分かった」
  「助かるよ。ケリィも頼むぜ。そっちの行方不明者も気にかけておくからさ。じゃあ、そろそろ俺は行くよ。またな」
  「またね」
  自分の分の勘定を済ませてウルフギャングは出て行った。
  行方不明、か。
  ケリィのおっさんはケリィのおっさんで同じように行方不明者の捜索をしているような口振りだったな。
  「で? あなたは誰を探してるの?」
  「デイブだ」
  「……? ここにいるじゃない」
  「デブじゃねぇよ、デイブだっ!」
  「うっわ自分をデブだと認識してるの? ごめんごめん」
  「けっ!」
  軽いジャブ程度なのに短気ですね。
  大人げないねー。
  ほほほー。
  「デイブって大統領だっけ?」
  「そうだ」
  「それが行方不明?」
  「そうだ」
  「一大事じゃん」
  「まあな」
  「まあなって……国大丈夫なの?」
  「前にも言ったがデイブ共和国はただの村さ。デイブの昔馴染みの傭兵やらスカベンジャーが引退後に兵士として住んではいるがね、メガトンよりも規模は小さいよ」
  「ふぅん」
  「GNRは聞いたか? 最近話題の行方不明の話」
  「好色な奴ばっかり行方不明ってやつ?」
  「ああ。あいつもかなりの好色だったからな、関係あるかもしれん」
  「へー」
  「何か掴んだら教えてくれ」
  「何かって、ざっくり過ぎじゃん。何か最近私に無理難題が絶賛襲来中なんですけど」
  「ははは。今までだってそうだろうが」
  「まあ、そうなんだけど」
  デイブ共和国、か。
  キャピタル北部にある場所でメガトン共同体には属していない。私もまだ行ったことないな。
  「ブッチには頼んだの?」
  「ブッチ? 何でよ?」
  「PIPBOYの賠償金5000キャップ分働かせれば?」
  「ああ、それなら支払済みだ。先行きが不透明だしデイブ捜索に雇うと費用がかさむしな、ともかく気にはしておいてくれ。見つけてくれたら謝礼はするよ。……たぶん、デイブが」
  「たぶん、ね」
  気には留めておくか。
  デイブって奴は知らないけどおっさんにはお世話になってるし。
  「グリン・フィスはどうした?」
  「あいつも行方不明」
  「好色だったのか、あいつも。そうは見えなかったが」
  「むっつりかもよ?」
  「ははは。ああ、そういえばミスティ、お前狙われてるぞ」
  「狙われてる?」
  何のことだ?
  まあ、狙われているのは今更ですけれども。レイダーもタロン社も奴隷商人も、敵と呼べる連中は全て私の首を狙っている。
  「誰に?」
  「シドニーだ」
  「シドニー?」
  あのトレジャーハンターの女か。
  何でだ?
  「お前があいつに詐欺したんだとよ。俺はそう聞いたぜ?」
  「詐欺?」
  まるで要領が分からない。
  「ごめん言っている意味がさっぱり分からない」
  「だろうな。そういうタイプじゃないもんな、お前は。こいつは又聞きなんだが、公文書館で偽物をわざと掴まされたんだとさ。であいつはお前を付け回しているらしいぜ」
  「マジか」
  「マジだ」
  「……ルーズベルト学院は、シドニー?」
  「そいつは知らんがあいつは頭に血が上ると後先考えない奴だからなぁ。前も傭兵引き連れて別の可哀想な被害者を病院送りにしたらしいぜ」
  「マジか」
  「マジだ」
  「嫌だなぁ」
  詐欺、ね。
  確かに私は彼女が持って行った独立宣言書が偽物だとは思っていたけれども、彼女は早々に引き上げるし、別に私がそれを言ってあげる義理もなかったし。
  そうか、あの後偽物だと気付いて引き返したのか。
  でもその時既にバトン・グイネットは大破してた、つまり彼女は私が本物を奪って逃げた、シドニーをペテンに掛けたと思ってアタックしてきたのだろう。
  迷惑な奴だ。
  「シドニーはどこにいるの?」
  「さあな。リベット博物館館長のワシントンって爺さんに罵られて出て行ったらしい。その後は行方不明のようだ」
  「へぇ」
  「何もしてないんだよな?」
  「向こうの早合点」
  「だろうな」
  前金でワシントンから貰ってたようなこと言ってたな。
  偽物持って行ったから罵られて追い出されたってことか。
  彼女に悪意はなかったし私にもなかった、これはある意味で誤解が生んだことなんだけど……逆恨みされてるのは心外だ、私にされても困るんだが。
  「シドニーって今はどこにいるの?」
  「話を付けたいのか?」
  「うん」
  「お前シーリーンって知って……」
  「シーが何?」
  「その口振りだと知っているのか、じゃあ話は早い。あいつは今リベットにいる。シドニーとはトレジャーハンター仲間でそれなりに親交があるようだ、仲介してもらえよ」
  「ありがとう、そうする」
  「そうしろ」
  何だかんだで面倒見が良いよな、ケリィ。
  それにリベットには鍵の1件で行かなきゃとは思ってたから丁度良い。
  「ミスティ、出来たよ」
  「ありがとう、ゴブ」
  ハンバーガー完成のご様子。
  代金を払い、紙に包まれたハンバーガー2つを受け取る。
  ノヴァ姉さんが口を開く。
  「ねぇ、紙袋に入れてあげなさいよ」
  「こいつはうっかりしてた。そうしよう、悪いな、ミスティ」
  「ううん、わざわざありがとう」
  紙袋に入れてもらう。
  持って帰ってオラクルにもあげなきゃ。
  店を出ようとするとケリィが言った。
  「健闘を祈るぜ、ミスティ。それとデイブの行方も気にしてくれ。頼んだぜ」
  「デブならそこに……」
  「しつけーんだよっ!」


  リベットシティに。