私は天使なんかじゃない






謎の少年





  何故狙われるのか。
  何故襲われるのか。
  何故出会ったのか。





  「到着か、優等生?」
  「ここみたいね」
  「本当に?」
  「ハミルトンの隠れ家、ね」
  「墓場だろ?」
  「そうとも言う」
  アレフ居住地区付近にある洞穴、そこはフェンスで遮られていた。
  通称ハミルトンの隠れ家。
  随分前にイアン・ウエストを探していた時に知った場所だ。とはいえ私はここに来たのは初めて。あの時ここを担当したのグリン・フィスだった。
  ……。
  ……時間って早いな、あの時はクリスも仲間だった。
  一瞬気持ちが落ち込む。
  過ぎた話だ。
  切り替えよう。
  今回の旅のパーティーは私、トンネル・スネーク3人衆だ。
  私はいつもの完全武装、防刃コートと帽子が最近のお気に入り。ブッチは革ジャンで9oピストル二丁、そして髪型はリーゼント。永遠の不良少年ですな。軍曹は白いコンバットアーマー、どこで
  手に入れたのかは知らないけどライトマシンガンを持ってる。軽機関砲はキャピタルではまず見掛けない。レディ・スコルピオンはダーツガン、中国製ピストル、そしてナップサック。
  相も変わらず彼女は顔まで覆ってる。
  暑いでしょ?
  暑いよね?
  謎のメンツだよなぁ、トンネル・スネークも。
  アマタたちは着いて来たがってたけどスプリングベールがひよっこの状態なのでメガトンで別れた。今回は純粋に冒険の要素が高い。指導者であるアマタが遊んでる場合ではないのだ。
  まあ、この場合は来なくてよかったと思いますけどね。
  墓場だ。
  確かにここは墓場だ。
  「まあ、あれだ、ボス。相打ちで終わったわけだからよしとしようぜ。なあ、レディ・スコルピオン」
  「相打ち、だといいわね」
  「後ろ向きな発言はやめようぜ」
  「楽観視はしないことにしてるの」
  スーパーミュータントの死体がごろごろと洞穴の前に転がっている。
  体は赤い斑。
  レッドアーミーだ。
  そして相打つ形で死んでいるのは青い軍服の面々。
  こいつらはブルーベリーアーミー。
  赤と青が殺し合ったようだ。
  ふぅん。
  どちらもこんなところまで押し出して来ているのか、これは気を付けなければならないな。アレフ居住地区はメレスティトレインヤードと攻守同盟結んでるし高架の上だから攻められても太刀打ち
  できるけどスプリングベールはちとヤバいな。ブルーベリーアーミーはともかくとして、レッドアーミーはヤバい。ここから少し足を延ばせば、すぐだ。
  帰ったらメガトンに掛け合おう。
  いや、まて。
  いっそブルーベリーアーミーを雇うか?
  でもこいつらも大概イミフな組織だからなぁ。目的がよく分からない。本当にただの警備会社ならいいけど、んー。
  「優等生、どうする? 出直すか?」
  「生き残りは中に入ったのかな」
  「外にはいないから相打ちじゃないなら、中にいるだろうぜ。この青い軍服どもはバザーにもいたけどよ、ヤバい奴らなのか? バザーの警備員だとばかり思ってたぜ」
  あー、そういえばブッチたちもバザーにいたなぁ。
  「ブルーベリーアーミーよ」
  「何じゃそりゃ?」
  「警備会社」
  「警備会社にしちゃあ重武装だな」
  「元タロン社残党だし」
  「ああ、ジェファーソン決戦でいた奴らか。俺らで駐屯地潰したなぁ。武勇伝聞きたくねぇか?」
  「またね」
  「ちっ」
  ブルーベリーアーミーなら中にいても敵対はしないだろう。たぶんね。
  レッドアーミーなら確実に敵対する。
  後述の連中はともかくでかい、初見はそのデカさに圧倒されるけど慣れればただの的でしかない。洞穴内ならそのデカさも仇となることだろう。洞穴の広さは知らないけどさ。
  「私は進むつもり。トンネル・スネークは?」
  「聞くまでもねーぜ」
  「決まりね」
  「行こうぜ」
  私たちはハミルトンの隠れ家に入る。
  洞穴。
  洞穴以外の何物でもないけど、ふぅん、天然の洞穴を掘削して拡張したようだ。歩きやすいように地均しもされている。もちろん200年放置されているので、時間の経過分は荒れているけど、ただ
  洞穴ってわけではない。壁にはランプが幾つか付いていて、死んでいるのもあれば点っているのもある。ブーンとどこかで音がする、発電機が活きているようだ。
  いや。
  こう言い換えることも出来るな、誰かが発電機を稼働させているのだ。
  レッドアーミーか?
  それとも……。
  「ちょっと待って」
  私は止まる。
  仲間たちも止まった。
  「何なのよ」
  「しっ」
  何か音がする。
  カツンカツンと音が木霊する。奥からだ。
  「ボス、どうするよ?」
  「何かいるな」
  「だな。で? どうするよ?」
  「決まってんだろベンジー、ぶっ倒すまでだ」
  「あら勇ましいブッチの大嫌いなラッド・ローチでも?」
  「うっ」
  突っ込みに黙る。
  好きな奴はいないにしてもブッチはローチは大の苦手だ。いや私も別に好きじゃないけども。
  「ベンジー、レディ・スコルピオン、お前ら……前衛だ」
  「……ボス、餓鬼じゃないんだからよぉ」
  「少し幻滅したわ。少し、可愛いと思うけど」
  えっ、カップル成立?
  レディ・スコルピオンの感性がいまいちよく分からない。
  「私が前に立つわ」
  「よしさすがだ優等生っ! 後から行くから先に行けっ!」
  「ヘタレ」
  「ヘタレ」
  「ヘタレ」
  あっ、皆で言ったらブッチ泣いた。
  だらしないなぁ。
  無視して奥に進む、ブッチはしばらく呆然としてから追い掛けてきた。不意打ちを警戒してはいるものの特に問題はないようだ。私は途中からアサルトライフルを装備。特に意味はない。
  何もないな、何も。
  ただ奥に行くにつれて血の匂いが濃くなってきたような錯覚だ。
  「血が匂うぞ、ボス」
  「軍曹さんの鼻は猟犬並ね、便利だ。確かに血の匂い」
  「褒めてるのか、それ?」
  「さあ」
  そこで私たちは止まった。
  死体が転がっている。
  障害物がある。
  見たことない敵だった。
  白いラッド・スコルピオンっ!
  何だこいつっ!
  「新種発見」
  少し嬉しげにつぶやくレディ・スコルピオン。
  ふぅん。
  私がウェイストランド生活短いから知らないってわけではなく珍しいタイプの敵のようだ。考えてみたらこのメンツ、彼女以外はほとんど生態系についてど素人だなー。
  軍曹さんが宇宙船にいた、というのはいささか怪しいですが。
  ……。
  ……あー、でもボルトから来たって当たり前のように私は言うけど、ボルトを知らない人からしたら宇宙船から来たというのと同義のようなものなのかもしれない。
  さて、どうすっかな。
  私たちは敵に銃を向ける。
  小うるさげにサソリは腕を振るい、何か音を立てる。威嚇しているようだ。
  避けるのは容易い、回れ右するだけだ。
  だけど奥に行くなら戦う必要がある。
  少なくともここに転がっているブルーベリーアーミーたちは退かずに全滅する道を選んだらしい。
  私たちはどうする?
  「撃て撃て撃てっ!」
  集中砲火。
  白いサソリは平然とその場にいる。
  嘘だろっ!
  まるで堪えてないっ!
  ようやくロックオンしたのか猛然と動き出した。狙いは……。
  「ブッチ危ないっ!」
  「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
  「うるさいよ、あんたたち」

  ズザザザザザザ。

  サソリはそのまま滑るように、実際滑っているんだろうけど、ブッチに届く前にベターと伸びている。
  な、何だー?
  「ふん」
  トントンとダーツガンで肩を叩くレディ・スコルピオン。
  それからおもむろに何発もダーツを叩き込む。
  ビクンビクンと痙攣してからサソリは動かなくなった。
  倒したのか?
  「何したの?」
  「簡単よ、ラッド・スコルピオンの毒を縫ったダーツをお見舞いしてやった。以上」
  「……」
  「毒を分泌してるからって、毒に耐性があるわけじゃない。以上」
  「……あー」
  そこまで言われて合点がいく。
  なるほど。
  そういうことか。
  白いサソリはダーツに塗られたサソリの毒で麻痺し、何発も立て続けにダーツを撃たれ毒を注入されることで心臓が耐え切れなくなったのだろう。
  嬉々としてレディ・スコルピオンは言った。
  「珍しい毒が採取できるかもしれない。解体しているから、奥にどうぞ。あたしは今から忙しい」
  白いサソリは弱くなかった。
  ミスティックマグナム用の相手だった、ブルーベリーアーミーが負けたのも分かる。集中砲火でも動き回れる耐久力、恐ろしいものがある。
  突然変異なのだろうか?
  それとも……?
  「ベンジーはここで待機してくれ」
  「ボス、俺もか?」
  「ああ」
  「奥に行くのに俺はいらないか?」
  「状況がよく分からん。レディ・スコルピオンは忙しそうで注意力散漫状態だ。スナイプされて退路を断たれたくないんでな。敵がまだいればだが。任せるぜ」
  「了解だ、ボス」
  おやおや。
  ブッチ君も随分と思慮深くなったものだ。
  ルックアウト行っている間にレベルアップしたようだ。
  ここで2人と分かれて私たちは奥に進む。
  「あれ?」
  扉があった。
  重々しい鉄の扉。これがパスカード用の扉なのだろう。それはいい。パスカードは忘れずに持って来ている。
  だけど、扉が開いている?
  パス必要なかったな。
  「ブッチ、行こう」
  「ああ」
  進む。
  何らかの罠かなとは思ったけど、人生はリアルタイムで進んでいるのだ、別に私だけが登場人物ってわけじゃあない。
  スリードックがパスカードを私に委ねる前に、誰かが開けて入ったとも考えられる。
  それはおかしくない。
  おかしくないんだけど……。
  「うわぁ」
  「面倒な展開ってやつじゃないか?」
  「ねー」
  「死体、ね」
  そう。
  おそらく居住していた場所なのだろう、そこには死体死体死体、死体の山っ!
  死体は見慣れてる。
  キャピタルの日常風景だ。
  いやいや、嫌な日常風景だ。
  問題なのはその死体がジューシーというわけではなくほとんどが乾いているということだ。少なくとも昨日今日ってわけではなさそうだ。スリードックはパスカードを入手した日を明確にし
  てないし、立ち入ったわけではないのだろうけど、グリン・フィスが来た時には扉が閉じていた。となるとその時この死体は、その時点では死体だった。いやギリギリ生きてたのか?
  厄介なのはそれだけではない。
  欠損だ。
  「おい、優等生、これって食ったのか?」
  「……うっぷ」
  考えたくないものだ。
  扉は外から開けたものではなく、中から開けられたものなのかもしれない。そして食ったり食われたりな状況だったなら、人食いが外に出たということになる。
  嫌だなぁ。
  「ブッチ、他を探そう。警戒はして」
  「ああ」
  まだ中にいるかもしれない。
  警戒して私たちは手分けしてシェルター内を探す。

  『……聞いて……ザザ・・・・・・感謝……俺はスリー……ザー』

  ラジオがある部屋があった。
  この一画は扉が幾つもあり、その扉は小さな部屋に通じている。個人用の部屋なのだろう。
  ノイズの走るラジオからはスリードックの声が聞こえている。
  「ミスティっ!」
  「ん?」
  「こっちだっ!」
  声を頼りに向かう。
  行き付いた先は大きな部屋だった。大型の木箱がたくさんある。人が入れそうなサイズだ。
  「見ろよ」
  「見た」
  倉庫ってところかな。
  スリードック曰く、有志で作られた場所らしいけど、洞穴を利用しているとはいえこの規模は凄い。ボルトとタメを張れるぐらいの規模だ。
  木箱の1つを開けて見る。
  缶詰の山だ。
  へぇ。
  これはちょっとした宝探しみたいなものだ。ワクワクしてくる。物珍しいものがあるわけではないのかもだけど、生活用の物資は大量にある。まだこんなにも手付かずな場所があるなんてね。
  そこでふと疑問が浮かぶ。
  物資はある。
  大量に。
  どうして人食いに走ったのだろう?
  訳が分からない。
  分かる必要はないんだろうけどさ。むしろ理解できる方が問題だ。
  私とブッチは木箱を開けていく。
  スプリングベールに運ぶのは結構大事だ、アレフ居住地が近いからエヴァン・キング市長に人手を借りようかな。別の集落にも分けてもいい量だ、分けようかな。ここの住民にはもう必要ないし。
  「こいつは食うのに困らないな、アマタ喜ぶぜ」
  「うん」
  「おい優等生、この木箱の中はすげぇぜ、ポータブル融合炉だぜっ!」
  「へぇ、良いのあるじゃん」
  1つあれば緊急時の電力源になる、もちろんスプリングベールの。
  私も木箱を漁る。
  武器弾薬も大量にある。
  缶詰も。
  もちろん200年前のものだけど……・うん、この時代の人間には賞味期限っていう習慣ないから大丈夫、さすがは科学全盛期の食べ物よねっ!
  ……。
  ……無理があるか?(汗)
  あるよなぁ。
  でも、今のところ私たち誰も死んでないし、まあ、大丈夫だろ。
  たぶん。
  思っていたよりも収穫があるな。
  ここまで凄いとは思ってなかった。スリードックに謝罪と感謝。
  「ブッチ、そっちの状況は?」
  「まだそっちは見てないけどよ、思ってたよりはたくさんあるようだ、俺様の想像してたのよりだいぶお釣りが出るぜ」
  「そうね」
  「だが、どーすんだ? どうやって持って帰る?」
  「アレフ居住地区に頼む。同じメガトン共同体だし大丈夫かな。市長と面識あるの私だけだし、私が急いで行ってくるから、ブッチたちはこの場所を護ってて。スカベンジャーとかに横取りされたくないし」
  「1人で大丈夫か? レッドアーミーがいるかもだぜ?」
  「大丈夫よ」
  「愚問だったぜ。じゃあ任せるぜ。俺様の報酬を勝手に取っておいていいよな?」
  「取り過ぎないでよ?」
  「わーってるよ。うおっ!」

  「ど、どーもー」

  「どーもじゃねぇよ、誰だお前っ!」
  ん?
  ふと見るとブッチが木箱と喋ってる、いや木箱の声が私も聞こえたぞ、末期か。
  ……。
  ……木箱から誰か出て来たぞ。
  知ってる顔だ。
  青い軍服の女。あと知らない男2人。どいつもこいつもブルーベリーアーミー。
  「これはこれは肉欲さん」
  「や、やあ、ミスティ」
  肉欲のサンディ大尉。
  ブルーベリーアーミーの士官だ。
  「何してんの?」
  「箱入り娘☆、なーんて……」
  「ブッチ、木箱を鋲で止めて崖から落として爆破して」
  「待って待ってっ!」
  「……優等生、お前俺を何だと思ってんだよ……」
  「で? そこで何してるの?」
  「サ、サソリだよ」
  「ああ」
  あの白い蠍に蹴散らされたんだろう。
  生き残りは部下なのか同僚かは知らないけど、それで木箱の中に隠れていたと。増援でも来るのかもなー。
  「この惨劇はあなたたちのせいじゃないでしょうね?」
  「まさか」
  「そうね」
  「おや、意外に物分かりが良いね」
  「死体は干乾びてたりもするし、さっき来て干物作れったって無理でしょ」
  「そういうとこ、好きだよ」
  流す。
  何だろう、私の知り合いって女もまともな奴が基本いないような。
  うーん。
  今のところノヴァ姉さんぐらいか?
  「パスカードはあったの?」
  「パス?」
  知らないらしい。
  「どうやって開けたの?」
  「最初から開いてたよ」
  「最初から?」
  やはり中からか?
  人食いが外に這い出しているのか?
  「ああ。それで、ここに逃げ込んだんだ。その、よかったら一緒にここから出ていい?」
  「サソリは潰したから勝手に出ればいいわ」
  「それじゃ寂しい」
  「お好きに。それで、どうしてここに?」
  「ブルーベリー大佐は贅沢大好きなんだ。絶えずお宝を探してる。まあ、うちらの副業みたいなものだよ。子飼いのスカベンジャーが何人もいる。そいつらの1人が、ここハミルトンの隠れ家の
  ことを教えてくれたのさ。アレフ居住地区って場所への警備の勧誘も兼ねて出張ってきた。だけど、サソリのことは聞いてなかったよ」
  「レッドアーミーは?」
  「さあ」
  知りようがない、か。
  嘘を言っているようには見えない、見えないだけで嘘を言っているのかもだけどさ。
  「ブッチ、ここは任せるわ」
  「こいつらは?」
  「害はないでしょ、たぶんね」
  「分かったぜ」
  ここをブッチに任せて私は洞穴に戻る。
  収穫はあった。

  「ちょっと軍曹さん、ちゃんと押さえといてっ!」
  「こんなキモイのに触りたくねぇんだよっ!」

  白いサソリの解体現場に出くわす。
  レディ・スコルピオンにも収穫はあったらしい。軍曹は、まあ、微妙。
  「よう、どこ行くんだ?」
  「お宝ザクザクだったからアレフ居住地区に人手借りてくる」
  「護衛しようか?」
  「問題ないわ」
  「気を付けてな」
  「ちょっと軍曹さん、押さえといてってばっ! ……ふふふ、この毒は未知だわ、誰で実験……ううん、なにで実験しようかな」
  ……。
  ……今、誰でって言わなかった?
  怖い怖い。
  私は2人と分かれて歩き、出入り口付近まで戻る。外までもう少しだ。

  「ゲームシュウリョウ、スグニシネっ!」

  レッドアーミーっ!
  洞穴を出掛かった際に遭遇。アサルトライフルをこちらに向けている。
  馬鹿め。

  ドン。

  喋っている間に撃てよ。
  ドサッと肉塊が転がった。他愛もない。
  次はどこだ?
  「……」
  終わり、か?
  どうやらブルーベリーアーミーの倒し損なった奴だったようだ。
  何だってこんなところにレッドアーミーがいるのだろう。連中は北部でエンクレイブと抗争しているはずだ、拠点も北部にある、南下しているだけの戦力があるのか?
  それともこの近辺に何か望みのモノが?
  ここか?
  別にそれほど大したお宝はなかったな。
  あー、正確にはそこまで珍しいものではなかった、というべきか。スプリングベールにとって必要ではあるけど、ブルーベリーアーミーにしてもレッドアーミーにしてもここまで大挙する意味が分からない。
  意味なんてないのかもね。
  まあいいさ。

  ガサ。

  「誰?」
  「撃たないでっ!」
  子供の声。
  男の子?
  「どこにいるの?」
  幾分か優しい声で問う。
  スパミュか何かの策かもしれないとな考える私はとってもウェイストランド人。
  ゆっくりと少年が現れた。
  ぼろぼろの衣服、ぼさぼさの髪型。一概には何とも言えないけど浮浪児という言葉が思い浮かんだ。
  「あなた、名前は?」
  「オラクル」
  「そう。私はミスティ。それで、ここで何を?」
  「鍵を持って逃げろって」
  「鍵? 誰がそう言ったの?」
  「パパとママ。その鍵は絶対に誰にも渡しちゃいけないよって」
  「パパとママは?」
  「……」
  やれやれ。
  これはまずい拾い物か?