私は天使なんかじゃない
再会
親友との再会。
誘拐事件解決。
誘拐犯2人は地獄に落ちたし、奴隷商人の生き残りたちもあらかた地獄に落とした。
クローバーと黒人女の行方は不明。
リンカの赤い宝石のネックレスもクローバーとともに行方不明。
ただ、誘拐されていたリンカの両親はネックレスが元で誘拐されたことを知り、ネックレスの奪還は求めてこなかった。娘が無事ならそれでいい、らしい。良い実ご両親ですね。
私はリンカを両親に返し、ギルダーシェイドのポールソンの家で一泊。
「マディ・ラダーって店にナタリーって美人がいるらしい。奢ってやるから行こうぜ、今回の礼だ」
「ヒャッホーっ!」
翌日、ポールソンはスティッキーとともにリベットシティにスティッキーはヘリで向かって行った。
意外に女好きなのか?
んー、これが普通?
まあいいんですけど。
スティッキーはGNRの仕事は別にいいのだろうか?
……。
……そういえば今放送局ってどこにあるんだろ。考えてみたら知らないな。
前の場所はエンクレイブに空爆されて跡形もないらしいし。
要塞かな?
まあ、いいか。
全てを終えて私は仲間と別れ、再びバザーへと向かった。
「あいつ、どこだー」
バザー。
西海岸の商人たちが珍しい品物や武器等を持ち込んだ、ある種のお祭り騒ぎの場所。地元の商人たちも買い入れたり売ったりするためにここに集まってきているからかなりの人口密度だ。
少なくともキャピタルの辺境にしてはね。
だけど私は商品に用はない。
目移りはしたりするし、あれはどんな味なんだろー、とかは感じたりするけどここに目的などない。
アマタ達はここから去ってしまった。
現在行方不明。
じゃあ何故ここにいる?
それは……。
「ねぇ」
「ひぃっ!」
前回駐車していたスペースにいる青い服の兵士に声を掛ける。
BBアーミーの兵士だ。
タロン社残党で、現在は警備の押し売りをアンデールやビッグタウンで行っている連中。売込みがかなり強引らしく悪質と言えば悪質だろうけどレギュレーターが動くほどではない。
ちんけな連中ってことだ。
少なくとも今のところは。
ただ、聞けばタロン社のかつての本拠地であるバニスター砦を拠点にし、揃いの青い軍服、武装などと無視できないほどの軍事力と資金力を持っている。
変な方向に動き出せば厄介極まりないのは確かだ。
「私の連れ知らない? 戻って来てない?」
「知りません知りませんごめんなさいーっ!」
「えっと」
「ひぃーっ!」
別に銃を突きつけているわけではありません。
昨日ここに来た時こいつらに車を吹き飛ばされた。そして何故か逆切れしたこいつらが私に銃を向けたからお仕置きしてやったまで。
私が悪いのか?
「ふぅ」
パタパタと手を振って私はその場を後にする。
くそ。
グリン・フィスめ、どこに行ったんだ?
もっともここではぐれようとも私はメガトンに住んでるし、あいつもメガトンで暮らしてる。個々にメガトンに戻ることになっても特に問題はない。そう、戻るんならね。
問題は私はアマタを探しにここまで来たってことだ。
まあ、実質妙なお使いばっかりしててなかなか本題に入れてないんですけど、私はアマタを探したい。
ポールソンとはギルダーシェイドで別れたしスティッキーも帰った、現在私は1人。
心細いというか何というか。
それにグリン・フィスは強いから、いるといないとでは戦力的に大きく響く。私は能力使えるとはいえ、彼がいなければ戦力半減だ。
どうしたもんか。
私はバザーの中を歩きながら考える。
考えてみたらグリン・フィスって妙な老人に付いて行ったのよね、ダンウィッチビルの近く通り過ぎる時も老人が何とか。
そして私も老人を見た。
リンカの側にいた老人を。
ただポールソンはその老人を見ていないし、彼と話している間に消えてしまった。
同一の老人かは知らないけど妙な符号だ。
「ダンウィッチかぁ」
かつてそこのカルト教団の親玉だったジェイミはルックアウトで私が倒した。正確にはルズカがおいしくいただいたってわけなんだけど、あいつはやたらとタフだった。いや、あれはタフとかそういう
レベルじゃない。心臓も脳の一部も吹き飛んでたのになんだって動いたんだろ。そして昨日見たダンウィッチの異様な雰囲気。何というか建物から闇が染み出しているというか。
……。
……嫌だ。行きたくないっ!
たぶん手掛かりなんだろうけどあんなとこ絶対行きたくないぞ、私にだって苦手なジャンルはある。
さよならグリン・フィス、私はあなたを忘れない(泣)
「どうしたもんかなー」
真面目な話、ここはグリン・フィスは別行動にした方がいいのかもしれない。
彼には彼の目的とかもあるんだろうし、この別行動はその一環な気もする。そしてそれだけではなく、アマタたちの安否も気になる。こんな辺境にアマタたちは出張って来ている。メガトンを中心に
キャピタルは復興しつつあるけど、メガトンから離れれば離れるほど昔のキャピタルの気風が色濃く生きている。
つまりレイダーやらアナーキストやら狂ったロボットとかね。
レベル1がうろついていい場所じゃない。
ボルトの温室育ちが生きていられる場所ではないのだ。
早く合流しなきゃ。
早く……。
「うっわ何だこれっ! 湿布の味すんぞっ!」
「すげぇなボス。湿布食ったことあるのかよ?」
「サンセットサルバリラよ、ボス。あたしは西海岸でよく飲んでたからヌカ・コーラよりも飲みやすい」
「ブッチ?」
トンネルスネークの愉快な仲間たちがいる。
こちらに気付いてはいないようだ。
まあ、少し離れてるし、この人混みだし。
ブッチと軍曹はいつも通りの恰好だけどレディ・スコルピオン……よね、彼女?
ボロボロのローブを着てフードを被り、顔の半分を布で巻いて目元だけ出している。お手製ダーツガンとナップを背負ってるから、たぶんレディ・スコルピオンなんだろうけど何だあの恰好。暑くないのかねー。
ブッチの腕にはPIPBOY。
直ったのかな?
声を掛けようか迷っていると……。
「あー、昨日のお客さん」
「ん?」
商人に声を掛けられる。
誰だっけ?
昨日……あー、私がアマタたちが来たかどうか聞いた人だ。そしたらもう去って行ったと教えてくれた人だ。
「どうも」
「昨日のお客さんたち、また来たよ」
「また……?」
それはつまりアマタたちが来たってことか?
くそ。
また入れ違いか。
「浄水チップを探しにまた来たんですか?」
「いや、そうじゃないね、デスクローって知ってるかい?」
「ええ、まあ」
戦ったことはないけど。
レイダーを無双してた、化け物だ。エンクレイブの生物兵器で、エンクレイブがスーパーミュータントを掃討する際に地上に投下したらしい。お蔭で今も徘徊してる。
それで、それが何だ?
ふと思い出す。
この辺りに徘徊しているんだった。
10000キャップだっけ?
退治して欲しいとか言われたな、確か。
「商売は大丈夫なの?」
「どういうことだい?」
「デスクロー」
「ああ。この近辺にいるにはいるけど、はぐれだ。1匹だけだし何故かバザーには近付かない。特に問題はないよ。役に立つかは知らないが……」
ちらりと談笑しながら歩いている青軍服を見る。
BBアーミー。
一応このバザーを警備している連中だ。
本当に連中の立ち位置がまったく分からないから本気で警備しているのか、それとも何か企んでいるのか不明。とはいえそれなりに数はいるし銃の数もある、万が一には役に立つのだろう。
……。
……あれ?
何かおかしくね?
違和感がある。
「特に問題もないのにデスクロー討伐をするわけ?」
「気持ち悪いと言えば気持ち悪いからね。報酬払って討伐するっていうのはあながちおかしくはないさ」
「有志で出し合って?」
「いや。出してるのは別の商人だ」
「ふーん」
そこにデスクローがいると商売に影響があるのだろう。
どこかは知らんけど。
たぶん、そこの近辺にあるであろうジャンクの山とかを売ってるのかな、まあ、適当なんですけどねー。
「その商人って何を売ってるの?」
「とくにジャンルはないよ。色々だ」
まあ、どうでもいい話だ。
「そういえばアマタがどうとかって」
「おお、そうだった、その依頼を受けに来たんだよ」
「デスクローの?」
「ああ」
マジか。
あいつ何考えてんだ?
まさか知らない……いや、知らないんだろうけど……何だってよりにもよってキャピタル・ウェイスランド最強種を討伐しようとするんだよ……。
「情報ありがとう」
お礼を言ってこの間私に依頼を持ち込んで来た商人の所に足を運ぶ。
「……?」
いない。
確かにテントはある、だけど人がいない。
休憩か?
さすがにアマタ1人じゃないんだろうけど……まあ、普通に考えて監督官1人で外に出るなんて考えられないからセキュリティはいるんだろうけど……ボルトの軟弱兵でデスクローに勝てるとは思えない。
別にボルトをディスってるつもりはない。
ありのままの結論です。
さて、どうする。
商人が戻ってくるまで待つっていうのもありだがデスクローの所に直行する方が当然早い。ここに来る際とリンカ絡みで空路で往復したけど、少なくとも東方面にデスクローの痕跡はなかった。最初の
来るまでの際は見過ごしてたかもしれないけど、リンカ絡みでは空路だったし、リンカ探すのに目を皿にしてた。見逃すとは思えない。
じゃあ北か?
北もないだろ。
ギルダーシェイドではそんな話はなかった。
だとすると南か、西か。
「あー」
さっきの商人のおじさんに聞けばいいのか。
普通に認知されてるみたいだし。
ちょっとテンパってるのかな。
深呼吸。
武装は完全装備。
ミスティックマグナム2丁、グレネードランチャー付きアサルトライフル。コートのポッケには牽制用に32口径ピストル。弾丸はふんだんに。
ライリーレンジャー製の強化型コンバットアーマー、防刃仕様のコートを上に羽織り、クールに帽子。
さて。
「行くか」
商人のおじさんに聞くと南、らしい。
特定のテリトリーがあるらしくそこからは出てこないので縄張りを作って居座るのは煩わしくはあるものの、縄張り侵さない限り大丈夫だから放置している、らしい。
みんな知ってた。
まあ、そうよね。
危険エリアなわけだから情報共有するわな。
荒野を進む。
早足で。
本当は車でもあればいいんだけどBBアーミーが吹き飛ばしやがったからなぁ。
「デスクロー、か」
戦ったことはないけど前にレイダー無双しているのを見たことがある。
ボルトの兵隊に勝てるとは思えない。
……。
……いや、正確には勝てるのだ。
問題は死体の山が出来上がるってこと。
レイダーとボルト兵に能力差はないのかもしれないけど、少なくともレイダーは銃火器が豊富だし、数もいる。だからあの時勝てた。逆にボルト側はどうなる?
負けるな。
人も武器も数が足りない。
まったくっ!
何だってデスクローに挑むんだっ!
「お金、かぁ」
10000キャップ欲しかった?
何故に?
もしかしたら浄水チップの当てが見つかったのかもしれない。
だけど資金不足で仕事を請け負った?
それはあるかも。
それにしたって何だってデスクロー……以下略。
「ん?」
銃声が聞こえたような。
この辺りは岩場。
岩がごろごろしてて見通しが悪い。
耳を澄ます。
「……」
聞こえた。
確かに銃声だ。
近いな。
ミスティックマグナムを2丁引き抜く。
アサルトライフルは連射性に長けているけどデスクロー相手なら単発とはいえ威力最強のミスティックマグナムの方がよさそうだ。
私は走る。
音のした方に。
次第に銃声が近くなる。
いたっ!
「オフィサー・ゴメス、包囲してっ! 包囲よ、包囲っ!」
「了解っ! スージー、無理するなっ!」
「う、うん」
たった3人?
ボルト101のジャンプスーツの上にセキュリティーアーマーを着た3人。アマタ、オフィサー・マック、スージー。それぞれ10oピストルを所持、スージーはそれを及び腰で撃っている。アマタと
オフィサー・マックは以前侵入してきたレイダーの置き土産の物であろうアサルトライフルで攻撃している。
死体は、見当たらない。
少なくともここに来たのは3人、ということだ。
ボルトから出たのが何人編成だったのかは知らないけど。
デスクローを包囲し、突っ込んできたら引いて他の2人が攻撃を繰り返している。ふぅん。とりあえず問題はなさそうだ。なかなかやる。まあ、武器の威力が低すぎて殺せそうにはないけど。
それに当たっているようであんまり当たってない。
ダメ出しするほどえらくはないけど長引けばアマタたちは弾丸がなくなってヤバそうだ。
デスクローの長い爪は鋭い。
人間なんてひとたまりもないだろう。
「……?」
あれ?
よく見たらデスクローの頭に何か付いている。
黒いヘッドギア?
ハイカラね。
そしてデスクローの足が死んでいる、ようだ。よたよたとしか動けていない、かなりの重傷に見える。ああ、最初に足を殺したのか、機動性さえなければ対処は出来るってわけだ。なかなかいい作戦だ。
観察ももういいだろう、一気に飛び出して片付けるっ!
ばぁんっ!
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!」
眉間を撃ち抜かれひっくり返るデスクロー。
「えっと」
私じゃない。
私が飛び出した直後に倒された。
何か私ってば間抜け?
「ミスティ?」
「どうもー」
アマタに見つかった。
駆け寄ってくる3人。
デスクローは確認するまでもなく死んでる。さすがに眉間射抜かれたら死んでる。白目向いてひっくり返っていた。
私が何か言うよりも先に……。
「おや赤毛のお嬢さんじゃないですか」
「うげっ!」
「うげ、とはご挨拶ですね」
スナイパーライフルを持った金髪美青年が現れる。
デリンジャーだ。
デリンジャーのジョンだ。
私の格好を見て彼は笑った。
「おや僕の格好をリスペクトして真似したんですか? いやぁよくあることです」
「……たまたまよ」
そう言え似てるなー。
「ミスティ、ジョンさんと知り合いなの?」
「まあ、ええ、はい」
ジョンさん、ね。
アマタたちが雇っているのか?
だけど……。
「あんた殺し屋でしょ? 冒険者の真似事?」
冒険者って表現は正しいのかな?
意外に表現難しい。
スカベンジャー、傭兵、冒険者、運び屋、ハンター、大体どれもやってることが被っているからなぁ。だけど殺し屋は殺し屋だろう、こいつどうしてアマタたちの手助けなんてしてるんだろ。
「報酬の為です」
「報酬?」
「僕、これでもかなり強いんですよ」
「知ってる」
かなり?
滅茶苦茶強いじゃないのよ。
「だけどそれは人限定だったりするんです。デスクロー相手だとちょっと手こずるんですよね」
「ああ、アマタたちは餌ってことか」
「時間稼ぎと言って欲しいですね。相手の眉間射抜く為のアシストですよ」
「足潰したのもあなたの作戦?」
「いえ。不思議なことに最初の時点ですでに潰れてました。多分前に依頼された人がダメージ与えたんじゃないですか? その前の人は、まあ、ご臨終してるんでしょうけど」
「で? 報酬って?」
「半々です。10000の半分、つまりは5000キャップが欲しかったんですよ。手持ちが少なかったのでね、小遣い稼ぎです。バザーで祖母にお土産買うのに持ち合わせが足りなかったので」
「祖母? 前も言ってたわね」
リベットで聞いたような。
「アガサお祖母ちゃんです」
「はっ? あんたアガサさんのお孫さんなのっ! マジでっ!」
「あんな辺境で誰にも手出しされない老女なんておかしく思わないんですか? 祖母自身には収入ないのにキャラバン隊と取引できるなんておかしいと思わないんですか?」
「……ああ、あんたの祖母だと知ってて誰も手出ししないのね」
「そういうことです。僕を敵に回すと怖いですからねー」
しゃあしゃあとよく言う。
「殺し屋って仕事知ってるの?」
「戦前ならいざ知らず、こういう時代ですからね。別に偏見もないみたいですよ。少なくとも表面的には。僕の仕送りで平穏な生活してます。引っ越してほしいんですけどね、あそこが好きみたいです」
「ふぅん」
「何か問題が?」
「いえ。だけどあんたの立ち位置が分かんない。たまにかなり意味不明。女性しか殺さないんじゃないの? 口説き落としてから。それで儲かるの?」
「これはお嬢さんの言葉とは思えませんね。思い込みこそ最大の武器、思い込ませることこそ相手を倒す策、でしょう? ルックアウトでも似たようなことを言ったような気もしますけど?」
「そうね」
そういうことか。
全部こいつが勝手に喧伝した嘘か。そうやって油断させて殺すってわけだ。
考えてみたら女しか殺さないなんて効率悪い。
そんなんで裏社会の悪党が怖れる殺し屋になんてなれるわけがない。大体ルックアウトではネイディーンの依頼でトバルを殺してる。(実際にはサイボークかして生きてたけど)
思い込みか、確かにその通りだ。
ふとアマタ達を見ると完全に話に置いて行かれたモードになっているのに気付く。
話が逸脱したな。
戻そう。
「つまりアマタたちと報酬の為に手を組んだ、ということね」
「そういうことです。良い協定でした」
「証拠の品はどうするの? この死体を引き摺って持っていくわけ?」
腕でも切り取っていく?
ぐろいか。
じゃあ頭に付いているヘッドギアでいいかな。
「あれ持ってきましょ」
「妥当ですね」
ヘッドギアを取り外す決定。
完全にデスクローは死んでるから問題ないだろ、オフィサー・ゴメスとデリンジャーたち男どもに任せた。
「お、俺が?」
「よろしく」
ボルト時代の豪気な上司は一瞬戸惑ったけど、まあ、仕方ないか。
私から見てもあの化け物は悪魔に見えるし。
だけど死体は死体だ。
「お久し振り、アマタ」
「ええ。奇遇ねって……訳ではなさそうね、そうじゃないんでしょ?」
「アラン・マックに頼まれた」
「父さんに?」
スージーが驚いた、という顔をする。アマタもだ。
現在のボルト内の状況がよく分からないけどブッチ曰く、アマタ派とアラン派で対立しているようなことを言ってたな。
「帰郷も許すってさ」
「……何を考えているのかしら」
「正直な話? 私としては、浄水チップを持ち帰れ的な感じに聞こえたわ。アマタたちは、まあ……いえ、想像に任せるわ」
「帰れないと思ってるってわけね。彼らしいわ」
「ノーコメントで。他の人は?」
「生き残りは私達だけよ。10人編成で来たけど、外は、過酷ね」
「遠出し過ぎよ」
さすがにここまで辺境に来ない限りは充分過ぎると思う。
この辺りはまだ過酷。
別に私の影響力云々は言わないけど、私がボルトを出る以前のままだ。いや、悪党が中央から追い出されて辺境に追いやられている感がある、勢力の頭がことごとく潰されたから雑多な
勢力がせめぎ合っているのが現状だ。ボルトの戦力ではこの辺りはだいぶ厳しいだろう。3人も生き残っているのが奇跡なレベルだ。
「ところでなんでスージーがここに?」
同じ教室のクラスメイト。
外出身(当時は私も知らなかったけど、大人たちは知っていた感がある)の私に偏見なかったけど、特に親しかったわけでもない。
「父と袂を別ったの」
「そっか」
ワリーを探しに、ではないのか。
まあ、あいつのことはいいか。
見るとヘッドギアを取り外せたようだ。
バザーに戻るとしよう。
30分後。
バザーに舞い戻る。
西海岸から持ち込まれた商品の大半は既に買い取られ、バザーは終わりつつあるようだ。このペースでは2日後にはお祭り騒ぎも終わるかな。
これだけ盛況なんだ、また西海岸から商人が来るかもね。
交易の確立だ。
……。
……エンクレイブとのいざこざが終わればねー。
勝たなきゃならない。
連中と勝てば交易は確立される、戦争が変わらなければ人間が変わらなきゃという意見を私は持ってるけど無条件に買われるほどお花畑ではない。
まずは一戦勝たなきゃ。
独立を内外に示さなきゃね。
その為にもまずキャピタルが纏まる必要がある。
幸いエンクレイブは北部に侵攻しているけどレッドアーミーと潰し合いをしているだけで本格的な侵攻はない。
その間に雑多な勢力を潰さなきゃだ。
デスクローが頭に付けていたヘッドギアを持って依頼人の商人2人の所に向かう。
2人はテントで何かもめている。
こちらには気付いていない。
「おいどうするっ! あいつらデスクローを倒しちまったぞっ! くそっ! 10000キャップ支払かよっ! せっかくPIPBOYが大量に手に入ると思ったのによっ!」
「払わなきゃいい、このまま逃げるんだっ!」
「何の稼ぎがないまま引き上げかよっ! デスクロー制御ヘッドギアを回収して、別のデスクローを探して別のとこで仕事をすれば……っ!」
「無茶言うなよ、1体捕まえるだけでどれだけ手こずったと思ってるっ!」
あー、なるほどね。
あれこいつらが飼ってた奴か。
足がズタボロだったのはこいつらが捕獲する際に機動性を奪う為の物だったのか。PIPBOY狙いね、だから私にも声を掛けて来たのか。
なめほどなー。
「楽しそうなお話ね」
「……っ!」
オフィサー・ゴメスが運んでいたヘッドギアを私の足元に置いてもらう。そしてそのままミスティックマグナム手で撃って破壊する。これさえなければこいつらはただのちんけな小悪党だ。
制御装置の出所が気になるけど、まあ、どうでもいい。
エンクレイブか?
西海岸にもいたようで、向こうでは壊滅してるとか何とか聞いたことがある、連中の基地跡から入手したのかもね。
似たようなものをジェファーソン決戦で使ってた。ベヒモスを操ってたし、エンクレイブ関連の物かも。
突然の銃声に商人、客、警備兵気取りでうろうろしているBBアーミーは驚く。
アマタ達もだ。
デリンジャーは涼しい顔してるけど。
BBアーミーの何人かは私に銃を向けるけど、私の顔を知っている奴が耳元で何か囁くと銃を下して嫌そうな顔をしていなくなった。何て言ったんだろ、まあ、嫌われてるのは分かったけど。
「退治して来たわ」
「え、ええ、ありがとう、ございます」
「10000キャップ」
「た、直ちに」
「払わずに逃げたら大変かもね。ご挨拶遅れました、私はミスティ、赤毛の冒険者です」
「……っ! 今すぐお持ちしますっ!」
ミッション終了。
その後デリンジャーに半額を渡し、私はアマタ達に同行してテンペニータワーに向かう。
そこで浄水チップを購入する手筈になっているようだ。
支払いにはボルトから持ち出したPIPBOY数個で成立しているものの、あと5000ほどあればもう一つ帰るらしいので前にバザーで進められた討伐任務を受けに来た、らしい。
それはいい。
それはいいんだけど、スマイリング・ジャックめ、何も言ってなかった。
まあ聞いてないけどさ。
大体は察してくれても……いやー、キャップ渡してないから世間話もしてくれないのか。
まあいいさ。
私はテンペニータワーに向かう。
……。
……最近あっちばっかり行くなぁ。