私は天使なんかじゃない






無敵病院








  医療は人を超えることが出来るのだろうか。
  いや。
  例え超えたとしても、それは人と呼べるのだろうか。





  崩壊した道路。
  山積みの瓦礫。
  壊れかけたビルディング。
  ここはDC残骸。
  かつての大都市の名残、いや、その残骸。
  「ご武運をお祈りします、スター・パラディン閣下」
  「どうも」
  ベルチバードから降りる。
  楽ですね。
  移動が楽チンだ。
  ……。
  ……まあ、ベルチバードが仕事の為の移動の足っていうのが嫌なところですね。観光ならいいのに。
  また仕事かぁ。
  嫌だなぁ。
  とりあえず移動する労力は省けるけど、結局普通に移動する以上に疲れるような気がする。
  気のせい?
  気のせいだといいなぁ。
  おおぅ。
  「行こう、グリン・フィス」
  「御意」
  ベルチバードが浮上し、旋回して飛び去る。
  友軍?
  いえ、ただのタクシーです。
  客を目的地まで連れて行ったので帰って行きました。しかも厳密に言えば目的地ではありません、瓦礫が凄くて着陸出来る地点がここしかなかったという罠。
  近いと言えば近いけどさ。
  目的の場所は歩いて20分ぐらいにある。
  装備は相変わらずで、私はライリー・レンジャー製の強化型コンバットアーマー、44マグナム2丁、グレネードランチャー付きアサルトライフル。弾はふんだんに。
  グリン・フィスはバラモン・スキンの服(黒)、ショックソード、45オートピストル。
  無線機は彼が肩に掛けてる。
  今回のミッションの依頼人はBOS、目的はDC残骸にある病院の調査。元々この辺りはスーパーミュータント、BOS、タロン社が三つ巴の戦いをしていた激戦区。ただ私がボルト101から
  這い出して来てから勢力バランスが変わり、現在はBOSが1人勝ち状態。ミュータントの大半は駆逐され、大半はレッドアーミーとして北部に移動。タロン社も組織としては四散してる。
  だから。
  だからDC残骸の敵たちは消滅した。
  もちろん野良やら残党がいたりするけど前みたく危険というわけでもない。
  そしてそういう経緯があるからこそ今まで手付かずだったルートの開拓とかが進み、今回新たなスポットが見つかったってわけ。
  今私たちがいるスポットには病院が3件ある、らしい。
  私とグリン・フィスが担当するのはその1つ。
  他の2つは傭兵団が担当するとかベルチバード移動中にBOSナイトが言ってたな。どこの傭兵団かは知らない。ライリー・レンジャーかも。
  ともかく調査が仕事。
  私らは調査だけで、医療品があればBOSに無線で連絡、搬送は連中がする。さすがに2人で要塞まで運べと言われたら私も暴れる。ええ、暴れますとも。
  医療物資の確保は急務だ。
  食料や水と違って今の時代、医療品は廃墟から漁るしかない。
  製造できる所は出来るといえば出来るんだけど生産量は少ない。エンクレイブ襲来も目前だし、人口増加のこともあり、医療品の確保が出来るかどうかでキャピタルの明日が変わる。
  ボルト101なら製造できるんだけど、ブッチが言うには開放派と閉鎖派が争っててなかなか難しいらしい。
  アマタも大変だなぁ。
  「敵がいないといいなぁ」
  「御意」
  「気配する?」
  「特には」
  「そう」
  「2人きりですね」
  「そうね」
  「誰も見ていないのでもっと甘えてもいいですよ?」
  「死ね」
  「ユ、ユーモアです」
  「どーだか」
  歩く。
  ひたすら歩く。
  まともな道路なんかないから歩き辛い。というかそもそもこれは道路か?
  瓦礫の中を歩いているだけだ。
  足の裏が痛い。
  今回は馬鹿ブッチの所為でPIPBOY3000がない。ウイルス感染でクレーターサイド雑貨店に預けてある。やっぱりないとなんか感覚的におかしい。いつも左腕で主張してるもんなぁ。
  PIPBOYがない関係で索敵は出来ないし、いや、まあ索敵に関しては彼がいるからいいんだけど、ハッキングが出来ない。
  さすがに頭では処理出来ない。
  無理です。
  不可能。
  「ここ、か」
  私たちは立ち止まる。
  目的の場所に到着。
  なかなかでかい病院だ。3階建て。入り口が開いている、というか爆破物で吹き飛ばされたのかぽっかりと大穴があいていてウエルカム状態だ。
  建物の2階の部分には大きな看板。
  なるほど、グリン・フィスが言ってた板切れってこれか。誰かが看板に板切れを釘か何かで打ちつけ、その板切れに下手な字でこう書いている。
  無敵病院、と。
  「妙なネーミングセンス」
  無敵、ねぇ。
  何を以て無敵なんだろ。
  謎です。
  入り口の付近を調べてみる。
  爆発物か何かで爆破した後は……ふぅん、爆破してまだ経ってないな、誰かが先客として殴り込んだらしい。まあ、そりゃそうか。あの無敵病院って看板は新しそうだ、少なくとも核でアメリカが
  吹き飛んでから手付かずってわけではなさそうだ。ここ数週間ぐらいに誰かがここに来て貼り付けたのだろう。ただし爆破は数日前ぐらいだ。
  「主、少し聞きたいことが」
  「何?」
  「アイレイドノ遺跡でもそうなのですが中にある物は基本的に所有権は誰にもありません。先に誰かが来ていた場合はどうされますか?」
  「アイレ……?」
  何だそれ。
  たまにグリン・フィスの言っていることは謎。
  ただ意味は分かる。
  アイレ云々ではなく先客の話だ。
  たぶんこれはスカベンジャーあたりがミュータントいなくなったぜぇー的な感じで先に入り込んでいるんだろう。
  それは別に問題ない。
  早い者勝ちだ。
  少なくとも連中が手にしている物、自分たちの物だと主張している物に関してはこちらに手を出す権利はない。早い者勝ちは暗黙のルールだし、私もそう思う。だからその場合は残りの手付かずの
  物をいただくというスタンスかな。これがウェイストランド流だ。問題は全部自分の物と相手が主張してきた場合だ。ついでに私らの手荷物も自分の物と主張してきた場合だ。
  その場合の処方箋?
  まあ、今までの旅の通りに、対処するまでだ。
  「グリン・フィス、大人の対応で行きましょう」
  「御意」
  ただ、無敵病院と書いた奴はスカベンジャーじゃない気がする。わざわざスカベンジャーがこんな妙な自己主張するか?
  しないと思う。
  レイダーか、もしくはわりと知性のあるスーパーミュータントか。
  敵でないことを祈るばかりだ。
  「行くわよ」
  「御意」
  私たちは無敵病院内部へ。
  ……。
  ……ほんと、変な名前。無敵病院って何だ、無敵病院って。
  関わりたくないなぁ。
  おおぅ。



  「……」
  「……」
  コツ、コツ、コツ。
  私たちは無敵病院の中を慎重に進む。
  一応入って右側から探索中。
  意味は特にない。
  ぐるっと一周回るような作りなのか、行き止まりになるのかは知らないけど右側から探索中。
  先頭は私。
  アサルトライフルを構えながら進む。後方にはグリン・フィス、ショックソードはまだ抜いていない。
  BOSがエンクレイブ絡みで手一杯とはいえ一部隊ぐらい貸して欲しいものだ。
  スター・パラディン閣下、ね。
  厄介ごと当番ですな。
  嫌だなぁ。

  ジジジジジ。

  天井にある蛍光灯のいくつかは点いたり消えたりしている。
  戦前から点いたまま?
  ありえない。
  誰かが発電機を稼働させたのだろう。
  確実に誰かいる。
  確実にね。
  現在は一階のゴミが散乱した廊下を探索中。当然歩いた先には部屋がいくつもあるけど特に目新しいものはない。病室だったり事務室だったりトイレだったり。まあ、そのあたり漁れば薬品の
  類とかは出て来るだろうけど私たちはケチな泥棒さんではない。薬品庫とかそんな場所が目的。大量に欲しいのだよ、大量に。
  今のところそんな場所はない。
  地下か?
  イメージ的には地下だ。
  だけど地下へと通じる階段は現在のところ遭遇していない。
  「ん?」
  足を上げて、私は止まる。
  地雷だ。
  どっかの誰かが仕掛けたらしい。
  ゴミが散乱してるから危うく踏むところだった。
  悪意のある先行者のようだ。
  気を付けなきゃ。
  近付いたら爆発するセンサー式ではなく古式な踏んだらドカンなタイプだ。解除するか、いや、解除は必ずしも得意というわけではない。
  さすがに手がなくなったらスティムパックでは治らない、生えてこない。
  スルーしよう。
  少しばかりゴミを手で払って、地雷を分かり易くする。
  「踏まないようにね」
  「御意」
  進みながら思うのは、そこら中にトラップし掛けてないでしょうね?ってことだ。
  罠だらけなら嫌だなぁ。
  「だけど誰もいないわね。気配は?」
  「今のところは何も」
  「どの程度まで分かるの?」
  考えてみたら範囲が分からない。
  グリン・フィスが考え込む。
  「そうですね、相手の力量によっては距離があっても分かるかと。何というか、異様な雰囲気で感じ取れます」
  「ふぅん?」
  分かるような分からないような。
  「酒場にいた奴はかなりの気配でした」
  「酒場?」
  ああ。
  レッド・フォックスか。
  そういえば武器構えてたな。というかあんな場所でいきなり武器構えてたな、物騒な。
  「あの人がどうかしたの?」
  「闘気、と言うのでしょうか、並のものではりませんでした」
  「思わず身構えるほどに?」
  「はい」
  何者なんだ、あの人。
  自称賞金稼ぎ……ああ、違うか、ハンターとか言ってたか、確か。
  どうも物騒な人らしい。
  まあ、あんなでかい得物持ってたら物騒だよなぁ。
  剣にしろ銃にしろ身の丈以上だもん。
  あれで剣を簡単に振り回せるんだから化け物みたいな腕力だ。
  怖い怖い。
  ……。
  ……まさか私を狩りに来たんじゃないでしょうね。いや。NCRが賞金懸けた奴を追ってここまで来たって言ってたもんな、私じゃないか。
  さすがに西海岸にまで敵がいるとは思えない。
  さて。
  「グリン・フィス、分散する?」
  「自分は構いませんが、主、大丈夫ですか?」
  「問題ないでしょ」

  ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!

  後方より爆発音。
  ゴミが爆風で飛び散ってくる。
  何だぁ。
  振り返る。
  爆風で何も見えない。黙々と黒煙が立ち込めているし、今の衝撃で幾つか電灯が完全に消えた。視線を凝らす。何とか2メートル先が見える程度だ。
  後退して黒煙から距離を取る。
  後ろもちらちらと見る。
  特に何もいない。
  少なくとも、今のところは。
  「主」
  「嫌な感じする」
  今の爆発、地雷だろう。
  問題は誰が地雷を踏んだかだ。そして踏んだ奴はギャグで吹き飛びたかったのか、そういう日和なのか、それとも背後から私らに襲いかかりたかったのか。
  答えはCMの後?
  いいえ。

  「ひゃはああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

  奇声をあげて、黒煙を通り抜けて全力疾走してくる奴らがいる。
  レイダーっ!
  これは、いや、違うな、少なくともレイダーのような印象は受けない。葉柄のようだったりスカベンジャーのようだったりと衣装がまちまちだ。
  いずれにしてもそういうのがこっちに突っ込んでくる。
  「主、背後からも来ます」
  「そっち任せた」
  「御意」
  「いっけぇー!」
  バリバリバリ。
  アサルトライフルを掃射する。
  倒した、つもりだった。
  撃たれたのに普通に突っ込んでくる。まずい近付かれる。その前に、倒すっ!
  弾倉が空になるまで撃つ。
  バタバタとさすがに倒れるものの何名かは立ち上がろうとする。
  おいおい、化け物か。
  ちらりと振り返るとグリン・フィスがショックソードで次々と骸を築いていく。さすがに真っ二つとか首なし状態にされたら動きようがないようだ。グリン・フィス、容赦ないなぁ。
  弾倉交換。
  「行こうっ!」
  「御意」
  本来進んでいた方向には敵がいない、グリン・フィスが全て片付けたからだ。
  当面は。
  私が撃った敵たちは何名かは立ち上がろうとするけど、結局立てずにそのまま倒れ伏した。血を流し過ぎたのか、ようやく撃たれたことに気付くほどの鈍感なのか。
  まあいい。
  私たちは走る。
  そして思うのだ。
  妙な場所に侵入してしまったと。
  「はあはあ」
  廊下を全力で走り、階段を駆け上って2階に到着。アサルトライフルは連射性に長けているけど、あの化け物人間はなかなか死ななかった。アサルトライフルを背負い、44マグナム2丁を
  引き抜いて進むことにする。さすがにこれなら一撃だろ。試して駄目なら次からは頭吹き飛ばすとしよう。
  「主、お待ちを」
  「ん?」
  グリン・フィスが立ち止まる。
  そして廊下に並ぶ扉の1つを開け、その中に飛び込んだ。
  「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! 化け物かぁーっ!」
  「主、生存者です」
  淡々としたグリン・フィス。
  さすがです。
  この部屋は医師たちの休憩部屋、かな?
  ソファが2つあり、自動販売機が3つほどある。電源が来てないようで何にも表示されていないけど。後は廊下と同じでゴミだらけ、そして白骨が3人分ぐらい転がってる。
  そんな場所に1人の男がいた。
  10oピストルを手にし、ショットガンは弾丸がないのか床に捨ててある。
  擦り切れたジーパン、バラモンスキンの薄汚れた白い服に革製のベスト、恰好からしてスカベンジャーあたりか。
  疲れ果てた顔をしている。
  とりあえず、人だ。
  たぶんね。
  「大丈夫?」
  「大丈夫かだって? ははは、さっさと扉を閉めろっ!」
  「はいはい。グリン・フィス」
  「御意」
  イラついているおっさんだ。
  扉が閉まる。
  「それで? ここで何を?」
  「ここで何を、だって? ははは、ピクニックさ。弁当持ってよ、酒持ってよ、可愛い女を5人ぐらい侍らかして楽しいショーをしているところだよ。何だったらあんたも加えてやるよ」
  「そりゃすごい。それで? ここで何を?」
  「……見て分かるだろ。スカベンジングさ。手付かずの場所だ、この辺りのエリアはな。ミュータントどもがいなくなって稼ぎ放題だ」
  「ふぅん」
  スカベンジャー内ではとっくに周知の場所だった模様。
  となるとBOSが欲している医療物資とやらは期待薄のようだ。
  まあ、私は困らんけど。
  頼まれたことをやるだけだ。
  「それで?」
  「たくさんのスカベンジャーが群がってきたよ、俺らのチームもその1つだった。だがここに入った途端に昔の映画に出て来るゾンビみたくタフな連中に襲われたのさ、見た目は人間だ、だけど
  えらくタフな奴らなんだ。俺以外捕まった。でも殺されないんだ、捕まってもな」
  「どういうこと?」
  「仲間になるのさ、ゾンビのな。何してそうなるかは知らないが」
  「マジか」
  あれはここに入り込んだ奴の末路か。
  普通に考えて無敵病院とか書いた奴の仕業なんだろうなぁ。
  何者だろ。
  少なくともキャピタルのノリではない気がする。レイダーやスパミュが書くような感じがしない。最近は西海岸から人が来てるから、そっち方面の奴がしてるのかな?
  どっちにしろ面倒なことだ。
  「これからどうするの?」
  「これから、だってっ! ここから出るのさっ!」
  「私はミスティ、一緒に行く?」
  「赤毛の冒険視野と同じ名前か。だけどPIPBOYしてるって話だからな、別人か」
  「あなたは?」
  どう認識されようが別にいい。
  むしろ赤毛の冒険者して認識されない方が気が楽そうだ。このおっさん、偉そうだから、赤毛の冒険者本人ですとか言ったら敵を全滅させて来いとか言いそうだし。
  「俺はゴードンだ」
  「そう。よろしく」
  「あんたらはここに何しに?」
  「宝探し」
  「……」
  目を細めてこっちを見ている。
  「そうか、じゃあ良い場所がある。付いてきな」
  「そう? よろしく」
  さっきの間はなんだったんだろ。
  まあいい。
  楽出来るならそれに越したことはない。
  ゴードンはびくびくしながらも先頭に立って扉を開けて廊下に出る。私も続く。グリン・フィスはその後に。

  ばぁん。

  銃声。
  10oピストルをゴードンはグリン・フィスに向けて撃った。そしてそのまま勢いで私を部屋に突き飛ばす。たまらず倒れる私。ゴードンはそんな私を組み伏して笑う。
  「どうせ死ぬんだ死ぬまで可愛がってやるぜ姉ちゃんっ!ひひひっ!」
  「勝手に決めないでくれる?」
  組み伏されつつも股間を蹴る。
  うげー。
  嫌な感触。
  動きの止まったエロ親父をグリン・フィスが襟首掴んで引き剥がし、廊下に蹴倒した。
  馬鹿め。
  グリン・フィスがその程度の不意打ちでどうにかなるならとっくに死んでる冒険をしてるんだ、私らは。
  「ち、ちくしょ……っ!」
  「まずい扉締めて」
  「御意」
  扉を閉める。
  そして私は立ち上がり、扉の方に銃を構えて臨戦態勢。ゴードンが走り去る音、複数の足音、そして遠くから誰かの絶叫が聞こえた。可哀そう可哀そう。
  ……。
  ……ふぅ。何とかやり過ごした模様。
  言うことが本当なら殺されはしないようだ。同じようなグレイジーにされるとか何とか。しかしわざわざ誰かの手を借りなくてもゴードンは完全にイカれてた。わざわざあいつらの手を借りるまでもない。
  さてさて。
  どうしたもんかな。
  ショットガンを手に取って見るけど弾丸は入っていない。10oピストルは……ないな、ゴードンが持って行ったようだ。
  まあいい。
  戦前のゾンビ映画並みにタフとか言ってたけどゾンビではなくあれは生き物だ。
  何かの薬物を投与されてラリってるのだろう。
  タフというよりは痛覚が麻痺している感じ?
  実際何発か撃たれても立ち上がれずにそのまま死んでたし。痛覚なくしても、タフでも何でもない。出血多量で結局死んだんだろうな、1階での遭遇戦の奴ら。
  そう考えると無敵病院の意味が分かってくる。
  麻薬か何か打って痛覚なくして無敵ってこと?
  まあ、無敵でも何でもないんだけどね。
  ただ撃たれたことも気付かない鈍感な連中ってだけだ。しかしそうなるとここを仕切っている奴は医者か何かか?
  「グリン・フィス、行ける?」
  「その前に主」
  「エロい話ならやめて。ゴードンの所為でイライラしてるから、エロ話以外のことを話して」
  「い、行きましょう」
  「……エロオンリーの話題しかないのかい」
  「ユーモアです」
  「どーだか」
  廊下に出る。
  クレイジーなゾンビたちはいないようだ。
  誰がどういう目的でこんな世界を作り上げているかは知らないけど、わざわざ私らの受け持ち場所ではやめて欲しいものだ。
  44マグナムを構えて私は歩き始める。

  ドサ。

  不意に後ろから突き飛ばされる。
  グリン・フィス?
  「主っ!」
  違う彼じゃないっ!
  そして私は気付く、私は突き飛ばされたんだじゃない、何かで攻撃……いや、これは……くそ、ワイヤー網が私を包み込んでいる。銃は手にしたままだけど拘束しているネット上のワイヤーが
  どんどんと縮小されていく。鋼鉄製ってわけじゃないけど素手じゃ無理だ。そして突然引き摺られていく。飛んできた方向に。私は見る、何か浮いている。
  Mr.ハンディ型のロボットっ!
  ただ銀色ってわけではなく白っぽい機体だ。
  だけど当然そんなことはどうでもいい。
  「主っ!」
  グリン・フィスが叫ぶ。
  しかし彼の背後にはクレイジーの集団が迫っている。とてもじゃないけど私を救う余裕はないし、この謎のロボットを私を引き摺って移動を開始する。

  ズザザザザザザザザザザザ。

  くそ。
  油断したっ!
  PIPBOYがあれば索敵で気付いたのにっ!
  さすがのグリン・フィスも気配がそもそもないロボットには気付かないのか。
  どこまで行くのか知らないけどロボットは移動している。
  私を引き摺りながら。
  「くっ」
  拘束が狭い。
  腕を動かして銃を撃てる状態じゃない。
  階段が見えてくる。
  上に向かう階段と下に向かう階段。
  上か。
  少なくとも先ほどの探索で1階の半分は特に何もなかった。もう半分はまだだけど、階段まで来たってことは2階には何もないのだろう。3階だ。
  ……。
  ……そう思った。
  予想に反してロボットは1階に向かうべく移動を開始、そして突然勢いを付けて止まった。瞬間、ロボットと私を覆っているネットを繋ぐワイヤーが不自然なほどに伸びる。ロボはその場に
  留まり、私だけ階段を何度も何度もバウンドしながら落ちた。落下した衝撃で何も考えられなくなる。ワイヤーが巻き込まれ階段を引き摺られながら私はまた時間を掛けて上まで戻る。
  「うー」
  ロボは再び移動を開始。
  今度は登るのかと思えば廊下を逆走、止まり、そしてまた階段に急スピードで向かって……。
  「うー」
  まずいな。
  これは実にまずいな。
  殺される。