天使で悪魔






タムリエルの秘宝






  眠りに付くのは生き物だけではない。
  秘宝もまた眠りに付く。

  そして待っている。
  目覚めの時を。






  タムリエルの秘宝と呼ばれる物がある。
  以下は私が過去数世紀にわたって集めてきた、想像を絶する重要性を持った品々に関する覚え書きである。
  そのいずれもタムリエルの至る所で繰り返し目撃され、所持され、失われてきた。
  一部は伝説でその他はでっち上げかもしれない。
  だがそれにも関わらず多くの人々がこれら誰もが欲しがる品々を追って、または守ろうとして命を落としてきた。
  改めてここに付け足す。
  あくまで覚え書きであることを理解して欲しい。






  『領主の鎧』
  この太古のキュイラスは卓越した品質を誇り、時にはモーリアウスの鎧、またはキナレスの贈り物と呼ばれる。
  この鎧は着用者に<体力吸収><呪文抵抗>の特殊能力を与え使用した際には自分自身を解毒する。
  キナレスが着用者のことを相応しくないと判断した場合、領主の鎧は取り上げられ、次の選ばれし者のために隠されると伝えられている。



  『檀の鎧』
  黒檀の鎧は歴史以前にダークエルフの女神ボエシアによって作られた胸当てである。
  黒檀の鎧を誰がどれくらいの期間所持するかを決めるのは彼女である。
  値すると判断された場合、着用時に<火炎耐性><魔法耐性>を付加し<魔法の盾>が与えられる。
  もはや黒檀の鎧を持つには不適格であると判断するのはボエシアのみであり、また、女神はとても気まぐれである。



  『破呪の盾』
  一見ドゥーマーのタワーシールドに見える破呪の盾はタムリエルの秘宝のなかでももっとも古い遺物の1つである。
  ロールケン・シャリドールの戦いでの歴史的重要性に加え、破呪の盾は呪文を反射するか、呪文を唱えようとしている魔術師を沈黙させ、盾を装備して
  いる者をほぼ完全に魔術師から保護してくれる。
  破呪の盾はいまだに初代の所有者を探していると伝えられ他の者の手中には長く留まらない。
  常人には破呪の盾をどれだけの期間であれ所持することは最大な誉れであり充分な力なのである。



  『クライサメル』
  パラディンの剣はそれ自身の防御力のみが上回れる攻撃能力をもっている太古のクレイモアである。
  装備する者に体力と炎からの保護を与え、装備する者に対して唱えられた呪文を術者へと反射する。1人のチャンピオンをひいきしない為
  少しの期間であってもクライサメルが剣士によって帯剣されることは稀であった。



  『マグナスの杖』
  タムリエルの秘宝の中でも古いほうであるマグナスの杖は、生みの親であるマグナスにとって超自然的道具の類であった。
  使用されると敵の体力と神秘のエネルギーを吸収する。
  やがてその杖は所持する者が強力になり過ぎて杖自らが保護を誓った神秘の均衡を狂わす前に魔術師の下を離れる。



  『魔術師の指輪』
  アークメイジであるシラベインの魔術師の指輪は神話や作り話の遺物のなかでも最も人気があるうちの1つである。
  タムリエルの古代史の中でシラベインは指輪の思慮深い利用法によって大陸全土を救った。
  それ以降この指輪はシラベイン程の崇高な目標を持たない冒険者たちの手助けを行ってきた。この指輪は着用者に向けて唱えられた呪文を反射する
  特殊能力と<速度上昇><体力回復>の特殊能力で最もよく知られている。
  この指輪はシラベインのみが命令できると言われている為長期間にわたって魔術師の指輪を着用できる冒険者はいない。
  現在この指輪はアルケイン大学から失われている。




  『フィナスターの指輪』
  この指輪は冒険的な人生を生き抜く為に良質な防具を必要としていた男によって何百年も前に作られた。
  指輪のおかげでフィナスターは何百年もの間生き続け、それ以降、指輪は人から人へと持ち主が変わった。
  その指輪は着用者の<毒><魔法><雷撃>への全体的耐性を高める。
  だがフィナスターは抜け目なくその指輪に、フィナスター以外とはどこにいても不満になり、いずれは仮の所有者の手を離れて他の居場所へと消えていく
  ように呪いをかけた。



  『カジートの指輪』
  この指輪を有名にした盗賊ラジンより何百年も古い太古の遺物である。
  指輪の力を使って自分を透明にし疾風の如く迅速にしたのがラジンであった。彼は指輪のおかげでエルスウェーア史上、もっとも成功した泥棒になった。
  ラジンがその後どうなったかは謎だが伝説によると指輪はそのような使われ方に反発し敵の目前で消えて彼を置き去りにしたと伝えられている。



  『モラグ・バルのメイス』
  吸血鬼のメイスとしても知られるモラグ・バルのメイスは相手の魔力を流出させ、装備している者に与える。
  そのメイスには敵の腕力を装備者に移し変える特殊能力もある。
  モラグ・バルは彼の秘宝を惜しみなく使っていたようだ。そのメイスに関する伝説は数多くある。この武器は魔術師の克服に好まれるようだ。



  『クラヴィカスの仮面』
  自惚れの強いクラヴィカス・ヴァイルは彼自身の人格に相応しいマスクを作った。
  マスクの所有者はタムリエルの住人から良い反応を得られやすい。
  人格が高ければ高いほど効果は大きい。
  一番知られているマスクの話は、多少は名の知れている貴族婦人アヴァレアの物語である。
  幼少の頃、彼女は悪質な召使いによってひどく醜くされてしまった。
  アヴァレアはクラヴィカス・ヴァイルと暗黒の取引を交わし見返りにマスクを受け取った。
  マスクは彼女の外見を変えることはなかったが急に万人から敬われ称賛された。
  広い人脈を持った男爵と結婚してから1年と1日後、クラヴィカス・ヴァイルはマスクを取り戻した。
  アヴァレアは彼の子を身篭っていたが男爵の一家から追い出された。21年と1日後、アヴァレアの娘が男爵を殺してあだ討ちをなした。
  魔王との契約に利点などないという証拠だろう。
  (注釈→犯罪結社である港湾貿易連盟が保有していたものの盗賊ギルドとの戦いの敗北後に行方不明)



  『メエルーンズの剃刀』
  闇の一党はこの黒檀のダガーを何世代にもわたって切望してきた。
  この伝説上の秘宝はどのような生物であっても一瞬にして葬ることが可能であるとされている。
  破壊を司る魔王メエルーンズの剃刀の所持者は歴史上、1人も記録されていない。しかし闇の一党は一度内部の酷い権力争いによって壊滅している。
  それにはこのメエルーンズの剃刀が関係していたと疑われている。



  『生皮のキュイラス』
  ハーシーンのもう1つの秘宝は生皮のキュイラスであった。
  このキュイラスはマジカに抵抗する特別な特殊能力があった。
  伝説によるとハーシーンは彼の狩猟場から逃げ出せた最初で最後の人間に彼の皮を褒美として与えたと伝えられている。
  この無名な人間はこの魔法のキュイラスにその皮を縫いこませた。
  生皮のキュイラスはあたかも自分の意思を持っているかのように英雄から英雄へと移り行く傾向がある。



  『苦い慈悲の槍』
  この苦い慈悲の槍は他にも増して謎めいている秘宝の1つである。
  この槍に関して知られていることは皆無かそれに等しい。
  歴史の記録はないが多くの人々はデイドラが起源であると信じている。
  唯一知られている伝説はバトルスフィア陥落の際に偉大な英雄がそれを使ったということだ。
  その英雄は魔王メエルーンズ・デイゴンを倒してバトルスフィアを奪還する際にその槍の力を借りた。
  それ以降苦い慈悲の槍はタムリエルにあまりその姿を現していない。



  『デイドラの災厄』
  このデイドラの災厄はフィックルダイアーの炎の中で神聖な黒檀から鍛造された巨大なメイスである。
  マッカーンの伝説的な武器であり、かつては暗黒の霊をオブリビオンへと送り返す為に使われた凄まじい武器であった。
  オブリビオンから魔物を召喚する特殊能力がある。
  一度はバトルスフィアにてデイドラの魔王達に対して使われた武器であるが今は全土を冒険者達とともに転々としている。


  『影の弓』
  伝説によれば影の弓はデイドラのノクターナルから鍛造されたものである。
  伝説的な狩人であるラエルラス・ガイルは極秘任務の為にこの弓を授けられたが失敗してしまい弓は消えてしまった。ラエルラスは盛んに戦った
  末に敗れたが弓に助けられ多くの敵を道連れにしたと言われている。
  この弓は所有者に透明化の特殊能力と速度上昇を与えてくれる。
  度重なる影の弓の目撃が報告されており第二紀の邪悪なダークエルフの暗殺者ドラムも一度この弓を手にしたことがあると言われる。




  『ランダガルフの拳』
  ベガリンクランのランダガルフはタムリエルの歴史にスカイリム出身の最強戦士の1人として名を残している。
  彼はその武勇と戦闘でのどう猛性で知られており多くの戦いで帰趨を左右した。
  王者ハラルドがスカイリムを征服した時にランダガルフは最後を遂げた。
  王者ハラルドはこの偉大な英雄を尊敬しておりランダガルフの篭手を自分のものにした。
  王者ハラルドの死後、篭手は消えた。
  王者はランダガルフの拳は所有者の腕力を上昇させたと話していた。


  『君主の氷剣』
  君主の氷剣は真にタムリエルでもっとも珍重される秘宝の1つである。
  伝説によると邪悪なアークメイジのアルミオン・セルモは、よく目にする氷の精霊の強形である氷の君主の塊で偉大な戦士のクレイモアに付呪した
  とされている。戦士スルグナー・アッシは遥か遠くの国の偉大なる王者暗殺の一端を担いそこの新しい指導者となるはずであった。
  だが暗殺は失敗してしまい、アークメイジは投獄されてしまった。
  氷剣はその刃に触れる者すべてを凍らせる。
  この剣は次から次へと所有者を変え一ヶ所に長く留まることはない。


  『環境の指輪』
  この貴重品に関して知られていることは少ないがこの指輪は着用者に周囲の環境に溶け込む特殊能力を与えてくれると言われている。


  『使徒のブーツ』
  この使徒のブーツもまた真の謎である。
  誰も見たことがないが噂によると着用者は浮遊することが可能であるらしい。


  『指導者の指輪』
  この指輪はどの魔術師見習いにも珍重される所持品である。
  この指輪は着用者に知力と英知を上昇させる特殊能力を与えてくれるので魔法利用の効率が向上する。
  魔術師カルニ・アスロンが製作者であると言われている。
  彼の指導の下で学んでいた若い見習いの為に作った製作品であるらしい。
  アスロンの死後、リングおよび他の所持品のいくつかが消失し、以後それらはタムリエル全土を巡っている。


  『風の指輪』
  この指輪に関する事実は何も知られていないが、この指輪の名前といくつかの噂から着用者に追加速度を与えると考えられる。


  『吸血の指輪』
  タムリエルの秘宝のなかでもより危険かつ珍しい秘宝である。
  この指輪には相手の体力を奪う特殊能力があり、それらを着用者に与えると言われている。
  指輪の確実な性質とその由来は全く未知である。しかし多くの年長者達はその昔吸血鬼信奉者の教団による、モロウウィンドでのその指輪の邪悪な
  製作について語っている。吸血の指輪は極めて珍しい秘宝であり月の何百周期か毎にしか見られない。


  『エレイドンの防護』
  このエレイドンはブレトンの歴史に登場する伝説の聖騎士である。
  彼はその武勇と全ての不正を正そうとする決意から人気の高い男であった。
  ある物語の中で彼は男爵の娘を邪悪な将軍の手による確実な死から救ったと言われている。
  報酬として男爵は財の全てを投げ打ってエレイドンの為に魔法の盾を作らせた。
  その盾はエレイドンに傷を治癒する機会を与えた。


  『ヘイズドキの杖』
  魔術師ヘイズドキはとても負けず嫌いあったと言われていた。
  彼は全土を歩き回り彼より優れた魔術師を捜し求めた。
  知られている限りでは彼の挑戦に応えられる魔術師は見つからなかった。
  多くの人々が彼の力を恐れた為、彼は寂しさと孤独を感じ自らの生命力を彼自身の杖に結合させ今なお彼の魂はそこに残っている言われている。
  タムリエル全土の魔法の使い手がこの魔法の杖を探している。
  この杖は所有者に魔法からの保護を与えどの魔術師にとっても確かな貴重品となる。


  『血虫の兜』
  虫のの王マニマルコはとっておきの血虫の兜を置き忘れていったと伝えられている。
  この兜は魔法によって形成された骨でできていると伝えられる。
  この兜は利用者にスケルトンの召還とアンデッドの操作を許す。死霊術師にとっては珍重される秘宝となるであろう。


  『竜骨の鎧』
  キュイラスは収集家または英雄が手にできる最高の秘宝の1つである。
  本物の竜の骨でつくられており、第三紀初頭に初のインペリアル魔闘士ズーリン・アルクタスによって付呪された。
  これは真にこの上なく素晴らしい作品であり多くの人々が今なお捜し求めている。
  このキュイラスは着用者に炎耐性と爆炎による敵への攻撃力を与える。
  ズーリン・アルクタスがどのようにキュイラスの付呪に関わったかについてはあまり知られていないが、昔話は彼が旅をしている戦士に借金があったと語っている。


  『スカルクラッシャー』
  非常に大きく強力な武器である。
  この戦槌はウィザードドラッチ・グサルによって魔法を燃料とする火のなかで作られ卓越した武器鍛冶職人ヒルボンガード・ローラマスによって鍛造された。
  鋼鉄は魔法により鍛えられ、武器の重量は驚くほどに軽い為、さらに強力で痛烈な殴打が繰りだせる。
  この戦槌は祝祭にて飾られる予定であったが盗賊に先を越されてしまった。
  スカルクラッシャーは今も製作者を探してタムリエルを旅している。


  『ゴールドブランド』
  この魔法の剣はほぼ完全な謎である。
  それの黄金作りのことや実際に北の太古の竜によって鍛造されたなどと盗賊が話を広めている。
  彼らの物語によるとそれは竜を守ると誓った偉大な騎士に与えられたとされている。
  その剣は所有者に炎ダメージを敵に与える特殊能力を授ける。
  ゴールドブランドは、最近の歴史では目撃されておらず、値する英雄を待っていると言われている。
  (注釈→現在黒の派閥の幹部である阿片が所持)


  『ハイネックトゥナメットの牙』
  ブラック・マーシュはかつてアルゴニアンがワマサスと呼んでいた生き物が生息していたことで知られている。
  北方の男達はワマサスを稲妻を血に持つ知的な竜であると考えていた。
  そのうちの1匹である巨大な獣ハイネックトゥナメットは北方の男たちによって殺されたが大勢の男たちと7日間連日連夜かかった。
  生き残った男のうちの1人は戦利品として牙を家に持ち帰った。
  牙は刃の形に削られ小さなダガーに仕立てられた。
  そのダガーは不思議と獣の魔法の特性のいくつかを保有しており所有者に敵への雷ダメージを可能とする特殊能力を与える。


  『ウンブラの剣』
  この魔剣は太古の魔女ナエンラ・ワエルによって付呪されその唯一の目的は魂の捕獲である。
  斬った相手の魂を封じ込める機会を所有者に与える。
  ナエンラは邪悪な創作が理由で処刑されたがその前にこの剣を隠すことができた。
  ウンブラの剣はその所有者に関してはとても選り好みするので値する人物が見つかるまでは隠れたままである。
  (注釈→現在はアリスが所持)


  『デンスタッグマーの指輪』
  この指輪に関して知られていることは利用者に特定の要素からの保護を与えるということだけである。
  名前が本当にデンスタッグマーでさえ謎である。


  『オレイン・ベアクローの兜』
  オレイン・ベアクローはヴァレンウッドの伝説の英雄の1人である。
  王者ファウムの息子でクランの狩人として尊敬されており将来の指導者だった。
  ウッドエルフの伝説はオレインがエルフの森の魔女グレンヒャファンヴァを1人で倒し永遠に彼のクランに平和をもたらしたと伝えている。
  オレインはその後数多くの偉業を成し遂げて最終的にはナハテン風邪によって命を奪われた。
  彼の兜は彼の偉大さの記念碑として未来の世代が忘れぬよう飾られた。
  クランが分散した為に結果的に兜は失われてしまい今は冒険者たちの貴重な秘宝となっている。
  オレイン・ベアクローの兜は着用者の敏捷性と持久力を上昇させると噂されている。
  (注釈→ギルドマスターとなったフィッツガルド・エメラルダに譲渡されなかった為、モドリン・オレインが現在所持)



  『デイドラの三日月刀』
  おそらく全ての偉大な貴重品の中でも最も珍しくさらに非合法とされた品はデイドラの三日月刀であろう。
  その刀は魔王メエルーンズ・デイゴンのデイドラ部隊によってインペリアルのバトルスフィア攻略時に使われた。これらの非常に独特な刀は帝都
  がバトルスフィアを奪還した際に束ねられ破棄されたとされている。
  1本以外は。
  帝都はすべて破棄されたと信じているがタムリエルのどこかにいまだに1本だけ存在すると噂されている。
  だがその刀を見たものはいない。
  刀は所有者に敵に大打撃を与え麻痺させる特殊能力を授け敵の鎧に大きな消耗を与える。
  もしも存在するのであれば偉大な戦士にとって素晴らしい宝であろう。






  「秘宝、か」
  深遠なる闇の中で誰かが呟いた。
  抑揚のない声。
  感情の籠もらないその声の主は低く呟いた。
  「この手でいくか」
  闇。
  闇。
  闇。
  それは常世とも思えない漆黒なる世界。
  声の主はもう一度呟く。
  「……もう時間がない。時間が……」
  そして声は消えた。
  主とともに。