モリアオガエル
モリアオガエルと再会(2021年)
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2021年もモリアオガエルがこの池に現われ、これで4年連続となった。今年はまず4月30日朝の時点で池の様子を見た。新緑が繁り、前日の日中から翌未明まで降った雨と30日の気温の上昇で、これまでより早く移動して来ているかも知れないと思って観察の開始を早めてみたのだが、30日の時点ではまだ姿がなかった。
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(4月30日の朝、雨後の新緑)
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(8月2日昼、夏の盛りの池の様子。右側が南、左側が北)
以下、五連休後の5月6日から観察を始め、昨年と同じく日々の状況を記録していくこととした。観察時間は基本的に朝7時台からの20〜30分と、昼12時台の20〜30分に限られた。たまに夕刻も数分ていど様子を見に行くことがあった。さらに、昨年6月19日にモリアオガエルの声が複数聞こえていた無人の鬱蒼とした民家(αとする。昨年の記録をご参照。民家の建造を取りやめて残された基礎部分が、池のようになって繁殖場所になっている)についても、近くの道をたまに通り、鳴き始めの時期がいつ頃なのか探ってみた。ただし観察は長くても帰宅途中の4〜5分程度であった。
雄は誕生から2年(雌は3年)で産卵に参加できる成体になるというから、一昨年の大量に育った個体の多くがもしどこかで生き残っていれば、今年は多数の雄が戻って来るかも知れないという期待もあったのだが、現われた雄はおそらく1匹だけで、雌は4匹来たと思われる。それらのうち、姿を確認・撮影できたのはつぎの2匹(雌雄1匹ずつ)だけだった。
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(左が雄〔今年のAとする〕、右の下側が雌〔今年のBとする〕)
Aの姿を確認できた期間……5月17日〜7月1日
Bの姿を確認できた期間……6月8日〜6月9日
ただし姿は確認できなかったものの、Aとみられる鳴き声が7月14日まで続いていた。産卵は4回行なわれたので、通説どおり雌が年に1回しか産卵しないのであれば4匹来たということだろう。以下、各文頭の数字は観察の開始時間である。気温と降水量は気象庁のデータベースを参照した。雨が降ったのに降水量ゼロとなっているケースもあるが、観察場所とアメダス観測所がある場所との距離によって生じる誤差も含まれていると思われる。
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5月6日(木) 晴れ 14.5〜24.9℃ 0mm
7:40、まだモリアオガエルは1匹もいない。池にはアメンボが若干数みられ、アシナガグモが少し巣を張り始めている。テントウムシの幼虫が数匹みられた。朝から上着いらずの暖かさだった。前日、気温もやや上がって夜間に少し雨が降ったが、モリアオガエルは移動して来なかった。毎年聞こえる付近の田圃跡地のカエルたちの声が朝から盛んに聞こえていた。12:25、午後も姿はない。ルリイトトンボが数匹、交尾をしながら飛び交っていた(以下、今年現われたイトトンボはすべて同じ種類だった)。池の底は枯れ葉などの沈殿物がほぼすべて取り除かれているため、今後、水中の生き物たちの生活に影響があることが予想される。帰宅時、民家αからかすかに鳴き声が聞こえていたが、声が小さくモリアオガエルかどうか確認できなかった。4月30日までの時点では鳴いていなかったので、5月の連休中に現われたものか。
5月7日(金) 曇り、夕刻少雨 13.0〜18.8℃ 1.5mm
7:45、今日もまだ姿なし。12:20、午後も同じ。あまり気温が上がらず、昨日のようなイトトンボの飛来もなかった。帰宅時に民家αのそばの道を通ってみた。前日同様かすかな声あり。モリアオガエルに似ているが確証なし。
5月8日(土) 晴れ 10.8〜26.0℃ 0mm
休日につき観察なし。気温上昇。
5月9日(日) 晴れ 14.1〜28.6℃ 0mm
休日につき観察なし。気温上昇。
5月10日(月) 晴れ、時々曇り 12.2〜24.7℃ 0mm
休暇につき観察なし。気温上昇。
5月11日(火) 曇り、夕刻わずかな降雨 13.4〜18.6℃ 0mm
7:40、今朝も0匹。やや気温が下がった。昨日まで初夏並みに気温が上昇していたが、移動して来なかったらしい。12:20、午後も変わらず。社員が池で飼育しているメダカと金魚数匹以外に生き物の姿はなく、わずかにアメンボとクモがいるのみ。テントウムシの蛹が数個と幼虫が数匹みられた。夕刻も同様。帰宅時の民家αでは鳴き声聞こえず。
5月12日(水) 曇り、時々薄日あり 11.5〜20.5℃ 0mm
7:40、今朝も0匹。12:25、午後も変わらず。気温が少し上がったが、トンボの飛来などはなかった。夕刻も同様で民家αの鳴き声も聞こえず。
5月13日(木) 朝曇り、日中から翌未明まで小雨 13.4〜16.2℃ 0.5mm
7:40、今朝も0匹。12:25、午後も変わらず。気温が上がらずやや寒い。錆色の1匹のオタマジャクシが池の底にみられたが、すぐに岩陰に隠れた。たぶんアカガエルだ。数羽のエナガが庭に来て頻りに高い木の枝を飛び回っていた。帰宅時の民家αではほんの少し鳴き声あり。
5月14日(金) 晴れ 13.5〜28.0℃ 0mm
7:40、今朝も0匹。3匹ほどのイトトンボと複数のテントウムシの蛹がみられた。朝から気温が上昇していたが、昨日からの雨では移動して来なかった。12:15、午後も変わらず。さらに気温が上昇して陽射しが強め。イトトンボが数匹飛び交っていた。昼から午後にかけてハルゼミの声が3回聞こえた。これで4年連続となり、わずかな数だろうがこの地域に戻ってきたと言っていい。民家αの鳴き声はモリアオガエルであることがようやく録音によって確認できた。近くには「青梅の森」への入り口があるので、昔から生息場所がある青梅の森の奥から降りてきた可能性が考えられる。
5月15日(土) 晴れと曇りが交互 17.1〜27.0℃ 0mm
休日だが15:30から15分ほど観察。今日も0匹。他の生き物の姿もなし。民家αでは盛んに複数の鳴き声が聞こえた。
5月16日(日) 雨、時々曇り 17.2〜20.9℃ 1.5mm
休日につき観察なし。
5月17日(月) 曇り 16.7〜26.1℃ 0mm
7:33、湿度が高い。今朝は今年はじめての個体(A)の姿を確認した。池の東側にあるせり出し(次の右写真の中央、ヤツデが自生している位置が目印となる)の、真上あたりに繁るモミジの枝にいた。まだ1匹だけである。
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(今年初めて登場。右は3月中旬に撮影したせり出し部分)
背中・臀部・頬などの斑紋によって昨年のAと同一個体であることが分かる。特に右頬の黒丸の左隣りにある斑紋(次の3点の写真)が比較しやすい。昨年もそうだったが、一昨年よりも斑紋全体が濃く鮮明になっている。成長による変化なのか、単に擬態の程度差なのかは分からない。これでAは3年連続の到来で、昨年と同じく一番乗りである。やはりAはこの庭で越冬しているのではないか。昨日から夜間にかけての雨に乗じて移動してきたか。もし一昨年の到来時点で2歳だったとしても、今年で少なくとも4歳かそれ以上ということだろう。民家αよりも現われるのが遅いが、もしかしたら、この池が平日は毎日のように人の気配がある場所なので、そのために周辺地域よりもやや動き出しが遅いのかも知れない。12:15、昼も変わらず、ほぼ同じ位置にいる。日中はまだ鳴き声を発していない。昨年はAを最初に確認したのが5月18日だったので1日早い。わずかにイトトンボの飛来あり。
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(一昨年〔左〕のAと、昨年〔右〕のA)
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(今年のA)
5月18日(火) 霧雨、時々曇り 16.2〜21.9℃ 5.0mm
7:50、朝から湿度が高いが気温はあまり上がらない。すでに梅雨のような気候になっている。今朝もAのみで、去年の彼の定位置だった棕櫚(池の北端ちかくの東寄り)のすぐそばにいた。イトトンボが数匹飛んでいる。12:25、午後も変わらず棕櫚のすぐ近くのモミジの枝にいた。日中にAの鳴き声が少し聞こえたが、盛んではない。アシナガグモがあまりに多く、狭い池の各所を覆ってイトトンボが全滅しかねないレベルで増えているので、クモたちには悪いが毎日巣を取り払うことにした。
5月19日(水) 薄い霧雨、昼から夕刻まで本降り 15.6〜17.5℃ 7.0mm
7:50、気温上がらず。今朝もAのみで、昨日の昼とまったく同じ位置にいた。12:15、朝と変わらず。トンボなどの姿はない。今日は鳴き声が聞こえてこないが、気温があまり上がらない影響か。夕刻も同じ位置にいた。
5月20日(木) 日中曇り、夕刻から雨 14.5〜21.2℃ 3.0mm
7:30、あまり気温上がらず。今朝もAのみ。棕櫚からやや離れた榊の、人の頭ほどの高さに伸びた細い枝の上部にしがみついていた。朝からアシナガグモの巣をいくつも払う。雨後だが他の個体は移動して来なかった。他の生き物の姿もみられない。12:15、昼は昨日と同じ枝に戻っていた。他にはイトトンボが1匹飛来したのみで、池のそばにある筧の水鉢にヒヨドリが来て盛んに水浴びをしていた。ヒヨドリはよくこの水鉢を水浴びに使っている。今日も鳴き声は聞こえず。
5月21日(金) 曇りと雨が交互 15.9〜25.2℃ 6.0mm
7:35、あまり気温が上がらず、湿度が高い。今朝は1匹も姿がみられず。池の縁の低木あたりをヒヨドリが飛び回っていたので、警戒して隠れたか。クモの巣をいくつか払った。12:15、午後も同じ。池の最も北側にある石積みを、アカガエルとみられる数匹のオタマジャクシが隠れ場所にしているのが分かった。毎年彼らは、モリアオガエルの産卵が始まる頃には子ガエルになって池から去っていく。イトトンボの飛来なし。午後、一時の晴れ間があり、やや気温上昇。遠くでかすかにハルゼミの声が聞こえた。
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(石積みの水草に隠れるアカガエルのオタマジャクシたち)
5月22日(土) 曇り、夕刻から雨 15.3〜19.7℃ 14.0mm
休日につき観察なし。
5月23日(日) 晴れ、時々曇り 14.2〜24.8℃ 0.5mm
休日につき観察なし。
5月24日(月) 晴れのち曇り 14.7〜27.7℃ 0mm
7:30、今朝はAのみで、棕櫚から遠く離れ、せり出しの真上あたりに突き出るモミジの枝先にいた。まだ他の個体がいないために行動範囲が広いのだろうか。イトトンボが数匹飛来。クモの巣をいくつか払う。12:15、午後も変わらず。視認できただけでもイトトンボが10数匹いた。鳴き声が聞こえず卵塊もまだ現われないが、2018年は5月21日が最初の卵塊確認、翌19年は5月22日が最初だったので、そろそろだろうか。気温が低かった昨年は6月2日が最初だったが、雌とみられる個体は5月19日に来ていた。遠くに1匹ハルゼミの声、今年は去年までよりも聞こえる回数が多い。ハルゼミは松蝉とも呼ばれておもに松林にいるが、この近辺には松があまり多くない。
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(5月24日昼のAと、交尾中のルリイトトンボたち)
5月25日(火) 晴れ、時々曇り 15.3〜29.0℃ 0mm
7:40、今朝もAのみで、位置も昨日と変わらず。気温が上昇するも湿度は低め。数匹のイトトンボの飛来あり。クモの巣をいくつか払った。12:15、午後も変わらず。イトトンボが盛んに飛び交った。日中は風が強めだった。夕刻もAは同じ位置にいた。
5月26日(水) 晴れ、午後曇り 13.8〜26.0℃ 0mm
7:40、湿度が低く爽やか。今朝は姿が見えないが、池の縁あたりから寝言ていどにわずかな鳴き声あり。おそらくAだろう。イトトンボが数匹飛来。クモの巣をわずかに払ったが、毎日やっているせいかクモの数がやや少なくなってきている。12:15、午後も同じ。鳴き声なし。イトトンボが数匹飛び交う。アカガエルのオタマジャクシが4〜5匹、カエルっぽい姿になりつつある。
5月27日(木) 多雨、日没以降は曇り 14.5〜18.6℃ 29.5mm
7:47、今朝も姿なし。クモの巣をいくつか払った。気温上がらず。昼近くに雨の中で1匹の鳴き声だけ聞こえた。おそらくAだろう。やはり雨が降ると元気になるようだが少し声が小さいか。位置はせり出し付近らしい。12:15、午後も姿が見えない。午後になっても気温が上がらず肌寒い。夕刻にかけて特に雨脚が強まった。
5月28日(金) 晴れ、午後やや曇り気味 12.9〜25.9℃ 0mm
7:35、今朝も姿なし。気温が上がったが湿度は低め。クモの巣をいくつか払った。イトトンボもいない。12:15、午後も同じ。イトトンボが数匹と、1匹のクロサナエ(たぶん雌)が飛来し、池の縁でしきりにホバリングしていた。過去の傾向からすると今頃がモリアオガエルの産卵のピークかと思われるが、その気配がまったくない。Aの姿も確認できず、今年はだめなのだろうか。鳴き声も聞こえなかった。ちなみに民家αの近くもこれまで数回通りかかったが、久しく声が聞こえていない。アカガエルのオタマジャクシたちの旅立ちは間もなくらしい。
5月29日(土) 晴れ、時々曇り 15.5〜28.9℃ 0mm
休日につき観察なし。気温上昇。
5月30日(日) 晴れ、午後は雨と曇り 15.4〜26.1℃ 0.5mm
休日につき観察なし。気温やや上昇。
5月31日(月) 晴れ、午後曇り、夜間雷雨 15.6〜25.6℃ 2.0mm
7:28、気温も湿度もあまり上がらず。今朝はAの姿のみ確認。せり出しの真上からやや南寄りのモミジの枝にいた。今のところこのあたりが縄張りか。棕櫚の葉に乗っている姿を今年はまだ見ていない。クモの巣を2〜3払う。イトトンボはおらず。12:20、午後も変わらずAのみ。鳴き声もない。イトトンボなど他の生き物は皆無。昨年の秋から社員が水面の落ち葉や池の沈殿物(枯れ葉や枯れ枝など)を長い柄付きの網で浚っていたらしい。沈殿物と一緒に多くのヤゴも外に出されてしまったのか、これまでヤゴの姿を視認できない。
6月1日(火) 晴れ 14.0〜25.5℃ 0mm
7:38、今朝は姿がみられず。クモの巣を2〜3払ったのみ。12:20、午後もいなかった。イトトンボが数匹飛来。ミツバチや丸花蜂が盛んに低木の花に集まっていた。トカゲが1匹走り去る姿あり。アカガエルのオタマジャクシたちは1匹もいなくなったようだ。昨日も姿がみられなかったので、土日の間に池を去ったのだろう。民家αでわずかに鳴き声が聞こえた。
6月2日(水) 曇り、時々晴れ 16.3〜25.2℃ 0mm
7:39、今朝も姿がみられず。クモの巣を2〜3払った。朝からイトトンボが数匹飛来していた。12:18、午後も変わらず。全体的に何もなく閑散としている。夕刻も同じ。
6月3日(木) 晴れ、午後曇り 14.9〜27.0℃ 0mm
7:47、今朝も姿がみられず。クモの巣を2〜3払った。イトトンボが数匹飛来していた。12:17、午後も変わらず、イトトンボ数匹のみで閑散。
6月4日(金) 強風を伴う雨、時々曇り 17.0〜23.3℃ 6.5mm
7:47、やや湿度が高い。今朝はAの姿を確認、せり出しにあるヤツデの大葉にしがみついて強い風に吹かれていた。他の生き物の姿は見られず。12:27、午後も変わらずヤツデの葉に。強風に煽られながら眠っていた。過去に雌が現われたのは6月上旬までだったが今年はどうなるか。
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(ヤツデの葉に張り付いて眠るA)
6月5日(土) 曇り、時々晴れ 18.6〜24.6℃ 0.5mm
休日につき観察なし。
6月6日(日) 曇り、時々晴れ 18.4〜25.5℃ 0mm
休日につき観察なし。
6月7日(月) 曇り、のち晴れ 18.5〜29.6℃ 0mm
休暇につき観察なし。気温が上がりやや蒸し暑い。
6月8日(火) 晴れのち曇り、夕刻にかけて少雨 18.0〜31.1℃ 0.5mm
7:33、今朝はAのみ確認。やや棕櫚寄りの木にたかり、少し鳴き声を発していた。そしてせり出しにあるモミジの根元の、ヤツデの葉のすぐ近くの地面に卵塊がひとつあるのを確認した。ようやく今年の一つ目だ。
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(今年最初の卵塊)
毎度のことだが、雌の姿はすでにない。水辺に接する位置なので孵化時にはすぐオタマジャクシが入水できるだろう。日照がほぼない場所である。表面はすでに固化していて水気がないが、内側には水分が感じられる。パンケーキほどの弾力で、頂部にはおそらく雌の尻が入っていたとみられる凹みがある(次の左写真の卵塊手前部分)。脇にある石の上と、すぐそばの池側に出ている小枝に小さな泡の塊が付いているので、産卵を終えた直後に卵塊から尻を抜き、泡だらけの体で石に上って前方の枝をかすめながら池に飛び込んだという経過が想像できる。池の水面にも泡の小さな残骸が2〜3浮いていた。
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(卵塊手前の丸い凹み、右側の石と前方の小枝に残る泡、池に浮かぶ泡)
昨年も産卵後の個体が入水していたので、体を洗うために入るのだろうか。これらの状況から、土曜か日曜の未明に産卵したと考えられる。12:13、午後も変わらず。イトトンボが数匹飛来。今回は雄がAだけしかいなかったと思われる。そして17:53、Aがせり出しにあるモミジの幹の低い位置で雌の背に乗っている姿を確認した。午後の少雨で雌が移動してきたのだろうか。観察4年目にして初めてこうした姿を撮影できた。昨年現われた雌と思われるBとは斑紋が違うので、初確認の個体である。今朝確認の卵塊を産んだ雌とは別個体であろう。この雌を今年のBと名付けておく。
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(初めて撮影できた産卵前の雌雄の姿)
一方、今日現在までこの池でのトンボの羽化はまったくない。例年であればギンヤンマ・シオカラトンボ・オオアオイトトンボなどの羽化が続々と始まっているのだが、1匹も現われない。水中にも毎年、特にイトトンボのヤゴの姿が多いのに、今年はまったく見えない。例年数匹ほど現われるマツモムシの幼体も出てこない。ヒメガムシもいない。
6月9日(水) 晴れ、陽射しが強い 15.9〜31.4℃ 0mm
6:30、気温上昇も湿度は低め。もしかしたら産卵しているかと思い、今朝は1時間ほど早く見に来たがまだだった。今日も他の雄は来ず、このままなら雌たちをAが独り占めとなるか。今朝はBがAを背負ったまま少し北寄りのモミジの枝に高く移動し、ひたすらジッとしていた。Bの腹部があまり大きくなっているように見えないので、産卵は明日以降だろうか。イトトンボが数匹いた。クモの巣をいくつか払った。
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(今朝はAを背負ったまま高い枝に移動していた)
12:10、昼はおんぶのまま池の中に移っていた(次の左写真)。Bがかすかに「ググッ」と低く短い鳴き声を発した。雌の声は初めて聞いたがとても短くて小さい。雌は産卵の前に水に入り、体内に水を入れて泡をふくらませる準備をするというから、そうした前兆行動だろうか。昨日は少し雨も降ったが最初の卵塊の表面はすでに弾力がなく、触っても水分をまったく感じないカサカサの状態になっていた。17:50、2匹はせり出し南側の水辺の草陰に移動してジッとしていた(次の右写真)。
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(産卵前の2匹の様子)
6月10日(木) 晴れ、午後曇りがち 16.3〜30.8℃ 0mm
6:42、気温上昇も湿度は低め。昨夕の草陰に二つ目の卵塊を確認。すでにBの姿はなく、Aはせり出しの真上あたりのモミジの枝に掴まっていた。雄は今回もAだけだったらしい。朝のうち数回、盛んに鳴き声を上げていたが、昨夕の興奮の余韻だろうか。草陰の下や周辺の水面に泡が少し浮かんでいたが(次の右写真の画面左下の水面)、これも産卵後に体を清めた跡か。昨夕に見た段階では産卵は始まっていなかったので、暗くなって間もなく始まったとしても、この卵塊は産卵から12時間以内のものだろう。
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(二つ目の卵塊。昨夕2匹がいたせり出しの南側)
水辺のため初めて産みたての卵塊に触れることができたが、まだ固化があまり進んでおらず、糸を引きそうに指先に粘りつく。長径約11cm。陽光が当たる場所に近いので固化は早いかも知れない。イトトンボが数匹飛翔、クモの巣をいくつか除去。12:21、午後はAの姿もなかった。卵塊の表面が今朝よりもやや凝固。2回連続で地面での産卵になった。木の上を避けた理由があったかどうか分からないが、ヒヨドリやガビチョウが低木の間をたまに飛び交っていることが影響したのかも知れない。シオカラトンボが1匹飛来し、頻りに池の周りを旋回していた。17:48、せり出しの北側にあるモミジの細い幹にAの姿あり。アリにまとわり付かれて頻りに手足を払っていた。
6月11日(金) 晴れ、夕刻曇り 16.8〜29.3℃ 0mm
7:44、気温上昇、湿度もやや高めで陽射しが強い。今朝もAのみ。ヤツデの大葉に張り付いていた。クモの巣をふたつ払う。イトトンボが数匹飛んでいた。昨日の卵塊はさらに少し表面の固化が進んでいたが、まだ頂部は指先に少し粘りつく。12:15、午後もAのみで、池の北側の薄暗い縁で水に入り、水面から顔を出していた。シオカラトンボが1つがい飛び交いながら産卵していた。17:50、昨日の卵塊の表面がパンケーキほどの固さになっていた。
6月12日(土) 曇り、時々晴れ 16.0〜28.9℃ 0mm
休日につき観察なし。蒸し暑い。
6月13日(日) 曇り、夜から雨 18.5〜27.2℃ 3.5mm
休日につき観察なし。今日も蒸す。
6月14日(月) 未明に多雨、昼は少し陽射し 18.8〜27.7℃ 8.5mm
7:50、湿度が高い。今朝もAのみで、せり出しの真上のモミジの枝にいた。鳴き声をよく発していた。雨で元気なのか。今日で一つ目の産卵から一週間ほどだが、池にオタマジャクシは見当たらない。まだ孵化前か。クモの巣を三つ払う。トンボもヤゴもいない。12:20、午後も変わらず。イトトンボが数匹飛び交っていた。一つ目の卵塊の真下には泡が溶けてこぼれ落ちたような形跡がまだみられない。二つ目の卵塊は雨に濡れて少ししぼんでいた。初めて脱皮中のアメンボに遭遇した。今日あたりで関東地方は梅雨入りか。
6月15日(火) 日中強い陽射し、午後曇り 18.7〜29.7℃ 7.5mm
7:40、今朝もAのみで、せり出しのモミジの枝にいた。イトトンボが数匹飛んでいたがこの池で羽化したのではなく、他の場所から産卵に来ているものだ。相変わらずその他のトンボはこの池から羽化せず、ヤゴの抜け殻も皆無だ。一つ目の卵塊も変化はないらしく、オタマジャクシはみられない。12:20、午後もAのみで今朝と同じ枝に鎮座していた。イトトンボ数匹とシオカラトンボ2〜3匹が飛来。今年は昨年と違ってAが棕櫚の葉に乗っている姿を一度もみないが、とくに棕櫚が気に入っていたわけではないらしい。
6月16日(水) 午前曇り、午後から雨 18.1〜25.1℃ 14.5mm
休暇につき観察なし。
6月17日(木) 曇り、時々晴れ 17.8〜27.3℃ 3.5mm
休日につき観察なし。
6月18日(金) 晴れ、午後曇り 16.1〜27.1℃ 0mm
7:33、今朝は1匹も見えず。しかしオタマジャクシの姿を1匹だけ池の南端で確認できた。体長は11〜12mmくらいか。一昨日の多量の雨で一つ目の卵塊がかなり水分を含んで大きくひしゃげているが、この卵塊からオタマジャクシが出てきている様子は見られない。卵塊全体が腐ったかのようにブヨブヨになっており、内側にはオタマジャクシの黒い姿がまったく透けて見えない。二つ目の卵塊も水分を含んで水風船のように池の水面へ向けて垂れ下がっているが、こちらはブヨブヨ感がまったくなく、表面に無数のオタマジャクシの黒い姿が蠢いているのが見える。この卵塊の下部はまだ崩れていないように見えるのだが、今朝のオタマジャクシはおそらくこの卵塊から出て来たものだろう。夜間か未明のうちから池に落ち始めていたのかも知れない。イトトンボが数匹飛来していた。
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(今年初確認のオタマジャクシと、一つ目のブヨブヨになった卵塊)
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(二つ目の卵塊。表面に透ける黒影はすべてオタマジャクシ)
12:15、二つ目の卵塊の下部が溶けてオタマジャクシの落下が進んでいた。卵塊の上から池の水を少しかけて促すと、たちまち数十匹ほどの黒く細身で腹部の黄色いオタマジャクシが落下していった。皆、今朝のオタマジャクシよりもまだ頭が細く、魚の稚魚のような姿をしている。体長は11〜12mmほど。午後には1匹の鳴き声がわずかに聞こえたが、Aかどうか不明。シオカラトンボが1匹飛来。
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(落下が進む卵塊の下部と、落下直後のオタマジャクシ2匹)
17:49、再度、卵塊に少し水をかけてオタマジャクシの落下を促してみたら、10数匹くらい出てきた。跳ねる力がとても強い。水面から離れた位置からでも跳んで行ける力を備えているのだろう。短時間で視認できた限りでも昼と夕刻とで50〜60匹は出ていたので、優に100匹以上は孵化できたものと推測される。オタマジャクシたちは水面に落ちるとすぐさま池の底に素早く潜っていき、水辺や水面には1匹も留まらなかった。そうした習性なのだろうか。
6月19日(土) 雨、日中曇りで夜間雨 18.7〜20.8℃ 12.5mm
休日につき観察なし。
6月20日(日) 未明に雨、曇り時々晴れ 18.6〜29.2℃ 4.5mm
休日につき観察なし。
6月21日(月) 晴れ、昼から曇り時々晴れ 17.5〜27.9℃ 0mm
7:30、今朝は1匹も見えず。ただし、池から東へ10数メートル離れたところにある掘割(庭から竹藪を隔てた敷地外。次の右写真)の付近で、1匹の鳴き声が聞こえた。モリアオガエルの声に間違いないが、Aだろうか? さらに東方にある寺から埋設管を通じて流れてきているのだが、その方面に広がる森のどこかから彼らはこの掘割を経由して来ているのだろうか。堀の東側は民家が並び、さらに先には二車線の道路もある。池の西の遠くにある「青梅の森」からはもっと距離があり、道路も民家も多いので渡ってくる難易度は高いかも知れない。数日前にも一度、掘割近くから鳴き声が聞こえたという未確認情報があった。ここからモリアオガエルの声が聞こえたのは初めてである。止水ではなく、流量も少なくないのでここでは産卵しないだろう。
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(埋設管から水が流れ出す掘割の様子。豪雨が長時間続くと激流になる)
一つ目の卵塊は金曜日よりもさらに潰れていて、もはや孵化しそうな気配はまったくなく、二つ目の卵塊は土曜の雨でほぼ溶け落ちている。オタマジャクシの姿はどこにもない。一昨年と同様、おそらく当分の間は岩陰などに潜んでいるのだろう。しかし枯れ葉などの沈殿物がほぼ除去されているため、隠れる場所が少ないのが気になる。イトトンボが数匹飛来。クモの巣をいくつか払った。12:18、午後も変わらず。シオカラトンボが1匹とイトトンボが数匹飛来。いまだヤゴの姿と抜け殻はまったくない。水際の枯れ葉の下に1匹だけオタマジャクシを見つけたので掬って撮影した。体長は12mmほど。
6月22日(火) 曇り時々晴れ、午後は微雨も 17.3〜27.9℃ 0mm
7:39、今朝も姿なし。掘割からの鳴き声もない。池の北端のほとりに3匹のオタマジャクシを確認できた。草陰や藻のそばでじっとしていた。何匹くらい孵化できたのか分からないが、沈殿物がほぼないことがどう影響しているだろうか。イトトンボが2〜3匹飛来。12:17、午後も変わらず。シオカラトンボが1匹とイトトンボが数匹飛来。オタマジャクシを池の北側の縁で2匹確認、まったく動かず。まだ食餌する必要がないのだろう。17:50、夕刻もAはいなかった。
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(池の北端でじっとしているオタマジャクシ)
6月23日(水) 曇り一時雨、午後晴れ間と雨 17.7〜24.9℃ 37.5mm
7:45、今朝も姿は見えないが、掘割の近くから1匹の鳴き声あり。Aだろうか。おそらくA以外の雄がこれまで1匹も来ておらず、鳴き声も盛んにならないので、自分が呼び水になって他の個体を池に招き寄せるため、Aがそこへ移動して鳴いている可能性もあるのだろうか。イトトンボが2〜3匹飛来。クモの巣をふたつほど払った。オタマジャクシを3匹、池の北側の水際で確認。9:00頃から雨が一時降り、その数十分くらいのちに池のせり出しあたりで1匹の声が聞こえはじめた。掘割方向から移動してきたか。掘割からはまったく聞こえてこない。12:18、昼も変わらず姿は見えないが、池の縁のどこかから、かすかに雌の鳴き声のような「ググッ」という声が一度聞こえたように思ったのだが、姿を確認できなかった。17:50、夕刻も同様だった。夜更けから多雨。
6月24日(木) 未明多雨、曇り一時晴れ、夜雨 17.1〜26.2℃ 2.5mm
7:42、今朝はAの姿をせり出しの北寄りにある木の枝に確認。そしてその斜め下あたりのやや棕櫚寄りの水際に三つ目の卵塊ができていた。昨夜から未明にかけて産んだものだ。昨日の昼に聞こえたのはやはり雌の声だったか。すでに雌の姿はどこにもない。過去2回のように産後の水浴びをしたらしい形跡が水面にも卵塊の周囲にもないが、多量の雨で痕跡が消えたか、または雨の中では水浴びの必要がなかったということかも知れない。
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(三つ目の卵塊。また地面での産卵となった)
昨日の朝、イタチの糞に似たものが岸辺のほど近く(約1.5m)に3個落ちているのを見たが、そうした捕食者が池の周辺に現われているのだろうか。今年はガビチョウの姿も何回となく池のほとりで見かけているし、鳥の糞も池の周りにいくつかみられた。3回連続で岸辺での産卵となったことと関係があるのだろうか。わずかにイトトンボの姿あり。12:23、午前中に声が聞こえていたが、昼は姿がみえない。今回も他の雄の姿はなく、交尾に参加したのはAだけだったのだろうか。昨年何回か声が聞こえた近くの水槽からも、今年はまったく声が聞こえないので、今年この池で育つ子たちはすべてAの子となるかも知れない。シオカラトンボが1匹飛来。夕刻にせり出しから鳴き声あり。
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(イタチの糞? 右は池の近くを飛び回るガビチョウ)
6月25日(金) 曇り、時々晴れ、夕刻雨 18.8〜27.0℃ 1.5mm
7:45、あまり気温も湿度も上がらず。今朝もAの姿はない。イトトンボが2〜3匹飛来。クモの巣をふたつ払った。昨日の夕刻、池のせり出しからはっきりと鳴き声がしているのを確認した。Aだろう。どうやらせり出しに石や溶岩が3〜4個積んである隙間の、草に覆われたあたりの奥に隠れ場所があるらしい。今まで声がするのに姿がまったく見えなかったのはそのためだろう。最近木の枝に登っていないのは、やはり捕食者からのプレッシャーを受けているのか。これでは声の主がAなのか、いつ池からいなくなるのか確認できない。三つ目の卵塊はまだあまり固化が始まっていない。12:27、シオカラトンボが1つがい産卵していた。オタマジャクシを北端の岸辺で1匹確認したが、すぐ逃げられて撮影できず。
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(声が聞こえてくるせり出し。姿はまったく見えない)
6月26日(土) 晴れ、時々曇り 18.4〜27.6℃ 0mm
休日につき観察なし。
6月27日(日) 曇り、晴れ間も。午後少し雨 19.4〜26.8℃ 1.0mm
休日につき観察なし。
6月28日(月) 晴れ、午後曇り、夜雨 17.7〜29.5℃ 0.5mm
7:35、今朝も姿が見えず。オタマジャクシとイトトンボの姿もなし。シオカラトンボが1匹飛来していた。セミの終齢幼虫の死骸が池の底に沈んでいたが、ヒグラシだろうか。12:18、午後も変わらず。オタマジャクシを北端で1匹確認。ニイニイゼミの声が初めて聞こえた。昨年はずいぶん遅れたが、今年の鳴き始めの時期はほぼ平年並みらしい。イトトンボはおらず。
6月29日(火) 朝は多雨、日中晴れ間、夕刻雨 17.7〜26.9℃ 34mm
7:43、今日は朝のみ観察。姿はまったく見えなかったが、雨の中、せり出しの溶岩のあたりから鳴き声が少し聞こえた。おそらくAで、やはり岩の隙間にもぐり込める場所があるのだ。「コココ…」と少し鳴きマネをしたら、わずかだが鳴き声を返して来た。
6月30日(水) 曇り、時々小雨、夕刻多雨 17.4〜21.3℃ 3.5mm
休暇につき観察なし。あまり気温が上がらず。この日、庭木の一部を業者が剪定したが、池の周囲の低木には大きな変化が加えられなかった。
7月1日(木) 未明から多雨、昼は曇り、夕刻雨 19.1〜22.8℃ 44mm
7:55、気温上がらず。今朝はAを確認(これが姿を確認できた今年最後となった)。せり出しのやや北側の木の枝にいた。元気に鳴き声を上げていた。雨が多い日はやはり元気になるらしい。今年はこれまでに複数の個体の鳴き声が同時に聞こえたことは一度もなく、池で聞こえるか掘割で聞こえるかのどちらかだ。今朝もそうである。12:20、午後もほぼ変わらず同じ位置にいた。北端付近の縁でオタマジャクシを2匹確認。少し大きくなっている。今年初めてヒメアカネと思われるヤゴを1匹北端の水底で見つけた。昨年産卵した卵から孵化したものであろう。体長12〜13mmくらいか。シオカラトンボが1匹飛来、イトトンボは皆無。クモの巣なし。
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(久しぶりに確認できたAの姿)
7月2日(金) 早朝強雨、午後から弱まり夜強雨 19.1〜21.1℃ 55.5mm
7:53、今朝はせり出しからの声のみで姿が見えない。Aだろう。三つ目の卵塊は産卵から一週間経ったが、まだ孵化の様子がみられない。一昨日から気温があまり上がらず孵化がやや鈍っているかも知れない。雨の中、昼にかけて盛んに鳴き声が聞こえていたが、声はやはり1匹だけだ。昼は外に出られないほどの強雨のため観察せず。午後も鳴き声が続いた。17:45、夕刻も今朝と変わらず。鳴き声はなし。
7月3日(土) 曇り、夜間強雨 20.1〜25.6℃ 25.5mm
休日につき観察なし。昨日からの豪雨で近県に大きな土砂崩れが発生。建物の倒壊と流失が起こり多数の死者を出した。
7月4日(日) 未明多雨、終日小雨 18.8〜20.7℃ 17.5mm
休日につき観察なし。予報によれば梅雨前線がしばらく停滞とのこと。
7月5日(月) 未明小雨、曇りと雨、夜小雨 19.2〜25.1℃ 3.5mm
7:41、今朝は姿なし。産卵から11日目だが、三つ目の卵塊には表面上の変化がない。北端の石積みで2匹のオタマジャクシを確認。昼近くにせり出しから少し鳴き声あり。12:20、午後も変わらず。イトトンボの姿はなくヤゴも抜け殻もゼロ。北端の石積みをオタマジャクシが隠れ家にしているのだが、二つ目の卵塊から優に100匹以上は孵化したとみられる数に比して、今年は視認できる個体数が少なすぎる。
7月6日(火) 曇り、時々小雨 21.2〜27.3℃ 0.5mm
7:43、湿度が高い。今朝も姿が見えず。今日も北端の石積みにオタマジャクシ2匹。イトトンボは1匹もおらず、クモの巣を2〜3払った。せり出しのヤツデの葉にモリアオガエルと思しき糞がひとつ乗っている。昨日はなかった。ガビチョウが池の周辺を頻りに飛び回っていた。ヒヨドリの姿もちらほら。せり出しのすぐ近くに落とされたばかりの鳥の糞があった。今年は池の縁にこうした鳥の糞が多い。今朝も卵塊には孵化の気配がなく、ほぼ腐ってしまった最初の卵塊と似た感じになっている。雨水を含んでただブヨブヨしていて精気が感じられない。鳴き声は聞かれなかった。今日は午前中の観察のみ。
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(モリアオガエルの糞か。右は鳥〔ガビチョウ?〕の糞)
7月7日(水) 小雨、昼晴れ、のち曇り 22.5〜31.5℃ 0.5mm
7:33、湿度が高い。今朝も姿が見えないが、掘割の方から1匹の鳴き声が聞こえた。やはりAが他の個体を呼びに行っているのではないか。この掘割は止水になっている箇所がなく、多量の雨が降り続くとゴウゴウと音がするほど水量が増すので、彼らが好んで産卵するような場所ではあるまい。かなり距離はあるが、掘割の東方に広がる森のどこかに他の個体がもしかしたら棲んでおり、掘割が池までの中継点になっているのかも知れない(もしかしたら埋設管の中を通ってくるのか?)。卵塊は雨水を含んで垂れ下がるように凹んでいるが、表面にオタマジャクシらしき黒影は見えない。クモの巣を2〜3払った。ふと気付けば大型のアメンボの数がだいぶ増えており、多くの個体が日当たりのいい池の南側にいる。イトトンボは皆無。12:20、午後も変わらず。陽射しが強まり、ニイニイゼミの声が複数。シオカラトンボが1匹飛来。
7月8日(木) 雨 21.7〜24.9℃ 19.5mm
7:45、今朝も姿が見えなかったが、三つ目の卵塊の30cmほど北寄りの縁に四つ目の卵塊があるのを見つけた。昨晩か未明の降雨のうちに産んだものだろう。昨日の昼の時点で池の縁には雌の姿を確認できなかったので、それ以降に来たのだろうか。掘割での呼び込みに成功したということか。表面が瑞々しい気泡をたくさん含んでいて柔らかい。今回は雌だけでなく雄の姿もない。今回も木の枝での産卵ではなかった。三つ目の卵塊は今朝も孵化の様子がない。12:20、午後も変わらず。姿は見えないが、雨量の多い時間帯もあったため池から鳴き声が響いていた。17:45、せり出しから聞こえているのを確認できたが姿は見えない。たぶんAだろう。
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(分かりにくい草と石の間に四つ目の卵塊。また地面での産卵)
7月9日(金) 雨、日中曇り時々雨 21.3〜24.1℃ 8.0mm
7:53、今朝も姿はないが、また掘割の方から1匹の声が聞こえた。今年初めてヒメアカネとみられる小さなトンボが羽化している姿を撮影することができた。12:19、午後も同じだが、また掘割から鳴き声。雨が降るとよく鳴いていた。シオカラトンボが1匹飛来しているが、もしかして同じ個体がずっと常駐しているのだろうか。もうイトトンボの産卵はないらしい。今日も三つ目の卵塊にはオタマジャクシの影がみえないので、どうやらダメだったようである。今年はまだヒグラシの声が聞こえて来ない。夕刻の雨で盛んに掘割から鳴き声が聞こえていたが、声は相変わらず1匹のみだ。
7月10日(土) 晴れ、時々曇り、夕刻雨 21.7〜34.0℃ 6.5mm
休日につき観察なし。かなり蒸し暑い。
7月11日(日) 晴れ、時々曇り、夕刻雷雨 19.9〜31.2℃ 8.0mm
休日につき観察なし。少し雹が降った。
7月12日(月) 晴れ、昼に雷雨、夕刻雨 19.1〜31.7℃ 0.5mm
7:39、今朝も姿がなく声も聞こえない。三つ目の卵塊は孵化した様子がないまま全体が崩れて卵が露出していた。無精卵だったのだろうか。ヒメアカネが1匹羽化していた。池の底が浚渫されても少しはヒメアカネの卵が残っていたらしい。ニイニイゼミの声が2〜3匹聞こえた。12:19、午後も同じ。北から二つ目の石積みに2匹のオタマジャクシを確認。体長が4cmくらいになって、小さな後脚が生えている。個体数がかなり少なく、今年と同様に孵化数が多かった一昨年とはまったく違う光景になっている。池には10cm前後の金魚が5〜6匹いるが、幼生時にほとんど金魚に捕食されたか。沈殿物がほとんどない環境は、幼生が生き延びるのに不利だった可能性が考えられる。シオカラトンボが1匹飛来。
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(三つ目の卵塊は孵化せずに腐敗。オタマジャクシ2匹)
7月13日(火) 曇り、昼から時々雨 21.7〜30.0℃ 15.0mm
7:50、今朝もおらず鳴き声もない。例年、そろそろ親ガエルたちがいなくなる時期ではある。オタマジャクシの姿もなくトンボの羽化もない。毎年ごく少数だが現われるハグロトンボの姿を今年初めて撮影できた。アブラゼミの翅が池のほとりに1枚落ちていたが、まだまったく鳴き声は聞こえていない。今日は朝の観察のみ。
7月14日(水) 曇りと雷雨、昼晴れ、夕刻雨 20.9〜27.5℃ 8.0mm
7:45、今朝もおらず。そのほか特に何もなかった。クモの巣をいくつか払った。アメンボだけは多い。ガビチョウが2羽、池の周囲を飛び交っていた。12:23、シオカラトンボが1匹飛来。掘割から1匹のわずかな鳴き声あり。Aだろうか(これが今年の観察で聞こえた最後の声となった)。遠くでミンミンゼミの声が1匹。ヒグラシはまだ鳴かず、今年も遅い。
7月15日(木) 未明雨、曇り、昼晴れ 20.7〜30.2℃ 4.5mm
7:55、今朝も同じ。そのほか特になし。12:24、午後も変わらず。シオカラトンボが1つがい産卵していた。ニイニイゼミの声が数匹。昼からずっと晴れ渡ったが、このまま関東は梅雨明けらしい。
7月16日(金) 晴れ 20.6〜33.1℃ 0mm
7:56、今朝も同じでそのほか特になし。シオカラトンボが1匹飛来。2〜3匹ほどニイニイゼミの声が響いていた。12:20、午後も変わらず。7月8日に見つかった四つ目の卵塊にはまだ変化がみられない。北端の石積みで1匹だけオタマジャクシを確認した。ガビチョウがまた池の縁あたりを飛び交い、水面でバシャバシャと音を立てている。
7月17日(土) 晴れ 20.0〜33.4℃ 0mm
休日につき観察なし。梅雨明けに伴って気温上昇、蒸し暑い。陽射しも強くなった。
7月18日(日) 晴れ 20.2〜33.0℃ 0mm
休日につき観察なし。
7月19日(月) 晴れ 23.0〜35.8℃ 0mm
7:41、今朝も同じ。四つ目の卵塊は凹んでいるが孵化したらしい様子がなく、表面は全体的にカサカサになっている。羽化したヒメアカネを1匹確認。シオカラトンボが1匹飛来。ガビチョウが1羽池の近くを飛び回っていた。ニイニイゼミが盛んに鳴いている。遠くにはミンミンゼミの声も少し。12:22、午後も変わらず。オタマジャクシの姿も確認できない。ヤゴなど他の生き物の姿もない。
7月20日(火) 晴れ、時々曇り 22.9〜35.3℃ 0mm
7:50、今朝も同じ。例年、親ガエルがいなくなる時期なので、もう来ないだろう。北端から二つ目の石積みでオタマジャクシを1匹確認。後脚が目立つ大きさになっている。シオカラトンボが1匹飛来。クモの巣をいくつか払った。12:23、午後も同じ。今朝のオタマジャクシが同じところにいた。今年初めてオタマジャクシの姿を確認したのが6月18日で、1ヶ月を経過したのでそろそろ子ガエルが上陸していい頃だが、今のところ1匹も姿を確認できていない。四つ目の卵塊は三つ目と似たようなブヨブヨ状態になってしまった。これもダメらしい。相変わらずアメンボだけは多い。夕刻、ようやくヒグラシの声が数匹ていど聞こえた。時期的にかなり遅い。
7月21日(水) 晴れ 22.4〜34.7℃ 0mm
7:49、今朝も同じ。昨日と同じ場所にオタマジャクシが1匹、たぶん同じ個体だろう。四つ目の卵塊はやはりダメで、割いてみたら三つ目と同じになっていた。クモの巣を2〜3払った。12:21、午後も同じ。オタマジャクシが今朝と同じ位置に1匹。後脚は大きくなっているがまだ頭部がカエルっぽくない。シオカラトンボの雄が2匹でバトルしている。セミの声が盛んだ。
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(後脚が大きくなったオタマジャクシ。四つ目の卵塊も壊滅)
7月22日(木) 晴れ 22.1〜34.5℃ 0mm
休日につき観察なし。
7月23日(金) 晴れ 22.4〜34.5℃ 0mm
休日につき観察なし。
7月24日(土) 晴れ、時々曇り 24.1〜33.2℃ 0mm
休日につき観察なし。
7月25日(日) 晴れ 21.6〜34.5℃ 0mm
休日につき観察なし。
7月26日(月) 早朝少雨、曇り、時々晴れ 24.1〜31.5℃ 0mm
7:35、今朝も同じ。オタマジャクシや子ガエルの姿もない。シオカラトンボが1匹飛来。ヒメアカネが1匹羽化。セミの声が盛ん。12:19、午後も同じ。そのほか何もなし。アメンボ多し。夕刻前からようやくヒグラシの声が無数に響くようになった。21日のオタマジャクシはこの四連休の間に上陸していったのかも知れない。
7月27日(火) 朝強雨、昼曇り、時々雨 20.6〜28.6℃ 14.5mm
7:52、今朝も同じだが、台風の接近で雨脚が強めだったため、細かい場所までは観察できなかった。今日は朝の観察のみ。
7月28日(水) 晴れ、午後曇り、夜強雨 22.3〜32.7℃ 7.5mm
7:44、今朝も同じく何もなし。シオカラトンボが1匹飛来し、ガビチョウが2羽来ていた。12:14、午後も同じ。ヒメアカネが1匹羽化。シオカラトンボの雄が2匹でバトル。
7月29日(木) 晴れ、午後曇り、少雨 22.2〜30.1℃ 0mm
7:45、今朝も同じ。ヒメアカネが3匹羽化。シオカラトンボが1匹飛来。12:20、午後も同じ。もし子ガエルが池の縁にいたとしても、昨夜までの雨に乗じて池を去っただろう。真昼からヒグラシの声が多い。
7月30日(金) 未明多雨、晴れ、時々曇り 22.9〜29.6℃ 9.5mm
7:45、今朝も同じ。二つ目の卵塊が孵化したのが6月18日で1ヶ月半ちかく過ぎたので、もうオタマジャクシは残っていないだろう。ハグロトンボが1匹飛来。ヒメアカネが2匹羽化。12:22、午後も同じ。シオカラトンボが1匹飛来。朝とは別個体かも知れないがハグロトンボも1匹いた。ツクツクボウシの声がわずかに混ざり始めた。
7月31日(土) 晴れ 23.2〜27.0℃ 0mm
休日につき観察なし。
8月1日(日) 晴れ 21.8〜34.6℃ 0mm
休日につき観察なし。
8月2日(月) 晴れ、夕刻豪雨 23.3〜34.1℃ 11.5mm
7:34、今朝も同じ。シオカラトンボが1匹飛んでいた以外に何もなく、ヤゴの抜け殻もない。12:17、午後も同じで、シオカラトンボの雄が2匹でバトルしていた。すでにオタマジャクシも子ガエルもいないと判断し、本日で今年の観察を終わりとする。今年も上陸した子ガエルの姿を見ることはできなかった。結局、7月21日にオタマジャクシを1匹だけ見たのが最後となった。無事にカエルになれた個体がいたとしても2〜3匹ていどに留まったように思われる。そう考えざるを得ないほど、今年は4cmクラスまで成長したオタマジャクシが僅少だった。観察期間を通して池の底にオタマジャクシの糞もまったくというほど見当たらず(一昨年は特に池の北側に多量の糞が沈んでいた)、二つ目の卵塊が6月18日に孵化して以降、同月の22日と23日に確認した3匹が今年見ることのできた最多数であった。
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この池で一昨年産まれた雄たちが戻ってくるかも知れない、という当初の期待に反し、今年姿を確認できた雄は常連となったAだけだった。複数の鳴き声が同日同時に聞こえたことがついに一度もなかったので、おそらくAしか来なかったのだろう。興味深かったのは、昨年まで観察した限りでは一度もなかったことだが、声が何回となく東の掘割から聞こえていた点である。池で自分だけが鳴いているのは雌を呼ぶ効果が薄いと判断し、Aが10数メートル先の掘割へ移動して雌を呼び込む努力をしていたのではないかと思われるのだが、Aかどうか姿を確認できなかったので真相は分からない。ただ、今までは彼らがどの方角から来るのかさえ分からなかったが、これで掘割を経由するどこかから来ているというひとつの推論ができるようになった。掘割の東方には、池から遠いが森林地帯が広がっており、そのかなり奥地では、以前からモリアオガエルの生息の噂も多少聞こえなくはない。
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(池と庭の東方には掘割・民家・道路を隔てて森が続く)
今年もオタマジャクシがあちこち泳ぎ回るような光景はまったく見られなかった。やはり個体数が少ないと警戒心が増すのだろうか。最初のうちは池の縁でじっとしてる姿が3匹ほど見られた日があったが、2018年と同じく日数が経つにつれて水際からいなくなり、北側にある薄暗い石積みの中やそのそばから離れなかった。
短時間で目視できただけでも、二つ目の卵塊から50〜60匹以上はオタマジャクシが出てきていた。おそらくその日、夜間か未明から夕刻にかけての、見ていなかった10数時間くらいの時間帯にも少しずつ出ていただろうから、相当数が孵化し、少なくみても100匹以上が池に落ちていったと思われるが、今年の池には5〜10cm前後の金魚が5〜6匹ほどいたので、大半のオタマジャクシが早々に捕食されたかも知れない。最初にモリアオガエルが現われた2018年もオタマジャクシは少なかった。その年は孵化に至ったとみられる二つの卵塊がともに径4〜5cmと小さく、そのひとつ(5月29日のもの)は卵のおそらく半数以上が卵塊から水中へはみ出てしまっていたことから、孵化できた個体が今年よりずっと少なかったと考えられるが、それでも4cmほどまで成長して後脚が生えはじめた個体を20匹ちかく確認できたのであり(推定で20数匹はいたと思われる)、上陸した子ガエルの姿も最多の日で9匹まで確認することができた。今年のオタマジャクシはその年よりはるかに少なく、最終的に4cmクラスはたった2匹の視認に留まり、子ガエルの姿は見ることができなかった。孵化した個体数に比するとあまりにも少ない結果となったが、理由は何だったのか…。
2019年は、推定で100匹を超えるオタマジャクシが4cmクラスまで成長し、群れをなして泳ぎ回る姿がみられた。当時は池の北東側からせり出し付近にかけての、モミジの木陰を中心とした底に枯れ葉や小枝などの沈殿物がたくさんあり、つぎの3点の写真(最初の2点は池の最北端にある石積みの周辺で、右の写真は撮影者を警戒して沈殿物の中に潜った親ガエル〔2019年の個体E〕が数分後にゆっくり出てきた様子)のように、大型の親ガエルが全身を容易に隠せるほどの量が堆積していた。これが幼生たちの隠れ場所や餌場にもなって多数の個体の成長を助けたと考えられる。この年に100匹超を産み落とした卵塊(6月10日のもの)は棕櫚の葉に近い北東寄り、つまり沈殿物がたくさんあるほぼ真上のモミジの枝に産み付けられていたので、落下と同時に沈殿物の奥へ潜って行けたのである。その年は金魚も今年より少なかったので、それも生存への有利な条件になっていただろう。今年はそうした沈殿物や、昨秋の水面に浮かんでいた沈殿前の枯れ葉などが社員たちの浚渫によって春までに除去されていた。
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(左は沈殿物が除去されていた今年の池。右は2019年の様子)
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(せり出し付近の沈殿物〔写真上部〕とオタマジャクシの群れ。2019年)
そして今年は、観察期間中にクロスジギンヤンマやシオカラトンボなどの大型〜中型種がまったく羽化せず、池の底にそれらのヤゴの姿も一度も見えなかったので、春夏を通じて大きなヤゴはほぼいなかったとみられ、オタマジャクシの幼生がヤゴに捕食されるリスクはゼロに近かったと想定される。イモリなどもこの4年ほどはみられず、水中の捕食者は金魚くらいしかいなかった。金魚は食肉性の強い雑食なので、オタマジャクシの幼生は格好のターゲットだったと考えられる。オタマジャクシの泳力は金魚よりも劣り、幼生の時はなおさらなので、金魚たちの俊敏さから逃れるのは至難であり、金魚の口を十分上まわる大きさまで成長しなければ脅威を避けられなかっただろう。孵化数の多さに比して今年のオタマジャクシが最多で3匹しか確認できなかったのは、沈殿物の除去による隠れ場所の喪失が金魚による捕食を容易にさせ、動きの未熟な幼生たちの生存を初期段階から著しく不利にさせていたのがおもな原因だったと考えていいいのではないか。オタマジャクシの死骸などは一度も見当たらなかったので、病気や酸素欠乏などで多数死ぬようなこともなかっただろう。もし2019年も沈殿物がない状態だったら、今年より金魚が少なかったとしても、果たしてあれほどの個体数が生き延びただろうか。
そしてまた前掲したとおり、沈殿物は親ガエルが樹上で外敵に襲われた時など、池に飛び込んで咄嗟に潜り込む避難場所にもなるのである。もしかしたら、Aが溶岩の隙間に入り込んで隠れていることが多かったのも、水中に避難場所がなかったことが一因だったのかも知れない。
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(体長12cmほどの金魚)
一方では、沈殿物の除去によりその他の小型水生生物の生育の場も失われ、それを餌とするヤゴたちの生存を妨げた可能性もあろう。大型のヤゴほど多くの食餌量が必要だろうから、大型のヤゴには生存に不利な環境になっていたとも考えられなくはない。推測は尽きないが、沈殿物の有無が水生生物たちの生存に大きな影響を及ぼすことは確かであろう。
今年はオタマジャクシがガビチョウに捕食されていた可能性もあるのだろうか。明らかに昨年よりも水辺を飛び交う回数が多くなっていたので、この庭を含む一帯が彼らの生息場所になっているとみられる。ガビチョウは地上採食性で昆虫や木の実を食べるという。池の縁で水音を立てていることが何回かあったが、オタマジャクシやメダカを狙っていたのか、水浴びをしていただけなのかよく分からなかった。ただ、水際でオタマジャクシを狙っていたとしても、水辺や水面まであまり近づかなかった警戒心の強いオタマジャクシの個体数を、小さく短いくちばしで目に見えて減らすほど捕食できたとも考えにくい。
いずれにしても、今年のモリアオガエルたちの繁殖は、孵化数の多さからすると成功したとはとても言えないだろう。池の浚渫が原因だったとすれば彼らにはどうにもできないことだが、唯一の卵塊が孵化しなかった昨年と合わせて、結果的には2年連続で不振だったことになる。そして今年Aだけしか雄が来なかったとすれば、来年以降に雄たちが果たして来るのかどうか、もしかしたら、かつてこの池で育った子たちのほとんどはすでにイタチや鳥やヘビなどに捕食されてしまったのかも知れない。来年に期待したい。なお、Aが現われた日(5月17日)と去った日(=声が聞こえた最後の日:7月14日)は、昨年や一昨年、彼らが来ていた期間と大差がなかったと言っていい。来年の親ガエルたちの動きも同じような傾向になるのではないか。
そして前記したとおり、民家αでの鳴き始めの方が何日か早かったことからして、必ずしもこの池での彼らの活動開始が周辺地域と一致しているとは言えないことにも留意しておくべきかと思われる。そして民家αは「青梅の森」の入り口近くにあるが、民家αやこの池にモリアオガエルが現われたのは、青梅市内で10数年前から行なわれている「カエル池プロジェクト」という両生類の保護活動が、有効に影響した結果であるのかも知れない。
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―――付 記(その他の生き物たち)―――
狭い敷地内の庭に作られた小さな人工池ではあるが、今年も池の水際や周辺敷地内では他の生き物たちの多彩な姿がみられた。おもなものをいくつか紹介しておきたい。
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(毎年訪れるハグロトンボと、産卵に来たルリイトトンボ)
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(常連のシオカラトンボと、羽化数時間後のヒメアカネ)
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(テントウムシの蛹と、せわしなく飛び回るクロヒカゲ)
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(常連のアブラゼミと、あまり目にしないヨコヅナサシガメ)
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(発光しないベニボタルに、近年わりと見かけるアオドウガネ)
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(シャクトリムシに、クサギカメムシとノキシノブの葉)
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(脱皮中のアメンボと、ジャコウアゲハの脱皮後の蛹)
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(地面にヒメハナバチ?の巣、低木のうろにはヤチグモ?の巣)
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(ニホントカゲの幼体とアオダイショウ。ともに常連)
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(通りすがりのエナガと、筧の水鉢で水浴びをするヒヨドリ)
今年は4月30日に初めて池の様子を見に行ったが、すでに枯れ葉などの沈殿物は除去されていた。それにより各種のヤゴの幼生、ヒメガムシの卵など水生生物の多くが駆逐されたかも知れないと懸念していたのだが、やはり、毎年5月の末あたりに始まる中型から大型のヤゴたちの羽化がまったく見られず、その頃から水中にたくさん見え始めるオオアオイトトンボとみられるヤゴの姿も、確認できたのは1匹だけだった。毎年姿が見られたマツモムシとヒメガムシも現われなかった。一方、8月初頭までの間、羽化したヒメアカネには10匹ほど遭遇できた。昨年よりは多く、水辺に残されていた抜け殻もそれに近い数だったが、一昨年の同時期に比すると半分未満だったと思われる。常連化していたクロスジギンヤンマ、シオカラトンボ、オオアオイトトンボ、そして昨年多数羽化したタカネトンボは、8月2日までの観察の限りでは成体の姿もヤゴの抜け殻も皆無だった。
昨年も今年も、浚い出した沈殿物にヤゴがいれば池に戻していたというが、ヤゴは幼生時なら体長が数mmから1cm以下で、水から上げると死んだふりもする。そのうえ沈殿物とほとんど同じ色をしているので、なかなか見分けがつかないまま浚い出されていた可能性は高い。ヒメアカネは微細な卵の状態で越冬して翌春に孵化し、梅雨時に急速に成長する種類なので、もしたくさんの卵が昨年産み落とされていたとすれば、ヤゴで越冬するシオカラトンボ・ギンヤンマ・タカネトンボよりも浚い出されずに生き延びる率が高かったのかも知れない。
池の定期的な清掃は必要であり、今年の結果が沈殿物の除去にすべて原因していたとは断言できないが、沈殿物は彼らにとってゴミではなく生存の場なので、除去し過ぎて生き物が暮らしにくい環境になってしまわないよう、前掲した2019年の写真にあるように、一定部分に沈殿物を残しておくなどの対応が生き物たちには必要ということだろう。今年はシオカラトンボとルリイトトンボが盛んに産卵していたので、池の中の環境しだいでは来年以降、多くの羽化が見られるのかも知れない。
(2021年12月31日・記)
追記―― 付近の田圃跡地から毎年聞こえてくるカエルの声は、動物に詳しい知人によるとシュレーゲルアオガエルだという。モリアオガエルの近縁種で、同じように泡で包んで卵を産むことが知られているが、樹上ではなく地中に産卵する。従来、青梅市内では生息が確認されている種類だが、生息数は少ないとみられる。(2022年5月31日)
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