第三級アマチュア無線技士 


受験から合格までの経過

 1998年12月10日 所属する赤十字奉仕団の定例会で、アマチュア無線の資格を取ることを宣言。参考書を購入し受験勉強開始。三級と四級では筆記試験の内容がほとんど同じである。ただ、三級にはモールス受信の実技試験がある点が異なる。以前からモールス信号にはそれとなく興味があったし、せっかくの機会なので、三級に挑戦することにした。1月10日受験願書提出。1月30日、モールス受信速度は30字/分に到達。 3月14日、東京晴海で国家試験。 3月17日に3月15日付けの合格通知ハガキを受領。3月18日、免許証申請書を郵送。


● 国家試験の様子

 3月14日(日) 東京駅から晴海埠頭行 きバスに乗車。1時間に4本程度の運行、200円。
12:50 晴海3丁目下車。12:53 日本無線協会国家試験センター着。会場は試験センターの3Fの1室で、広さは15×20mぐらい。受験者は1室に150名で席は自由だった。受験者の大部分は20〜30代の男性で、女性は5名、小学生はたぶん2名ぐらい。試験監督は4名で、最初にマークシートの書き方の説明があり、受験整理票の写真のチェックが行われた。

 モールス受信実技試験は、13時40分から行われた。大きなラジカセと部屋の天井のスピーカーが使用された。音質は風呂場でスピーカーを鳴らすような、ポーポーポーという少し甘い感じのものだった。はじめに、A〜Zまでの耳慣らしがあり、続いて本番となった。受信がはじまると、150人の鉛筆が机をたたき、こする音が大音響となって室内に響きわたった。問題文は、The increase includes large numbers of young mobile hams(47字、「その増加は、まだ、できてまもない多数のモービルハムによる」)で、ハムの歴史のようだった。文がTheで始まったこともあり、はじめは落ち着いて受信していたが、途中からだんだん緊張してきて、手が震え、ほとんどの字が波をうっていた(これがホントのcontinuous wave)。終了のARを聞いた時はさすがにホッとした。なお、受信終了後、5秒間の字句修正時間が与えられた。

 続いて筆記試験が13時51分より行われた。。非常に驚いたのは、受験参考書の問題と寸分違わぬ問題であったことだ。文はもちろん、数値も、正解の枝番号まで一緒だった。3回見直して、開始35分後に退出。日曜日は国家試験センターの職員があまりいないので、即日結果判定はなく、4-5日うちには通知が来るとのこと。免許申請書類(有償)をもらって帰る。

● 受験勉強の概要

1.「第3級、第4級アマ無線技士試験」を6-7回通読。受験1ヶ月前からノートをとりながら熟読。問題を解く練習もする。受験1週間前には「第3級ハム解説つき問題集」も使って問題を解く練習。

2.通勤の車(往復70分)でモールス練習用パソコンソフト(CWTW)で作ったランダム文字のテープを流して耳慣らしをした。最初は45字/分の速度。

3.パソコンでモールス受信練習(CWTWを使用)。「電信教則本」に出ている練習方法に従い、英文字を打ったテキストファイルを作り、受信練習をした。練習時間は、毎日、30-60分とした。モールス符号は、自分の性格に合っている語呂合わせ法で覚えた。F、・・―・古道具、V、・・・―ベニス風は傑作。これだと受信スピードが遅くても、よく認識できる。受信速度が上がってからは、かえって障害になるのでなるべく忘れるようにした。
 受信の字体は、大文字のブロック体が一番読みやすくていいと書いてあったので、それに決めた。字の書き方の記載もたいへん参考になった。今までの自分の書き方にはずいぶん無駄があることがわかり、かなり書き順を矯正した(特に私は左利きなので書き順が逆)。
 字をだいたい覚えたら、ソフトについている、ランダムにモールス信号を発する機能を利用し、その3分間受信を1日に5〜10回行った。それがだいたい受信できるようになったら、普通文の受信練習に移った。普通文は、CD百科事典の項目を適当に選んでコピーし、テキストファイルにしたものを使用。最初は30字/分でスタートし、現在は60字/分(数字と記号はまだなし)。
 このソフトは100種類以上の音色を選べるので、受験直前には、なるべく聞き取りにくいふわふわした音で練習した。また、普段はヘッドホンで練習したが、ときどきスピーカーも使用した。このソフトはピッチングマシンみたいなもので、たいへん助かった。こういうものがない時代の人の練習は大変だったことと思う。

4.参考書には、受信を1日休むと速度が2日戻ると書いてあったので、なんとしても休まないようにした。風邪をひいたときは、熱で頭がぼんやりしていたので、バッファリンを飲んで30分だけ熱を下げ、その間に布団の中で練習をした。この時はさすがにしんどかったが、こんな状態でも受信できたのだから、試験は大丈夫という自信がついた。

● 参考書など

1.主教科書「3級、4級アマチュア無線技士試験」吉川忠久監修 土屋書店 255p 1575円。説明が詳しく2色づりでわかりやすい。但し、電波が電流になっている等、重大な誤植がいくつかある。また、送受信機の構造図が場所によって突然詳しく書かれたりして、統一がとれていない。

2.「モールス練習ソフト、CWTW」。小学4年生の女の子の3級合格体験記にこのソフトが紹介されていた。シェアウエアなので、料金の支払いが必要(1000円)。ダウンロード。

3.「電信教則本」山崎慎一郎著 CQ出版社 281P 1262円。この本は、電信の歴史から説き起こしているので読み物としてもおもしろく、小さいサイズながら内容が充実している。この本に出ている練習法はたいへん役に立った。今回の受験では関係がなかったが、送信の項目では、手首の動きとキーと接点の接触時間の図解、写真による説明などが詳しく書かれており、奥が深い感じがした。

4.「モールス通信」CQ出版社編集部編 1900円。「電信教則本」をさらにグレードアップした内容。高速電信競技ではハンガリーの人が樹立した、630字/分(PARIS)が世界記録だそうだ。ためしに、CWTWで500ぐらいに速度を上げて聞いてみたが、うがいをしている音のようで何もわからなかった。しかし、人間の耳の識別能力からすると理論的には120000字/分でもわかるはずだとか。この本には、モールスの能力を鍛えていくとどういう世界が広がっていくかの図も載っており、奥が深いと思った。

5.「第3級ハム解説つき問題集」野口幸雄著 CQ出版社 167p 1456円 購入。土屋書店の本にはない問題も載っており、参考になった。例えば、電波利用料は何日以内に納めるべきかという問題で、今回の国試に出題された。

6.「第1級、第2級アマチュア無線技士国家試験用 解説無線工学」野口幸雄著 CQ出版社  2800円 購入。上級の問題はどんなものか見る。

第一級アマチュア無線技士


● 受験から合格までの経過 

 1999年314日 三アマ国試を東京で受験。3月15日 三アマ合格。3月16日無線工学から勉強開始。1アマも2アマも出題範囲はほとんど同じである。さらに1アマ試験から和文モールス受信が廃止され、欧文の受信も60字/分なので、これは、1アマをねらうべきと思った。6月1日 1アマの受験申請書を提出。受験票がなかなか来ない。3アマの時は、提出二週間後には来ていたのに、今度は、試験二週間前にやっと来た。
 
8月1日 一アマ国試。この後、モールス受信を白紙で出した夢やら、計算問題が全然できない夢やらで2-3回うなされる。8月29日 、結果通知ハガキを受領。以前読んだ受験体験記に、合格なら、右下に日付が入っているので、シールを右下からそーっとめくったと書いてあった。それで、それにならってそーっとめくった。お!26という字が見える。いっきにめくると 合 格 平成11年08月26日とあった。やったー!思わず、ハガキにキスする(土間に落ちてたけど。ダンゴムシも這ってたなー)。8月30日 免許証申請書を投函する。

● 国家試験の様子

 8月1日(日) 朝6.00起床、6.55発列車に乗車、8.55試験会場着。会場は、公園内の新築の公民館で周りは静かだった。会場は2階の会議室で、冷房もよく効いていた。部屋の広さは、10×20mぐらいで、40名収容規模。受験者は30名ぐらいで、30〜40代中心。女性1名。試験監督は4名。席は自由だったので、真ん中の列の前から5番目にすわる。私は、完全な夜型なので、こんな時間に起きると、頭が全然冴えない。その上、前日からおなかの調子が悪く、トイレが恋しい。階段を下りるとき足に力が入らない。最悪のコンディション。しかし、3アマ受験の時に比べ、あまり緊張しなかった。部屋が小さいのと、試験2回目だからだと思う。

 無線工学09.30開始。問題は、ほとんど既出問題。新問題が3つぐらいか(数値のみ変わっているものは除く)。まったくお手上げだったのは、アンテナの指向性を問う問題と、夏に7MHzで交信できない地域を問う問題の2問。実際に短波を運用していればどうということない問題だが私には無理。計算が面倒なのは1問のみだった。それから、定電圧回路の問題文にミスがあった(既出問題なので、影響はないと思うが、そのとおりに考えると正解はない)。11.40までねばって退出。昼は、近くの神社へ行き、木陰でセミの声を聞きながらおにぎりを食べる。誰も来ない。神社に合格を祈願して、12.30会場へ戻る。

 モールス受信13.00開始。大型のカセットテレコを使用。音は、東京の3アマ受験の時より、エコーが強く、切れが悪くてわかりにくい。受験者が少ないので、3アマの時のように鉛筆の音が響きわたることはなかった。最初、THと続いたので、次はEかなと思ったらOで、やや動揺し、THOUGHのところ、GをFと誤受信。さらに、同じ文字が続く単語でひっかかり、その次の単語もしばらく脱字、あせって頭が白くなりかけた。しかし、気を取り直し、あとは最後までつききった。AR送信後、5秒間の訂正時間があった。ここで、脱字の1文字を加筆した。結局、3カ所でつまづき、誤字3、脱字3で、最低でも-12点となり、がっくり。かなりやばい(合格は80点以上)。問題文には、法律、海、日本海などという言葉があったので、海事法か漁業協定の話か? 数字が出るのを今か今かと待ちかまえていたが、出ずじまい。記号もなしだった。

 法  規13.30開始。ほとんど既出問題。3アマの問題が、2問出ていた。非常通信と電波の定義。お手上げは1問で、社団局の外国人の選解任届けの書類の話。そんなもん知らんがな! 14.20までねばって、退出。170円で免許申請書を購入する。

 結果発表は1ヶ月後とのこと。3アマの時は、試験後3日目で結果がわかったのに、随分かかると不思議に思った。受験者は少ないし、コンピュータで瞬時に採点できるし、モールスだって3アマより少し長い程度の文なのに..。自己採点では、無線工学は30問中2問まちがい、法規は25問中3問まちがい、モールスは合否ぎりぎりという結果となった。モールスをもっと練習しておけば良かったと後悔しきり。5ヶ月の努力が水泡に帰したかなーと、気がぬけてしまい、会場から、猛暑のなかを、とぼとぼと駅へ向かって歩いた。夏は終わった。しかし、家へ帰ってからは、気をとりなおし、来年の甲子園をめざし、また練習を開始した。

● 受験勉強の概要

1.無線工学 内容は3アマでやった内容をさらに詳しくしたものである。最初、参考書を読んだとき、うわーと思ったが、スルメのように何度もかんでいるうちに、だんだん理解できるようになった。

(1)参考書 (主)解説・無線工学 野口幸雄著 CQ出版社 415p 99年3月3日購入 2800円。1アマ、2アマ受験用参考書。試験問題を貼り合わせて作ったような感じの本。本文の一字一句もおろそかにできない。電気回路の項で、ベクトルから複素数への導入が非常にスムーズ。最近の五者択一式問題に対応しており、練習問題も豊富に掲載。ただし、解説が簡単すぎて、理解できない部分がある。また、第一版のせいか、数式、添え字などに誤植が多い。
 (副1) 上級ハムになる本 大塚政量著 CQ出版社 479p 99年5月19日購入 1600円 これも1アマ、2アマ用参考書で、1967年の初版以来30年以上も版を重ねて読まれているベストセラー。しかし、改訂、改訂で、内容を継ぎ足してきたので、記述が、あっちこっちに飛んだりして、ゴタゴタした感は否めない。例題が少ない上、昔の記述式の問題なので、現在の試験には対応していない。しかし、解説がていねいなので、(主)の簡潔すぎる部分を補うのに使った。(これを読むと、昔の試験が、いかにたいへんだったかがわかって興味深い。知人の話では、面接まであったそうだ。)。
 (副2)第1級ハム解説つき問題集 野口幸雄著 CQ出版社 359p 99年5月22日購入 2700円載っている問題は、ほとんど(主)の例題と同じ。

(2)その他の参考書

・JARLアマチュア無線ハンドブック CQ出版社 503p 99年3月20日購入 3300円
・トランジスターの基礎 奥澤 煕著 誠文堂新光社 94p 99年6月16日 1223円
・HF実践入門マニュアル 今村桂一郎著 CQ出版社 144p 99年6月4日購入 1529円
・DXマニュアル 井原 昇著 CQ出版社 287p 99年6月16日購入 1800円

(3)メニュー 勉強時間は、1日に1-2時間(土日は4-5時間)。(主)参考書を2回通読する(5-10日かかる)。最初、読んだとき、なんじゃこれは?でさっぱりわからず。3回目は、全問題を解きながら読む(23日)。4回目は、解説を見ないで問題のみ解く(32日)。5回目、同じく問題のみ解く(17日)。6、7回目、公式、表などを覚えながら読む。通読5回目になると、だいたい内容を理解できた。不明の点は、(副1)や、その他の参考書を読んで補足した。特にトランジスタの動作がよくわからないので苦労した。問題を解く練習を(副2)を使って試験1ヶ月前に1回、2-3日前に1回行う。

2.法 規  法規の問題は、内容的には3級の問題に少し+という感じなので、無線工学がひととおり終わってから開始した。

(1)参考書 法規専用のものはないので、上の1ハム解説付き問題集を使った。

(2)メニュー 勉強時間は、試験2ヶ月前から毎日30分。まず、問題集を1通り解く。間違ったところをチェック。関係条文をすべて、ワープロで打つ。試験1ヶ月前より、条文をテープに吹き込んで、通勤の車の中で、聞き流し。試験10日前に問題集をもう1度解く。周波数表、周波数帯幅、スプリアス発射の許容限度などの表を丸暗記。条文の聞き流しは、頭に全然入っていなかった。やはり、書いて字で覚えないとダメのようだ。

3.モールス 国試の受信速度は、60字/分。数字、記号については、参考書には、出るとも出ないとも書かれていないが、ここで覚えないと、永久にできなくなるので、覚えることにした。3アマ試験終了時に45字/分ぐらいが取れていたので、60字はすぐと思ったが、意外に苦戦となった。

(1)練習ソフトは、3アマの時と同じ、CWTW1.11、試験直前に、CWTW−PROに変更。

(2)メニュー 受信練習は、毎日、昼休みに30分、寝る前に30分とした。それ以上長くやると、急激に受信能力が落ちる。また、テープに乱数暗文80-100字/分を録音し、車の中で耳慣らしをした。

 まずはじめに数字、記号を練習した。今度は、初めから80字/分のスピードにした。13日でだいたい覚える。しかし、アルファベットと混合して、乱数暗文にすると、全く取れない。Jと1、Hと5、1と’などなかなか区別できない。国試と同じ採点方式で80点以上取れるまでに50日、さらに90点程度になるまで、もう30日かかった。

 次に、普通文の受信をはじめたが、また、全然取れなくなった。iやeやtがわんさか入ってきて筆記が追いつかなるし、たまに数字や記号が出てきて、これなんだっけで脱字。字を小さくして、速度を上げるなどして対応。普通文は、3アマの時と同様、CD百科事典(Microsoft Bookshelf 95)の文をランダムに選んで使った。百科事典の解説文は、ちょうど3分から6分ぐらいになり、数字、記号もたっぷりで手頃だと思う。普通文で80点以上になるまでに30日かかった。気がつけば、試験の10日前。

 ここで、CQ誌の付録についていた、モールス練習ソフトCWTW−PROを導入した。これは、これまでのもののバージョンアップ版で、練習文の編集機能が強化され、 ctrlキーを叩いて送信練習もできる。試験10日前から、送信練習もして、受信能力を高めようとした。試験7日前から、受信速度を60字/分に落とす。だいたい、2カ所ぐらいでつまづき、誤字2個、脱字3個ぐらいが平均だった。結局、本番もほぼそのレベルだった。

 まとめ  筆記試験は、既出問題がほとんどを占めるので、それさえ解ければ合格ラインに到達できる。同じ問題を何度も何度も繰り返してやるのがベストと思う。なお、インターネットに1アマ合格体験記が出ているのでそちらもどうぞ(合格した後で見た。無線従事者資格の館のキーワードで検索すると見つかる)。その中で、JI8KQR氏のホームページは、わかりやすくてためになる。その内容には、私も全面賛成。この中で、1ハム解説付き問題集を「かえる本」と呼んでいるのには笑った(表紙にカエルの絵が描いてあるので)。また、阿部充弘氏の「62才からはじめた1アマ受験」もホロリとさせられる。それから、最近、既出問題を全部暗記して合格する方法を述べた本がCQ出版社から刊行されている(楽しくおぼえる1アマ攻略)。著者の一人は、1アマをとった中学3年生の女の子。

● あとがき 

 一アマだ、と胸を張りたいところですが、和文モールス×、ハンディ機のみ所有、開局1ヶ月でログ帳真っ白。こっそりと小声で自慢します、どうだ!みたか?やったぞ、このやろ。
 昨年の12月に3アマの勉強を始めたとき、先輩からいただいたアドバイス「上級までいっきにめざす、一服すると長い一服になる」は、本当によく効いた。そのため、これまでの8ヶ月間は、ほとんど受験勉強に費やしたという感じになってしまった。しかし、電気、電波の世界がどんどん広がって行くようで、とても楽しかった。高校の頃、あんなに毛嫌いしていた物理だったのに、今回は、次々と出てくる公式にも不思議と抵抗を感じなかった。むしろ、式で数値を予測できるのに感激というか、驚異というか、そんな感じだった。日頃の仕事(農業技術開発)は、天気、土、作物がからみあった、もやもや、うやむやの世界なので、その反対の世界にあこがれていたせいかもしれない。今後は、電気についてもっと深く調べ、あわよくば仕事の方にも生かせればと思っている。また、モールス受信は、現在80字/分ぐらいだが、100字/分を何とかクリアしたい。あと、無線機も買わなければ。 
 最後に、いろいろとアドバイスをしていただき、全く何もないところからからおだてて1級までとらせてくださった赤十字奉仕団関係者のみなさんに、心よりお礼申し上げます。

 


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