■ 簡易空撮気球 「ひばりは見た!


 農業は、一般に広い面積で行われるため、その全体の様子を一目で把握することは、ほとんど不可能です。しかし、田畑をヒバリのように100m程度の空中から見ることができれば、作物の生育ムラ、雑草の生え具合、湿害の場所など、地上からではすぐにわからない全体の情報を手に入れることができます。そして、こうした情報を元に、栽培管理(例えば追肥)や土壌管理(例えば排水溝きり)をきめ細かに行えば、生産を安定させたり資材を節減したりすることができます。
 空から田畑を見るには、一般に、人工衛星、航空機、ラジコン飛行機、気球(空撮会社)による空撮が考えられます。しかし、それらは、価格が高かったり、撮影範囲が広すぎたり、解像度が不十分だったり、撮りたいときに撮れなかったりと、1ha程度の田畑を手軽に安価に見るには、適当な方法ではありません。そこで、ポリ袋ヘリウム気球と小型デジタルカメラおよびラジコン装置を組み合わせて簡易空撮装置「ひばりは見た!」を作製しました。製作にかかった費用は、カメラを除いてわずか2万5千円です。これを使って、空撮を行ったところ、地上からではほとんどわからない、畑全体の様子が一目でわかるようになりました。
 この気球は、研究関係者だけでなく、農家、普及指導関係者にとっても、栽培管理の効率化に役立つと期待されます。

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1 気球の機体 空撮気球は、機体部とカメラ部からなっています。機体部は、大型ポリエチレン袋(2.1m×1.2m×0.05mm厚)にガス注入コック、ハトメ、水平翼をつけ、袋の口を熱でシールし、ヘリウムガスを充填したものです。大きさは1.8×0.8×0.6m、体積は0.96立米、最大積載重量は600gで、リールに巻いた投げ釣り用糸で係留します。折り畳めば65×45cmになり、重さはカメラ、リール、送信機も入れて1.5kgなので、持ち運びも簡単です。
2 気球のカメラ部 カメラ部は、小型デジタルカメラをゴンドラに入れて気球につり下げ、ラジコンにより、撮影方向を変えてシャッターを押します(総重量271g)。気球は、高度150m程度まで上げることができ、撮影できる範囲は、28mm広角レンズで高度の1.27倍になります(横位置)。なお、ラジコンを使わない場合は、係留索を上下に動かしてその振動でゴンドラを回転させる簡単な装置とカメラのインターバルタイマーで撮影します。 
3 地上から見た大豆畑 この気球を使った雑草調査の例を紹介します。左の写真は、リビングマルチという、生きた草で雑草を抑える栽培法の大豆畑です。広さは100×42mです。地上からの撮影では、雑草が奥の方に生えているのがわかりますが、畑全体の分布は全くわかりません。
4 空から見た大豆畑 しかし、空撮装置で上空37mから撮影すると、左半分の小麦を使ったリビングマルチと右半分の大麦を使った場合の雑草(シロザ)の発生量や分布の違いが一目瞭然でわかります(うすい緑色の部分がシロザ、濃い緑が大豆)。このような画像があれば、畑全体を代表する調査地点を簡単に決められるので、試験の精度が上がります。
5 イメージJによる画像解析 左右の雑草量の違いを数値で表すことも可能です。画像解析ソフト(フォトショップLEとImageJ)で雑草部分だけを黒色に変換して、雑草が区画に占める面積割合を測定してみました。すると、左が7.4%、右が15.9%で右の方が2.1倍多いという結果が出ました。 このように空撮により、地上調査の支援だけでなく、上空からの調査も行うことができます。なお、左右の雑草の生え方の違いは、大麦の方が小麦より早く枯れて、雑草の抑止力が弱くなったためと考えられます。
関連文献 上の方法に関連する発表論文および参考文献。
空撮気球作製マニュアル(東北農研センターのHPにリンク) 空撮気球の作り方や画像の分析の仕方を紹介したマニュアル。写真多数、3.8MバイトのPDFファイル(読むにはアクロバットリーダーが必要です)。

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