語釈
仮名序
@紀貫之
やまと歌は、人の心をA種として、よろづの1言の葉と1ぞなれりける。世の中にある人、
Bことわざしげきものなれば、心に思ふことを、見るもの、聞くものにCつけて、言ひいだ
せるなり。2花に鳴く鶯、水に住むかはづの声を聞けば、2生きとし生けるもの、いづれか
歌をよまざりける。3力をも入れずして、天地を動かし、目に見えぬD鬼神をも、あはれと思
はせ男女のなかをもやはらげ、猛き武士の心をも慰むるは、歌なり。
(注)@紀貫之 ?〜九四五?。『土佐日記』の作者。三十六歌仙の一人。A種として
もとにして。「種」は「葉の縁語。Bことわざ 事柄と行為。Cつけて 託して。D鬼神
霊魂と神霊。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 紀貫之 2 鶯
3 鬼神
4 武士
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 やまと歌
2 しげし
3 かはづ
4 やはらぐ
三 傍線部1〜3の問いに答えよ。
1 「言の葉」とは何か。またなぜそのような言い方をしたのか。
2 「花に鳴く鶯、水に住むかはづ」は、それぞれいつの季節の風物か。
3 文の構造を説明せよ。
四 二重線部1・2の文法事項とAについて答えよ。
1 結びの語とその活用形を答えよ。
2 品詞分解し、口語訳せよ。
A 対句を抜き出せ。
五 口語訳 和歌は、人の心をもとにして、たくさんの言葉となったものである。この世の中に生きている人は、事柄や行為が多いものであるから、(その中で)心に思うことを、見たり聞いたりするものに託して、言いだしたのである。花の枝で鳴く鶯や水に住むかえる声を聞くと、生きているあらゆる生きものの中で、歌を詠まなかったものがどこにあろうか(いやどこにもない)。力をも入れないで天地を動かしたり、目に見えない霊魂と神霊をも感動させたり、男女の仲をも仲むつまじくさせたり、勇ましい武士の心をも慰めるのは歌である。
構成
和歌 心に思うこと 鶯 蛙の声 誰も歌を詠む。
主題 和歌の効果と役割
仮名序 解答
一 1 きのつらゆき 2 うぐいす 3 おにがみ 4 もののふ
二 1 我が国固有の歌。和歌。 対 唐歌(漢詩) 2 数量が多いこと。3 かえる。
4 仲むつまじくさせる。
三 1 何か 言葉。 なぜ 「種」といったので「葉」に引っかけて「言の葉」といった。
2 春と夏。
3 力をも入れずして、てんちをうごかしー
目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ ー ―は、歌なり。
男女のなかをもyはらげ ―
猛き武士の心をも慰める ―
四 1 ける助動けり体過 2 生き動用生くカ四 と格強意 し副 生け動已生くカ四
る助動り体完 もの名 生きているあらゆる生きもの
語釈
春立ちける日よめ1る @紀 貫之
2 袖ひちてむすび2し水のこほれ3るを春立つ今日の風やとく4らむ
(注)@紀 貫之 ?〜九四五?。『古今和歌集』の選者の一人。平安時代の仮名文学の先駆者として活躍した。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 紀 貫之 2 袖
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 春立つ
2 ひつ
3 むすぶ
三 次の問いに答えよ。
1 この歌は一首の中に夏,冬,春の三つの季節を読み込んでいる。それぞれどの語によまれているか。
四 二重線部1〜4の文法問題に答えよ。
1 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
2 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
3 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
4 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
修辞法 1 むすび,春,立つ,とくを何というか。
五 口語訳
袖をぬらして手にすくったあの水が凍っていたのを立春の今日の風が溶かしているのだろうか。
構成
水の三様態
主題 春の喜び
2 解答
一 1 きのつらゆき 2 そで
二 1 立春。 2 濡れる。 3 (掬ぶ)両手の手のひらで水などを掬う。
三 夏 むすぶ 冬 こほれる 春 解く 1 縁語
四 1 助動り体完 2 助動き体過 3 助動り体完 4 助動らむ体現在推量
語釈
語釈
春の夜、梅の花をよめる
@ 凡河内躬恒
41 春の夜のやみは1あやなし梅の花2色1こそ見えね2香やはかくるる(巻一 春歌上)
(注)@凡河内躬恒 生没年未詳。九世紀後半から十世紀の歌人。三十六歌仙の一人。
(注)
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 凡河内躬恒
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 あやなし
三 傍線部1〜2の問いに答えよ。
1 何がどのように「あやなし」なのか。
2 「色」と対比されているものを記せ。
四 1・2の文法事項と修辞法について答えよ。
1 「こそ」の結びの語と活用形を記せ。
2 「香やはかくるる」を品詞分解し、口語訳せよ。
3 何句切れか。
4 「かくるる」の修辞法。
五 口語訳
春の夜に、梅の花をよんだ歌
春の夜の闇はすじが通らない。梅の花の色彩こそ見えないけれど、香は隠れるだろう
か(いや隠れない)。
構成
色彩なし
闇 筋が通らない
香 あり
主題 梅の花を賞美 嗅覚的美
41 解答
一 1 おおしこうちのみつね
二 1 筋が通らない。
三 1 春の夜の闇が梅の花を見えなくさせているのに、香りを隠すことができないのは筋がとおらない。 2 香
四 1 ね助動ず已 2 香名 や係(反語) は係 隠るる動隠る体ラ下二 香りは隠れるだろうか(いや隠れない)。
語釈
題知らず 読み人知らず
45 木の間1よりもりくる月の影2見れば心づくしの秋は3来にけり
一 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 漏る
2 心づくし
二 二重傍線部1〜3の文法問題に答えよ。
1 文法的意味
1、 3 品詞分解 口語訳
三 口語訳
木の間から洩れて来る月を見ていると、様々な物思いをする秋が来たのだったなあ。
構成
木の間の月 様々なもの思いをする秋が来た。
主題 物思いの秋
1841 解答
一 1 隙間から外に出る。2 さまざまな物思いをすること。
二 1 格助経過 2 見れ動マ上一已 ば接助順接確定偶然 見ると
3 来動用カ変 に助動ぬ完了用完了 けり助動けり止詠嘆 来たのだったなあ
語釈
@
渚の院にて、桜を見てよめ1る
A
在原業平
53 1世の中にたえて桜のなかり2せば春の心はのどけから2まし
(巻一 春歌上)
(注)@渚の院 今の大阪府枚方市渚にあった惟喬親王の別荘。A在原業平 八二五〜八八0。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 渚の院 2 在原業平
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 たえて
どの語と呼応しているか。
2 のどけし
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 この歌は桜に対するどのような思いをよんだものか。
四 二重線部1・2の文法事項に答えよ。
1 る 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
2 せば・・・・まし 品詞名 基本形 活用形 文法的意
事実はどうであったか。
五 口語訳
渚の院で、桜を見て詠んだ(歌)
在原業平
世の中に全く桜がなかったとしたら、春の(人の)心はのんびりしているだろうが。
構成
桜がなければのどかだ。
主題 桜を愛でる。
53 解答
一 1 なぎさ 2 ありわらのありひら
二 1 全く。なかり。 2 ゆったりしている。
三 1 桜がないほうが安心だと思うほど強く、桜の花を愛で、散ることを惜しむ。
四 1 助動り体完 2 助動まし未反実仮想 桜がなかったらのどかだった。
事実 桜があるので、強く気を引かれ、のんびり出来ない。
語釈
桜の花の散るをよめる
@ 紀 友則
84 ひさかた1の光2のどけき春3の日にしづ心なく花4の散るらむ
(巻二 春歌下)
(注)@紀友則 ?〜九0五?。紀貫之ん従兄弟。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 紀友則
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 しづ心
三 二重線部1〜4の文法問題と修辞法A・Bに答えよ。
1 の 文法的意味
2 の 文法的意味
3 の 文法的意味
4 の 文法的意味
A ひさかたの 修辞法
B しづ心なく 修辞法
四 口語訳
桜の花の散るのを詠んだ(歌)
光のおだやかである(この)春の日になぜ落ち着いた気持ちもなく花が散っているのだ
ろう。
構成
上の句 下の句
春の日 散る花
のどか 落ち着かない
主題 散る花を惜しむ気持ち
84 解答
一 1 きのとものり
二 1 落ち着いた気持ち
三 1 「ひさかたの」の一部 2 「のどけき」の一部 3 格体修ノ
4 格主ガ 5 枕詞 光りにかかる 6 擬人法
語釈
亭子院の歌合わせの歌 紀貫之
89 さくら花散り1ぬる風のなごりには水なき空に波2ぞ立ちける
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 亭子院
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 歌合わせ
三 二重傍線部1、2の文法問題と修辞法Aに答えよ。
1 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
2 結びの語 品詞名 基本形 活用形 文法的意
A 「さくら花」の見立てを説明せよ。
四 口語訳
桜花が散ってしまった其の時の風、その名残として水のない空に波が立つ。
構成
風に散る桜 空に波が立つ
主題 散る花を惜しむ。
89 解答
一 1 ていじいん
二 1 左右に分かれた両方から出された和歌を二首一組のつがいとして合わせ、それに勝負を付けて競う形態の和歌の会。
三 1助動ぬ体完了 2 ける助動けり体過去
A 空を海と見立てた。
語釈
題知らず @小野小町
113 1花の色は1うつりにけりなAいたづらにわが身世にふるながめせしまに
(注)@小野小町 生没年未詳。859〜877年。六歌仙の一人。Aいたづらに むなしく。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 小野小町
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 うつる
2 ふる
3 ながめ
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 ここではどんな意味がこめられているか。
四 二重傍線部1の文法問題と修辞法A〜Cに答えよ。
1 品詞分解 口語訳
A 修辞法 ふる
B 修辞法 ながめ
C いたづらにわが身世にふるながめせしまに
五 口語訳
花の色があせてしまったことだなあ。長雨が降り続きわが身を世に処していくための物思いに空しく時を過ごしている間に。
構成
花が色あせる
主題 老いを自覚した女
113 解答
一 おののこまち
二 色あせる。2 雨が降る。時がたつ。 3 眺める。長雨。
四 1 うつり動うつる用ラ四 に助動ぬ用完 けり助動けり用過 な終助詞詠嘆
花の色があせてしまったことだなあ。
A 掛詞 降る 経る B 掛詞 長雨 眺める C倒置法
語釈
題知らず
よみ人知らず
139 @五月待つ1花たちばなの香をかげ1ばA2昔の人の3袖の香2ぞする
(巻三 夏歌)
(注)@五月待つ 五月を待って咲く。A昔の人 昔なじみの人。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 五月 2 袖
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 袖
2 たちばな
三 傍線部1〜3の問いに答えよ。
1・3 言葉が省略・収縮されて表現されている。それぞれどのような言葉を補った
らよいか。
2 作者にとってどういう人か。
四 二重線部1〜3の文法問題と修辞法Aに答えよ。
1 ば 文法的意味
2 ぞ 結びの語 活用形
A する 修辞法
五 口語訳
題不明
五月(を)待っ(て咲く)花(の咲いている)橘の香をかぐと昔(なじみ)の人の袖(
にたきしめられた薫物)の香がする。
構成
橘の花の香り=昔の人の袖の香り
主題 昔の恋人を思う。
139 解答
一 1 さつき 2 そで
二 1 衣服の腕を通す部分。2 蜜柑類の総称。
三 1 花(の咲いている)橘。 3 袖(にたきしめられた薫き物)の香り
2 恋人か愛人。
四 1 接助順接確定偶然・・・ト 2 するす体 3 連体止め
語釈
蓮の露を見てよめる
@僧正遍昭
165 1蓮葉のAにごりに2染まぬ心もてAなに1かは露を玉とB3あざむく(巻三 夏歌)
(注)@僧正遍昭 八一六〜八九0。俗名良 宗貞。六歌仙・三十六仙の一人。Aなにか
は どうして。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 蓮 2 僧正遍昭
3 染む
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 にごり
2 染む
三 傍線部1〜3の問いに答えよ。
1 どこにかかるか。
2 何のどのような様子のことか。
3 意味を類似の語と比較して明らかにせよ。
四二重線部1の文法問題とA・Bの修辞法に答えよ。
1 「か」の結びの語と活用形を記せ。
A 「にごりに染まぬ心もて」、「玉とあざむく」の修辞法。
B 「あざむく」の修辞法。
五 口語訳
蓮の葉の(上に置く)露を見て詠んだ(歌)
蓮の葉は、(泥水の)濁りに染まらない(清らかな)心を持って(いるのに)、どう
して(その上に置く)露を玉とだますのか。
構成
蓮 清らか 露
主題 蓮の美
165 解答
一 1 はちす 2 そうじょうへんじょう 3 し
二 1 濁っていること。 2 染まる。色香りがしみつく。
三1 「あざむく」 2 蓮が泥水の中にあるのに、汚れることあく清らかである。
3 ああむく 露を玉と見間違いさせてだます。 いつはる 露を玉だと嘘を言う。
四 1 あざむく 動あざむく体 A 擬人法 B 連体止め
語釈
169 1秋来ぬと1目にはさやかに2見えねども2風の音に3ぞAおどろか4れぬる (巻四・秋上)
(注)@藤原敏行 三十六歌仙の一人。書家としても有名。2Aおどろかれぬる ふと気づいたことだ。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 藤原敏行 2 来ぬ
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 さやかに
三 傍線部1、2の問に答えよ。
1、
2 この対比的効果を説明せよ。
四 二重線部1〜4の文法問題に答えよ。
2、
2 品詞分解 口語訳
3 結びの語 基本形 活用形
4 品詞名 基本形 文法的意味
五 口語訳 秋が来てしまったと目にははっきり見えないけれども、
風の音に(秋の到来を)ふと気づいたことだ。
構成
風の音
主題 立秋の喜び
169 解答
一 1 ふじわらとしゆき 2 き
二 1 はっきりしている。
三 1、2 視覚でとらえられないところを、聴覚でとらええたという対比。
四 1 秋 名 来動来用カ変 ぬ助動ぬ止完了 と 格助引用 秋になると
2 見え 動見ゆヤ下二未 ね 助動ず已打 ども 接助逆接 見えないけれども
3 ぬる助動ぬ体完 4 助動る用自発
語釈
秋立つ日、@上の男どもA賀茂の河原にB川逍遥しける供にまかりてよめる
C 紀 貫之
170 1川風のすずしくもある1かうち寄する波とともに2や秋は3立つらむ
(巻四 秋歌上)
(注)@上の男ども 殿上人たち。A賀茂の河原 賀茂川の川原。賀茂川は今の京都市の
東部を流れる川。B川逍遥 川遊び。C紀貫之 ?〜九四五?。歌人。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 賀茂の河原 2 川逍遥 3 紀貫之
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 秋立つ
2 まかる
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 どういう意味か。
四 二重線部1・2の文法事項と修辞法A・Bに答えよ。
1 文法的意味
2 結びの語 活用形
3 修辞法
4 句切れ
五 口語訳
立秋の日、殿上人たちが賀茂川の川原に川遊びをした(ときの)お供に参って詠ん
だ(歌)
川(の面を吹く)風が(まことに)涼しいことだよ。(川岸に)打ち寄せる波が立つの
とともに、秋が立つのだろうか。
構成
賀茂川の川遊び
川風涼しい=秋
主題 立秋への思い。
170 解答
一 1 かものかわら 2 かわしょうよう 3 きのつらゆき
二 1 秋になる。 2 参る。
三 1 川の面を吹く風がまことい涼しいことだ。
四1 終助詠嘆 2 らむらむ体 3 掛詞 たつ 秋が「立つ」 波が「立つ」
4 二句切れ
語釈
@
是貞親王家の歌合によめる
A 壬生忠岑
1
1 2
194 A1ひさかたのB月の桂も秋はなほ紅葉すれば1や照り2まさるBらむ(巻四 秋歌上)
(注)@是貞親王家の歌合 八九三年(寛平五)九月以前の秋に成立。A壬生忠岑 生没
年未詳。九世紀後半から十世紀の歌人。三十六歌仙の一人。B月の桂 月世界にあるとい
う桂の木。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 是貞親王家の歌合 2 壬生忠岑
3 月の桂
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 歌合
三 傍線部1〜2の問いに答えよ。
1 (1)「ひさかたの月の桂」が「照りまさる」とは、何のどのような様子を述べ
たものか。
(2)「も」は何と対比しているか。
2 何と比べて「まさる」のか。
四 二重線部の文法問題とA・Bの修辞法に答えよ。
1 「結びの語と活用形を記せ。
A 「ひさかたの」の修辞法。
B 「らむ」の修辞法。
五 口語訳
是貞親王家の歌合で詠んだ(歌)
月にある桂も、(地上の木と同じように)秋はやはり紅葉するから(月の光が)一段
と明るく照るのだろうか。
構成
秋の月が明るい 理由 月の桂の紅葉
主題 秋の月の美
194 解答
一1 これさだのみこのいえ うたあわせ 2 みずのただみね 3 つきのかつら
二 1 左右に分かれ歌の優劣を競う遊び。
三 1 (1)秋の月の光が他の季節以上に明るく照る様子。(2)地上の木々
2 他の季節と比べて。
四 1 らむ体らむ現推 2 枕詞 3 連体止め
語釈
池のほとりにて紅葉の散るをよめる @凡河内躬恒
304 1風吹けば落つる1もみぢ葉2みずきよみ散らぬかげさへ底に見え3つつ
(注)@凡河内躬恒 生没年未祥。九世紀末から十世紀初めの人。『古今集』撰者の日tり。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 凡河内躬恒
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 かげ
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 紅葉葉はどこにあると読んでいるか。
四 二重傍線部1〜3の文法問題と修辞法に答えよ。
1 品詞分解 口語訳
2 品詞分解 口語訳
3 文法的に説明せよ。
4 何句切れか。
五 口語訳
風が吹くと落ちる紅葉葉よ。水が清らかなので散らない紅葉葉まで水の底に姿が映って見え見えしている。
構成
紅葉葉の位置 水面の紅葉葉 木の葉の紅葉葉 水底に移る紅葉葉
304 解答
一 1 おおしこうちのみつね
二 1 姿。形。
三 1 水面の紅葉葉 木の葉の紅葉葉 水底に移る紅葉葉
四 1 風名 吹け動吹く已 ば接助 順接確定 偶然ト
2 水名 きよ形きよし語幹 み接尾語 水が清らかなので
3 接助繰り返し 4 二句切れ
語釈
冬の歌とてよめる
@ 源 宗于
315 1山里は冬1ぞさびしさまさりける人めも草も2かれぬと2思へ3ば
(巻六 冬歌)
(注)@源宗于 ?〜九三九。光孝天皇の孫。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 源宗于
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 人め
2 かる
三 傍線部1・2の問いに答えよ。
1 「山里は」とあるが、「は」は他と区別するはたらきをもつ係助詞である。何に
対して「山里は」といっているのか。
2 「思へ」の内容を抜き出せ。
四 二重線部1・2の文法事項と修辞法に答えよ。
1 結びの語 活用形
2 かれ 修辞法
3 ば 文法的意味
4 句切れ
5 修辞法
五 口語訳
冬の歌として詠んだ(歌)
山里は(いつも寂しいが)冬がとくに寂しさがまさっている。人の出入りもなくなり草
も枯れてしまうと思うと。
構成
山里 冬 特に寂しい 草枯れ 人来ない
主題 山里の冬の寂しさ
315 解答
一 1 みなもとのむねゆき
二 1 人の出入り。 2 枯る(水気を失う) 離る(離れる。間が開く。)
うとくなる。
三 1 都。2 「人めも草もかれぬ」
四 1 けるけり体 2 接助順接確定条件偶然ト 3 三句切れ。
4 掛詞 かれ 草が「枯れ」人の出入りが「離れ」 5 倒置法
語釈
雪の降りけるをよみける
@清原深養父
330 1A冬ながら空より花の散り来るは2雲のあなたは春に1やある2らむ(巻六 冬歌)
(注)@清原深養父 生没年未詳。九世紀後半から十世紀の歌人。三十六歌仙の一人。A冬ながら 今は冬であるのに。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 清原深養父
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 あなた
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 (1)「花」は実際には何か。
(2)「冬ながら空より花の散り来る」原因としてどのようなことを示している
か。
2 どこのことか。
四 二重線部1の文法事項とA・B修辞法に答えよ。
1 「や」の結びの語と活用形を記せ。
A 「らむ」の修辞法。
B 「花」の修辞法。
五 口語訳
雪が降った(情景)を詠んだ(歌)
冬であるのに空から花が散ってくるのは、雲の向こうの方は(もう)春なのであろう
か。
構成
空から雪=花
主題 春を思う。
330 解答
一 1 きよはらのふかやぶ
二 1 むこう。
三 1(1)雪 (2)雪が降っている。2 雲の上の空。
四 1 らむ体らむ現推 A 連帯止め B 見立て
語釈
大和の国にまかれりける時に、雪の降りけるを見てよめる @坂上是則
332 あさぼらけ1有明の月と見るまでにA吉野の里に降れ1る白雪
(巻六 冬歌)
(注)@坂上是則 生没年未詳。十世紀はじめごろの人。A吉野 今の奈良県吉野郡の吉
野川一帯。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 大和 2 坂上是則
3 有明
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 あさぼらけ
2 有明けの月
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 どこにかかるか。
四 1の文法事項と修辞法に答えよ。
1 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
2 白雪 修辞法
五 口語訳
大和の国に参ったときに、雪が降ったのを見て詠んだ(歌)
朝ほのぼのと明るくなったころ、有明けの月(が空に残っているのか)と見えるほどに
吉野の里につもっている白雪。
構成
大和 朝 吉野の里
有明の月=白雪
主題 吉野の白雪への感動
332 解答
一 1 やまと 2 さかのうえのこれのり 3 ありあけ
二 1 明け方。 2 夜があけてもまだ空に残っている月。
三 降れる
四 1 助動り体完 2 体言止め
語釈
大和の国にまかれりけるときに、雪の降りけるを見てよめる
@ 坂上是則
332 Aあさぼらけ有明の月と1見る2まで3に吉野の里に降れ4る白雪
(注)@坂上是則 生年未詳。Aあさぼらけ 夜が明けかかるころ。
次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 大和 2 坂上是則
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 有明の月
三 二重傍線部1〜4の文法問題と修辞法Aに答えよ。
1 品詞 基本形 活用形 活用の種類
2 文法的に説明せよ。
3 文法的に説明せよ。
4 品詞 基本形 活用形 文法的意味
A 修辞法
四 口語訳
夜が明けかかるころ、有明の月の光が映っているのかと思うほどに吉野の里に降っている白雪だ。
構成
大和 吉野の里 白雪
主題 有明の月が移っているのかと思う雪の白さ
332 解答
一 1やまと 2 さかのうえのこれのり
二 1 夜が明けてもまだ空に残っている月。
三 1 動見る体マ上一 2 副助程度 3 格助比較の対象
4 助動り体完了
語釈
志賀の山越えにて、石井のもとにてもの言ひける人の1別れけるをりによめる
紀 貫 之
404 むすぶ手の2しづくににごる山の井の1飽かでも人に別れぬるかな(巻八 離別歌)
(注)@志賀の山越え 今の京都市北白川から大津市北部の滋賀へ出る山越えの道。A石
井 清水を石で囲ったところ。B山の井 山の清水の。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 志賀の山越え 2 飽か
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 むすぶ
2 飽く
三 傍線部1・2の問いに答えよ。
1 主語を記せ。
2 なぜか。
四 二重線部1の文法問題と修辞法Aに答えよ。
1 品詞分解し、口語訳せよ。
A 「むすぶ手のしづくににごる山の井の」の修辞法。
五 口語訳
志賀の山越えをしたときに、清水を石で囲ったところで言葉をかわした人が別れ
ていった際に詠んだ(歌)
すくった手から落ちるしずくで(すぐに)濁る(水が少ししかない)山の清水のよう
に充分満足することもなくあなたと別れたなあ。
構成
山の井 水が飲み足りない=その人と話したりない
主題 別れがたい人を思う。
404 解答
一 1 しがのやまごえ 2 あ
二 1 両手の手のひらで水などを掬う。 2 十分満足する。
三 1 石井のもとで話した人。 2 山の井は浅いので。
四 1 飽か動飽くカ四未 で接打 も係強 十分満足することもなく 2 序詞
語釈
@ 志賀の山越えにて、A石井のもとにてもの言ひける人の別れけるをりによめる
404 1むすぶ手に1しづくににごる山の井のあかでも人に1別れぬるかな
(注)志賀の山 京都から志賀(大津市)へ出る道。A石井 石で囲んで清水をためたところ。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 志賀
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 むすぶ
2 あく
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 なぜか。
四 二重傍線部1の文法問題と修辞法Aに答えよ。
1 品詞分解
A 「むすぶ手のしづくににごる山野井の」
五 口語訳
手に掬った水に濁る山の井戸の水のように、十分でないまま人と別れてしまった。
構成
山 井戸 掬うと濁る 不十分なまま別れた
主題 不十分な恋
404 解答
一 1 志賀
二 1 両手で水を救う。2 十分に満足する。
三 1 山の井は浅いので。
四 1 別れ動別る用ラ下二 ぬる助動ぬ体完 かな終助詠嘆 A 序詞
語釈
唐土にて月を見てよみける
@安倍仲麻呂
406 天の原Aふりさけ見ればB春日1なる三笠の山に出でし1月かも
この歌は、昔、仲麻呂を唐土にもの習はしにつかはしたりけるに、あまたの年を
経て、2え帰りまうで来ざりけるを、この国より、またC使ひまかり至りけるに、たぐひ
てまうで来3なむとて、出でたちけるに、D明州といふ所の海辺にて、かの国の人、むま
のはなむけしけり。夜になりて月のいとおもしろくさし出でたりけるを見てよめると
4なむ、語り伝ふる。
(巻九 羇旅歌)
(注)@安倍仲麻呂 六九八〜七七0。遣唐留学生として渡唐、玄宗皇帝に仕え長安で没
した。Aふりさけ見れば はるかに遠く見渡すと。B春日 奈良市の東部。C使ひ 七五
一年遣唐使として派遣された藤原清河。D明州 今の中国の 江省寧波。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 唐土 2 春日 3 天の原
4 安倍仲麻呂
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 唐土
2 天の原
3 むまのはなむけ
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 作者の眼前にある月はどこの月か。また、感動の中心になっている月はどこの月
か。
四 二重線部1〜4の文法問題に答えよ。
1 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
2 品詞分解 口語訳
3・4 「なむ」の違いを説明せよ。
五 口語訳
中国で月を見て詠んだ(歌)
広く大きな空をはるかに遠く見渡すと、(今昇ったあの月は)春日にある三笠の山に出 た月(と似ている)なあ。
この歌は、昔仲麻呂を中国に留学生として派遣したのだが、長年を経ても、帰って来る ことができなかったところ、この国から、また遣唐使が派遣されたとき、(仲麻呂が) 一緒に来ようとして、出発したところ、明州というところの海辺で、あの国の人が、送 別の宴を開いた。夜になって月がたいそう趣深く出たのを見て詠んだと、語り伝えてい る。
構成
現在 中国 明州 送別会 月
昔 日本 平城京 月
主題 望郷
406 解答
一 1 もろこし 2 かすが 3 あまのはら 4 あべのなかまろ
二 1 中国。 2 広く大きな空。3 送別会。
三 1 眼前 唐の明州の海辺に昇った月。 感動 平城京の山の端に昇った月。
四 1 助動なり体存在 ニアル 2 え副 帰り動帰りまうで
動帰りまうで動帰りまうづ用ダ下二 来動未カ変 ざり助動ず用打
ける助動体 を 帰ってくることができなかったころ
3 な助動ぬ未強 む助動む止意志 4 係助
語釈
東の方へ、友とする人一人二人いざなひて行きけり。@三河の国八橋問ふ所に至れり
けるに、その川のほとりにAかきつばた、いとおもしろ咲けりけるを見て、木の陰に
1降りゐて、かきつばたといふ五文字を句の頭にすゑて、旅の心をよまむとてよめ
る
410 唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
(注)@三河の国八橋 今の愛知県知立市の東にあたる。Aかきつばた あやめ科の植物。初夏、白、紫などの花をつける。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 三河 2 八橋 3 唐衣
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 唐衣
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 何から降りるのか。
四 この歌の修辞法を全て記せ。
五 口語訳
(京には)長年親しんできた妻がいるので、はるばるやってきた(旅を)悲しく思う。
構成
京から八橋
主題 京の妻を思う
410 解答
一 1 みかわ 2 やつはし 3 からころも
二 1 唐風の衣の意から転じて衣服の美称になったもの。
三 1 馬
四 (1)折り句 5文字の仮名の題を各句の最初または末尾に以t字ずつ織り込んでいくもの。 物名(物名) 「かきつばた」 「か」「き」「つ」「ば」「た」
(2)枕詞 「唐衣」→「き」 (3)序詞 「唐衣きつつ」→「なれ」
(4)掛詞 「なれ」 馴れ 親しむ
褻れ よれよれになる(のりけが落ちる)
「つま」 妻 ワイフ
褄 衣服の裾の左右両端の部分
「はるばる」遥々 道のりの長いさま
張る張る 「張る」布などをたるみなく引き渡す
「き」 来
着
(5)縁語「唐衣」 四つの掛詞の左側の語と縁語になる。
語釈
題知らず 読み人知らず
412 @北へゆく雁1ぞ鳴くなる1つれてこしかずはたらでぞ帰るAべらなる
この歌は、「ある人、男女もろともに人の国へまかりけり。男まかりいたりて、すなはち身まけりにけ
れば、女ひとり京へ帰りける道に、帰る雁の鳴くけるを聞きてよめる。」となむいふ。
(注)@北へゆく 北国へ帰る。雁は渡り鳥。Aべらなる 一語の推量の助動詞。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 雁
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 人の国
2 みまかる
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 どういうことか。
2 この歌の季節が分かる個所を抜き出し、季節を記せ。
四 二重傍線部1〜4の文法問題に答えよ。
1 結びの語 基本形 活用形
2 何句切れか。
五 口語訳
北へ行く雁が鳴いている。連れてきた数は足りないまま帰るようだ。
構成
雁が鳴く=数が足りずに帰る 京へ帰る女=男が死に一人帰る
主題 男を失った女の悲しみ
412 解答
一 1 かり
二 1 都以外の地方の国。田舎。2 死ぬ。
三 1 一緒に来たが夫が死んだ。2 北へゆく雁 はる
四 1 なる助動なり伝聞推定 二句切れ
語釈
@ きちかうの花 A紀友則
440 1@秋近う野はなりにけり白露のおける草葉もいろ変はりゆく
(注)@きちかう 桔梗。A紀友則 生年未祥。905年ごろ。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 桔梗 2 紀友則 3 物名
二 次の語の意味を調べよ。
1 物名
三 二重傍線部1の修辞法と何句切れか、答えよ。
1
句切れ
四 口語訳
秋が近くなったことだ。白露が置いた草葉も色づいた。
構成
秋が近い 草葉が色づく
主題 桔梗の花
440 解答
一 1ききょう 2 きのとものり 3 もののな
二 1 和歌や俳諧で一首・一句の中に、ある事物の名を詠み入れること。
三 1 物名 二句切れ
語釈
題知らず
よみ人知らず
1
469 ほととぎす鳴くや五月の@あやめぐさあやめも知らぬ恋もするかな(巻十一 恋歌一)
(注)@あやめぐさ 菖蒲。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 五月
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 あやめ
三 修辞法Aに答えよ。
A 「ほとぎす鳴くや五月のあやめぐさ」の修辞法。
四 口語訳
題を知らない
ほととぎすが鳴く五月の(節句に飾る)菖蒲(ではないが)、(そのあやめと同音
の)物の道理もわからないような恋もすることだなあ。
構成
ほととぎす・五月・あやめー恋
主題 理性を失った恋
469 解答
一 1 さつき
二 1 物の筋道。物の道理。
三 A 序詞
語釈
@ 春日野の祭りにまかれりける時に、物見に出でたりける女のもとに、家をたづねてつかはせりける A壬生忠岑
478 春日野の雪間をわけて生ひ出でくる草1のBはつかに見えし1君はも
(注)@春日野 奈良の春日神社の祭り。二月と十一月の二回。ここは二月。A壬生忠岑生没年未祥。十世紀初頭の代表的歌人。『古今集』の撰者の一人。Bはつか 物事が見え始めるさま。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 壬生忠岑
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 物見
2 雪間
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 誰のことか。
四 二重傍線部1の文法問題に答え修辞法Aは何か記せ。
1 文法的に説明せよ。
A 春日野の雪間をわけて生ひ出でくる草の
五 口語訳
春日野の祭りに参りました時に、見物に出ていた女のもとに、家を訪ねてやった歌
春日野の祭りに出かけました時に、雪の解けたところからでてきた草がほのちょっと見えたような人だった。
構成
春日野の祭り 物見の女=雪間の草
主題 祭りで見かけた女
478 解答
一 1 みぶのただみね
二 1 見物。 2 つもった雪の解けたところ。
三 1 祭り見物の女
四 1 格助比喩ヨウナ 2 序詞
語釈
題知らず 読み人知らず
484 夕暮れは雲の@はたてにもの1ぞ思ふ1天つ空2なる人を恋ふとて
(注)@はたて 旗のようにたなびいているもの。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 天つ空
二 傍線部1の問いに答えよ。
1 どんな人のことか。
三 二重傍線部1、2の文法問題とAの修辞法、句切れに答えよ。
1 結びの語、基本形 活用形
2 品詞分解 口語訳
A 天つ空 雲
四 口語訳
夕暮れになると雲の果てを眺めては物思いにふけっている。天上遙かにいるような手の届かない方を慕うということで。
構成
夕暮れ たなびく雲
主題 手の届かない人を思う。
484 解答
一 1 あまつそら
二 1 身分が高貴すぎて手の届かないことの比喩
三 1 思ふハ四体 2 助動なり体存在 人 名 三句切れ A 縁語
語釈
題知らず
@ 小野小町
553 うたたねに恋しき人を見て1しよりA夢てふものは頼みそめて2き(巻十二 恋歌二)
(注)@小野小町 生没年未詳。九世紀後半の女流歌人。六歌仙・三十六歌仙の一人。A
夢てふ 夢という。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 小野小町
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 うたたね
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 「夢てふものは頼みそめてき」とはなぜか。
四 二重線部1、2の文法問題に答えよ。
1、2 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
五 口語訳
題を知らない
ちょっとねた(夢の中で)恋しい人を見てしまってから、夢というものは頼りにしは
じめるようになってしまった。
構成
うたた寝の夢=恋人を見る。
主題 夢でしか恋人に会えない現実
553 解答
一 1 おののこまち
二 1 ちょっと寝ること。
三 1 夢によって恋しい人に会うことができるから。
四 1 助動き体過 2 助動き止過
語釈
@ 五条の后の宮のA西の対に住みける人に、B本意にはあらで、ものいひわた
りけるを、正月の十日余りに1なむ、ほかへ隠れにける。あり所は聞けれど、2え
ものもいはで、またの都心春、梅の花ざかりに、月のおもしろかりける夜、去年を
恋ひて、かの西の対に行きて、月のかたぶくまで、Cあばらなる板敷にふせりて
よめる 在原業平
747 1D月やあらぬ3春や昔の春ならぬEわが身一つは元の身にして
(注)@五条の后の宮 仁明天皇の皇后、藤原順子。A西の対 寝殿造りの西の対の屋。B本意にはあらで 思い通りでない状態で。Cあばらなる板敷 荒れて戸障子のなくなった板の間。D月やあらぬ 「月や昔の月ならぬ」の意。Eわが身一つは 自分の身だけは。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 本意 2 正月 3 去年
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 ものいふ
2 かたぶく
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 自分と対比するものとして、月と春を述べているが、もう一つは何か。
四 二重傍線部1〜3の文法問題と修辞法A・Bに答えよ。
1 結びの語 基本形 活用形
3、 3 品詞分解 口語訳
A 何句切れか。 B わが身一つは元の身にして
五 口語訳 月は昔の月ではないのだろうか。春は昔の春ではないのだろうか(去年とは)違っているように見える。自分の身だけは元の身であるのに。
構成
今 恋しい過去
月 春 家 ちがうか? 私 我が身一つかわらない
昔 空しい現在
主題 恋する人に会えない苦しみ
747 解答
一 1 ほい 2 むつき 3 こぞ
二 1 男と女が情を通わせる。 2 西に沈もうとする。
三 家。
四 1 ける助動けり体過
2 え副 もの名 も係 いは動いふ未ハ四 で接助打
ものを言うこともできないで
3 春名 や係反 昔名 の格助 春名 なら助動なり未断 ぬ助動ず体
春は昔の春ではないのだろうか(違っているように見える)
A 二、三句切れ B 倒置法
語釈
題知らず
@伊 勢
756 1あひにあひてもの思ふころの1わが袖に宿る月2さへ3ぬるる顔4なる
(巻十五 恋歌五)
(注)@伊勢 生没年未詳。藤原継陰の娘。十世紀前半に活躍した女流歌人。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 伊勢
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 宿る
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 なぜ月が袖に宿るのか。
四 二重線部1、2の文法問題と修辞法A・Bに答えよ。
1 あひにあひて 品詞分解 口語訳
2 さへ 文法的意味。
A ぬるる顔 修辞法。
B なる 修辞法。
五 口語訳
題不明
(私の心に)よく似合って、ものおもい(に沈んでいる)ころの(涙でぬれた)私の袖
に映る月までも(涙に)ぬれた顔だ。
構成 袖の露に月
主題 恋の嘆き
756 解答
一1 いせ。
二 1 一時写る。
三 袖で涙が濡れそこに月が写るため。
四 1 あひ動あふ用 に格助強 あひ動」あふ用 て接
2 副助添加マデ 私が泣く+月まで泣く A 擬人法。 B 連体止め
語釈
もの思ひけるころ、ものへまかりける道に、野火の燃えけるを見てよめる@伊勢
791 1冬枯れの野辺と我が身を思ひ1せばもえてもはるを待た1まし2ものを
(注)@伊勢 877?〜938?。宇多天皇の中宮温子に出仕。代表的な女流歌人。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 野火
2 野辺
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 野火
2 野辺
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 風景と作者の心はどんな関係にあるか。
四 二重傍線部1、2の文法問題に答え修辞法A・Bに答えよ。
1 文法的に説明せよ。
2 文法的に説明せよ。
A 掛詞
B 縁語
五 口語訳
物思いに沈んでいたころ、ある所へ行きました道で、も微が燃えていたのを見て詠んだ
冬枯れの野と私の身を思えるならば、その燃える野火のように、嘆きに燃え上がっても芽をはる春の到来を期待して待つのに。
構成
野火 野辺=私 野火のように燃えて待つ
主題 燃えるような恋
791 解答
一 1 のび 2 のべ 二 1 早春草がよく生えるように山野の草を焼く日。
2 野のあたり。 三 1 野火の燃える冬枯れの野辺を我が身とみなす半日仮想の表現。
四 1 反実仮想 接助確定条件 ノニ A ひ 思ひ 火 B 火 燃え
語釈
語釈
堀川の太政大臣、身まかりにける時に、深草の山にをさめてけるのちによみける
@ 上野岑雄
832 深草の野辺の桜1し心あらば今年2ばかりは1墨染に咲け
(注)@上野岑雄 伝未詳。九世紀後半の人か。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 堀川の太政大臣 2 上野岑雄 3 墨染
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 をさむ
2 墨染
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 なぜか。
四 二重傍線部1、2の文法問題に答えよ。
1 文法的に説明せよ。
2 文法的に説明せよ。
五 口語訳 深草ののはらの桜よ、心があったら今年だけは黒く咲け。
構成
堀川の太政大の死 桜=桃色でなく黒く咲け
主題 死を悼む
832 解答
一 1 ほりかわのだいじょうだいじん 2 かみtけのみねお 3 すみぞめ
二 1 埋葬する。 2 黒く染めた僧衣。
三 1 喪に服するため。
四 1 副助強意 2 副助限定
語釈
@深草の帝の御時に、A蔵人頭にて夜昼なれつかうまつりけるを、B諒闇になりに
ければ、さらに世にもまじらずして、比叡の山に登りて、かしらおろしてけり。そのまた
の年、みな人、C御服脱ぎて、あるはD冠給はりなど、喜びけるを聞きてよめる
E僧正遍昭
847 1みな人は花の衣になりぬなり苔の袂よかわきだにせよ
(巻十六 哀傷歌)
(注)@深草の帝 仁明天皇(八一0〜八五0)。A蔵人頭 蔵人所の長官。B諒闇 天
皇が崩御して、国中が一年間の喪に服する期間。C御服脱ぎ 喪服を脱いで。D冠給はり
位を昇進させていただき。E僧正遍昭 八一六〜八九0。俗名良 宗貞。六歌仙の一人。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 深草の帝 2 蔵人 3 諒闇 4 比叡の山 5 袂 6 僧正遍昭
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 花の衣
2 苔の袂
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 どのような人々のことか。
四 二重線部 1・2の文法問題と修辞法Aに答えよ。
1 なりぬなり 品詞分解。
2 だに 文法的意味。
A 句切れ
五 口語訳
仁明天皇の御代に、蔵人頭として夜昼(天皇のお側近く)お仕えしていたが、諒闇
になってしまったので、世間の交際も全く断って、比叡山に登って、出家してしま
った。その翌年、人々はみな、喪服を脱いで、ある者は位を昇進させていただきな
ど(して)、喜んでいたのを聞いて詠んだ(歌)
人々はみな、(忌みがあけると)はなやかな衣服になったそうだ。(私は粗末な衣服で
悲しんでいる)この粗末な衣服よ、せめて(それをぬらす涙)だけでもかわいてくれよ。
構成
喪明け 人=華やかな服
私=粗末な服装 涙
主題 死を一人悲しむ
847 解答
一 1 ふかくさのみかど 2 くろうど 3 りょうあん 4 ひえのやま
5 たもと 6 そじょうへんじょう
二 1 華やかな衣服 2 僧侶・隠者などの粗末な衣服。
三 1 深草の帝の裳に服していた廷臣たち。
四 1 なり動なる用 ぬ助動ぬ止完了 なり助動伝聞なり止
2 副助最小限の限定 セメテ・・ダケデモ 3 三句切れ
文学史 歌集 全二十巻 約千百首 短歌 最初の勅撰和歌集
成立 905年 醍醐天皇の勅命
内容 撰者 紀友則 紀貫之 凡河内躬恒 壬生忠岑
仮名序 真名序 大部分は短歌
分類 四季、賀、離別等整然としている。
形式・修辞 七語調 掛詞 縁語 比喩 擬人法 見立て
歌風 情趣 優雅 観念的 遊戯的