1 正岡子規
語釈
●日のあたる石にさはればつめたさよ 明治27年 『寒山落木』
1 季語 季節
2 石ーどのくらいの大きさか。
口語訳 石に日が当たって(あたたかそうなので)手をあててみると冷たさが伝わってきた。
構成 暖かそうな石(想像)
主題・寒の寒さ
つめたさ
解答 1 つめたさ 冬 2 かなり大きい石(庭石など)
語釈
●鶏頭の十四五本もありぬべし 明治33年 『俳句稿』
1 季語 季節
2 鶏頭ー読み。
3 ありぬべしー品詞分解。
4 何に心をうたれているか。
5 どこにいてどんな状態で見ているか。
口語訳 (病室の庭前に鶏頭が咲いている)その鶏頭はきっと十四五本はあるだろう。
構成 鶏頭(赤 群生)
主題・鶏頭の生命感
我 (病臥)
解答 1 鶏頭 秋 2 けいとう 3 あり動ラ変あり用 ぬ助動止強意 べし助動べし止推量
4 鶏頭の生命感
語釈
●三千の俳句を閲し柿二つ
1 季語 季節
2 三千 意味を記せ。
3 閲しこの漢字を使った二字の熟語を記せ。
4 柿二つ どこにあるか。
口語訳 数多くの俳句を閲覧し終えた。枕頭に柿が二つある。さあ食べよう。
構成 俳句の閲覧
主題・安堵感 疲労感
柿二つ
解答 1 柿 秋 2 数が多い。 3 閲覧 4 病室の作者の枕もと
語釈
●いくたびも雪の深さを尋ねけり 明治29年 『寒山落僕』
1 季語 季節
2 いくたびも どこにかかるか。
3 尋ねけり 誰が誰にか。
4 この句の心情を記せ。
5 修辞法 けり
口語訳 (病臥のため雪景色を見られない私は)何度も何度も
母や妹に)雪の深さを尋ねるのだ。
構成 雪の深さ
主題・大雪への心の弾み
何度も聞く
解答 1 雪 冬 2 尋ねけり 3 作者が母や妹に 4 雪を見られないもどかしさ
5 切れ字
語釈
●柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 明治29作 『寒山落木』
1 季語 季節 切れ字
2 誰がどこでどのような心境で食べているのか。
3 「柿」と「法隆寺」の取り合わせはどういう効果をあげているか。
口語訳 法隆寺の茶店で好物の柿を食べていると、寺の鐘が聞こえてきた。
構成 柿
主題・のんびりした法隆寺
法隆寺の鐘
解答 1 柿 秋 2 作者が法隆寺の境内の茶店で好物の柿をのんびり食べる
3 古都らしのんびりと落ち着いた風情
2 村上鬼城(1865〜1938年)
語釈
●冬蜂の死にどころなく歩きけり
1 季語 季節
2 死にどころなく どういう意味か。
3 歩きけり 背後にどういう事実が隠されているか。
4 作者の主観が反映されている部分を抜き出せ。
5 けり 修辞法
口語訳 冬の蜂が力尽きて歩いている。死に場所を探して歩いているようだ。
構成 冬蜂
主題・冬蜂への憐憫=自己への憐憫
死に場所
解答 1 冬蜂 冬 2 死ぬのにふさわしい場所がなく 3 飛ぶことさえできない
4 死にどころなく 5 切れ字
語釈
●鷹のつらきびしく老いて哀れなり 『続鬼城句集』
1 季語 季節
2 つら「顔」でなく「つら」の効果を説明せよ。
3 きびしく どういう様子を表しているか
口語訳 (鷹が金網の中に飼われている)鷹のつらや眼光は厳しく鋭いが年老いてい
て一層かわいそうだ。
構成 鷹のつら
主題・精悍さの中の老成=自己の老成
精悍 老い
解答 1 鷹 冬 2 鷹の精悍で不敵な面構えを連想させる効果 3 するどい眼光
3 中村汀女(1867〜1902年) 昭和19年 『汀女句集』
語釈
●泣きし子の頬の光りやとぶ蜻蛉
1 季語 季節
2 「泣きし子」の今の気持ちを説明せよ。
3 頬の光りーどんな様子か。
4 とぶ蜻蛉ーどういう効果をあげているか。
口語訳 (さきほど)泣いた子供の頬の涙がまだ乾ききっておらず、そこに日の光があたり 光っている。その子の頭上近くを蜻蛉が飛んでいる。
構成 泣いた子 (情)
主題・子への愛
蜻蛉 (景)
解答 1 蜻蛉 秋 2 泣いた時の激情がおさまって穏やかな気持ちに戻りつつある。
3 頬の涙が乾ききっていないところに日が当たり光っている様子
4 泣いた子の眼を楽しませ、穏やかにさせる効果
語釈
●ゆで玉子むけばかがやく花曇 昭和15年 『春雪』
1 季語 季節
2 かがやくー何のどんな様子か。
3 花曇ー意味。どういう効果をあげているか。
口語訳 ゆで卵をむくとつるつるした白身が出現する。薄曇りの花の下で。
構成 ゆで卵(白 光沢)
主題・花見の団欒
花曇 (薄曇り)
4 河東碧梧桐
語釈
●赤い椿白い椿と落ちにけり 大正5年 『碧梧桐句集』
1 季語 季節
2 落ちにけりー品詞分解。
口語訳 赤い椿と白い椿が落ちてしまったことだ。
構成 赤い椿(赤)
主題・椿の、落ちる時の華やかな一瞬
白い椿(白)
解答 1 椿 春 2 落ち動落つ用タ上二 に助動ぬ用完了 けり助動止過去
語釈
●曳かれる牛が辻でずつと見廻した秋空だ 大正5年 『碧梧桐句集』
1 季語 季節
2 曳かれるー読み。
3 辻ー意味。
4 秋空ーどういう効果をあげているか。
口語訳 (屠殺場へ)曳かれていく牛が四つ辻で(横切るものがあったのかちょっと足をとめて)ずっと秋空を見回した。
構成 牛(拘束 屠殺)
主題・牛の哀感
秋空(広い 晴天 さわやか)
解答 1 秋空 秋 2ひ 3 十字路 四つ辻
4 さわやかに広がる秋空が、自由を奪われた牛の哀感を一層強める。
5 高浜虚子
語釈
●金亀子擲つ闇の深さかな 昭和12年 『五百句』
1 季語 季節
2 金亀子ー読み。
3 擲つー意味。誰が何をどこからどこへ「擲つ」のか。
口語訳 金亀子をつかめて室外の闇にほうり投げる。その闇は深く深く際限もなく続いている。
構成 金亀子(小 黒)
主題・闇の世界への驚き
闇 (大 黒)
解答 1 金亀子 夏 2 こがねむし 3 作者が金亀子を室内から室外の闇の世界へ
語釈
●手毬唄かなしきことをうつくしく 昭和18年 『五百五十句』
1 季語 季節
2 手毬ー読み。
3 かなしきことをうつくしくー具体的に説明せよ。
口語訳 (子供達が手毬をつきながら歌っている)手毬歌が聞こえてくる。その内容は悲しいが、その無心に
歌う声は美しい。
構成 手毬歌 (歌)
主題・晴れやかさの中のしみじみした気持ち
悲しいこと(内容) 美しく(声 歌い方)
解答 1 手毬唄 新年 2 てまり 3 歌詞の悲しい内容には無頓着に、無心に美しい声で歌っている。
(例)手毬唄 山寺の和尚さん あんたがたどこさ 清水の観音様 いちじく人参
語釈
●山国の蝶を荒しと思はずや 昭和20年5月14日作 『六百句』
1 季語 季節
2 どんな点を「荒し」といっているか。
3 誰が誰に呼びかけた句か。
4 や 修辞法
口語訳 山国で蝶が飛びまわっている。その飛び方が荒々しい感じがする、そう思わないか。
構成 山国の蝶
主題・山村の蝶の荒々しさへの驚き
思わないか
解答 1 蝶 春 2 ひらひら飛びまわっているその飛び方 3 作者が、尋ねて来てくれた人に
4 切れ字
語釈
●去年今年貫く棒の如きもの 昭和25年 『六百句』
1 季語 季節
2 貫く どのような語感をもっているか。
3 棒の如きもの 作者のどのような感慨が込められているか。
口語訳 年の暮れも新年も同じような日々である。棒のようなものが貫き通しているようだ。
構成 去年今年
主題・一貫sた日常
棒
解答 1 去年今年 新年 2 直線的に突き通す力強さ
3 平凡な自己の生活に対するゆるぎない自信
語釈
●春風や闘志いだきて丘に立つ 『五百句』(昭和12年)
1 季語 季節
2 春風 どのような特色があるか。
3 春風はどちらの方向から吹いてくるか。
4 文学史的にみて、誰に対して闘志を抱いているか。
5 や 修辞法
口語訳 春風を胸に受けながら闘志を抱いて丘に立っている。
構成 春風 丘
主題・新傾向俳句に対する闘争心
闘志
解答 1 春風 春 2 東から吹く温かく穏やかな風 3 正面から
4 河東碧御動=無季不定型 虚子=有季定型 5 切れ字
語釈
●白牡丹といふといへども紅ほのか
1 季語 季節
2 牡丹 どんな印象を与える花か。。
3 いふといへども この平仮名表記や語調はどういう効果をあげているか。
4 白牡丹・紅 音で読まなければならいないのはなぜか。
5 紅がほのかに加わることで白牡丹の印象はどう変わるか。
口語訳 気品のある白牡丹とはいうもおお大きな花弁の中にはほんのりと紅色もさしている。
構成 白牡丹(大きい 白)
主題・純白の中のわずかな紅―ますますつややか
紅 (わずか 紅) (例)隠し味
解答 1 牡丹 夏 2 芳香 直径十数センチ 白牡丹=清楚 気品
3 やわらか ゆったりした語調 4 音読み 引きしまった響き 白牡丹の気品
5 清楚さ、気品に艶麗さが加わる
6 飯田蛇笏
語釈
●芋の露全山影を正しうす
1 季語 季節
2 芋の露ーどういう露か。
3 影ー意味。
4 正しうすー修辞法。
口語訳 里芋の広い葉には(大粒の)露が光っている。ずっと続いている山々の姿は居住まいを正して並んでいるように見える。
構成 芋の露 (近景)
主題・清澄で印象鮮やかな景
山々の姿(遠景)
解答 1 芋の露 秋 2 里芋の広い葉にたまった大きな露 3 姿(ここは連山の山陽)
4 擬人法(山々が威儀を正すように意並んでいる
語釈
●たましひのたとへば秋のほたるかな 昭和7年 『山廬集』
1 季語 季節
2 「たましひ」と「秋のほたる」はどのような点で通じあっているか。
口語訳 たましいとはたとえて言えば秋のほたるだなあ。
構成 たましい(心)
主題・死のはかなさ 昭和2年7月24日芥川龍之介の死を悼む歌
秋の蛍 (死)
解答 1 秋のほたる 秋 2 死の影(はかなさ 哀れさ)
7 種田山頭火
語釈
●うしろすがたのしぐれてゆくか 昭和15年 『草木塔』
1 季語 季節
2 うしろすがたー誰の目から見た誰のどのような姿か。
口語訳 時雨に濡れながら、うらぶれた托鉢姿の人がとぼとぼ歩み去り、やがて時雨の奥へ と後ろ姿を没していく。
構成 自分の後姿
主題・うらぶれた分身を眺める自嘲
しぐれ
解答
1 なし 2 心の中のもう一人の自分から見た、作者のうらぶれた旅の後姿。
語釈
●砂丘にうづくまりけふも佐渡は見えない 昭和15年 『草木塔』
1 季語 季節
2 砂丘ー読み。
3 うづくまるー意味。
4 作者のどのような心情が読みとれるか。
口語訳 砂丘に埋もれてしまうかのように体を小さくして俯いて座っている。(せめて佐渡島 が見えてくれれば心も少しは晴れるのだが)佐渡島は見えない。
構成 砂丘に蹲る自分
主題・うっ屈した心情
雲の中の佐渡
解答 1 なし 2 さきゅう 3 体を丸くして膝を折り腰を落とす 4 うっ屈した心情
語釈
●分け入つても分け入つても青い山 『草木塔』(昭和15年)
1 季語 季節
2 このような句は一般に何と呼ばれるか。
3 この句が一般の俳句と異なる点を指摘せよ。
4 分け入つても分け入つても この繰り返しからどんな光景が浮かんでくるか。
5 「青い山」 どんな山か。
6 作者のどのようじな心情が伝わってくるか。
口語訳 山深く分け入って旅を続けても、なお青青とした山が続いている。
構成 山に分け入る
主題・ひたすら歩き続ける歩行
どこまでも青い山
解答 1 無季 2 自由律 3 1 無季 2 自由律 3 口語
4 旅人がどこまでも分け入って行く様子 5 生命観にあふれた
6 生命にあふれあ自然への感動
8 水原秋桜子
語釈
●葛飾や桃の籬も水田べり 昭和5年 『葛飾』
1 季語 季節
2 葛飾、籬ー読み。
3 桃の籬ーどういうものか。
4 水田べりーどういう様子か。
口語訳 (昔から水田の多い)葛飾で、今も桃の花咲く垣根が水田に沿ってある。
構成 葛飾 (土地)
主題・葛飾の田の面の景の美
水田 桃の籬 (様相)
解答 1 桃 春 2 かつしか まがき 3 桃の木が垣根として植えられている状態。
4 水をたたえた田の縁
語釈
●麦秋の中なるが悲し聖廃墟 昭和27年 『残錆』
1 季語 季節
2 麦秋ー読み。
3 「麦秋の中」だと何がなぜ悲しいのか。
口語訳 周囲の麦畑には麦が熟していた。その中に、浦上天主堂は廃墟となって立っていた。
構成 麦 (生命感)
主題・浦上天主堂の痛ましさ
浦上天主堂(荒廃感)
解答 1 麦秋 春 2 ばくしゅう 3 廃墟と化した浦上天主堂が生命観溢れる麦畑のなかにあるので
語釈
●高嶺星蚕飼の村は寝しづまり
1 季語 季節
2 高嶺星 どんな星か。
3 蚕飼の村 眠り方はどのようなものか。
4 この「村」のイメージはどうか。
5 この句の雰囲気を記せ,
口語訳 山間に養蚕を営む村がある。村はひっそりと寝静まり村を囲む高嶺の上には星が輝いている。
構成 高嶺星 (天 自然)
主題・重労働を終えた安堵感
蚕飼の村(地 人)
解答 1 蚕飼 春 2 安堵と充足の眠り 3 谷間の村 4 澄明 典雅
語釈
● 冬菊のまとふはおのがひかりのみ
1 季語 季節
2 冬菊 何に焦点が当てられているか。その色は何色か。
3 おのが 意味を記せ。
4 冬菊のまとふ 修辞法
口語訳 寒菊だけが自分の放つ白っぽい光をまとってひっそり咲いている。
構成 冬菊
主題・清澄
自分の光
解答 1 冬菊 冬 2 花 白 3 自分の 4 擬人法
9 山口誓子
語釈
●つきぬけて天上の紺曼珠沙華 昭和17年 『七曜』
1 季語 季節
2 曼珠沙華ー読み。
3 つきぬけてー二通りに解釈せよ。
4 天上の紺ー何のどういう様子か。
5 曼珠沙華ーどこに咲いていて、どういう視覚で眺められているか。
口語訳 突き抜けるように晴れ上がった空に向かって、曼珠沙華が晴天をつきぬけるように立っている。
構成 空 (天 青 無機物)
主題・色鮮やかな彼岸花
曼珠沙華(地 赤 生命)
解答 1 曼珠沙華 秋 2 まんじゅしゃげ
3 曼珠沙華が晴天を突き抜けるように伸びている。突き抜けるように腫れあがった晴天。
4 晴れ渡った晴天 5 墓地や堤など 6仰角
語釈
●炎天の遠き帆やわがこころの帆 昭和22年 『遠望』
1 季語 季節
2 炎天ー意味。
3 わがこころの帆ー白帆はどういう心情を表象するものか。
4 どこから何を眺めているか。
口語訳 炎天にむせかえるような海上、そのかなたにかすむ白い帆、それは私の心の糧だ。
構成 炎天の白帆(景)
主題・孤独感
心の糧 (情)
解答 1 炎天 夏 2 夏のもえるように暑い天気 3 心の救い 4 海岸から御気に見える小さな白帆
語釈
●海に出て木枯帰るところなし 昭和19年作 『遠星』
1 季語 季節
2 海 どのような海か。
3 帰るところなし どうなることか。
4 帰るところなし 修辞法
口語訳 海上に出てしまって木枯らしは吹き靡かせるものも帰るべきところもなく,海上を吹きすさんでいく。
構成 海
主題・自己存在の虚無(特攻隊の突撃)
木枯らし
解答 1 木枯らし 冬 2 荒涼と広がる厳冬の海 3 海上を吹き荒んでいる 4 擬人法
語釈
●夏草に汽缶車の車輪来て止る 『黄旗』(昭和10年)
1 季語 季節
2 この句の光景はどんな場所か。
3 汽缶車 どういう種類のものか。
4 汽缶車の車輪来て止る 焦点の当て方や表現方法の特色を説明せよ。
口語訳 黒い機関車が蒸気を吐きながら徐行してきて、夏草が茂る手前で停止した。
構成 機関車(黒 白い蒸気)
主題・静止する重量感
夏草 (緑)
解答 1 夏草 夏 2 夏草が茂る操車場 3 蒸気機関車 4 ダイナミックな車輪 クローズアップ
10 中村草田男(1901〜1983年)
語釈
●冬の水一枝の影も欺かず 昭和9年 『長子』
1 季語 季節
2 冬の水 連想されるものは何か。 ア 海 イ 川 ウ 池
3 影 何を指しているか。
4 欺かず どのようなことを言っているか。
口語訳 冷たく鏡のように澄み切った冬の水に木の枝が映っている。それは枝の一本一本をくっきり映している。
構成 冬の水=澄む
主題・厳粛さ
枝の姿=鮮明
解答 1 冬の水 冬 2 池 3 水面に映っている木の枝の姿 4 枝を水面に鮮明に映している
語釈
●万緑の中や吾子の歯生え初むる 『火の鳥』
1 季語 季節
2 万緑・吾子の歯に共通するものは何か。色の対比を記せ。
3 漢語と和語の対比を記せ。
4 や 修辞法
口語訳 緑一色の夏の中,いとしいわが子に純白の前歯が生え始めた。
構成 万緑 大・遠・自然・緑
主題・生命賛歌
吾子の歯 小・近・赤子・白
●降る雪や明治は遠くなりにけり 『長子』(昭和11年)
語釈
1 季語 季節
2 「明治は遠くなりにけり」 この感懐は、何が契機となって生まれたか。
3 上五が「降る雪や」と「雪は降り」とでは、表現効果がどのように異なるか。
4 や 修辞法
口語訳 降る雪を見ていると、自分が育った懐かしい明治という時代は遠くなってしまったと思う。
構成 降る雪 (自然現象)
主題・往時をしのぶ
遠い明治(時)
解答 1 雪 冬 2 降る雪 3 降る雪 説明的表現
11 加藤楸圻(1905〜1993年)
語釈
●窖雲人に告ぐべきことならず 昭和13年作 『寒椿』
1 季語 季節
2「窖雲」と3「人に告ぐべきことならず」はどういう関係で結びついているか。
口語訳 鰯雲が広がっている。心の中にはある思いがあるが,人に告げるべきものでもない。
構成 鰯雲(天 景)
主題・時代閉塞の現状
思い(地 情)
解答 1 鰯雲 秋 2 白く微妙な陰影と胸中にひそかに秘めておく思い
語釈
● 隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤かな
1 季語 季節
2 や かな 修辞法
口語訳 隠岐の島は今,全島が一斉に木の芽が芽吹きそれにむけて包囲するように怒濤が押し寄せている。
構成 木の芽(植物)
主題・隠岐の島の生命力
怒涛 (波)
解答 1 木の芽 春 2 切れ字
語釈
●寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃 『寒雷』(昭和14年)
1 季語 季節 切れ字
2 玻璃 意味。
3 どこで「玻璃」の音を聞いているか。
口語訳 冬の真夜中、雷鳴で硝子戸が鳴る。
構成 冬 雷 硝子戸の音
主題・不安
寝床で聞く
解答 1 寒雷 冬 2 がらす 3 寝床の中
語釈
●鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる 『起伏』(昭和24年)
1 季語 季節
2 鮟鱇 凍てて 読み。
3 鮟鱇 意味。
4 誰がどこで何を用いてぶち切るのか。
5 「骨まで凍ててぶちきらる」ことで、鮟鱇の印象はどういう感じからどういう感じに代わるか。
6 「きらる」ではなく、「ぶちきらる」と表現したことでどういうことが伝わるか。
口語訳 鮟鱇が骨まで凍りついたまま出刃包丁の一撃でぶった切られた。
構成 凍った鮟鱇
主題・存在の悲しみ
ぶった切られる
解答 1 鮟鱇 冬 2 あんこう い
3 海底にすむ。口が大きい。食用。身が柔らかいのでつるして切る。
4 魚屋が店頭のまな板で出刃包丁を用いて
5 グロテスク 滑稽―宿命的なかしみせつなさ 6切られる 一撃のもとに真っ二つにされる