1永訣の朝
宮澤賢治
語釈
1 意味を調べよ.
2 この詩の形式は何か.
3 方言の効果を述べよ.
けふのうちに
4 ア 4 どういうことを言っているか。
とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ また、なぜこう表現したか。
1
みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ 注 あめゆじゆとてちてけんじや
2 あめゆき(みぞれ)を取って
(あめゆじゆとてちてけんじや) 来て下さい。
5 5 意味を調べよ。
うすあかくいつさう陰惨な雲から
6 イ 6 みぞれのどんな様子を言って
みぞれはびちよびちよふつてくる いるか。
(あめゆじゆとてちてけんじや) 注 菜 スイレン科の多年草水
青い 菜のもやうのついた
7 7 (1)どういう生活が分かる
3
おまへがたべるあめゆきをとらうとして (2)後半で「陶椀」につい
8 て述べている所を抜き
わたくしはまがつたてつぱうだまのやうに 出せ。
このくらいみぞれのなかに飛びだした 8 どういう様子が表れているか。
心中はどうか。
(あめゆじゆとてちてけんじや)
A ア・エの違いを説明せよ。
ア「いもうと」
蒼鉛いろの暗い雲から エ「とし子」
ウ
みぞれはびちよびちよ沈んでくる イ・ウの違いを説明せよ。
エ イ「ふつてくる」
ああとし子 ウ「沈んでくる」
死ぬといふいまごろになつて
9 9 「さつぱりした雪のひとわ
わたくしをいつしやうあかるくするために ん」がなぜ「わたくしをい
4 つしやうあかるくする」と
こんなさつぱりした雪のひとわんを 思えたのか。
おまへはわたくしにたのんだのだ
オ オ・カの違いを説明せよ。
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ オ「けなげな」
カ「けなげな」
わたくしもまつすぐにすすんでいくから
(あめゆじゆとてちてけんじや)
10 10 意味を調べよ。
はげしいはげしい熱やあへぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ 波線部1〜4はどう使い分け
られているか。
銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいの 1「みぞれ」
そらからおちた雪のさいごのひとわんを…… 2「あめゆじゅ」
3「あめゆき」
注 蒼鉛いろ 薄赤い灰色。「蒼鉛」は金属元素
の一つで、ビスマスのこと。 4「雪」
気圏 大気圏。
B
…ふたきれのみかげせきざいに 注 みかげせきざい みかげ石
の石材。
みぞれはさびしくたまつてゐる
注 二相系をたもち ここでは
わたくしはそのうへにあぶなくたち 固体(雪)と液体(水)の
二つの状態を保っている事
雪と水とのまつしろな二相系をたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
11 11 意味を調べよ。
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
12 12 この表現には作者のどう
さいごのたべものをもらつていかう いう気持ちが込められて
いるか。
わたしたちがいつしよにそだつてきたあひだ
13 13 意味を調べよ。
みなれたちやわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
注 Ora OradeShitoriegumo
(Ora Orade Shitori egumo) わたしはわたしでひとりで
あの世へ行きます。
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あぁあのとざされた病室の
14 14 この場合どんな目的に
くらいびやうぶやかやのなかに 使われているか。
15 15 妹のどういう様子を表して
やさしくあをじろく燃えてゐる いるか。
カ
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまつしろなのだ
16 16 同じ事を表現している箇所
あんなおそろしいみだれたそらから を二箇所抜き出せ。
このうつくしい雪がきたのだ
C
17 17 人間のどういう生き方を
(うまれでくるたて 示しているか。
こんどはこたにわりやのごとばかりで
注 うまれで・・・うまれてくる
くるしまなあよにうまれてくる) 再び生まれてくるとしても、
今度はこんなに自分のことば
おまへがたべるこのふたわんのゆきに かりで苦しまないように生ま
てきます。
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが兜率の天の食に変つて
やがてはおまへとみんなとに
18 18 意味を調べよ。
聖い資糧をもたらすことを
19 19 どういう気持ちが込めら
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ れているか。
*推敲
天井のアイスクリーム=回想的 新鮮 ロマンティック
↓
兜率の天 =理想郷 崇高 利他的
*特色 1 繰り返し あめゆじゅ いもうとよ びちょびちょ けなげな はげしい わかれてしまう
2 倒置法 おまへはわたくしにたのんだのだ/ 銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいの/
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……A
3 科学用語 蒼鉛いろ 銀河や太陽 気圏A 二相系をたもちB
永訣の朝 1922(大正11)年11月
構成
@ 室内
妹の頼みで外へ雪を取りに出る。
(あめゆじゆとてちてけんじや)=妹の口から出た。自然を慕う
(あめゆじゆとてちてけんじや)=妹?作者?言った意味は?
A 屋外
みぞれを見上げる。
私の生を明るくするため妹が頼んだ。
(あめゆじゆとてちてけんじや)=作者の耳に聞こえる。
B 屋外
心の揺れにたえつつ雨雪を取る。
妹が一人で死を迎えようとしていると思う。
(OraoradeShitoriegumo)=妹の口から出た。死を覚悟する。
C 室内
天の食である雪の入ったふたわんを持ってくる。
(うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのことばかりで
くるしまなあよにうまれてくる)=妹の口から出た。宗教的。利他的。
主題 愛する妹の死に直面した悲しみとその死の意義を高からしめようと
する宗教的祈り。
永訣の朝 解答
1 死別。 2 口語詩 自由詩。 3 臨場感を高める。
4 どういうこと=死ぬこと。なぜ=死期の世界は実在するから。
5 暗くも五垂らしいい感じがすること。 6 水を含んでいる様子。
7 (1)慎ましい生活。
(2)「わたしたちがいつしよにそだつてきたあひだみなれたちやわんのこの藍のもやう」
8 様子=あわてふためいてかけていく。 心中=動揺(病室→庭→松)
ア 一般的 客観的 エ 感情的 妹として固定する。
イ 横に見る 様子 ウ 上に見る 恐さ
9 作者の沈んだ思いを宇宙へ向けたから。
オ 作者のことを気遣っているけなげさ カ 死と戦っているけなげさ
10 息を切らして苦しそうに呼吸する。
1{みぞれ}暗いイメージ 2「あめゆじゅ」妹の言葉として使う。
3「あめゆき」みぞれに比べ暗さがない。4 「雪」最後には天に向かうもの。
11 光沢があって美しい様。 12 自然に対する謙虚さ。13 タデ科の一年生植物。
14防寒あっbせいを保つ目的。肺結核 当時=暖気療法。現在=外気療法。
15 青白い顔をして高熱にあえいでいる様子。16 @陰惨な雲。A暗い雲。
17 人々のために生きようとする生き方。18 提供する。
19 自分の幸福を犠牲にする覚悟で人々の幸福を願う。