初恋(1897年) 島崎藤村
語釈
1まだあげ初めし前髪2の
林檎のもとに見えしとき
3前にさしたる花櫛4の
5花ある君とおもひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
6薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
7わがこころなきためいきの
その髪の毛にかかるとき
8たのしき恋の盃を
君が情けに酌みしかな
林檎畠の樹の下に
9おのづからなる細道は
10誰が踏みそめしかたみぞと
11問ひたまふ12こそこひしけれ
一 次の語の読みを記せ。
1 林檎 2 花櫛 3 薄紅 4 盃 5 酌み
二 傍線部1〜12とA〜Cの問に答えよ。
1 誰のどのような様子を表現したものか。
2、4 それぞれ文法的に説明せよ。
3 何のことか。
5 「花」何のことか。どんな心情を表しているか。
6 何か。
7 どんな心情を表しているか。
8 分かり易く言い換えよ。
9 どうして細道が自然にできたのか。
10 どんな心情を表しているか。
11 主語を記せ。
12 結びの語、基本形、活用形
A 第一連で「われ」は「君」の何を見ているか。また、なぜか。
B 第二連で。
(1) 恋心は誰のどのような行為で始まったか。
(2) 少女の優雅さ、清純さを示す語句を一つずつ抜き出せ。
(3) 作者に芽生えたほのかな恋情を象徴する語句を一つ抜き出せ。
C この詩の形式を記せ。
構成
一 二 三 四 |
連 |
予兆 始まり 成就 継続 |
進行 |
好意 恋心 高まり 恋しい |
われ |
初々しい前髪 林檎を上げる(誘い) 受け入れ 問 恋心 |
君 |
起 承 転 結 |
展開 |
主題 初恋の成就の喜び
*林檎の効果
1 恋の仲立ち
2 成熟した林檎=思春期の乙女
3 「もと」「樹の下」=人目を避けた所
4 『聖書』 禁断の木の実
初恋 解答
一 1 りんご 2 はなぐし 3 うすくれない 4 さかずき 5 く
二 1 少女の初々しい様子。 2 格助 主格 ガ 4 格助 比喩 ノヨウニ
3 前髪。 5 何=少女の若々しい美しさ。 心情=異性へのあこがれが生まれた心情。
6 林檎。 7 恋愛感情が高まってことのよしあしなど考えられない心情。
8 この楽しい恋の陶酔感をあなたの優しい愛情によって味わった事である。
9 林檎の木の下をデートの場として幾度となく通ったから。
10 わかりきったことを尋ね、相手の心情を高めようとする心情。
11 少女。 12 こひしけれ こひし 已然形。
A 「髪の毛」 大人としての髪になった。
B(1)君が林檎を暮れたこと。 (2)「やさしく」「白き」(3)薄紅。