サーカス                             中原中也 

                            1929(昭和4)年発表

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語釈

 

幾時代かがありまして

  1茶色い戦争ありました

 

幾時代かがありまして

  2冬は疾風吹きました

 

幾時代かがありまして

  今夜此処での一と殷盛り

    今夜此処での一と殷盛り

 

サーカス小屋は高い梁

  そこに一つのブランコだ

見えるともないブランコだ

 

頭倒さに手を垂れて

  5汚れ木綿の屋蓋のもと

ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

 

それの近くの白い灯が

  安値いリボンと息を吐き

 

観客様はみな鰯 

  咽喉が鳴ります牡蠣殻と

ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

 

     8屋外は真ッ闇 闇の闇

     夜は劫々と更けまする

     落下傘奴のノスタルヂアと

     ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

                               (『山羊の歌』) 

 

 

 

 

 

 

一 次の語の読みを記せ。

 

 1 疾風 2 此処 3 一と殷盛り 4 梁 5 頭倒さ 6 垂れて

 

 7 木綿 8 屋蓋 9 吐き    10 鰯  11 咽喉 12 牡蠣殻

 

 13 劫々 14 更け 15 落下傘

 

二 次の語の意味を調べよ。

 

 1 疾風

 

 2 梁

 

 3 劫々

 

三 傍線部1〜8とA、Bの問に答えよ。

 

 1 実際にどの戦争か。

 

 2 どのようなことが考えられるか。

 

 3 ブランコは見えているかいないか。

 

 4 誰か。

 

 5 何か。

 

 6 修辞法は何か。また、どのような気分にさせるか。

 

 7 どのようなことを言いたいのか。

 

 8 普通はどう読むか。

 

 A最終連で字が下がっている意図は何か。

 

 B 詩の形式を記せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

構成

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小屋の外=闇

                        落下傘=ブランコ           

 

 

 

ピエロの語り

 時代

 

ピエロの語り

 冬の疾風

 

ピエロの語り

 今夜ここで

 

演技 

 

演技 

 汚れ木綿の屋根

 

演技

 白い灯 安いリボン

 

演技

 

 

サーカス小屋

 

日清戦争・日露戦争

 

 

厳しい時代だった

 

 

盛大なイベント (サーカス)

 

 

ブランコ

 

 

見えるか見えないかのブランコをぽかんと見ている

 

 

 

 

 

鰯=観客(口を開け見とれる。だらしない。)

 

 

観客

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主題 宙ぶらりんに揺れる情動

 

 

サーカス  解答

一 1 しっぷう 2 ここ 3 ひとさかり 4 はり 5 あたまさか 6 た 7 もめん

  8 やね 9 は 10 いわし 11 のんど 12 かきがら 13 こうこう 

14 ふ 15らっかがさ

二 1 早く吹く風。2 柱の上にはり渡し屋根を支える材。 3 長い時間を表す。

三 口語詩 自由詩

1 日清戦争(1894年) 日露戦争(1904年)。 2 非常に厳しいもの。

3 見えるともなく見えている。 4 ブランコ乗り。 5 サーカス小屋。

6 擬態語。ゆらゆらと酔ったような不思議な感じ。 

7 観客が口を開け、ブランコの演技に見とれているだらしない感じ。

8 おくがい。

A屋外に出たことをはっきりさせる。高揚した気分が沈着していく。

  B]口語詩  自由詩