1 随筆・評論
随筆
随筆・見聞・体験・感想等を筆に任せて自由に綴ったものである。日本人向きで『枕草子』以来多くの作品が書かれていている。
評論
明治時代にヨーロッパから入ってきた形式。評論とは、物事の価値、善悪を批判し論ずることである問題を取り上げ、ある考え方によって考えた意見、思想を整然と述べる。その際、資料を用い、専門語を使うこともある。批判的で題、展開、結論が明確である。
展開には、序論、本論、結論型や起承転結型がある。また、二つの事柄の比較対照で進められることが多い
と何を比較対照しているかがわかれば理解しやすい。もちろん、筆者の主張はそのうちの一方である。
(例)日本と西洋の庭を対照させる。
2 小説
18世紀後半、ヨーロッパでは個人の価値が重視されるようになり、科学の発達に伴い考え方が現実的になる。
その結果、それまでの物語に不満を抱くようになり、小説が書かれ読まれるようになった。この小説は、1
9世紀にかけて盛んになった。
日本には明治時代になってから入ってきて、19世紀後半に盛んになった。坪内逍遙がnobelを小説と訳し
て用いられるようになった。
物語と小説を比較すると次のようになる。
時 場所 登場人物 事件 対象 描き方 主題 |
項目 |
昔 漠然としたある時 あるところ 英雄 身分の高い人 超人 空想的な冒険や恋愛 街談巷説 行動 事実 夢想 出世 奇想天外 奇抜 訓話 勧善懲悪 功利主義 |
物語 |
現在 実存する所 ありふれた個人 日常のありふれた出来事 心理 思想 写実的 現実的 人はいかに生きるかを考える |
小説 |
(例)物語」・『今昔物語集』「巻第二十九羅城門登上層見死人盗人語第十八」と小説・芥川龍之介『羅生門』
3 詩
江戸時代まで 詩と言えば漢詩のことであった。
明治時代 翻訳詩 ヨーロッパから入ってきた西洋詩を翻訳して鑑賞した。
(例) 『於母影』(森鴎外等) 『海潮音』(上田敏)
新体詩 西洋史の影響を受け、それまで漢詩とは異なる新体の詩を作成した。この後、詩。
{例}『若菜集』(島崎藤村)
形式 文語詩 江戸時代まで用いられていた言葉で書かれた詩。
口語詩 現在用いられている言葉で書かれた詩。
定型詩 音数、行数などが一定である詩。五七調、七五調、六六調、八六調など。
自由詩 音数行数などが自由である詩。
散文詩 普通の文章のような詩。
修辞法 修辞法 リフレイン 押韻 倒置法 比喩法 擬人法等。
(散文詩の例) 夜汽車の中で、 萩原朔太郎(『新しき欲情』大正十一年四月刊)
夜汽車の中で、電燈は暗く、沈鬱した空気の中で、
人人は深い眠りに落ちてゐる。一人起きて窓をひらけ
ば、夜風はつめたく肌にふれ、闇夜の暗黒な野原を飛
ぶ、しきりに飛ぶ火虫をみる。ああこの真っ暗な恐ろ
しい景色を貫通する!深夜の轟轟といふ響の中で、
いづこへ、いづこへ、私の夜汽車は行かうとするのか。
4 和歌
『万葉集』初期(500年頃)に成立した。我が国最初のジャンルである。古今最も広く行われており、歌
は数知れない。
形式は五七五七七であり、三十一文字(みそひともじ)とも呼ばれる。
(例)何となきメモにて終わる言もみな三十一文字に仕立つれば歌 研堂
初句切れによって、五七調、七五調の調べがある。文字が多いと少ないとで、字余り、字足らずになる。
修辞法 枕詞 掛詞 序詞 縁語 折句 倒置法 比喩法 擬人法等。
5 俳句
1200年頃、和歌の五七五と七七を二人以上が交代で続ける形式の連歌が起こった。1600年頃、制作の規約がある連歌に対して、自由な内容の、滑稽を主とした俳諧の連歌が起こった。このはじめの五七五(発句)が独立したものが発句(俳句)である。
形式は五七五で季語があり、切れ字があるもおもある。前後二つの部分(二句)に分けられ、しかもその二つの部分が一つの統一(一章)をなす、二句一章の詩である。俳句はこの二つのものの組み合わせの妙できまる。
(例)菜の花や月は東に日は西に 与謝野蕪村
二句 一章
菜の花 地 生物 黄
雄大な景色
月 日 天 天体 白
(注) ジャンル(仏) 種類。芸術、とくに文芸作品の種別。様式。
散文 定型や韻律を持たない普通の文章。
韻文 詩形式を取った表現。