仰月2

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 久しぶりの一族への“帰還”ここ3年は“無害な楽士”を疑われないよう、極力ここへは戻らないようにと言われていた。

3年でここに戻ってきたのは片手で足りるほど・・・見かける顔も随分変わったような気がする、見かけないものは任務で出ているのか命を落としたのか・・・

3年前に子供だったものはとくに入れ代わりが激しいだろう、顔立ちも変わっていてもおかしくない。

 

今日の帰還命令の理由は“王子暗殺を失敗させた問責”だろう、ある意味罪人なのだから話しかけてくるものもいない、巻き添えで疑われたくは無いだろうから当然だ、最近の一族(特に人数と力関係)を知りたいところだが今日はしかたが無いか・・・。

しかし、一族を敵に回す覚悟を決めた以上、調べておかねばならないことだ・・・どうする、この状態の僕に話しかけてくる物好きはジーンと・・

『おや、リオウ。今戻ったのかい』

    ・・このオババくらいのものだろう、二人とも情報収集をするのには適さない。ジーンは何を感づいてどう動くか分からないし、オババは長老たちの中でもかなりの実力者だ。

 

「はい、ただ今戻りました」

『・・・理由はわかっているんじゃろ、自分で蒔いた種じゃ、まあがんばれよ』

「・・・オババは僕の処分をご存知なのですよね」

『・・・ああ、“裁きの豆”でも食わせようかと思ったんじゃが、長老とお前が生き延びるかどうか賭けようとしたら、両方“生き延びる”ほうに賭けたんで賭けにならんかった』

    ・・話の内容から“死ねば有罪、生き延びれば無罪”ということらしいが・・二人共僕のことを信じている?まさか、そんなに甘い考えで一族の長老や幹部は張れない。

『アレは“一気に食べれば吐いて助かる”モノだからの〜、あのジジイも「リオウは毒をちまちま食ったりしない」と考えおった』

    ・・そういうことか

 

「それで、話をもとに戻しますが、僕の処分は何なのですか?」

『ワシが言ったら拗ねるからの〜、あのジジイは。まあ、今も自分の出番を待っているところじゃて、面倒でも行って聞いてきてやってくれ」

「別に、長老の所へ行くのが面倒というわけではないのですが・・・では、行ってきます」

『おう、無事に戻って来るんじゃよ』

 

言われなくても戻ってみせる、・・姫のもとへ。

                              2008/06/15