起死回生?(マルヴェイル祭)
「グリュックリヒ ターク フェアレーベン」
訪ねてきた姫の目の前で、完全に固まってしまった。・・・・飴を用意していない・・・。
忘れていたわけではない、ただどの飴がいいか目移りし、ほかにもっと良いものがあるかも・・と買わなかったのがまずかったか・・・。
もはや弁解のしようもなく凍りつく僕を不安に思ったのか、姫の瞳が悲しそうなものになる。
「もしかして、他の方と交換してしまった・・・とか?」
・
・・・えっ?・・・
『違います!飴を用意するのを忘れてしまって・・本当に申し訳ありません!』
「あの・・・迷惑だったら・・・・」
『絶対に違います!今日はご予定は空いていらっしゃいますか!』
その誤解だけは勘弁して欲しい!
「えっ、特に無いけれど・・・」
『ちょっと来てください!』
必死になって姫を部屋に引っ張り込む、僕が他の女性にだなんてそんな誤解は絶対に困る!
『少々お時間をください』
厨房に行き、鍋に砂糖と水を入れて火にかける。
鉄板に油を塗り、内側に油を塗った型を置き、その中に煮詰まって琥珀色になった鍋の中身を流し込む・・・固まった頃合いを見計らって型から取り出すと・・・・。
「あ、飴! こんな風に作っているのね」
『簡単なものですが・・こんな物でも交換していただけますか?』
「ええ、もちろん! リオウの手作りだなんて嬉しい」
・
・・よかった、誤解がとけて・・・それにこんなに喜んでくれるなんて。
ふと、あることを思いついて、もう一度砂糖と水を火にかける・・さっきの飴より少し固めに煮詰め、油を引きなおした鉄板に今度は直接垂らす・・・
「リオウの名前?」
固まるまでに流れてしまい、はがしたときにはそれが僕の名前だとは判りづらくなってしまった。さすがに職人のように上手くはいかないか。
『これと姫の飴を交換して戴けますか?』
「ふふっ、正真正銘リオウの飴ね、グリュックリヒ ターク フェアレーベン、リオウ」