カラバル(リオウ編)
ユージーン「“裁きの豆”?ご大層な名前だな」
オババ「裁判で有罪か無罪か決めるのに使われるものじゃからの、“30粒食べて、死なねば無罪、死ねば有罪”だそうじゃ」
リオウ「ついでに処刑まですませよう・・・ですか、ずいぶん短絡的ですね」
・・・有罪か無罪かを生死をもって決める・・か、一瞬、これを食べて生き延びれば、姫にしたことが許されるのか・・・と益体もない考えが浮かんだ。
ユージーン「どーせならこんな30粒もちまちま数えるヤツじゃなく一発で決まるヤツの方が面倒ねぇだろうによ」
オババ「30粒という数の多さがツボなんじゃ、一気に食べると胃が拒絶して吐くらしい、疚しい者はビクビク少しずつ食べるからジワジワと吸収されて致死量になるらしいの」
ユージーン「ひょっとして、ずーずーしい奴なら生き延びるってことか? しっかし単なる迷信かと思ったが“人間の心理”を応用してるとは恐れ入ったね」
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・・ずうずうしければ生き延びる・・姫にあんな“取引”を持ちかけた僕は間違いなくそちら側だろう・・無害な人間のふりをしている咎人、か・・やはり僕は僕だ、こんなもので許してもらおうと考えるなんて・・・
ユージーン「・・・ウ、おい!リオウ!」
リオウ「・・何?ジーン」
ユージーン「“何?”じゃねぇだろう。どうしたんだよ、ぼーっとして」
どうやら、考え事に囚われて周りへの注意を怠っていたらしい。
オババ「・・・やらんぞ、貴重なサンプルなんじゃ、腹がへったのなら厨房で何か漁ってこい」
リオウ「いえ、お腹が減ったわけでは・・・」
オババ「ま、裁判なんぞ『勝ったものが負けたものの恨みを買う』のがお約束じゃからな、裁く者もついでに恨みを買わんように“神様が判定を下した”ことにしたかったんじゃろうの」
リオウ「・・・・・・・・・・・」
ユージーン「・・・オババ、余計なことは言うなよ」
オババ「本当のことじゃろうが、『裁判で負けたから代わりにやってくれ』という依頼人がどれだけいると思っている」
ユージーン「そらそーだろうケドよ、・・・なんかさっきまでの感動っていうか、ありがたーいモノがどっか行っちまったぜ」
リオウ「・・・・やはり、厨房に行ってきます」
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・・この二人のそばでの考え事は止めておいた方がいい
姫への償いはカイン様と姫を守り通すことだ、たとえ永久に許してもらえなくても・・・そう決心したのは、建国祭の朝のこと・・・それなのに即許してもらうことを考えるなんて・・・・
しっかりしろ、リオウ、一族はこれからも様々な手を打ってくる。
姫、あなた方は必ず僕が守り通してみせます。
たとえそれが・・・・・、いや、それが新しい道を開く手段になるのなら、僕は迷わない。