顔合わせ
「全く、忌々しい!」
ハインツ国王の死、あの事故から半年、その間は“国王不在”の状態で、国王補佐である私と父上が国政を執ってきた。
“国王=最終決定権を持つ者”がいない国はどうしても軽く見られてしまう。
自国の考え無しには「やりたい放題で羨ましいですな」と言われ、
他国の使者には「それで?国王補佐殿の決定はどれほどの効力があるのですかな」などと嫌味を言われる。
最近では「カイン様もこう長いこと面会謝絶では、貴方が国王になる日も近いのでは」などど言い出す輩が出る始末。
正直、ジークが来て『カインの体が治った』と告げられたときは「カインが即位すればあんな煩わしいことを言う者もいなくなる」とほっとしたのだ。
が、そんな気分は典医の発言に吹き飛ばされてしまった。
『しかし、カイン様は記憶を無くされて、いまだに戻る気配がありません。ですから即位を1年延ばしその間に国王として必要なことを再教育したほうがいいでしょう』
記憶が戻らぬと決まったわけではない、即位して治療をつづけたらどうだ、という意見は通らなかった。
確かに国王とは玉座の重石ではない、政治の分からぬものに座られても良いことは無いのだが・・・。
・・・どうも納得がいかない・・・これからカインが挨拶に来る、姉を連れて・・・「成人した男子が姉の付き添い無しでは挨拶も出来んのか!」と本当は怒鳴りたい。
だんだんまともに待っているのがばからしくなってくる。
ノックの音が聞こえたとき、足を机の上に投げ出して腕を組む、しばらくはあいつらの話も聞こえないフリをしてやる。
ドアが開き、
『エドガー、そなた何をしているのです!』
「は、母上!」
『高貴な身分の者がそのような下賎な振る舞いをするなど・・・』
「母上、これには訳が・・・」
『訳とは?高貴な者が下賎な輩の真似をせねばならぬ理由とは何です?』
「うっ、・・・・それよりもご用件は?これから双子達が来る予定なのですが」
『あの二人が・・・、エドガー、後で私の部屋に来なさい、そこで話をしましょう』
「承知しました。・・・・・・・・・・・・・・ハァ〜〜〜」
よりによって、母上に見つかるとは・・・
その後来た双子には予定通りの対応をした。(コゼットが来たときは見られたかとヒヤリとしたが)
しかしあの二人、あれでは“姫がカインに付き添ってきた”ではなく“
記憶が無いのだからいつもと態度が違うのだろうが、あの姉すらもまともに視界に入っていないような態度・・・
「本当にカインなのか?」