唐突な告白に、その場にいた誰もが凍りついた。ひ、と誰かが息を呑んだ音も聞こえたほどだった。真っ先に復活したのはユーリで、彼はなんてことを! とか、撤回しろ! と言っていた。おそらく何らかの事情を知っているのだろう。
皆が驚愕した様子でトーボーグの言葉の続きを待っていた。例外はシードルとナージャで、彼らはユーリとはまた違う事情を知っているものと見えた。
「で、このことから分かるとおり、俺がシーグルィ。つまりノリネン軍曹の言うところのシグ。……スクルージだよ《
そうして彼はそのときのことを語った。
「元々俺とノリネン軍曹は『あること』で手を組んでいたんだ。……いや、こればっかりはなんなのか言えないさ。話の筋とは関係ないしな。
で、俺はあの時打ち合わせのためにあそこにいた。そうしたら唐突にノリネン軍曹が俺のことを『シグ』なんて呼ぶから驚いたよ。まあ相手はノリンだし、そのくらいの嫌がらせはするかと思っていたら、まさかこんなことを考えていたとはね《
「トーボーグ、今の供述に誤りは?《
落ち着きを取り戻したらしいオクタヴィアが、立会人である自身の立場を思い出したかのように言った。ユーリがそれを聞いておかしそうに声を上げて笑った。
「『供述』? 馬鹿らしい。裁判官のつもりか、オクタヴィア《
「まあとにかく、トーボーグがスクルージだって言うのは嘘じゃないと思うわ《
サイが口を開いた途端、それはどういうことだと言わんばかりの視線が集中する。サイもいい加減この状況に慣れてきて、向けられる眼を無視して言った。
「だって、いつだったかしら。私とトーボーグで揉めたとき、ナージャが仲裁に入ったでしょう《
サイの問いかけに、ややあってからナージャが頷いた。矢張りなにか、隠していたいことがあるのだろう。
「で、そのときにナージャが妙にすらすら喋っていてね。あのときはなんとも思わなかったんだけど、今思うとこれって妙なことよ《
「どういうことです《
ナージャを庇うようにしながら、シードルが言った。
「だってナージャは標準クローヴル語を苦手にしているじゃないの《
正確には、していた、だろうか。だが、そんな細かい修辞法などサイは気にしていなかった。シードルがはっとしたようにナージャを振り返った。
「ナージャはスクルージでしょう? だから、そんなナージャが気楽に――言葉に上自由せずに――話せる相手となると、スクルージに決まってる。これでトーボーグがスクルージである証明は出来たと思うのだけれど《
そう言って締めくくると、周囲の気配がなんとも言えないものになった。具体的には感嘆としたような、呆然としたような。とにかくサイの予想していたものとは大きく外れていた。なんとなくその雰囲気に、お前勘だけはいいからなあ、という幼馴染みのぼやきが聞こえた気がしてむっとなる。
「よくもまあ、そんなことを覚えていたもんだ《
「記憶力はいいほうなの《
そう言って混ぜっ返すと、トーボーグは例のしゃがれた低い声で違いない、と微笑した。