興奮したシードルの頭を宥めるように撫でてやると、シードルは驚いたように飛びのいた。サイも突然のことにびっくりしていると、シードルは申し訳なさそうに首を竦ませていった。
「すみません、こういうことに慣れていないもんですから《
「あら、そうなの《
悪戯心が沸いて、シードルの頭をこれでもかとかき回してやる。バルナに比べるとぼそぼそしていて、上揃いな「毛並み《である。調子に乗ったところで、シードルから本気の抵抗を受けたので手を放した。
シードルのくすんだ金髪は、かき回されて見るも無残にこんがらがっていた。
「ぐちゃぐちゃだわ《
「誰のせいですか《
「ごめん《
シードルの恨めし気な視線に、肩を竦めて答える。シードルのおかげで、気分はだいぶ落ち着いていた。
「帰りましょうか《
髪を直しながらシードルが言った。サイもそれに頷いて、2人はバルナに挨拶すると、もと来た道へ戻っていく。
黒猫亭へ帰る道すがら、シードルはバルナについていろいろなことを語ってくれた。例えば、バルナはシードルがもっと小さいときからの相棒だということ。バルナは雌で、今は角が生え変わる時期だということ。あそこに暮らしているトナキア御者に預けているのだということ。
「僕とナージャはね、バルナに乗ってこの街に来たんです《
視界に黒猫亭が入ってくるか来ないかとなった頃、シードルは胸の内に秘めていたことを零すかのように言った。
「ふうん《
「健脚なんですよ、バルナは。今でもたまにトナキアを牽いているのを見かけます《
「分かるの?《
サイの問いに、シードルが苦笑いを浮かべた。
「分かりますよ、そりゃあ。バルナは僕の相棒ですから《
黒猫亭の前では、ナージャがこちらに向かって手を振っていた。