その1 大阪の七不思議 玉江橋から。まーすぐ南に天王寺さんの五重塔が見える。

京阪電車が淀屋橋から大阪国際会議場の辺りまで延伸されるそうで、あの界隈は新しいマンションが建ったり、老舗の新聞社が高層ビルに建て替えたりと様変わりしていくようです。

元々、蔵屋敷が建ち並ぶお侍の町だったため庶民が近づかなかったのか、落語の舞台としてはあんまり登場しません。登場しても、辻斬りにばっさり切られて、上半身が風呂屋、足が麩屋に奉公に行く「胴切り」のその辻斬りの被害現場とか、「孝行糖」で、親孝行の飴売り吉兵衛さんが、うっかり不幸のあった蔵屋敷の前で、陽気な口上を述べて打ち据えられる場所とか、あんまりええ場所としては描かれておりません。

太融寺の西隣の「円頓寺」の池で寝ている鷺を獲りに行ったのんきな男が、捕らえた鷺がいっせいに羽ばたいて、天高く舞い上がり、四天王寺の五重塔にひっかっかるというのは「鷺とり」という噺です。

男が五重塔にひっかかっているのを見つけるのが、堂島川の玉江橋に通りかかった雑魚場帰りの魚屋の若い衆。大阪の北西にある玉江橋から、南東方向にある五重塔が橋からまっすぐに見えたというので、「大阪の七不思議」に数えられていたそうです。

地図を見てみますと、玉江橋のあたりで、堂島川はゆっくりカーブをしていて、橋自体が少し北西方向から南西方向に斜めにかかっているので、橋の上からまっすぐに塔が見えたというのが、その種明かし。現在は玉江橋からは、ビルと大阪市立科学館の建物が目の前にあって天王寺方面は見渡せません。

「昔は、平屋の住宅がずーっと広がっていたから、五重塔も見渡せたのやろうな」と、往時を偲んでいて、ふと、「四天王寺から、中之島の高層ビルが見えるのではないか」と、思い立ちました。

ものは試しと、天王寺さんへやってまいります。
西門の前の石の鳥居、「天王寺詣り」で、アホが「四四の十六字書いてある」という扁額が上がってます。
「釈迦如来、転法輪処、当極楽土、東門中心」と書いてあるそうです。西門の転法輪で手を清め、金堂のご本尊「救世観音」にお参りし、五重塔に回りました。

振り返って北西方向を見上げましたが、こちらからもビルが建て込んで視界は塞がっています。残念・・・。

ここであきらめてはいけません。
五重塔は、中を登れるようになっているのです。
スリッパに履き替えて、螺旋階段を上へ上へ・・・。登りつめると、四方に窓が開いていて、北の窓から目を凝らしますと、見えます。北西方向に中之島センタービル(NCB)の地上129mにある天辺のまーるいドームが、ビルのかなたに望見できました。


という訳で、本日の「みてあるき」、これにてお開きでございますぅ。


浪花・上本町 御可笑拵処「東雲堂」 狐狸窟彦兵衛 謹製
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