ひさかたの、雨は降りしく、なでしこが、いや初花に、恋しき我が背

大伴 家持

ちょっと「出張」の機会がございまして、北海道は札幌、サミット開催で話題の洞爺湖に行って参りました。
彼の地は、梅雨てな、鬱陶しい季節がないんやそうで、空はきらきらきらと晴れ渡り、さわやかな風が吹き抜けておりました。

札幌観光のシンボルと申しますと、やはり札幌市時計台です。私も別段用もないのに、ふらふらふらと時計台の前まで行ってしまいました。

 1878年(明治11年)に北海道大学の前身である札幌農学校の演武場として建設され、今年で130年を迎えたんやそうで。時計が設置されたのは、完成後3年目やそうです。振り子式の機械時計でございまして、この方式で正確に動いている時計塔としては日本最古のものやそうでございます。

こちらは北海等洞爺湖サミット会場の「ザ・ウィンザーホテル洞爺」です。標高625メートルのポロモイ山の頂上にあって、東に洞爺湖、西に内浦湾を見下ろす絶景の立地でございます。

会場周辺は全国各地からの機動隊が終結していて、警戒に当たっておられます。「鹿児島」「宇都宮」などそれぞれの県警所属ナンバーのバスが駐車しているようすを見ていますと、こんな全国から官軍が集まったのは、五稜郭に榎本武揚が立てこもって以来ではないかなんて思ってしまいました。

なんで、こんなとこに行ったかぇ、ですか?

しゃーからお仕事でございますよ。

<ちょっと薀蓄>

時計の話が出ましたので、「刻うどん」の薀蓄をばひとくさり。

東京では「刻そば」となり、「台がわり」となりますが、ストーリーも少し違います。

大阪の「うどん」は、清八、喜六が二人連れで、遊郭のひやかしに行った帰り、うどんでも食おうと、二人の持ち金を改めると喜六が8文、清八は7文。16文が決まりのうどんを食べるには1文少ない。そこで、清八が悪知恵を働かせて「うどん屋はん、今何刻やな」「へ、9つでおます」と、一文助けてもらい、それを喜六が翌日真似をして失敗します。
東京の「そば」は、この1文ごまかすところ、最初に男が、うどん屋を褒めちぎって、最後に「銭が細けぇんだ、手ぇ出してくんな」とやるのを、横で別の男が見ていて、翌日真似をします。この男、自分でからくりを見破るので、我らが、喜ぃ公よりちょっと頭がいいようです。

ところで、「9つ」というと、今の午前0時ごろです。
昔の時間は、大体2時間刻みで、「9つ」から、「8つ」(2時ごろ)、「7つ」(4時ごろ)、「6つ」(6時ごろ)、「5つ」(8時ごろ)、「4つ」(10時ごろ)・・・といって、また正午が「9つ」に戻ります。なんで9つから始まるかというと、9という数字は「陽数」のもっともいい数字、位の高い数字としてあり、9月9日が重陽の節句などと喜ばれますな。
で、それを基数にして、2番目が「9×2=18」で、その1の位の「8つ」、2番目が「9×3=27」ですから「7つ」となるそうです。ほたら、なんで、3,2,1がないのんか。それは「よう分からん」らしいです。

で、東京の型では、2回目に行く男が刻を訪ねると、お蕎麦屋さんは「4つです」、と答えます。

不定時法の当時、2時間刻みと言っても時計がある訳やなし、お寺の鐘やなんかを頼りに大体その時分という決め方ですから、今で言う午後11時ごろなんて、「4つ」か、「9つ」か分からん。うっかり、その微妙なところで失敗した、という理詰めのオチです。

一方、大阪の喜ぃやんは、根ぇが、あほでっさかい、宵の口、夕方からうどん屋探して、ようやく店出した屋台を見つけてチャレンジするので、夕方に近い「5つ」なんでございますよ。

この世の名残、夜も名残、
死にに行く身をたとふれば、
あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く、
夢の夢こそあはれなれ。あれ数ふれば暁の、
七つの時が六つ鳴りて、残る一つが今生の、
鐘の響きの聞き納め、寂滅為楽と響くなりー

近松門左衛門「曽根崎心中」より

 

狐狸窟彦兵衛 長雨逃れて 逍遥記の番外発行でございます。
 

浪花・上本町 御可笑拵処「東雲堂」 狐狸窟彦兵衛 謹製
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