鼻の頭に桂を打て



今宮戎神社
  えべっさんに「どうぞ金銀の御利益を」と願った男、その願が通じたか、気づくと両手に小判が一枚ずつ。「これは、ありがたい」と喜んだが、「まてよ、これは縁起物の戎小判と違うやろか」

 
     
   
そんな疑念を心に浮かべたものですから、たちまち罰があたって、二枚の小判が、眉毛の上にぺたぺた。
 しもた!…と、悔やみましたが後の祭り。
どないぞ、取る方法はないやろうか、あちこちに訪ねたところ、ある知恵者がいいます。

 「2枚ともは無理やが、1枚だけならなんとかなる」
 「一枚だけでもかまいまへん、どないしたら?」 

 「鼻の頭に桂を打て」
 戎様は、恵比寿、夷、蛭子などと書きますが、古事記によりますと、いざなぎ、いざなみの二柱の神様が国生みの時に最初にお産み遊ばしたのが、この神様やそうでございます。

 女性のいざなみの尊が、先に声をかけて夫婦の契りをしたから、骨の無い蛭のような神様がお生まれになったとか。で、お二人は葦の舟に入れて、海に流しておしまいになるのです。

 現在のジェンダーフリー、ユニバーサルデザインの世の中からすると、むちゃくちゃなお話でございますけれどもね。ま、そう書いてあるのです。
 20年以上前に淡路島に住んでおりましたが、あの地には伊弉諾神宮が、鎮座ましまし、天地創造の最初の島「おのころ島」は、ここである、という場所がいくつもある…なんでや?…のでございます。

 で、淡路島の東海岸に「胡(えびす)」という土地がございます。明石海峡大橋のない時分は、この辺りからフェリーが出ておりまして、西宮、須磨などと結ぶ航路があったのでございますが、つまり、その航路こそ、蛭子様を乗せた葦船の軌跡でございましょうね。

そして、流れ着いたところが、西宮えびす えびす宮総本宮西宮神社でございます、そうな。

だから、淡路島は、えべっさんの故郷でもあるのだそうでございますよ。

 「けんげしゃ茶屋」に出てくる旦那は、「初詣は、今宮戎に連れて行って」とねだられて、「あ、それは目出度い。えべっさんは、耳が遠くて目が近い」などと言い放っております。

 耳が遠いので、願い事をちゃんと聞いてもらうように、裏に回って、背中を叩いて、よう拝むのやそうで、裏にも賽銭箱があります。

祈 商売繁盛

本日はこれまで


浪花・上本町 御可笑拵処「東雲堂」 狐狸窟彦兵衛 謹製
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