金田式DCアンプ製作

ちょっとした後日談


完全対称型パワーアンプの出力インピーダンス

夏休みのつれづれに、完全対称型パワーアンプ達の出力インピーダンス測定のまねごとをしてみた。
発振器その他所用の測定器類はないので、テストCDの400Hz正弦波基準レベルチェック信号をCDプレーヤーのBARIABLE出力から被測定アンプに入力し、出力開放時の出力電圧を2.5Vに調整後、10Ωを負荷し、出力電圧の変化から出力インピーダンスを計算する。
結果は、一応表のようになった。算式は、(開放時−10Ω負荷時)/10Ω負荷時×10。
出力インピーダンス測定
400Hz ON−OFF法
被測定アンプ 開放時(V) 10Ω負荷時(V) 測定値(Ω)
No-144改 VNF MAX 2.5 2.405 0.395010395
(4Ω対応) 2.5 2.405 0.395010395
CNF MAX 2.5 2 2.5
2.5 2 2.5
No-139 VNF MAX 2.5 2.28 0.964912281
(もどき) 2.5 2.28 0.964912281
CNF MAX 2.5 1.61 5.527950311
2.5 1.605 5.576323988
No-144 VNF MAX 2.5 2.305 0.845986985
2.5 2.31 0.822510823
CNF MAX 2.5 1.6 5.625
2.5 1.6 5.625
No-147 VNF MAX 2.5 2.29 0.917030568
(風) 2.5 2.29 0.917030568
CNF MAX 2.5 1.59 5.72327044
2.5 1.6 5.625
電池式GOA 2.5 2.49 0.040160643
(Headphone-1) 2.5 2.49 0.040160643


それなりの数値とは思うが、何せアナログテスターの狭い目盛を目視で読みとっているので正確性はない。(ならば、小数点以下の桁が多い!のですが、エクセルが勝手に計算してくれるので・・・)
金田さんの記事に比較すると、8Ω型はインピーダンスがやや高めで、4Ω型は低めといった感じだが、測定法も違うだろうから、こんなものだろうか。
No−139(もどき)の数値がやや心配だったが、こうしてみるとNo−144等と同等程度だからまずまずと安心した。
参考比較のため、電池式GOAの出力インピーダンスも測定してみた。GOAなアンプ達を代表して「ヘッドフォン(も鳴る)アンプ」だ。こちらは予想通り非常に低い数値となっている。この数値だと8Ωのスピーカーに対するダンピングファクターは200になる。これがどちらかというと世の中の普通のパワーアンプの常識だろう。完全対称型は最大でも10程度だから、半導体パワーアンプとしては異常の部類だ。
これでスピーカーの制動感は完全対称型がGOAを圧倒するのだから、ダンピングファクターがスピーカー制動力の全てではない、ということだろうか。負荷インピーダンスに比例してNFB量が変化するMFBの効果といったところだが、ともかくも、MFBによる出力インピーダンス可変効果を数値で実感する「夏休みの実験」となった。(そんなに大した実験でもないが、残念ながら娘の夏休みの理科の実験としては使えないな〜(^^;)。)
(2000年8月15日記)

その2
完全対称型パワーアンプの一つの特徴はMFBだ。
要するにオープンゲインが負荷インピーダンスに比例するので(勿論一定範囲内においてだと思うが)、NFB量も負荷に比例し、結果、スピーカー負荷では、アンプのNFB量はスピーカーのインピーダンス特性にそっくりの周波数特性を有することになる。
だから、完全対称型パワーアンプは、大きな制動力を要する低域共振周波数付近ではNFB量が増加して制動力を高め、それ以外の周波数では過制動にならないようにNFB量も減り適切な制動力に弱める、というふうにインテリジェントにスピーカーをドライブする。
インテリジェントにと言ってもセンサーやCPUを用いる訳ではないので、使用者がコントロール用ボリュームでこれを適量なものとする。
まあ、MFBの効果については大体このように説明されている。
なるほどねぇ。

ところで、わたしの作った完全対称型パワーアンプ達もそんな風に上手く動作しているのだろうか?
私には負荷インピーダンスによるアンプのNFB量の変化を図るための測定器類はないので、またしてもON−OFF法の出力インピーダンス測定でその辺を探ってみることにした。
やり方は上に同じだが、負荷抵抗を変えて出力インピーダンスの変化を測定してみたのである。
以上の説明が本当なら負荷抵抗を高くするほどにNFB量が増え、その結果出力インピーダンスが低下する筈だ。また、その効果はVNF MAXの時が最大で、CNF MAXでは最小となる筈である。
結果は表のとおりとなった。

測定アンプ 開放時(V) 負荷時(V) 負荷(Ω) 出力インピーダンス ダンピングファクター
No-144 VNF MAX 2.5 2.31 10 0.82 12
  2.5 2.46 43 0.7 61
2.5 2.49 110 0.44 250
CNF MAX 2.5 1.6 10 5.63 2
2.5 2.21 43 5.64 8
2.5 2.4 110 4.58 24
No-147(風) VNF MAX 2.5 2.29 10 0.92 11
2.5 2.45 43 0.88 49
2.5 2.49 110 0.44 250
CNF MAX 2.5 1.59 10 5.72 2
2.5 2.21 43 5.64 8
2.5 2.4 110 4.58 24
No-139(もどき) VNF MAX 2.5 2.28 10 0.96 10
2.5 2.45 43 0.88 49
2.5 2.485 110 0.66 167
CNF MAX 2.5 1.61 10 5.53 2
2.5 2.24 43 4.99 9
2.5 2.4 110 4.58 24
No-144改 VNF MAX 2.5 2.4 10 0.42 24
(4Ω対応) 2.5 2.48 43 0.35 123
2.5 2.495 110 0.22 500
CNF MAX 2.5 2 10 2.5 4
2.5 2.37 43 2.36 18
2.5 2.45 110 2.24 49

なるほどねぇ。(でも、そう劇的という感じでもないな〜。)
(2000年8月27日)

その3
間違いに気づいた。m(__)m
GOAパワーアンプや他の一般的なパワーアンプのように、負荷に関係のない固有の内部抵抗を持っているアンプであれば、上のようなON−OFF法で出力インピーダンスを計算することが出来るが、完全対称型は負荷の値によって出力インピーダンスが変動するのだから、開放時と負荷時を比較しても出力インピーダンスは計算できない。
よって、上の計測は残念ながら意味のないものだった。

では、どうするか。
出力インピーダンスが変動しないようにして測るしかない。
そのためには、8Ω負荷に対する出力インピーダンスは8Ωを負荷した状態で、4Ω負荷に対する出力インピーダンスは4Ωを負荷した状態で、しかも、測定により負荷インピーダンスが変動することのない手法で計測しなければならない。
となると、電流注入法かなぁ〜とも思ったが、開放時ではなく、8Ω(あるいは4Ω)負荷時を基準に、さらに10倍以上の抵抗を負荷した時を比較すればON−OFF法でも何とかなるのではないか。厳密には負荷インピーダンスが下がってしまうので正しくはないのだが、何事にも100%はない。そこは許容しよう。

結果は次のとおりとなった。Rチャンネルのみだが、Lチャンネルも同じである。
測定アンプ 測定負荷(Ω) 測定負荷時(V) +負荷時(V) +負荷(Ω) 測定値(Ω)
No-144 VNF MAX 8 2.5 2.49 110 0.442
CNF MAX 8 2.5 2.44 110 2.705
No-147(風) VNF MAX 8 2.5 2.49 110 0.442
CNF MAX 8 2.5 2.43 110 3.169
No-139(もどき) VNF MAX 8 2.5 2.49 110 0.442
CNF MAX 8 2.5 2.44 110 2.705
No-144改 VNF MAX 4.4 2.5 2.495 110 0.22
(4Ω対応) CNF MAX 4.4 2.5 2.46 110 1.789
これが、本当の出力インピーダンスに近い数値だろう。
が、+負荷をあまり小さくできないので、+負荷時の数値の変動が小さく、テスター目視の計測では最早限界だ。「その2」で意図した計測はこれでは無理で、別の方法が必要のようだ。
(2000年8月28日)

その4


電流正帰還・電池式完全対称型パワーアンプを製作する過程の考察で、出力インピーダンスを測定する別の方法として、負荷R1とR2(R1<R2とする)を用意して、R1負荷時の出力電圧とR2負荷時の出力電圧から求める方法を採用した。

R1負荷時の出力電圧をVo1、R2負荷時の出力電圧をVo2、出力インピーダンスをZoとすれば、アンプ本来の起電力(Vとする)がZoとR1又はR2で分圧されてVo1又はVo2の出力電圧となる筈なので、
Vo1=R1/(Zo+R1)*V
Vo2=R2/(Zo+R2)*V 
だから
(R1+Zo)*Vo1/R1=(R2+Zo)*Vo2/R2
これをZoについて解くと、
Zo=R1*R2*(Vo2−Vo1)/(R2*Vo1−R1*Vo2)
で出力インピーダンスが求められる。
だから、R2=2R1を満たしている時(8Ωと16Ωとか4Ωに8Ωとか)には
Zo=2*R1*(Vo2−Vo1)/(2*Vo1−Vo2)
となる。

この方法で、手元にあるアンプ達の出力インピーダンスを再測定してみた。

R1=8Ω、R2=16Ωを用意し、最初16Ωを負荷した状態で400Hzの信号を入力し、Vo=4Vとなるよう調整しておき、その状態のまま負荷を8Ωに変更して出力電圧を測定する。この結果から出力インピーダンスZoを計算する。
ま、負荷の抵抗値の精度もそれなりだし、テスター読みとりの精度もそれなりだから正確さもそれなりだ。

測定アンプ Vo(V:16Ω) Vo(V:8Ω) 出力インピーダンス(Ω)
No-144 CNF MAX 4 3.025          7.610
VNF MAX 4 3.8          0.889
No-147(風) CNF MAX 4 3.025          7.610
VNF MAX 4 3.8          0.889
No-139(もどき) CNF MAX 4 3.1          6.545
VNF MAX 4 3.8          0.889
No-144改 CNF MAX 4 3.5          2.667
(4Ω対応) VNF MAX 4 3.875          0.533
No-139 CNF MAX 4 3.45          3.034
(もどきNo2) VNF MAX 4 3.825          0.767
電池式完全対称 4 3.925          0.312
(ヘッドフォンも鳴る)
電池式GOA 4 3.99          0.040
(その4)
電流正帰還・電池式 MFB MAX 4 4.7         -2.074
完全対称 MFB MIN 4 4.1         -0.381


電流正帰還の電池式完全対称型が負の出力インピーダンスなのは予定通りの結果なのだが、この測定法だとK式MFBを採用した他の完全対称型パワーアンプ達のCNF MAX時の出力インピーダンスが随分と高く計測されるのは予想外だった。

単純にON−OFF法で測った場合の数値に近いのだが、CNF MAX時の数値などはそれより大きくなっている。はてさて、どういう手法で測るのが正しい出力インピーダンスの測定法なのか・・・こうなると?だ。

が、こうしてみると、−2Ω程度から8Ω程度まで、
広範な範囲の出力インピーダンスが得られる環境が整ってしまったよう・・・

これが音に及ぼす影響、因果関係はどうか?
は、もし解明できることがあったならばそのうち、ということで(^^;

(2002年5月26日)



さて、実測結果がやや予想外だったので金田式MFBについて計算してみよう。
それが右。

ちょっと面倒そうだが、バーチャルショートとキルヒホッフの法則で、理想OPアンプでのK式MFB回路の電圧ゲインAと出力インピーダンスZoを求めてみる。

なお、この場合、入力インピーダンスについては理想OPアンプだから求めるまでもなく∞。

バーチャルショートだからVp1=Vp2である。また、Vp1=Viだから、結局、Vp2をVoとa〜fで表すことが出来れば良い訳だ。

Vp2はオームの法則で求められるなら簡単なのだが、このくらいの回路でもキルヒホッフの法則が必要になるようだ。

ので、bに流れる電流をI1、cに流れる電流をI2、e&fに流れる電流をI3とすると、キルヒホッフの法則により次の式が得られる。

b・I1+a・(I1-I3)=Vo・・・@
C・I2+d・(I2+I3)=Vo・・・A
b・I1+(e+f)・I3-c・I2=0・・・B
a・(I1-I3)-d・(I2+I3)-(e+f)・I3=0・・・C

ここでVp2=Vo−(bI1+eI3)はオームの法則なので、@ABCからI1,I3を求めれば目的に叶うことになる。

ので、
@から
I1=(aI3+Vo)/(a+b)・・・D
Aから
I2=(Vo-dI3)/(c+d)・・・E
BCから
I1=(d(e+f)+c(a+d+e+f))/(ac-bd)*I3・・・F
I2=(a(e+f)+b(a+d+e+f))/(ac-bd)*I3・・・G
DFから
I3=(ac-bd)/((a+b)(cd+ce+cf+de+df)+ab(c+d))*Vo・・・H
FHから
I1=(d(e+f)+c(a+d+e+f))/((a+b)(cd+ce+cf+de+df)+ab(c+d))*Vo・・・I
GHから
I2=(a(e+f)+b(a+d+e+f))/((a+b)(cd+ce+cf+de+df)+ab(c+d))*Vo・・・J

とI1,I2,I3が求められたので、Vp2=Vo-(bI1+eI3) にHIを代入して
Vp2=(a(bd+cd+cf+de+df)+bde)/((a+b)(cd+ce+cf+de+df)+ab(c+d))*Vo 

バーチャルショートにより、Vp1=Vp2 で、また、Vp1=Vi だから
(a(bd+cd+cf+de+df)+bde)/((a+b)(cd+ce+cf+de+df)+ab(c+d))*Vo=Vi
∴ Vo=((a+b)(cd+ce+cf+de+df)+ab(c+d))/(a(bd+cd+cf+de+df)+bde)*Vi・・・K

なのだが、この動作形態では出力を取り出すのはcの両端であるから、
cの両端電圧をVo'とすれば、Vo'=c*I2だから、Jを代入して

Vo'=(ac(e+f)+bc(a+d+e+f))/((a+b)(cd+ce+cf+de+df)+ab(c+d))*Vo 

ここでKを代入し、

Vo'=c(ab+ae+af+bd+be+bf)/(c(ad+af)+d(ab+ae+af+be))*Vi・・・L
∴ A=c(ab+ae+af+bd+be+bf)/(c(ad+af)+d(ab+ae+af+be))・・・M

となる。

そこで、出力インピーダンスZoは、例のON−OFF法により計算すると、

Zo=2c(2c(ab+ae+af+bd+be+bf)/(2c(ad+af)+d(ab+ae+af+be))*Vi-c(ab+ae+af+bd+be+bf)/(c(ad+af)+d(ab+ae+af+be))*Vi)/
(2c(ab+ae+af+bd+be+bf)/(c(ad+af)+d(ab+ae+af+be))*Vi-2c(ab+ae+af+bd+be+bf)/(2c(ad+af)+d(ab+ae+af+be))*Vi)

これを整理すると

Zo=d(ab+ae+af+be)/(a(d+f))・・・N

と求まる。

早速コンピューターに計算させる。

No-144等 No-144等 No-144(改) No-144(改) No-139
(もどき)No2
No-139
(もどき)No2
a 100 100 100 100 220 220 220 220
b 3900 3900 3900 3900 3900 3900 3900 3900
c 8 8 4 4 8 8 4 4
d 0.22 0.22 0.11 0.11 0.22 0.22 0.22 0.22
e 1000 0 1000 0 1000 0 1000 0
f 2200 3200 2200 3200 2200 3200 2200 3200
A(倍)    38.04    38.85     38.04     38.85     22.14     18.80    17.90     17.78
A(db)    31.60    31.79     31.60     31.79     26.90     25.48    25.06     25.00
Zo(Ω)     4.61      0.49      2.30      0.24      2.48      0.49     2.48     0.49
CNF MAX VNF MAX CNF MAX VNF MAX CNF MAX VNF MAX CNF MAX  VNF MAX

No−144の定数では、なんと金田先生のNo−144オリジナルの実測データに極めて近い数値となった。
ので、まあ計算手法は間違っていないのかな、とも思うが、自分の測定ではそのような結果が得られない(^^;
K先生の測定法はどういう手法なのだろう・・・かしら


1 2 3 4 5 6 7 8
a 100 100 100 100 100 100 100 100
b 3900 3900 3900 3900 3900 3900 3900 3900
c 8 8 8 8 8 8 8 8
d 0.47 0.47 0.68 0.68 0.22 0.22 0.22 0.22
e 1000 0 1000 0 2000 2800 3000 3200
f 2200 3200 2200 3200 1200 400 200 0
A(倍)    26.87    36.47     21.56     34.68     37.26     36.66     36.51     36.36
A(db)    28.59    31.24     26.67     30.80     31.42     31.28     31.25     31.21
Zo(Ω)     9.85     1.04     14.24      1.51     15.60     63.93    136.36  131900.00

1〜4はd、即ち電流検出抵抗を変えた場合の変化をみようとしたもの。Zoは、大体dに比例することが分かる。

が、Zoを大きくしたいのであれば、dを変えるより、e,fの比率を逆転させてfを小さくする方がよっぽど手っ取り早い。ということが分かるのが5〜8。
eを大きくしてその分fを小さくしていくとZoはどんどん大きくなり、8の状態(e=3.2kΩ、f=0Ω)ではK式DCアンプも出力インピーダンス132kΩの完璧な電流出力アンプになることが分かる。

K式では「実際のパワーアンプではZoをZl(スピーカーのインピーダンス)以上にすることは滅多にない」ということでそういう状態にはならないよう2.2KΩの電流帰還制限抵抗が挿入されているわけだ。

別に自分の責任でやる分には問題ないので、2.2kΩを小さくして、最近はやり(か?)の電流出力アンプとはどんなものか試してみるのもよいかも知れない。が、現実には発振等への留意も必要となるもよう・・・で、別にお勧めしている訳ではない。なお、私はやらない(^^;

(2002年5月31日)

その5(V−FET完全対称型パワーアンプのZo)


V−FET完全対称型パワーアンプについてはまだやることが終わっておらず製作途上にある。が、既に日々常用してしまっている。これはV−FETを飛ばしてしまえば終わりのアンプだ。そうならないうちにここで恒例の出力インピーダンスの測定をしておこう。

測定手法は、上の“その4”にあるとおりだ。

測定結果はこう。

測定アンプ Vo(V:16Ω) Vo(V:8Ω) 出力インピーダンス(Ω)
V-FET CNF MAX L 4 3.2 5.333
VNF MAX L 4 3.75 1.143
V-FET(MFBなし) 4 3.9 0.421

VNF MAX時でも1Ω以上の出力インピーダンスになっている。が、その要因は基本的には電流検出抵抗(d)に0.47Ωを使っていることにある。

理論計算では、

V-FET
a(Ω) 220 220
b(〃) 3900 3900
c(〃) 8 8
d(〃) 0.47 0.47
e(〃) 1000 0
f(〃) 2200 3200
A(倍) 17.45 17.65
A(db) 24.84 24.93
Zo(Ω) 5.30 1.04
CNF MAX VNF MAX

となって、今回は理論値と実測値が実にぴったりなのだ。

これはこれまで製作した他の完全対称型パワーアンプにはなかったこと。
多分その原因は、V−FETアンプのオープンゲイン時の出力インピーダンス(上の図8の1点で)が比較的低く、理論計算の条件に近いからだろう。2SK60の特性図からするとオープンゲイン時の出力インピーダンスは16Ω程度だろうか。MOSやTRを起用した完全対称型アンプと比べれば多分1桁は小さい出力インピーダンスだろう。その違いが計算値と実測値との一致や乖離となって現れるものと思われる。

さて、
製作の過程でV−FETアンプにMFB回路を取り付ける前に同様の手法で測った出力インピーダンスは0.421Ωだった。
仮にオープンゲイン時の出力インピーダンスを16Ωだと仮定すれば32db程度のNFBがかかっていることになろうか。クローズドゲイン設定は25dbだから、このV−FETアンプのオープンゲインは57db程度だという感じになる。
果たしてどうだろう。

(2003年1月3日)