V−FET完全対称型パワーアンプ(ちょっとB−1?タイプ)を実験する




20年ぶりに再会したソニーのバーティカルFET 2SK60 今回の主役です。(^^)

“静電誘導型トランジスタ”(=SIT)というのが正しい呼称でしょうか。
現岩手県立大学学長の西澤潤一博士が発明された原理を応用して実現した純国産半導体です。

これが世に現れたのは1974年ですから、もう28年も前のことです。

半導体の世界では非常に珍しい3極管特性を有するのですが、そのことが逆に徒になったのでしょうか、それから2、3年としないうちにオーディオの世界からは消え去ってしまいました。

効率が悪いし、ドライブ方法がTRに比べると面倒だし、考えてみれば別に3極管特性だから音が良いと言う訳でもないし・・・

だから商業的には消滅してしまったのでしょうが、アマチュア的にはこういう世にも希有な素材というのは実に魅力的じゃぁありませんか(^^)

最近ちょっと話題のトーキン製SITのほうが確かに特性的にはずっと進歩していて、3極管以上に理想的な3極管特性をしているようなのですが、惜しむらくはあれはちょっと高圧小電流タイプで8Ωスピーカー直結は難しそうです。その点このV−FETはそもそもオーディオ用途で8Ωスピーカーを直結駆動するアンプに用いることを前提に設計されたようで、悩む必要もなく楽に直結アンプを作ることが出来ます。

この2SK60のEp−Ip特性が右です。

3極管特性という視点で見るとちょっと出来はイマイチでしょうか。特にバイアスの浅い部分の大電流領域では特性が飽和特性になってしまっています。

図には電源電圧35V、負荷8Ωのロードラインと、電源電圧25V、負荷8Ωのロードラインを引いてありますが、これでみると2SK60をソース接地で終段に使って得られる電圧ゲインは1.3〜1.6倍程度のようです。

まあ、1倍をかろうじて超えるのですが、出来ればもう少し大きいμが欲しかったところです。と、言っても叶わぬ望み。こういう場合は、電流を増幅することが終段の大事な役割なのだ、とK先生の如く達観することが肝要ですね。何せNFBを用いることもなく電流増幅出力が低インピーダンスで得られるなんて、他の素子ではとうてい叶わぬことなのですから。(^^;

Vdgo=170V
Vsgo=30V〜50V
Id=5A
Pt=63W
Ciss=190pF
ft=20MHz
μ=4
rd=16Ω

実に今頃になってな訳ですが、ありがたいことに、特性の良く揃ったV−FET2SK60が2組やってきました。宝石がやってきたような気分です。

この宝石のような素子。壊してしまったらもうおしまいですが、慎重に壊さないように、果たして上手くアンプが出来上がるでしょうか(^^;




これは未だに入手可能なソニーの小信号用のV−FET 2SK79
未だに入手可能なのも奇跡的に思えますが、まあ、いつなくなるか分かりませんね。

特性的には
Vdgo=120V
Vsgo=10V
Id=200mA
P=750mW
rd=2kΩ(Vds=50V、Id=4mA)
μ=30(Vds=50V、Id=4mA)

gm=14mS(Vds=50V、Id=4mA)
Cip=16pF(Vds=50V、Id=4mA)

と、なかなか使いではありそうなのですが、V−FETとしてこれ1種類しかないとなると回路構成上これを用いなければならないという必然性は余りないかもしれません。

これのPチャンネルコンプリがあればJ18−K60とともにコンプリメンタリーV−FETパワーアンプもシンプルに拵えられると思うのですが、ないものはどうにもなりません。


さて、ご存じの方はご存じでしょうが、かの金田先生の非常にユニークなV−FETアンプを紹介しましょう。MJ1974年8月号で発表されたNo−10“全段FET構成!B級100W+100W DCパワー・アンプ”です。

なんと!ソース接地動作で電圧ゲインを有する終段ばかりでなく、そのドライバーにも2SJ18−2SK60がソース接地動作で使われている・・・のみならず、差動アンプにまで2SJ18が起用されているではないですか!
当時ドライバーに使える小信号用コンプリV−FETがなかったのですね。
当時それらがあれば、No−10は多分2段差動+終段コンプリメンタリ2段ソース接地で作られたのではないでしょうか。

結局あの後も小信号用コンプリV−FETは一般に入手可能な状態になることなく消滅してしまいました。結果、K先生のV−FETの応用もこの後は一般的なソースフォロアーになったのはまぁ止むなしですね。

で、今回ですが、狙いは勿論完全対称型です。完全対称型はK先生のおっしゃるとおり、回路構成の自由度が大きいので、この際、終段にV−FETを起用するだけではなく、この小信号用V−FETの生き残りである2SK79も生かした回路にしてみたい・・・ではありませんか(^^;

で、ちょっと前から考えていたのが、K式完全対称型が登場するはるか前から完全対称型の仕組みを実現していたYAMAHAの最初のSITパワーアンプB−1の回路構成の一部盗用(^^;です。

B−1の回路は3段差動であちこちに位相補償かなにか付加回路が付いてちょっとごちゃごちゃした感じなのですが、終段のドライブは正に完全対称型です。
要は終段2SK77のドライブなんですが、これを定電流負荷のV−FET2SK75のソースフォロアでやっているところが実に上手いではないですか。
2SK77って、定格が不明ですが、いにしえのMJをひもとくと同じYAMAHAの2SK76というSITの規格が載っていましたが、これでPd=100W、Vdgo=200V、Vgso=−40V、Id=10A、gm=750mS、μ=4、rd=10Ωで、入力容量Cissはなんと1000pFもありますし、帰還容量Crは150pFです。2SK77ってこれより大型のSITではなかったでしょうか。とすると、Ciss等ももっと大容量だったのかもしれません。ですから2SK77にはドライバーが必然だったのでしょう。で、定電流負荷の2SK75のソースフォロアはそのためのこの回路な訳です。多分(^^;

低出力インピーダンスのV−FETを起用し、その電流を定電流回路で縛って、かつ受ける事によって、完全対称型のフローティングドライブ条件と終段SITの低インピーダンスドライブ条件とを共に満たしているわけです。

イイですねぇ、これ。この際です。2SK79での2SK60の低インピーダンス&完全対称フローティングドライブに使わせて貰おうじゃないですか。そりゃぁ、2SK60は入力容量Cissが190pF、帰還容量Crも推定同程度以下なので、IV変換抵抗の設定を上手くすればドライバーなしでもドライブ可能ですが、この際、このB−1式ドライブを活用して、その利点を生かしたV−FETアンプというのも良いでのではないでしょ〜か(^^)


なんて事を言って、どこをどう生かしたのだ・・・(−−)、と言われると恥ずかしい訳ですが、結果としてこんな回路です。



終段は、2SK79のB−1式ドライバーと2SK60による完全対称型です。

終段が完全対称動作するのは、勿論2段目が電流出力で終段上側のIV変換抵抗10KΩに、これがアンプ出力とともに振られているフローティング状態であることなど何らお構いなしに、正確なドライブ電圧を発生するからですが、定電流回路で動作を縛られた2SK79は、ドライブインピーダンスだけを下げてそのドライブ電圧を2SK60のGS間に伝達するわけです。

これで終段のポールはずっと上の方に行くのではないか、と思います。が、併せてこうすると、IV変換抵抗の設定自由度がかなり高まります。したがってこれを大きくすると2段目で大きな電圧ゲイン確保が可能になるので、2段目差動アンプ用の素子選択の自由度も高くなる訳です。となれば、ここにもV−FETの2SK79というのが良いじゃありませんか(^^)。

まあ、電流出力に転換するためにカスコードアンプが必要となるので、出力インピーダンスが低いというV−FETの特徴をここでは生かせないという点がイマイチと言えばイマイチですが、この状態で右の特性図のとおり2SK79のgmは実測16mS程度(Id=5mA)になりますので、この構成でこのアンプの電圧ゲインの殆どはこの2段目の2SK79が稼ぐということになります。その結果、このアンプは一層V−FETな完全対称型パワーアンプになる。というものです。

と書くと、順番的に2段目差動アンプへの2SK79の起用は終段にB−1式ドライバーを導入した結果のようですが、実は最初から2SK79をここに起用したいと思っていた訳でもあるのです・・・、勿論、こういう設定に出来るのは、ここでは2SK214と2SJ77で構成しているカスコード&定電流による2段目差動アンプの回路構成の妙(2段目差動アンプはNチャンネルでもPチャンネルでも構成可能、動作電流設定も自由)によるわけで、K先生考案になるこの回路構成の柔軟性があってはじめてこのアンプ回路がなりたっているのだ、という事実を付け加えない訳にはいきません。

この結果、初段はバッファ&レベルシフト&NFB入力&位相補正といった役割を担えば良いということになります。ので、gmの小さい2SJ103が適任です。PチャンネルFETは概してCissやCrssがNチャンネルに比して大きいのですが、2SJ103ならその影響を心配する必要もありません。ゲート漏れ電流も僅少なのでカスコードも省略したいところですが、終段V−FETのバイアス&ドライブ条件から電圧増幅段のマイナス側電圧は高電圧にならざるを得ないので、耐圧の関係からカスコードは必須です。

まあ、初段でも少しはゲインを稼いだ方がよかろう、ということで負荷抵抗は5.6KΩですが、この辺は初段の動作電流設定や2段目の動作設定とも関係して決めたものです。

初段の定電流回路は2N5465の自己バイアスによるシンプルなものにしてみました。2N5465はVdsの低電圧領域での定電流特性は実は良くないのですが、今回の設定ではVds=25Vですし、自己バイアス抵抗で帰還もかかりますので、まずは十分な出力インピーダンスになると思われます。ので、この際、音にも期待しての起用です。位相補正は手元にあったSEでの取りあえず適当なものにしてあります。

と言うわけで、“V−FETを主役とした全段FET構成によるちょっとB1?ティストの完全対称型パワーアンプ”、という感じになりましたが、どうでしょうか。(^^)




果たしてこの回路構成で上手く動くのか・・・、が本質的問題ですので、試しに1チャンネル分を拵えてみました。
基盤が1枚出来たら早速動作の確認を取ります。何せもし動かなかったら、これ以上拵えてもしょうがありませんので・・・(^^;



最初は勿論終段の2SK60を取り付けないで電源を繋ぎます。この辺はV−FETの特性上バイポーラトランジスタ以上に慎重にやらなければなりません。

2SK60を取り付けない状態で、IV変換抵抗である上下の10KΩに−15V程度を中心に−15V±10V程度の電圧がスムーズに発生・調整することが確認できてからでなければ2SK60は決して接続してはいけません。

また、調整中なのでMFB回路も接続しないで、NFBは3.9KΩと220Ωの接続点からかけておきます。

で、2SK60は接続しないで電源を繋いでみたところ・・・

ああ・・・(嘆)、なんとプラス側の10KΩにはマイナスではなくプラスの15V、マイナス側の10KΩの方には−30V近いバイアスが・・・、しかも調整が利かない・・・

なんでだ?どこか間違えているだろうか、設計ミスかなぁ・・・と、しばし沈みました。鬱・・・

が、よくよく回路図で電流の流れを辿って考えてみると、終段を接続しない状態では下側の2SK79の電流の流路がないわな〜〜、と気づきました(^^; 

実は出力にダミー抵抗を入れないでいたのです。

終段の2SK60も繋がらず、出力にダミー抵抗も繋いでいない状態では、定電流回路で縛られた下側の2SK79の電流は上側の10KΩを通って2段目の上側定電流回路から供給されるしかないことになります。ですから、その結果、プラス側の10KΩにマイナスではなくプラスの15V、マイナス側の10KΩの方には−30V近いバイアスが生じるのは当然ということになる訳です。ハハ、お恥ずかしい(^^;、で、早速出力に8Ωのダミー抵抗を入れて再度調整のし直しをしました。これを入れれば下側の2SK79の電流はアースから供給されるので今度は上手く動作するはず・・・です。

結果・・・上手い!躁(^^)。初段の100Ωトリマーで上下の10KΩに発生する電圧をシーソーの用に調整できますし、2段目の500Ωトリマーを調整することでそれらの10KΩに−15V程度を中心に−15V±15V程度のバイアス電圧を上手く発生させられるのでした。

出来過ぎだなぁ、こりゃあ(^^)、と、さっきまでの鬱が嘘のよう。

こうなれば、2SK60の取り付けです。上手くアイドリングが調整できて、発振等もなく、ちゃんと音が出るか・・・・・・、と、バイアスを−20Vに設定した状態で終段を繋いでみたら・・・、勿論、1Aのヒューズと電流計を間に挟むという安全策を講じてやるわけですが・・・、結果、ありがたい、終段のアイドリング電流は正常に調整出来ます。しかも実にスムーズに調整できます。出力のオフセットもドリフトも50mV以下で僅少におさまるようです。V−FETは温度係数が負なのでアイドリングの温度補償は何もしなかったのですが、これも安定しており、問題はないようです。う〜ん、上手くいったようです。早速、入力にピンコードを繋いでモノラルで音出ししてみたところ・・・・・・おお、ちゃんと音も出ました。極めてまともな音のように聞こえます。音出しも成功です。(^^)

と言うわけで回路設計は取りあえず妥当だったようです。なんて、測定器もないので、本当にまともに動いているのか?は実は分からないのですが。

出力インピーダンスはオンオフ法などで簡単に測れるので、やってみたところ0.5Ω程度のようです。この数値からオープンゲイン、NFB量が推測できるでしょうか。

さて、その醸し出す音なのですが、今はモノラルですし、まだまだ評価する段階ではありません。が、実に良さげですねぇ。(^^)。ストレートでソースそのままに伸びやかでクリア。爽快感があります。し、完全対称型らしいダイナミックな鳴りっぷりです。MFBを働かせればちょっと変わるでしょうし、早く全部作り上げてじっくり聴き比べてみなくちゃぁ・・・と思うのですが、今日はそんな作業もせずに朝からずっとこれでモノラルのままあれやこれや音楽を聴きまくっているのです。

ま、焦らずにゆっくり作っていきます。(^^)


(2002年9月16日)

(つづき)


さて、音が出ることは分かったけれど・・・
音が出れば全て良し・・・と終わったわけでは勿論ない訳ですね(^^;

実は、取りあえず乾電池(NEO)で±25V、−60Vを作って乾電池電源で鳴らしてみたのに過ぎないのです。

動作確認の際に乾電池電源を使うのは安全で良いのですが、NEO電池の音はAC電源に比べて優れているというものでもないですし、こんな高圧を要するアンプを今更常時乾電池電源で鳴らし続ける気力はとうに失せてしまっています(^^;ので、AC電源を用意しなければなりません。

まぁ、当然です。
で、トランスについては、こいつをリサイクルすれば良いのではなかろうか・・・と、考えていたものが、右のトランスです。

10W〜15Wばかりの出力のアンプにはちょっと贅沢な仕様ですが、そりゃぁ、誂えた訳ではないのでしょうがありません。が、早速ダイオードとあり合わせの電解コンをバラックで組んでみたところ・・・・・・、まるで誂えたが如くに上手い電圧が得られました。
な〜んて、当然こうなることを予想してアンプは設計していたのですけどね(^^;

さて、この電源で鳴らしてみてからどうするか決めよう・・・という事柄があるのです。それは、安定化電源を採用すべきか否か、そしてそれに関連して保護回路をどうするか、です。

V−FETは3極管特性ですから、ドレイン−ソース間電圧の変化がゲート−ソース間電圧の変化と同じようにドレイン電流の変化を引き起こすので、電源電圧が変動するとこれに伴って信号と無関係な変動が出力に現れてしまう、ということになってしまいます。

特にV−FETの出力抵抗Rdは他の素子には見られない低さ(2SK60で16Ω)ですから、この影響を避けたいと思えば電源には非常にレギュレーションの良いものを用意する必要があるわけで、そうするためにはレギュレーターで電源を安定化しなければならないのではないか、という訳です。
また、もっと分かりやすく現実的な問題としては、非安定化電源の場合、電源電圧の変動でアイドリング電流が変動してしまったり、また、電源のハムが出力に現れる可能性も高いでしょう。

この問題を解決するには、回路的に工夫する方法もあるようですが、私的にはレギュレーターの採用しかありません。幸いこのトランスには18V端子のほかに25V端子がありますから、これを使えばかつての金田式大電流レギュレーターを用いて±25V安定化電源出力を得ることが可能ですし、そうすればいにしえの保護回路を搭載することでアンプ保護、スピーカー保護も完璧でしょう。
というのが、当初からの目論見でもあるわけです。

が、年と共にナマケモノになってきていますので>自分(^^;、あのレギュレーターを作るのはちょっと大変だわなぁ・・・こういう問題が実用上許容できる範囲に収まるものならば、非安定化電源のままでいってもいいのではないかしら・・・という気も大いにあるわけです。

で、最も許容できないのは電源ハムなのですが、ハムが許容範囲なら非安定化電源のままいってみようか・・・と半分以上腹を決めつつ、このAC電源を繋いでスピーカーから出る音に耳を澄ましてみました。ところ・・・

ブ〜ン

と来るかと思ったのですが、ありゃ、予想に反して聞こえてきません。無音ですねぇ(^^)。
スピーカーに耳をくっつけてみても何も聞こえません。え、ちょっと予想外。少しはハムが出るものと覚悟していたのですが。
んじぁあ・・・ということでヘッドフォンを出力に繋いで聴いてみました・・・ら、なんとこれでも全く無音でした。乾電池電源の時と同様に全くの静寂空間から音が湧き出てきます。
ありがたい。ハムは許容範囲どころか、全くの杞憂に終わりました。(^^)

ではアイドリング電流はどうか、なのですが、2SK60がμ=4とやや鈍感な点もあるのでしょうか、また、もともとトランスの容量がある分レギュレーションも十分なためか、これも非常に安定です。

という訳なら、この際レギュレーターの製作は止めることにして、ノンレギュレーター電源でいってみるということで良いのではないでしょうか。実は上のアンプ回路図で前段のマイナス電源の設定が−70Vとなっているのは、−70Vレギュレーターの使用を想定したものだった訳ですが、アンプの回路的には−80Vでも全く問題がないですし、実はその方が2段目マイナス側の振幅範囲の余裕も広がるのです。

が、こうなると保護回路は別途考えなければなりません。


で、その前に、電源オン・オフ時に過渡的にポップノイズが出たり、出力に大きなDCが出たり、終段V−FETに過大電流が流れたり、ということがないかどうか、も確認しておかなければならないでしょう。特にV−FETは0バイアスやゲートオープン状態で遠慮なくバンバンとドレイン電流が流れてしまいますから、電源オン時は終段電源電圧が立ち上がる前にバイアス電圧が発生して、電源オフ時は終段電源が落ちるまでバイアス電圧が残っていないと、ポップノイズどころか、V−FET自体が過電流・過損失で壊れてしまう可能性さえあります。また、この電源電圧の発生・消滅とバイアスの状態が終段上下で同等にならない場合には確実に電源オン・オフ時のポップノイズ発生という結果になるでしょう。実にこの辺はV−FETのTRやMOSに比べるとやっかいに思える点です。

場合によっては、アンプ出力にミューティングリレーを入れなければならないかな・・・と思いつつも、電源のフィルターコンデンサーの容量差で上手いこといかないかなぁ、などと回路図を眺めてあれこれ考えていてもしょうがないので、実際にスピーカーを繋いだまま電源オン・オフをやってみました。勿論アンプが正常に動いている状態を確認した後、ダミー抵抗負荷で電源オン・オフ時に出力に生じる電圧等の動向をかなり確認してからやったわけですが(^^;

結果、電源オン時にポップノイズが“ボッ”と軽く出るだけで、電源オフ時は無音です。つまり電源オンオフ時とも問題となるようなDC出力はなく、また、終段V−FETに過大電流が流れることもないようなので、結果大体オーライでした。が、電源オン時の軽いポップノイズがどうも消えません。その程度は十分実用的範囲ではあるのですが、他の我が家のK式パワーアンプ達は電源オン時もオフ時もほぼ無音のものばかりですので、これは課題として残りました。

で、保護回路ですが、
レギュレーターを使用しない場合の保護回路・・・となれば、やはりK先生が最近導入された、例の大電流型MOS−FETをスイッチ素子とする保護回路でDC漏れによるスピーカーを保護するということになりましょうか。
と思って、あの保護回路の回路図をよく見てみますと、あれ(..)・・・終段のプラスの電源電圧よりも高いプラスの電源が必要なのですねぇ・・・

ふ〜む、であれば・・・

@まあ、−80Vと同様なので+80Vを作るのは簡単ですが、といってそのためだけに+80V電源を用意するのも何かつまらないですし、
A保護回路で保護条件成立時にオフするのは大電流部だけでいいと思うのですが、そうするとその際アンプ前段にはマイナス80V電源だけが掛かっている状態になる、というのもなんとなく気持ちが悪いですし、
Bどうせ終段より高いプラス電源を作らなければならないのであれば、それをアンプ側でも活用して、2段目のプラス側の振幅の余裕も広げた方が良いのではないでしょうか
Cそうすれば電源オン時のポップノイズが消えたりしませんかねぇ

などという考えが浮かび、結果、右の写真、基盤の右下が左右でちょっと様子が異なっているとおり、右側の基盤はプラス側も前段と終段を分離して4電源式で拵えてみたのでした。





が、電源オン時のポップノイズについては、このように4電源にしても消えないのでした。残念(^^;

保護回路が動作し、±25V電源が遮断された場合を想定して、前段電源だけをアンプに繋いで出力に現れるDCの状況を観察してみますと、3電源の方も4電源の方も殆ど同じ状況で、負荷が繋がっていない出力オープン状態ではかなり大きなマイナスの電圧になっています。

ですが、その状態で出力に8Ωなりの負荷が繋がると、出力は殆ど0Vになるのでどちらも実用的には問題はありません。といっても、細かくはこの状態でのDC出力は3電源の方が−280mV、4電源の方は−120mVです。

まあ、内部の定電流回路によってアースからマイナスに電流が引き込まれるためにこうなるのでしょうが、どちらも問題ないとはいえ、よりベターな方と言えば、4電源の方でしょうか。

音を聴いた感じでは3電源も4電源も変わりはないように思うのですが、こうなると4電源の方が2段目差動アンプの動作範囲、終段のドライブ電圧に余裕が確保できますし、精神的にも良いですね。といって、3電源のシンプルさも捨てがたいところがありますので、しばしこのまま音出ししつつ、ケースに組み込むまでそのままにしておきましょう。

あと、保護回路では出力段の過電流保護をどうするかも問題なのですが、これは取りあえず電源出力にヒューズを挟んでおくことにして当面ネグることにします。(^^;

さて、これで本来の電源もバラックですが出来て、アンプ本体も基盤が2枚揃って、取りあえずステレオでV−FETアンプの音が出るようになった訳ですが・・・、その音や如何に?


そうですねぇ・・・、無色透明な音とでも言いましょうか、ソースの善し悪しがそのまま音になって出てくる感じです。当たり前ですか(^^;。
電源の違いも明確で、乾電池からAC電源にしましたら、高域まで素直に伸びきった爽快さに加えて、力強さや伸びやかさ、エネルギー感、低域の弾力感もグッと増して、電池電源のちょっとひ弱で高域の時にヒステリックな感じも消え、とても広帯域でウェルバランスな音になったように思います。

これで、今回の回路。まあ使えそうです。ので、ここまで来ると最早ケースへの組み込みを考えなければならないのですが、どうも板金作業は苦手でして・・・。取りあえずこのままバラックのV−FETアンプで音楽を聴きながら、どういうケースにどう配置するか構想することにしましょう(^^;


(2002年9月23日)

(FET逝く) 

どういうケースにどう配置するか構想しましょう・・・、なんて勿論あまりやりたくないケース加工を後回しにするための言い訳で、実は最初からタカチのOS49−26−33BXに例の如く収めよう・・・と思っていたのでした。(^^;

ら、そのOS49−26−33BXを使用していたあるアンプに宿替えが必要になったので、こりゃぁもっけの幸い、ということでそのお下がりを頂いて早速V−FETアンプをケースに収めました。

電源の方も、ニッケミKMH22,000uF35Vを新調し、同じくKMH2,200uF80VはNo−128(?)&No−168の電源部から払い下げを受けて、後はケースに収めるだけになっているのですが・・・(^^;

なのに、やってしまいました・・・FETを飛ばしてしまったのです・・・(泣)

こういうことは前触れもなく突然です。いつものように電源ONした瞬間、なんとバシッと音をたてて電源ラインに入れてある1Aのヒューズが切れてしまったのです。ヒューズをチェンジしてみても勿論また切れるだけ・・・

あぁ・・・やってしまったか・・・、折角ケースに入れたというのに・・・
V−FETが飛んでしまってはもう終わりです・・・

しばし呆然・・・





それでも、ややしばらくして・・・

う〜〜ん、何をしたんだろう・・・、本当にV−FETが飛んだのかなぁ・・・と往生際が悪い(−−)

と、こういうときにV−FETはTRのようにテスターで各ピン間の導通をみれば良否がすぐ分かるというものでないところが面倒です。

はずして確認するしかないか、とは思いつつも、未練たらしく別のところに原因はないかなぁ・・・と基盤各部をテスターで当たってみるのでした。

ここで両チャンネルとも既に4電源方式にしていたことが幸いしました。一縷の望みを掛けて、終段の電源は断って前段電源だけ供給して出力にはダミー抵抗をつないで基盤各部を当たってみることができます、のでやってみたところ・・・

ありゃ、右チャンネルのIV変換抵抗10KΩにバイアス電圧が出ていないぞ・・・

が、部品が損失オーバーで焼けているような、経験したことのある方には良く分かる臭いが漂ってきて・・・慌てて電源を切ります。

一縷の光明と、さらに破損を広げてしまいそうな不安・・・

だましだまし短時間前段電源を入れて損失オーバーになっていそうな箇所を探すと、なんと初段負荷5.6KΩと2段目差動アンプの共通ソース抵抗680Ωに30V近くの電圧が掛かっているではありませんか。これでは680Ωが損失オーバーで焼けそうになるのは当たり前です。

が、これは何故だ?と初段定電流回路の910Ωの両端電圧を測ってみても2V程度と正常値です。???

・・・終段の破損が連鎖して既に他にも破損が広がってしまった状態なのか・・・(嘆)

で、あれこれ試行錯誤した状況は記してもしょうがないので、結論だけ述べると・・・やはりFETが逝ってしまっていたのでした・・・


が、それはV−FETではなく初段の定電流用FET2N5465だったのです。(爆)

2N5465のドレイン−ゲート間がショートモードで破損したため、初段J103にIdssの限界電流が流れ、そのため初段負荷抵抗5.6KΩや2段目差動アンプの共通ソース抵抗の両端電圧が2段目差動アンプのカスコード用ツェナ−05Z18Xの電圧を超えてしまい、結果2段目の電流バランスが完全に崩れてIV変換抵抗に全くバイアス電圧が発生しなくなったというのが、今回の故障の内容でした。ですから終段2SK60に大電流が流れるのは当たり前で、もし25V電源ラインにヒューズを入れていなかったならば確実に2SK60は昇天していたところでした・・・。

が、ヒューズは入っていたのです。(^^)<躁
早速破損した2N5465を1個同じくIdss=7.4mA程度のものに交換したところ全て正常に復帰しました。
ああよかった〜(^^)<安堵

でも何故2N5465が破損してしまったのでしょう。あそこで2N5465に掛かる電圧は36VでVdg=60Vの2N5465には余裕の電圧のはずなのですが・・・。

そういえば・・・そんなことがどこかに書いてあったような気が・・・と、MJバックナンバーを探ってみました。

ありました。1996年3月号のNo−141“バッテリー電源採用 真空管+バイポーラTR スーパーストレート型 ハイブリッドDCプリアンプ”でK先生がこう述べておられます。

このプリは前段+105V、−15V、終段+15V、−15Vの−電源が共通の3電源なのですが、
「さて初段に戻って定電流回路に注目しよう。従来使用していた2N5465に代わってバイポーラトランジスター2SC1775Aになった。ここは耐圧が15V強で済みそうだ。実際動作時にもこの程度の電圧しかかかっていない。しかしなぜか電源オン時に過渡的に高圧がかかり、2N5465では破損する。この点、耐圧が120Vの2SC1775Aなら安心して使用できる。またコストが安く入手しやすい。さらに音は2SC1775Aの方が滑らかで艶やかだ。」

あらま。なるほど。K先生も今回の私と同様な経験をされたことがあるようです。また、初段の定電流回路に2N5465が起用されていた時代はここでこんな理由で終わっていたのですねぇ・・・、とあまり関係のないことに今更感心したりして(^^;

それはまあ置いておいて、果たして今回、同様に過渡的に高圧が掛かって壊れたものかどうか確かには分かりませんし、どうして過渡的に高圧が掛かるのかはK先生も不明とされているのでまして私に分かる筈もないのですが、こうなるとこのまま初段定電流回路に2N5465を使い続けるのは妥当でないのかもしれません。


が、喉元過ぎて熱さ忘れる、と申しましょうか(^^;

V−FETの安泰も分かってしまうと、もう2N5465は交換してしまいましたし、この奏でる音はとても良いので、もうレコードでも聴きましょう。(^^)

折角綾戸智絵のアナログレコードが2枚も出たのですから。
右はその内の1枚。
もう一枚は「LOVE」です。

V−FETのありのままの明るさ爽やかさがアナログレコードの素直な音をそのままに引き立てて聴かせてくれるのですが、それにしてもこの2枚のレコードは当たりなのではないでしょうか。
CD版やSACD版より良い音がするような気がしますよ(^^;<気のせいだろ(爆)

ま、それはそれとして、ちょっと肝を潰しましたがV−FETは生き残りました。
今回の経験からしてもK先生のおっりゃるとおり初段の定電流回路は耐圧の高いTRで作るのが正解なのかもしれません。

が、またこんな事態が生じないうちは2N5465のままでいってみようと思っているのです。あそこにTRを入れてしまったら折角のピュアFETが崩れてしまうんですよね。

人生(Life)には時として拘りが必要だ・・・
な〜んて(^^;

下手ねぇ・・・。すまん。

・・・・・・
また1年が過ぎたなぁ。もう4年だ。そうね。

(2002年12月23日)

(つづく)


V−FET(SIT)完全対称型パワーアンプ兼パワーIVC






再生



・これも20年ぶり。



・まだ壊れることなく生存していた。



・この際、40年前に登場したV-FETを起用して20年前に製作したV−FET完全対称型パワーアンプ(ちょっとB-1?タイプ)を、V-FET(SIT)完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCとして再生させる。



・そのためにまずV−FET(SIT)2SK60のモデルをでっち上げる。
2SJ18

2SK60
  
・でっち上げた2SK60の静特性。



・μ=4、gm=250mS(Vds=20V、Id=1A)程度になったかな?




・ちょっと違う。



・まぁいいか。



・こうしてみれば、低電圧動作・大電流型三極管。



・もっと生き延びても良かったと思うのだが、一瞬で消えたV−FET。
・で、再生した回路はこう。

・前と殆ど変わっていない。

・そりゃあそもそも変えるべきところはない。

・が、

・パワーIVC動作とモーショナルフィードバックコントローラーは両立しないので、モーショナルフィードバックコントローラーを削除。

パワーアンプ動作とパワーIVC動作が両立するように帰還回路定数を変更。

・初段定電流回路は破損不安のある2N5465によるものから2SA872Aによるものに変更。

・プラス側終段ドライバーの2SK79のドレインを+36V電源に接続変え。

・過電流保護回路とDCオフセット保護回路を追加。

・終段2SK60ソースに0.1Ωを挿入。2SK60のアイドリング電流測定用。

・終段の2SK60のアイドリング電流は200mA程度とする。

・そのゲイン-周波数特性を観る。
・パラメトリック解析で、赤がオープンゲイン、緑がクローズドゲイン、青がループゲインであり、オープンゲインとループゲインは、下から上に負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)の場合。



・緑のクローズドゲインは26.7dB程度。



・オープンゲインは、負荷4Ω時63.1dB、100kΩ(負荷オープン相当)時でも71.4dBと、負荷による差は小さく、結果ループゲインも負荷4Ω時36.4dB、100kΩ(負荷オープン相当)時でも44.7dBと、いわゆるモーショナルフィードバックが大きく掛る特性ではない。



・2SK60が三極管特性でそもそもその出力インピーダンスが小さいため。



・電圧ゲインは初段差動アンプと2段目差動アンプで大体稼いでおり、終段の電圧ゲインはあっても数dB程度。要するにその役割はほぼ電流増幅。この辺は、TRやUHC-MOS-FETを起用した場合と多少異なる。

・パワーIVC動作時のゲイン-周波数特性はミドルブルック法で観る。

  
・パラメトリック解析で、赤がオープンゲイン、緑がクローズドゲイン、青がループゲインであり、オープンゲインとループゲインは、下から上に負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)の場合。



・緑のクローズドゲインは26.7dB程度。



・オープンゲインは、負荷4Ω時63.1dB、100kΩ(負荷オープン相当)時でも71.4dBと、負荷による差は小さく、結果ループゲインも負荷4Ω時36.4dB、100kΩ(負荷オープン相当)時でも44.7dB。



・と、パワーアンプ動作時と同じ。



・緑のクローズドゲインの20MHz付近に多少のピークがあるが、大丈夫か?



・知らん。
・20年経った従前の基板(AT−1S)に所要の改修。(プラス側終段ドライバーの2SK79のドレインを+36V電源に接続変え前撮影)



・案外長持ちするAT−1S
・パワーアンプ時の方形波応答を観る。



・入力は±0.5V10kHz方形波。
・オーバーシュートとアンダーシュートがやや大きい。



・ゲイン-周波数特性からは考えられない。何か別の要因があるのかな?



・が、気にしない。
・パワーIVC時の方形波応答を観る。



・入力は±1.6mA10kHz方形波。
・オーバーシュートとアンダーシュートがあるが、パワーアンプ動作時に比してやや大きくなった。



・その原因は初段差動アンプ非反転入力側のR6=220kΩがあるためのようで、これを取り去ってJ1のゲートをアース直付けとすると方形波応答波形はパワーアンプ動作時の方形波応答と寸分違わぬものとなる。



・が、構わない。
・基板改修終了。
  
・電流注入法で出力インピーダンスを観る。
・低域で37.4mΩ、100kHzで345mΩ程度。



・低域では、最近復活したバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCの1/2。



・終段が三極管特性の2SK60でその出力インピーダンスがそもそも低いので、仕上がりの出力インピーダンスも低い。
・歪率を観る。
・パワーアンプ時とパワーIVC時を一緒に表示している。



・グラフ線が2本しかないように見えるが、データがほぼ同じなのでパワーアンプ時とパワーIVC時のグラフが重なって2本しかないように見えているもの。



・パワーアンプ動作でもパワーIVC動作でも、アンプ自体の動作に違いがある訳ではないので、同じ出力ならば同じ歪率になるのだね。



・この辺はバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCでも同じだった。



・最大出力はどちらの動作でも30Wと言ったところ。
      
・シミュレートしているうちにケーシング終了。



・ケースはタカチのHY99−33−23BBに換装。



・2SK60は、1.5mm厚40mm×40mmのアルミL字アングルに取り付け、そのL字アングルを放熱器構造の側板にタップを切って取り付ける。



・調整はこの上に書いてある20年前の調整法に同じ。



・で、問題なく調整終了。
・早速音出し。



・のために、他のアンプ達の前に並べる。



・下は電源部。



アンプ部のパワースイッチがONの状態で電源部の電源スイッチをONにするとボッとポップノイズが出るが、アンプ部のパワースイッチをOFFにして電源部の電源スイッチをONにし、その後アンプ部のパワースイッチをONにすればポップノイズは皆無。



・電源OFF時はポップノイズはない。



・良いね。

・で、音。



・三極管の音がする。



・かどうかは三極管パワーアンプを聴いたことがないので知らないが、極めてまっとうな音がする。



・私のNo−144改(4Ω対応)UHC-MOS-FETパワーアンプやNo−139もどきwith2SD217パワーアンプ、そしてバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCらに勝るとも劣らない。



・低音から高音まで限界なきがごとくの伸び感は如何にもDCアンプだ。特に低域の伸びと豊かさが良い。高域は明快で爽やか。



・勿論パワーアンプ動作もパワーIVC動作も問題なく、どちらも良い音だ。



・素晴らしいね。
V-FET(SIT)完全対称型パワーアンプ兼パワーIVC。



先に復活したバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCのように顔を作りたかったが、黒パネルでは不可能。よって顔はのっぺらぼう。



上手く蘇った40年前のV−FET(SIT)。



・愉快。
・ようやく梅雨明けしそう。



2019年7月28日







若干見直し



・再生したばかりのV-FET(SIT)完全対称型パワーアンプ兼パワーIVC。

・若干見直した。

・のは、保護回路の過電流検出回路。

・とりあえずL・Rの両チャンネル分を一つの過電流検出回路で間に合わせていたのだが、こうすると、その検出電流値は当然大きいものになる。が、壊してはいけない2SK60のドレイン電流(Id)の絶対最大定格は5Aなんだよね。

・8Ω負荷で30Wの正弦波出力に必要な電流値は2.74A、6Ω負荷なら3.16A、電源電圧と負荷からは8Ωなら25/8=3.13A、6Ωなら4.17A流れる可能性があるので、両チャネル分だと7A〜8Aで過電流検出をすることになる。が、そうすると万が一どちらかのチャンネルだけに過電流が流れたときには2SK60の絶対最大定格Id=5Aを超えてしまう。

・まずい。

・ので、過電流検出回路を両チャンネルで共有しないで、チャンネルそれぞれに設けることにした。

・こう。
・プラス側の過電流検出回路のシミュレーション。



・その「Det」電位が設定電流で6Vから0Vとなるように定数設定をする。
・結果。



・ピンクのV(det)の電圧変化だが、電流が4.9A付近で6Vから0Vに急速に変化する。



・上手い。
・マイナス側の過電流検出回路のシミュレーション。



・これも、その「Det」電位が設定電流で6Vから0Vとなるように定数設定をする。



・なお、1S1588は過電流検出回路のそばにはない。が、DCオフセット検出回路にある。
・結果。



・ピンクのV(det)の電圧変化だが、6Vから−0.6Vにややブロードに変化する。



・こちらは回路的に−0.6Vまで電圧は下がるが、0Vを交差するのは4.98A。



・が、4011がLow反転を検出するのはもっと高い電圧においてであろうから、実際はもう少し少ない電流値で過電流検出がなされることになる。



・良さ気。
  
・音いいね。



・V−FET(SIT)。



・何か癒される感じ。



・何故か?



・さぁ?



2019年8月3日




V-FET (SIT) 2SJ18-2SK60

パワーアンプ兼パワーIVC





再々生




・20年前に製作したV−FET完全対称型パワーアンプ(ちょっとB-1?タイプ)を、2年前にV-FET(SIT)完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCとして再生した。

・が、この際、このB−1タイプのV-FET(SIT)完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCを、電流ドライブのプッシュプルソースフォロア出力段による不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCとして再々生する。 

・その前に、使用する2SJ77と2SK216のSpiceモデルをまたちょっと弄ってみた。

・それらを2SJ77D、2SK216Dとし、その静特性。

・Vds=20VでのVgs−Id特性。



・緑が2SJ77Dで赤が2SK216D。

・データシートと比べると、まぁまぁかな。

・Vgs−VdsーId特性。



・Idの絶対最大定格は500mAであるから、右の500mA以上のデータはフェイクである。

・データシートと比べると、やや電流が流れやすい(多い)が、まぁまぁかな。

・実際に使用する低電流領域のVgs−VdsId特性。


・Vds=20V以下の領域における、電流の立上りがブロードであるべきところは、相変わらず再現できていない。

・データシートと比べると、今度はやや電流が流れにくい(少ない)が、まぁまぁかな。

・データシートでも同じだが、Id=10mA付近の出力インピーダンスは2SK216で数十kΩ程度のよう。
・ソース抵抗51Ωを入れて電流帰還を掛けてみる。





・出力抵抗は1桁高くなったよう。

・当然だが、gmは小さくなった。

・等々、ちょっと考えて、こう。

・B-1風の完全対称型はやめ、不完全対称型の電流ドライブ・プッシュプルソースフォロア出力段とする。

・電源トランスは従前のものをそのまま使う。

・と、アンプ前段の電源電圧は±80V程度が得られる。

・出力段用には従前どおりに±25V程度でも良いのだが、巻き線があるので±36V程度も得られる。

・ので、その電圧を使い、併せて、出力段をパラ接続にしてパワーアップも図ろう。幸いトランスの容量も十分。

・2SJ18−2SK60は、2SJ20A−2SK70Aに比すとgmが小さいので、ドライブ電圧にはより大きな振幅が必要になる。よって、前段の電源電圧は出力段より大分高い電圧が必要。

・上手い具合に前段用に±80Vの電圧が得られる巻き線があって重畳。

・なお、従前の回路素子で使えるものは極力活用。ケース等もそのまま。

・そうすると放熱能力は従前のままなので、終段素子のアイドリング電流は各素子100mA、パラで200mAと、従前型のシングルで200mAだったアイドリング電流と同じにする。右のシミュレーション回路でもそうしてある。

・これでも、終段素子のアイドリング時の損失は片チャンネルで従前型で10Wだったものが14.4Wと増える。が、従前型では放熱器はほんのり温まる程度なので、まぁ、大丈夫かな。
・そのゲイン-周波数特性。


・パラメトリック解析で、赤がオープンゲイン、緑がクローズドゲイン、青がループゲインであり、オープンゲインとループゲインは、下から上に負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)の場合。



・緑のクローズドゲインは26.8dB程度。



・オープンゲインとループゲインは、従前の完全対称型とほぼ同じ。



・2段目差動アンプの2SK216に電流帰還を掛けて、上手い具合に丁度良いオープンゲインに収まった。って、最終的には不完全対称抵抗値の調整で収めている。



・パワーIVC動作時の特性は、これまでの経験からほぼ同じと思われるので、ミドルブルック法によるパワーIVC動作時のシミュレーションは省略
・これでどれだけの出力が期待できるかを観るため、2SK60をパラ接続した場合の静特性を観る。

・電源電圧36Vで負荷8Ωと4Ωの場合のロードラインを点線で引いてある。下が8Ω場合で上が4Ωの場合。


・右はパワーアンプの出力値に要する出力のピーク電圧値とピーク電流値。

・交流であるからプラスマイナスとも必要。

・これと上のグラフから、どの程度の出力を得られるかを観る。

・負荷8Ωの場合、グラフの8Ωのロードラインで、バイアス電圧Vgs=0Vのラインとの交点のドレイン電流値が4A弱であるから、電流ピーク値が4A以上となる70W以上の出力はそもそも得られない。

・出力60Wでは、必要ピーク電流値が3.873Aであるが、ちょうどバイアス電圧Vgs=0Vのラインとの交点のドレイン電流値がその程度のようであるから、電流的には可能の範囲かも知れない。電圧的にはその際のドレイン−ソース間電圧は5V弱で、出力のピーク電圧が30.98Vであるから、電源電圧が36Vであれば、電圧的にも可能の範囲かも知れない。

・よって、負荷8Ωでは、50Wは得られ、60Wも期待できる可能性がある、と言ったところ。

・次に負荷4Ωの場合。出来れば8Ω負荷の場合の2倍の出力を期待したいところだ。

・が、グラフの4Ωのロードラインで、バイアス電圧Vgs=0Vのラインとの交点のドレイン電流値が6.5A程度であるから、電流ピーク値がそれ以上必要となる100Wや120Wの出力はそもそも望めない。

・出力が80Wであれば、電流ピーク値は6.325Aであるし、その際のドレイン−ソース間電圧は10V弱で、出力のピーク電圧が25.3Vであるから、電源電圧が36Vであれば、電圧的にも可能の範囲かも知れない。

・ということで、負荷4Ωの場合の最大出力は、得られても80W以下にとどまる、と言ったところ。

・さらに、電源を安定化している訳ではないので、実際は出力増とともに出力段用電源電圧は下がるから、実機の最大出力はもっと下がる。

・なお、このSPICEモデルは手元にあるランク58の2SJ182SK60を模したもので、他のランクに比して飽和電圧が低く、カットオフ電圧が高いモノのよう。ランクが違えば飽和電圧、カットオフ電圧は大分異なるようなので、その場合、電源電圧等、設計を見直す要がある。

・ところで、2SK70をパラ接続した場合の静特性。電源電圧35Vで負荷8Ωと負荷4Ωの場合のロードラインを引いてある。同様に観ると、8Ω負荷では70W弱、4Ω負荷では120W弱の出力が期待できることが分かる。

・2SK70は2SK60に比して、低インピーダンス負荷でも大出力が得られる特性だ。また、gmもより大きいので前段の電源電圧もより低くて可。

1.4Vp−p10kHz正弦波を入力し、各部の動作を観る。
・どれもパラメトリック解析で、振幅が大きい方から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷開放相当)の場合。


・一番下が出力電位(赤)と終段2SJ18(ピンク)と2SK60(緑)のゲート電位。


・真ん中は、終段2SJ18のパラのドレイン電流値(ピンク)と2SK60のパラのドレイン電流値(青)。


・これを観ると4Ω負荷時のピーク電流値が8A近くになっているが、上の静特性図で観た通り、4Ω負荷で6.5A以上の出力は得られるはずがなく、この4Ω負荷での結果は、このSPICEモデルが正確でないことによるフェイクである。要するに右での4Ω負荷での結果はどれもフェイク。


・が、負荷8Ωでの結果は、ピーク電流値も4A弱であり、その際の終段のゲート電位も出力電圧を超えていないことから、丁度限界出力あたりであることが分かる。8Ω以上の負荷での結果は信頼に足る。かな。


・一番上は2段目差動アンプのふたつの2SK216とカレントミラーの2SJ77のドレイン電流値だが、問題はない。なお、それらのアイドリング電流値は10mA程度とそれなりに大きくしている。理由は、次に。


・パワーIVC動作時の特性は、これまでの経験からほぼ同じと思われるので、ミドルブルック法によるパワーIVC動作時のシミュレーションは省略。
入力±1.3Vp−pの10kHz方形波応答を観る。
・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)とした場合のパラメトリック解析。これも負荷4Ωの場合の結果はフェイクである。で、一番下が出力波形だが、当然どの負荷でも同じ応答。

・下から2番目は、その場合の2SJ18パラの合計ドレイン電流波形(ピンク)と2SK60パラの合計ドレイン電流波形(青)。どちらも電流値が大きい方から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω,100kΩの場合。

・上から2番目が、2段目差動アンプのM4、M5、そしてカレントミラーM6の
ドレイン電流波形。方形波の立ち上がり、立下り時にM4、M5、M6ともにパルス電流が流れている。

・一番上が、その際の2SJ18と2SK60のゲートに向けて流れる電流値。通常は0mAだが、方形波の立ち上がりと立下りの瞬間に、2SJ18と2SK60のゲートに向けてパルス電流が流れている。線が重なっているが、立上り時は共に20mA程度、立下り時には共に−16mA程度流れている。
これは、2SJ18と2SK60の入力容量等を充放電する電流に相違ない。そして、これが2段目差動アンプのM4、M5、そしてカレントミラーM6に流れるパルス電流の正体。

カレントミラー負荷差動アンプの動作電流が各10mAなので、差動の片方に流れる最大電流は20mA。だと思っていたのだが、この結果からすると、最大電流が40mAになっている。実際、R12の電流推移を観るとこのピーク時に40mA流れている。何故か? 知らない。

・概算、終段のV−FET(SIT)の入力容量等=190p×4=760pFとなるので、ここでのスルーレート=20/760=26.3V/uSだから、出力を−30Vから+30Vまで立ち上げるには60/26.3=2.28uSの時間を要する。と、思っていたのだが、40mA流れるのなら、スルーレート=40/760=52.6V/uS、従って、出力を60V立ち上げるためには60/52.6=1.14uSの時間を要するということになる。
・入力方形波を100kHzにすると、この辺がより分かりやすい。

・V-FET(SIT)もそれなりに入力容量等があるので、高い周波数までドライブしようとすれば、それなりの電流を供給できるドライバーが必要。

・2SJ20A−2SK70A パワーアンプ兼パワーIVCでは、2SJ20Aと2SK70Aの入力容量等が2SJ18や2SK60の入力容量等に比較するとかなり大きいので、プッシュプルフォロアドライバーでドライブした。

・が、2SJ18と2SK60であれば、パラであっても、2段目差動アンプに可能な動作電流で、それなりに遜色のない高域特性が得られるのではないか。要すれば、カレントミラー負荷2段目差動アンプがプッシュプルドライバーとして十分に機能するのではないか。

・と思って、
差動アンプの片方に最大20mA流れるように、2段目差動アンプの動作点=10mAとしたのである。

・そうすれば、出力を−30Vから+30Vまで立ち上げるには60/26.3=2.28uSと、それなりの速度のアンプになるはず、と考えたのだ。

・が、2段目差動アンプの片方には40mA流れるのであった。

・何故か? 知らない。

・結果、出力を60V立ち上げるために60/52.6=1.14uSの時間を要するということで右のような結果になっている?

・まぁ、いいか。(爆)

・もしこれが本当なら、近ごろ拵えた不完全対称型電流ドライブ・プッシュプルフォロア出力段採用のパワーアンプ達と同様の速度のパワーアンプを、プッシュプルフォロアドライバーなしで出来た、ということになる。
・比較のため、

・同様、2SJ20A−2SK70A パワーアンプ兼パワーIVCの場合。
・2SJ49−2SK134 パワーアンプ兼パワーIVCの場合。
・そして、2SA1007A―2SC2337A パワーアンプ兼パワーIVCの場合。



・方形波の立上り、立下り時、出力段に貫通電流が生じている。



・これら100kHz方形波応答では、良く観れば2SJ20A−2SK70A パワーアンプ兼パワーIVCでも、2SJ49−2SK134 パワーアンプ兼パワーIVCでも貫通電流が生じている。が、一番顕著なのがこの2SA1007A―2SC2337A パワーアンプ兼パワーIVC。一方、今回の2SJ18−2SK60 パワーアンプ兼パワーIVCは貫通電流の気配は全くないよう。



・で、2SA1007A―2SC2337A パワーアンプ兼パワーIVCの場合の貫通電流は、出力段上下パワートランジスタのベース間に1uFをパラに入れるだけでなくなる。
・こう。


・が、通常そういう高周波信号は入力されないので無視。
・バッテリードライブ 2SA649−2SD218 パワーアンプ兼パワーIVCの場合。


・これも、方形波の立上り、立下り時、出力段に貫通電流が生じている。こちらはいわゆるJBLドライバーだが、あまり効果はないよう。


・これの場合も出力段上下のベース間に1uFを入れるだけでなくなるのは同じだが、入れていない。





・ところで、これら先に作ったパワーアンプ兼パワーIVCのスルーレートも、こうしてみると今回の2SJ18−2SK60 パワーアンプ兼パワーIVCとほぼ同じ。


・それらのスルーレートは、初段差動アンプの動作電流と2段目差動アンプのB−C(G−D)間の位相補正Cによって決まったものだろう。


・初段の動作電流が同じなので、位相補正Cが5pFのバッテリードライブ 2SA649−2SD218 パワーアンプ兼パワーIVCが一番高速。


・これらは、今回の2SJ18−2SK60 パワーアンプ兼パワーIVCのように終段の入り口で決まっていないので、これらを多少動かし、もうちょっと高速にすることは可。


・が、別にこれで不足がある訳でもない。ので、そのままで良い。
・この際、従前のB−1タイプのV-FET(SIT)完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCの100kHz方形波応答も観る。



・MOS-FETがモデリングをちょっと弄ったDタイプになっている。


・入力は±0.5Vp−p。


・負荷は8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kHzのパラメトリック解析。2SK60のシングルプッシュプルでは4Ω負荷は無理。
・一番下が出力波形。


・まぁまぁ綺麗。上の方で10kHz方形波応答を観た際には、立上り、立下りにかなりのオーバーシュート、アンダーシュートが出ていたが、それはMOS-FETのモデリングが悪かったためのよう。ただ、これでも立上り時に僅かにオーバーシュートがある。


・下から2番目が出力段上下の2SK60の電流波形。立上り時はあまり綺麗でない。立下り時にはかなりの貫通電流が流れている。


・上から2番目がドライバー2SK79の電流波形。1番上が2SK60のゲートに向けて流れる電流波形。


・方形波立上り時にはドライバーである2SK79から終段2SK60の入力容量等の充電のための電流が十分に供給されるものの、その立下り時にはその放電のための電流が十分には吸い込まれない。


・ので貫通電流が生じる?


シングルフォロアドライバーでは無理?

・単なるシミュレーション。信じてはいけない。

・電流注入法で出力インピーダンスを観る。
・低域で21mΩ、100kHzで159mΩ程度。


・パワーIVC動作時の特性は測定を省略するが、ほぼ同じだろう。
・歪率を観る。
・1kHzと10kHzの正弦波で見ると、歪率0.1%以下で8Ω負荷では64W、4Ω負荷では128Wの出力が得られるようだ。が、100kHzでは10kHzの10倍以上の歪率となっており、1%以下を許容すれば8Ω負荷で64W、4Ω負荷で128Wの出力が得られるといったところである。



・100kHzのループゲイン≒NFB量は10kHz以下の周波数より概ね20dB小さい、即ち概ね1/10なので、歪率が概ね10倍になるのは理屈なのだが、10倍をちょっと超えているのはやや残念。



・ところで、上で観た通り、このアンプは4Ω負荷で80W以上の出力はそもそも望めないので、ここでの120W、128W、140W、160Wでの結果はフェイクである。



・さらに、どの電源も安定化している訳ではないので、出力段用電圧は出力とともに下がる。従って、実機の最大出力はもっと小さいものになる。



が、我が家の環境では十二分。



・パワーIVC動作時も結果はほぼ同じだろうから、測定は省略。
・では、何故フェイクでも結果が得られるのか?

・それは、このSPICEモデルが、ゲート電位がソース電位に対して順バイアスになった場合も右のようにそれなりの結果が得られるモデリングになっているためである。

・実際のV-FET(SIT)は、順バイアス領域ではトランジスタ的動作となり、入力インピーダンスは急激に下がり、ゲート電流が流れるものになるようだ。それが分かる資料がこれ。右上の図の通り、順バイアス領域ではゲート電流がかなり流れてドレイン電流を流すものになる。

・これでは、順バイアス領域は、今回の回路では前段の電流供給能力からして使えない。

・モデルが対応していないし、回路もそれに対応していないので、ゲート電流を流して順バイアス動作で使う想定は不可。実際不能。
      

・と、シミュレーションしているうちに新基板が出来上がってきた。


・回路はこう。

・アンプ部はシミュレーションの通り。

・が、終段のバイアス回路のツェナーダイオードが12Vでは終段のアイドリング電流が予定より多く流れるため、14Vの1N5244Bにした。

・2SJ18と2SK60の現物は、モデルよりも、もう少し飽和電圧は低く、カットオフ電圧は高いもののよう。

・電源部は所要の定数変更。



・また、この際なので、電源スイッチをNKKのS-1AからS-332Jに変え、スイッチオフで出力段用電源電解コンデンサーの電荷を素早く抜くようにした。

・前段用の±80V電源についても、ブリーダ抵抗を付け、電源オフ後に電解コンデンサーの電荷をそれなりの間に抜くようにした。
 

・電流制限回路は、7.5A程度でシャットダウンするよう設定。

・静特性から、4Ω負荷でも80Wが出力限界なので、電流を流せるよう設定する意味はない。ので、素子の安全のためにも低めに設定。

・アンプ部は、V-FET(SIT)を放熱器に増設し、外したケースを再度組み、裏返して新基板を取り付け、所要の調整をしながら配線作業をすれば、出来上がり。

・2SJ18と2SK60の電極配置はこう。電極端子側から見た図なので誤りなきよう。
     
・早速音出し。
・ウィリアムス浩子。



・この人の作品は音が良い。



・今回再々生した2SJ18−2SK60不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVC。期待通りの情感溢れる音。
・昔のアイドル。

・今も活躍中。

・デビュー35周年記念。

・セルフカバー。


・演奏、録音良し。

・変わらぬ声で、最早童謡のような情感。良い。
・もう大分になるが、NHKで有名になって良かった。

・ffからppまで。沁みる。
・こだわりの録音手法で実現した最高の音質、というUNAMASU。



・嘘なし。
・知らない人だが。



・素晴らしい。
・井筒香奈江。



・素晴らしい。
 

・再々生した2SJ18−2SK60不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVC。

・出力のDCオフセットが±150mV程度にも達するのは今ひとつである。2段目差動アンプの発熱がそれなりにあるせいかな。カスコードアンプを付けて損失を委ね、差動アンプ自体の発熱を減らせば改善するかも知れない。

・が、このシンプルな回路で行く。我が家の環境ではこの程度のオフセットは問題なし。

・最早手に入らないV−FET(SIT)。その奏でる音は期待通り。

・喜ばしい。




2021年5月8日







メンテナンス




・ちょっとメンテナンス。

・終段のバイアス回路の変更のみ。

・ZD5とZD6を14Vの1N5244Bから16Vの1N5246Bに、R13を5.6kΩから2.2kΩに。

・しっとりした一日。






・時のまにまにV−FETパワーアンプ。






・きょうも静かに流れていく。



2021年6月19日







・インスタントレタリングで化粧。








メンテナンスその2




・特段のメンテ項目はないが、この際、オシロで位相補正が適正かどうかを観る


   5pF 10kHz 横軸20uSdiv 縦軸下0.05Vdiv 上1Vdiv
・現行の位相補正5pFの場合。



・先ずは、10kHz方形波。



・下が入力波形、上が出力波形。



・輝線に何かまとわりついているが、観測環境のせいなのでそれは無視。



・出力波形には、オーバーシュートとアンダーシュートがある。少し大きめだし、リンギングもありそうに観える。

   5pF 100kHz 横軸2uSdiv 縦軸下0.05Vdiv 上1Vdiv
・次ぎに、100kHz方形波。



・立上りのオーバーシュートと立下りのアンダーシュートがあり、それらが折り返して3波程度のリンギングになっている。


・この程度なら昔の先生の教義からすれば妥当の範囲だと思われる。



・が、もう少しオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングを減らしたところを狙っても良いかもしれない。
・位相補正を5pFから10pFに変更。
   10pF 10kHz 横軸20uSdiv 縦軸下0.05Vdiv 上1Vdiv
・10kHz方形波。



・下が入力波形、上が出力波形。



・出力波形には、オーバーシュートもアンダーシュートもないように見える。
   10pF 100kHz 横軸2uSdiv 縦軸下0.05Vdiv 上1Vdiv
・100kHz方形波。



・下が入力波形、上が出力波形。



・出力波形には、オーバーシュートもアンダーシュートもない、と言えるが、立上り、立下りの肩で折り返して2波のリンギングになっている。



・この辺で良いのではないか。
   10pF 100kHz 横軸2uSdiv 縦軸下0.05Vdiv 上1Vdiv  8Ω
・同じく100kHz方形波応答だが、こちらは8Ω抵抗を負荷にした場合。



・下が入力波形、上が出力波形。



・出力波形には、オーバーシュートもアンダーシュートもリンギングもなくなったが、応答の角が丸まっている。



・不思議なことに、入力信号の応答の方に、先ほどの出力応答波形にそっくりなリンギングが生じている。



・多分、観測手法が悪いのだろう。



・位相補正は、10pFにする。

・よって、全回路図はこう。

・位相補正が、5pFから10pFになったのみ。

 
     
・位相補正が、5pFから10pFになって、音はどうなるのか?
・う〜ん...






・全く分からない。(爆)






・ただ、ただ、良い音。
     



2023年11月20日