V−FET完全対称型パワーアンプ(ちょっとB−1?タイプ)を実験する

(暫定版)

このページはV−FETを壊すなど製作に失敗したときは消えます。果たして正式版になれるのか・・・(^^;



20年ぶりに再会したソニーのバーティカルFET 2SK60 今回の主役です。(^^)

“静電誘導型トランジスタ”(=SIT)というのが正しい呼称でしょうか。
現岩手県立大学学長の西澤潤一博士が発明された原理を応用して実現した純国産半導体です。

これが世に現れたのは1974年ですから、もう28年も前のことです。

半導体の世界では非常に珍しい3極管特性を有するのですが、そのことが逆に徒になったのでしょうか、それから2、3年としないうちにオーディオの世界からは消え去ってしまいました。

効率が悪いし、ドライブ方法がTRに比べると面倒だし、考えてみれば別に3極管特性だから音が良いと言う訳でもないし・・・

だから商業的には消滅してしまったのでしょうが、アマチュア的にはこういう世にも希有な素材というのは実に魅力的じゃぁありませんか(^^)

最近ちょっと話題のトーキン製SITのほうが確かに特性的にはずっと進歩していて、3極管以上に理想的な3極管特性をしているようなのですが、惜しむらくはあれはちょっと高圧小電流タイプで8Ωスピーカー直結は難しそうです。その点このV−FETはそもそもオーディオ用途で8Ωスピーカーを直結駆動するアンプに用いることを前提に設計されたようで、悩む必要もなく楽に直結アンプを作ることが出来ます。

この2SK60のEp−Ip特性が右です。

3極管特性という視点で見るとちょっと出来はイマイチでしょうか。特にバイアスの浅い部分の大電流領域では特性が飽和特性になってしまっています。

図には電源電圧35V、負荷8Ωのロードラインと、電源電圧25V、負荷8Ωのロードラインを引いてありますが、これでみると2SK60をソース接地で終段に使って得られる電圧ゲインは1.3〜1.6倍程度のようです。

まあ、1倍をかろうじて超えるのですが、出来ればもう少し大きいμが欲しかったところです。と、言っても叶わぬ望み。こういう場合は、電流を増幅することが終段の大事な役割なのだ、とK先生の如く達観することが肝要ですね。何せNFBを用いることもなく電流増幅出力が低インピーダンスで得られるなんて、他の素子ではとうてい叶わぬことなのですから。(^^;

Vdgo=170V
Vsgo=30V〜50V
Id=5A
Pt=63W
Ciss=190pF
ft=20MHz
μ=4
rd=16Ω

実に今頃になってな訳ですが、ありがたいことに、特性の良く揃ったV−FET2SK60が2組やってきました。宝石がやってきたような気分です。

この宝石のような素子。壊してしまったらもうおしまいですが、慎重に壊さないように、果たして上手くアンプが出来上がるでしょうか(^^;




これは未だに入手可能なソニーの小信号用のV−FET 2SK79
未だに入手可能なのも奇跡的に思えますが、まあ、いつなくなるか分かりませんね。

特性的には
Vdgo=120V
Vsgo=10V
Id=200mA
P=750mW
rd=2kΩ(Vds=50V、Id=4mA)
μ=30(Vds=50V、Id=4mA)

gm=14mS(Vds=50V、Id=4mA)
Cip=16pF(Vds=50V、Id=4mA)

と、なかなか使いではありそうなのですが、V−FETとしてこれ1種類しかないとなると回路構成上これを用いなければならないという必然性は余りないかもしれません。

これのPチャンネルコンプリがあればJ18−K60とともにコンプリメンタリーV−FETパワーアンプもシンプルに拵えられると思うのですが、ないものはどうにもなりません。


さて、ご存じの方はご存じでしょうが、かの金田先生の非常にユニークなV−FETアンプを紹介しましょう。MJ1974年8月号で発表されたNo−10“全段FET構成!B級100W+100W DCパワー・アンプ”です。

なんと!ソース接地動作で電圧ゲインを有する終段ばかりでなく、そのドライバーにも2SJ18−2SK60がソース接地動作で使われている・・・のみならず、差動アンプにまで2SJ18が起用されているではないですか!
当時ドライバーに使える小信号用コンプリV−FETがなかったのですね。
当時それらがあれば、No−10は多分2段差動+終段コンプリメンタリ2段ソース接地で作られたのではないでしょうか。

結局あの後も小信号用コンプリV−FETは一般に入手可能な状態になることなく消滅してしまいました。結果、K先生のV−FETの応用もこの後は一般的なソースフォロアーになったのはまぁ止むなしですね。

で、今回ですが、狙いは勿論完全対称型です。完全対称型はK先生のおっしゃるとおり、回路構成の自由度が大きいので、この際、終段にV−FETを起用するだけではなく、この小信号用V−FETの生き残りである2SK79も生かした回路にしてみたい・・・ではありませんか(^^;

で、ちょっと前から考えていたのが、K式完全対称型が登場するはるか前から完全対称型の仕組みを実現していたYAMAHAの最初のSITパワーアンプB−1の回路構成の一部盗用(^^;です。

B−1の回路は3段差動であちこちに位相補償かなにか付加回路が付いてちょっとごちゃごちゃした感じなのですが、終段のドライブは正に完全対称型です。
要は終段2SK77のドライブなんですが、これを定電流負荷のV−FET2SK75のソースフォロアでやっているところが実に上手いではないですか。
2SK77って、定格が不明ですが、いにしえのMJをひもとくと同じYAMAHAの2SK76というSITの規格が載っていましたが、これでPd=100W、Vdgo=200V、Vgso=−40V、Id=10A、gm=750mS、μ=4、rd=10Ωで、入力容量Cissはなんと1000pFもありますし、帰還容量Crは150pFです。2SK77ってこれより大型のSITではなかったでしょうか。とすると、Ciss等ももっと大容量だったのかもしれません。ですから2SK77にはドライバーが必然だったのでしょう。で、定電流負荷の2SK75のソースフォロアはそのためのこの回路な訳です。多分(^^;

低出力インピーダンスのV−FETを起用し、その電流を定電流回路で縛って、かつ受ける事によって、完全対称型のフローティングドライブ条件と終段SITの低インピーダンスドライブ条件とを共に満たしているわけです。

イイですねぇ、これ。この際です。2SK79での2SK60の低インピーダンス&完全対称フローティングドライブに使わせて貰おうじゃないですか。そりゃぁ、2SK60は入力容量Cissが190pF、帰還容量Crも推定同程度以下なので、IV変換抵抗の設定を上手くすればドライバーなしでもドライブ可能ですが、この際、このB−1式ドライブを活用して、その利点を生かしたV−FETアンプというのも良いでのではないでしょ〜か(^^)


なんて事を言って、どこをどう生かしたのだ・・・(−−)、と言われると恥ずかしい訳ですが、結果としてこんな回路です。



終段は、2SK79のB−1式ドライバーと2SK60による完全対称型です。

終段が完全対称動作するのは、勿論2段目が電流出力で終段上側のIV変換抵抗10KΩに、これがアンプ出力とともに振られているフローティング状態であることなど何らお構いなしに、正確なドライブ電圧を発生するからですが、定電流回路で動作を縛られた2SK79は、ドライブインピーダンスだけを下げてそのドライブ電圧を2SK60のGS間に伝達するわけです。

これで終段のポールはずっと上の方に行くのではないか、と思います。が、併せてこうすると、IV変換抵抗の設定自由度がかなり高まります。したがってこれを大きくすると2段目で大きな電圧ゲイン確保が可能になるので、2段目差動アンプ用の素子選択の自由度も高くなる訳です。となれば、ここにもV−FETの2SK79というのが良いじゃありませんか(^^)。

まあ、電流出力に転換するためにカスコードアンプが必要となるので、出力インピーダンスが低いというV−FETの特徴をここでは生かせないという点がイマイチと言えばイマイチですが、この状態で右の特性図のとおり2SK79のgmは実測16mS程度(Id=5mA)になりますので、この構成でこのアンプの電圧ゲインの殆どはこの2段目の2SK79が稼ぐということになります。その結果、このアンプは一層V−FETな完全対称型パワーアンプになる。というものです。

と書くと、順番的に2段目差動アンプへの2SK79の起用は終段にB−1式ドライバーを導入した結果のようですが、実は最初から2SK79をここに起用したいと思っていた訳でもあるのです・・・、勿論、こういう設定に出来るのは、ここでは2SK214と2SJ77で構成しているカスコード&定電流による2段目差動アンプの回路構成の妙(2段目差動アンプはNチャンネルでもPチャンネルでも構成可能、動作電流設定も自由)によるわけで、K先生考案になるこの回路構成の柔軟性があってはじめてこのアンプ回路がなりたっているのだ、という事実を付け加えない訳にはいきません。

この結果、初段はバッファ&レベルシフト&NFB入力&位相補正といった役割を担えば良いということになります。ので、gmの小さい2SJ103が適任です。PチャンネルFETは概してCissやCrssがNチャンネルに比して大きいのですが、2SJ103ならその影響を心配する必要もありません。ゲート漏れ電流も僅少なのでカスコードも省略したいところですが、終段V−FETのバイアス&ドライブ条件から電圧増幅段のマイナス側電圧は高電圧にならざるを得ないので、耐圧の関係からカスコードは必須です。

まあ、初段でも少しはゲインを稼いだ方がよかろう、ということで負荷抵抗は5.6KΩですが、この辺は初段の動作電流設定や2段目の動作設定とも関係して決めたものです。

初段の定電流回路は2N5465の自己バイアスによるシンプルなものにしてみました。2N5465はVdsの低電圧領域での定電流特性は実は良くないのですが、今回の設定ではVds=25Vですし、自己バイアス抵抗で帰還もかかりますので、まずは十分な出力インピーダンスになると思われます。ので、この際、音にも期待しての起用です。位相補正は手元にあったSEでの取りあえず適当なものにしてあります。

と言うわけで、“V−FETを主役とした全段FET構成によるちょっとB1?ティストの完全対称型パワーアンプ”、という感じになりましたが、どうでしょうか。(^^)




果たしてこの回路構成で上手く動くのか・・・、が本質的問題ですので、試しに1チャンネル分を拵えてみました。
基盤が1枚出来たら早速動作の確認を取ります。何せもし動かなかったら、これ以上拵えてもしょうがありませんので・・・(^^;



最初は勿論終段の2SK60を取り付けないで電源を繋ぎます。この辺はV−FETの特性上バイポーラトランジスタ以上に慎重にやらなければなりません。

2SK60を取り付けない状態で、IV変換抵抗である上下の10KΩに−15V程度を中心に−15V±10V程度の電圧がスムーズに発生・調整することが確認できてからでなければ2SK60は決して接続してはいけません。

また、調整中なのでMFB回路も接続しないで、NFBは3.9KΩと220Ωの接続点からかけておきます。

で、2SK60は接続しないで電源を繋いでみたところ・・・

ああ・・・(嘆)、なんとプラス側の10KΩにはマイナスではなくプラスの15V、マイナス側の10KΩの方には−30V近いバイアスが・・・、しかも調整が利かない・・・

なんでだ?どこか間違えているだろうか、設計ミスかなぁ・・・と、しばし沈みました。鬱・・・

が、よくよく回路図で電流の流れを辿って考えてみると、終段を接続しない状態では下側の2SK79の電流の流路がないわな〜〜、と気づきました(^^; 

実は出力にダミー抵抗を入れないでいたのです。

終段の2SK60も繋がらず、出力にダミー抵抗も繋いでいない状態では、定電流回路で縛られた下側の2SK79の電流は上側の10KΩを通って2段目の上側定電流回路から供給されるしかないことになります。ですから、その結果、プラス側の10KΩにマイナスではなくプラスの15V、マイナス側の10KΩの方には−30V近いバイアスが生じるのは当然ということになる訳です。ハハ、お恥ずかしい(^^;、で、早速出力に8Ωのダミー抵抗を入れて再度調整のし直しをしました。これを入れれば下側の2SK79の電流はアースから供給されるので今度は上手く動作するはず・・・です。

結果・・・上手い!躁(^^)。初段の100Ωトリマーで上下の10KΩに発生する電圧をシーソーの用に調整できますし、2段目の500Ωトリマーを調整することでそれらの10KΩに−15V程度を中心に−15V±15V程度のバイアス電圧を上手く発生させられるのでした。

出来過ぎだなぁ、こりゃあ(^^)、と、さっきまでの鬱が嘘のよう。

こうなれば、2SK60の取り付けです。上手くアイドリングが調整できて、発振等もなく、ちゃんと音が出るか・・・・・・、と、バイアスを−20Vに設定した状態で終段を繋いでみたら・・・、勿論、1Aのヒューズと電流計を間に挟むという安全策を講じてやるわけですが・・・、結果、ありがたい、終段のアイドリング電流は正常に調整出来ます。しかも実にスムーズに調整できます。出力のオフセットもドリフトも50mV以下で僅少におさまるようです。V−FETは温度係数が負なのでアイドリングの温度補償は何もしなかったのですが、これも安定しており、問題はないようです。う〜ん、上手くいったようです。早速、入力にピンコードを繋いでモノラルで音出ししてみたところ・・・・・・おお、ちゃんと音も出ました。極めてまともな音のように聞こえます。音出しも成功です。(^^)

と言うわけで回路設計は取りあえず妥当だったようです。なんて、測定器もないので、本当にまともに動いているのか?は実は分からないのですが。

出力インピーダンスはオンオフ法などで簡単に測れるので、やってみたところ0.5Ω程度のようです。この数値からオープンゲイン、NFB量が推測できるでしょうか。

さて、その醸し出す音なのですが、今はモノラルですし、まだまだ評価する段階ではありません。が、実に良さげですねぇ。(^^)。ストレートでソースそのままに伸びやかでクリア。爽快感があります。し、完全対称型らしいダイナミックな鳴りっぷりです。MFBを働かせればちょっと変わるでしょうし、早く全部作り上げてじっくり聴き比べてみなくちゃぁ・・・と思うのですが、今日はそんな作業もせずに朝からずっとこれでモノラルのままあれやこれや音楽を聴きまくっているのです。

ま、焦らずにゆっくり作っていきます。(^^)


(2002年9月16日)

(つづき)


さて、音が出ることは分かったけれど・・・
音が出れば全て良し・・・と終わったわけでは勿論ない訳ですね(^^;

実は、取りあえず乾電池(NEO)で±25V、−60Vを作って乾電池電源で鳴らしてみたのに過ぎないのです。

動作確認の際に乾電池電源を使うのは安全で良いのですが、NEO電池の音はAC電源に比べて優れているというものでもないですし、こんな高圧を要するアンプを今更常時乾電池電源で鳴らし続ける気力はとうに失せてしまっています(^^;ので、AC電源を用意しなければなりません。

まぁ、当然です。
で、トランスについては、こいつをリサイクルすれば良いのではなかろうか・・・と、考えていたものが、右のトランスです。

10W〜15Wばかりの出力のアンプにはちょっと贅沢な仕様ですが、そりゃぁ、誂えた訳ではないのでしょうがありません。が、早速ダイオードとあり合わせの電解コンをバラックで組んでみたところ・・・・・・、まるで誂えたが如くに上手い電圧が得られました。
な〜んて、当然こうなることを予想してアンプは設計していたのですけどね(^^;

さて、この電源で鳴らしてみてからどうするか決めよう・・・という事柄があるのです。それは、安定化電源を採用すべきか否か、そしてそれに関連して保護回路をどうするか、です。

V−FETは3極管特性ですから、ドレイン−ソース間電圧の変化がゲート−ソース間電圧の変化と同じようにドレイン電流の変化を引き起こすので、電源電圧が変動するとこれに伴って信号と無関係な変動が出力に現れてしまう、ということになってしまいます。

特にV−FETの出力抵抗Rdは他の素子には見られない低さ(2SK60で16Ω)ですから、この影響を避けたいと思えば電源には非常にレギュレーションの良いものを用意する必要があるわけで、そうするためにはレギュレーターで電源を安定化しなければならないのではないか、という訳です。
また、もっと分かりやすく現実的な問題としては、非安定化電源の場合、電源電圧の変動でアイドリング電流が変動してしまったり、また、電源のハムが出力に現れる可能性も高いでしょう。

この問題を解決するには、回路的に工夫する方法もあるようですが、私的にはレギュレーターの採用しかありません。幸いこのトランスには18V端子のほかに25V端子がありますから、これを使えばかつての金田式大電流レギュレーターを用いて±25V安定化電源出力を得ることが可能ですし、そうすればいにしえの保護回路を搭載することでアンプ保護、スピーカー保護も完璧でしょう。
というのが、当初からの目論見でもあるわけです。

が、年と共にナマケモノになってきていますので>自分(^^;、あのレギュレーターを作るのはちょっと大変だわなぁ・・・こういう問題が実用上許容できる範囲に収まるものならば、非安定化電源のままでいってもいいのではないかしら・・・という気も大いにあるわけです。

で、最も許容できないのは電源ハムなのですが、ハムが許容範囲なら非安定化電源のままいってみようか・・・と半分以上腹を決めつつ、このAC電源を繋いでスピーカーから出る音に耳を澄ましてみました。ところ・・・

ブ〜ン

と来るかと思ったのですが、ありゃ、予想に反して聞こえてきません。無音ですねぇ(^^)。
スピーカーに耳をくっつけてみても何も聞こえません。え、ちょっと予想外。少しはハムが出るものと覚悟していたのですが。
んじぁあ・・・ということでヘッドフォンを出力に繋いで聴いてみました・・・ら、なんとこれでも全く無音でした。乾電池電源の時と同様に全くの静寂空間から音が湧き出てきます。
ありがたい。ハムは許容範囲どころか、全くの杞憂に終わりました。(^^)

ではアイドリング電流はどうか、なのですが、2SK60がμ=4とやや鈍感な点もあるのでしょうか、また、もともとトランスの容量がある分レギュレーションも十分なためか、これも非常に安定です。

という訳なら、この際レギュレーターの製作は止めることにして、ノンレギュレーター電源でいってみるということで良いのではないでしょうか。実は上のアンプ回路図で前段のマイナス電源の設定が−70Vとなっているのは、−70Vレギュレーターの使用を想定したものだった訳ですが、アンプの回路的には−80Vでも全く問題がないですし、実はその方が2段目マイナス側の振幅範囲の余裕も広がるのです。

が、こうなると保護回路は別途考えなければなりません。


で、その前に、電源オン・オフ時に過渡的にポップノイズが出たり、出力に大きなDCが出たり、終段V−FETに過大電流が流れたり、ということがないかどうか、も確認しておかなければならないでしょう。特にV−FETは0バイアスやゲートオープン状態で遠慮なくバンバンとドレイン電流が流れてしまいますから、電源オン時は終段電源電圧が立ち上がる前にバイアス電圧が発生して、電源オフ時は終段電源が落ちるまでバイアス電圧が残っていないと、ポップノイズどころか、V−FET自体が過電流・過損失で壊れてしまう可能性さえあります。また、この電源電圧の発生・消滅とバイアスの状態が終段上下で同等にならない場合には確実に電源オン・オフ時のポップノイズ発生という結果になるでしょう。実にこの辺はV−FETのTRやMOSに比べるとやっかいに思える点です。

場合によっては、アンプ出力にミューティングリレーを入れなければならないかな・・・と思いつつも、電源のフィルターコンデンサーの容量差で上手いこといかないかなぁ、などと回路図を眺めてあれこれ考えていてもしょうがないので、実際にスピーカーを繋いだまま電源オン・オフをやってみました。勿論アンプが正常に動いている状態を確認した後、ダミー抵抗負荷で電源オン・オフ時に出力に生じる電圧等の動向をかなり確認してからやったわけですが(^^;

結果、電源オン時にポップノイズが“ボッ”と軽く出るだけで、電源オフ時は無音です。つまり電源オンオフ時とも問題となるようなDC出力はなく、また、終段V−FETに過大電流が流れることもないようなので、結果大体オーライでした。が、電源オン時の軽いポップノイズがどうも消えません。その程度は十分実用的範囲ではあるのですが、他の我が家のK式パワーアンプ達は電源オン時もオフ時もほぼ無音のものばかりですので、これは課題として残りました。

で、保護回路ですが、
レギュレーターを使用しない場合の保護回路・・・となれば、やはりK先生が最近導入された、例の大電流型MOS−FETをスイッチ素子とする保護回路でDC漏れによるスピーカーを保護するということになりましょうか。
と思って、あの保護回路の回路図をよく見てみますと、あれ(..)・・・終段のプラスの電源電圧よりも高いプラスの電源が必要なのですねぇ・・・

ふ〜む、であれば・・・

@まあ、−80Vと同様なので+80Vを作るのは簡単ですが、といってそのためだけに+80V電源を用意するのも何かつまらないですし、
A保護回路で保護条件成立時にオフするのは大電流部だけでいいと思うのですが、そうするとその際アンプ前段にはマイナス80V電源だけが掛かっている状態になる、というのもなんとなく気持ちが悪いですし、
Bどうせ終段より高いプラス電源を作らなければならないのであれば、それをアンプ側でも活用して、2段目のプラス側の振幅の余裕も広げた方が良いのではないでしょうか
Cそうすれば電源オン時のポップノイズが消えたりしませんかねぇ

などという考えが浮かび、結果、右の写真、基盤の右下が左右でちょっと様子が異なっているとおり、右側の基盤はプラス側も前段と終段を分離して4電源式で拵えてみたのでした。





が、電源オン時のポップノイズについては、このように4電源にしても消えないのでした。残念(^^;

保護回路が動作し、±25V電源が遮断された場合を想定して、前段電源だけをアンプに繋いで出力に現れるDCの状況を観察してみますと、3電源の方も4電源の方も殆ど同じ状況で、負荷が繋がっていない出力オープン状態ではかなり大きなマイナスの電圧になっています。

ですが、その状態で出力に8Ωなりの負荷が繋がると、出力は殆ど0Vになるのでどちらも実用的には問題はありません。といっても、細かくはこの状態でのDC出力は3電源の方が−280mV、4電源の方は−120mVです。

まあ、内部の定電流回路によってアースからマイナスに電流が引き込まれるためにこうなるのでしょうが、どちらも問題ないとはいえ、よりベターな方と言えば、4電源の方でしょうか。

音を聴いた感じでは3電源も4電源も変わりはないように思うのですが、こうなると4電源の方が2段目差動アンプの動作範囲、終段のドライブ電圧に余裕が確保できますし、精神的にも良いですね。といって、3電源のシンプルさも捨てがたいところがありますので、しばしこのまま音出ししつつ、ケースに組み込むまでそのままにしておきましょう。

あと、保護回路では出力段の過電流保護をどうするかも問題なのですが、これは取りあえず電源出力にヒューズを挟んでおくことにして当面ネグることにします。(^^;

さて、これで本来の電源もバラックですが出来て、アンプ本体も基盤が2枚揃って、取りあえずステレオでV−FETアンプの音が出るようになった訳ですが・・・、その音や如何に?


そうですねぇ・・・、無色透明な音とでも言いましょうか、ソースの善し悪しがそのまま音になって出てくる感じです。当たり前ですか(^^;。
電源の違いも明確で、乾電池からAC電源にしましたら、高域まで素直に伸びきった爽快さに加えて、力強さや伸びやかさ、エネルギー感、低域の弾力感もグッと増して、電池電源のちょっとひ弱で高域の時にヒステリックな感じも消え、とても広帯域でウェルバランスな音になったように思います。

これで、今回の回路。まあ使えそうです。ので、ここまで来ると最早ケースへの組み込みを考えなければならないのですが、どうも板金作業は苦手でして・・・。取りあえずこのままバラックのV−FETアンプで音楽を聴きながら、どういうケースにどう配置するか構想することにしましょう(^^;


(2002年9月23日)

(FET逝く) 

どういうケースにどう配置するか構想しましょう・・・、なんて勿論あまりやりたくないケース加工を後回しにするための言い訳で、実は最初からタカチのOS49−26−33BXに例の如く収めよう・・・と思っていたのでした。(^^;

ら、そのOS49−26−33BXを使用していたあるアンプに宿替えが必要になったので、こりゃぁもっけの幸い、ということでそのお下がりを頂いて早速V−FETアンプをケースに収めました。

電源の方も、ニッケミKMH22,000uF35Vを新調し、同じくKMH2,200uF80VはNo−128(?)&No−168の電源部から払い下げを受けて、後はケースに収めるだけになっているのですが・・・(^^;

なのに、やってしまいました・・・FETを飛ばしてしまったのです・・・(泣)

こういうことは前触れもなく突然です。いつものように電源ONした瞬間、なんとバシッと音をたてて電源ラインに入れてある1Aのヒューズが切れてしまったのです。ヒューズをチェンジしてみても勿論また切れるだけ・・・

あぁ・・・やってしまったか・・・、折角ケースに入れたというのに・・・
V−FETが飛んでしまってはもう終わりです・・・

しばし呆然・・・





それでも、ややしばらくして・・・

う〜〜ん、何をしたんだろう・・・、本当にV−FETが飛んだのかなぁ・・・と往生際が悪い(−−)

と、こういうときにV−FETはTRのようにテスターで各ピン間の導通をみれば良否がすぐ分かるというものでないところが面倒です。

はずして確認するしかないか、とは思いつつも、未練たらしく別のところに原因はないかなぁ・・・と基盤各部をテスターで当たってみるのでした。

ここで両チャンネルとも既に4電源方式にしていたことが幸いしました。一縷の望みを掛けて、終段の電源は断って前段電源だけ供給して出力にはダミー抵抗をつないで基盤各部を当たってみることができます、のでやってみたところ・・・

ありゃ、右チャンネルのIV変換抵抗10KΩにバイアス電圧が出ていないぞ・・・

が、部品が損失オーバーで焼けているような、経験したことのある方には良く分かる臭いが漂ってきて・・・慌てて電源を切ります。

一縷の光明と、さらに破損を広げてしまいそうな不安・・・

だましだまし短時間前段電源を入れて損失オーバーになっていそうな箇所を探すと、なんと初段負荷5.6KΩと2段目差動アンプの共通ソース抵抗680Ωに30V近くの電圧が掛かっているではありませんか。これでは680Ωが損失オーバーで焼けそうになるのは当たり前です。

が、これは何故だ?と初段定電流回路の910Ωの両端電圧を測ってみても2V程度と正常値です。???

・・・終段の破損が連鎖して既に他にも破損が広がってしまった状態なのか・・・(嘆)

で、あれこれ試行錯誤した状況は記してもしょうがないので、結論だけ述べると・・・やはりFETが逝ってしまっていたのでした・・・


が、それはV−FETではなく初段の定電流用FET2N5465だったのです。(爆)

2N5465のドレイン−ゲート間がショートモードで破損したため、初段J103にIdssの限界電流が流れ、そのため初段負荷抵抗5.6KΩや2段目差動アンプの共通ソース抵抗の両端電圧が2段目差動アンプのカスコード用ツェナ−05Z18Xの電圧を超えてしまい、結果2段目の電流バランスが完全に崩れてIV変換抵抗に全くバイアス電圧が発生しなくなったというのが、今回の故障の内容でした。ですから終段2SK60に大電流が流れるのは当たり前で、もし25V電源ラインにヒューズを入れていなかったならば確実に2SK60は昇天していたところでした・・・。

が、ヒューズは入っていたのです。(^^)<躁
早速破損した2N5465を1個同じくIdss=7.4mA程度のものに交換したところ全て正常に復帰しました。
ああよかった〜(^^)<安堵

でも何故2N5465が破損してしまったのでしょう。あそこで2N5465に掛かる電圧は36VでVdg=60Vの2N5465には余裕の電圧のはずなのですが・・・。

そういえば・・・そんなことがどこかに書いてあったような気が・・・と、MJバックナンバーを探ってみました。

ありました。1996年3月号のNo−141“バッテリー電源採用 真空管+バイポーラTR スーパーストレート型 ハイブリッドDCプリアンプ”でK先生がこう述べておられます。

このプリは前段+105V、−15V、終段+15V、−15Vの−電源が共通の3電源なのですが、
「さて初段に戻って定電流回路に注目しよう。従来使用していた2N5465に代わってバイポーラトランジスター2SC1775Aになった。ここは耐圧が15V強で済みそうだ。実際動作時にもこの程度の電圧しかかかっていない。しかしなぜか電源オン時に過渡的に高圧がかかり、2N5465では破損する。この点、耐圧が120Vの2SC1775Aなら安心して使用できる。またコストが安く入手しやすい。さらに音は2SC1775Aの方が滑らかで艶やかだ。」

あらま。なるほど。K先生も今回の私と同様な経験をされたことがあるようです。また、初段の定電流回路に2N5465が起用されていた時代はここでこんな理由で終わっていたのですねぇ・・・、とあまり関係のないことに今更感心したりして(^^;

それはまあ置いておいて、果たして今回、同様に過渡的に高圧が掛かって壊れたものかどうか確かには分かりませんし、どうして過渡的に高圧が掛かるのかはK先生も不明とされているのでまして私に分かる筈もないのですが、こうなるとこのまま初段定電流回路に2N5465を使い続けるのは妥当でないのかもしれません。


が、喉元過ぎて熱さ忘れる、と申しましょうか(^^;

V−FETの安泰も分かってしまうと、もう2N5465は交換してしまいましたし、この奏でる音はとても良いので、もうレコードでも聴きましょう。(^^)

折角綾戸智絵のアナログレコードが2枚も出たのですから。
右はその内の1枚。
もう一枚は「LOVE」です。

V−FETのありのままの明るさ爽やかさがアナログレコードの素直な音をそのままに引き立てて聴かせてくれるのですが、それにしてもこの2枚のレコードは当たりなのではないでしょうか。
CD版やSACD版より良い音がするような気がしますよ(^^;<気のせいだろ(爆)

ま、それはそれとして、ちょっと肝を潰しましたがV−FETは生き残りました。
今回の経験からしてもK先生のおっりゃるとおり初段の定電流回路は耐圧の高いTRで作るのが正解なのかもしれません。

が、またこんな事態が生じないうちは2N5465のままでいってみようと思っているのです。あそこにTRを入れてしまったら折角のピュアFETが崩れてしまうんですよね。

人生(Life)には時として拘りが必要だ・・・
な〜んて(^^;

下手ねぇ・・・。すまん。

・・・・・・
また1年が過ぎたなぁ。もう4年だ。そうね。

(2002年12月23日)

(つづく)