選び抜かれた銘石たち
Goodbye Again

(01061601)

三菱の2SA726

金田式DCプリアンプと言えばこれだった。(真空管が登場するまで(^^;)

ft=100MHz、Cob=3pFと、高域特性でft=120MHz、Cob=1.8pFの日立2SA872にやや及ばないものの、その音で初期の段階でNECの2SA640からプリアンプの2段目差動アンプの地位を奪い、肉薄する2SA872にもその地位を譲ることはなかった。

後に2SA872がその地位に付いたが、それは2SA726が入手困難となったためで、いわば代替品なのである。

改訂版 最新オーディオDCアンプにおいて、2SA872と比較して「2段目の差動アンプには2SA726の方が、より柔らかな音の再現ができるようだ。高域もCobのやや多い2SA726が逆に伸びているように感じる。」とおっしゃっている。

また、「ただ、2SA726も他のFETやTRと同様独特の音色を持っている。・・・2SA726のように、低Cob、小PcのTRは、2SA640、2SA750のような高CobのTRに比べると、音がやや細くなり、もっと幅広い、ゆったりとした音が欲しくなることもある。だから、2SA726といえども理想のTRではない。もっと良いTRが、いつかは現れることだろう。」ともおしゃっておられたが、「もっと良いTR」は遂に現れなかった。

あるいはそれはメタルキャンの2SA606(607)だったのか・・・結局、真空管だったのか・・・(^^;



(01061701)

同じく2SA726だが、上の2SA726とは足が違う。上はよくある普通の平べったい足だが、左のものは円柱型の丸足である。

実は丸足はいにしえの2SA726であることの証明。

さらに左の2SA726にいたっては丸足であるだけではなく、足の色がブロンズではないですか(..)。と言うことは銅足!?。一番最初の頃の2SA726のよう。

足によって微妙に音が違う!?なんて面妖なことは申しませんが(^^;、銅足も丸足も、いにしえには音に気を使っていた時代があったことの証か。

さて、2SA726は何故がいにしえから2SA726Gと指定されたが、“G”が付いていないと駄目なのか?

GはhFE区分でF=250〜500,G=400〜800、H=600〜1200ということなので、別にGでなければならないなどということはないはず。だが、Hというのは見たことがないなぁ。

(史料提供fusaさん)

(01061702)

2SA726がもうない・・・

という場合は左の2SA725という手がある。

定格上、Vcbo、Vceoが2SA726は50Vであるのに対して2SA725は35Vと低い以外に両者には相違はなく、要するに725は耐圧の低い726なので、使用箇所の電圧さえ許せば726と同等に使える。

いにしえの第一世代のプリアンプの電源電圧は±35Vぐらいだったが、電池式GOA時代には±10Vや±18Vに過ぎなかったのだから2SA725でも全く問題ないはず。

が、こちらも既にディスコン。無いのは同じか(^^;






(01062301)

NECの2SC1400

PNPの代表がA726なら、NPNの代表はこのC1400だ(った)。

改訂版最新オーディオDCアンプにおいて、DCプリアンプのエミッタフォロア出力段等のTRとして、2SC1775,2SC1222、2SC1400の歪み特性が比較されているが、「その中で特に2SC1400は歪みは少ない」と評価されている。

では歪み特性だけでC1400が選ばれたのか?というと、プッシュプルエミッタフォロアでは「歪みの最も少ない組合せ」である2SC1400とそのコンプリである2SA750のペアが選ばれずに、「メーカーも製法も違う」2SC1400と2SA726がペアとして選ばれていて、そもそもは音で選抜されたもの。

hFE区分は、F=225〜450,E=350〜700、U=500〜1000であるが、かつてはhFEの大きいUランクが容易に入手できて、Fランクは目にした覚えがない、のはA726とは逆の現象


いにしえには金田式パワーに使うC1400はhFEオーバー800の”Uランク”が常識で、Eランクなどは店の人が「Eランクしかありませんが、いいですか?」と確認しながら申し訳なさそうに売っていたとか・・・。今となってはEランクでも買っておけばよかったと後悔している方も多いかも・・・(^^;




(01062302)


2SC1400に代わって銘石の地位に付いたのがこの日立の2SC1775。

と言って新しい石ではなくて2SC1400と同じくらい古いTrで実に息の長いTrなのだが未だに現行品のはず(違うか?(^^;))

現行品では博物館にふさわしくないのだが、左のように並べると博物館にもふさわしいものになる(^^;

微妙に違うのだが勿論全部2SC1775A

一番左は金田さんがプリアンプ
に使用し始めた頃のもので、なんと銅足銀メッキ!足の色が微妙に違う。

左から2番目は足の材質が変更(?)され普通になってしまった直後のもの。でもまだECBのマーク入りで、足を間違う心配がない。

左から3番目は、いろいろな製作記事で盛んに使用され始めた1985年頃のものだが、もうECBのマークがなくなってしまっている。

そして一番右が現行品、マークの印字は薄いし、気のせいか少し小さくなったのかな。

銘石もこうして歴史を辿ると時代が反映されていることが歴然となる。オーディオの黄金期はとうに過ぎて、自作オーディオの趣味もすっかり衰退していく。時の大きなうねりがここにも痕跡を残している訳だが、日立さん、是非このまま生産を続けて下さいね。と最後は完全にお願いモード(^^;


(01062303)


2SA896−2SC1811の代替という感じがないことはないのだが、日立の2SB716−2SD756のコンプリペアもレギュレーターに欠かせないTRであって、未だに現行品として残っている希有な銘石。

そもそも、1970年代(?)に日立が“オーディオ用!”と堂々と銘打って売り出したもの。

その意気込みの証が一番左の初期タイプのものに見られる銅足銀メッキ。

が、その後、普通の足に退化し(中央)、現在に至っている(右)。

足といい、ECBのマークといい、マークの印字が薄くなってしまったことといい、すっかり上の2SC1775と同じだが、別にもとに戻して下さいとは言いませんので、日立さん、是非このまま生産を続けて下さいね、とこちらも同じお願いモード(^^;


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2SC1775Aのコンプリである2SA872A

これまたすっかり2SC1775Aに同じです(^^;



(01062304)


三菱のデュアルトランジスタ2SA798と2SC1583

第一世代の超高速シリーズレギュレータの誤差アンプにもGOA時代のプッシュプルレギュレータの誤差アンプにも変わることなく使用された。
もともと差動アンプ用だからかエミッターがピン共通になっている。

さて知っている方は知ってのとおり、2SA798は名器2SA726のデュアルTr。
だから2SA726がない・・・という場合はこの2SA798という手もあるのだ。

金田さんもいにしえには「かなり音色が異なるようだ」と評価されたのだが、第一世代のプリアンプのプッシュプルエミッタフォロアのC1400のペアとしてA798(A726では許容損失不足のため。贅沢にもデュアルの片側だけを使う)を起用されたこともあるし、「オーディオDCアンプシステム」では2段目差動アンプに2SA798を多用しておられるし、差を意識する必要などない。

ではC1583の方はどうか?
こちらは残念ながらC1400の代替としては役者が不足のようだ(^^;




(01082503)


MJ2001年3月号のNo−162“4D32プッシュプルパワーアンプ”で突然いにしえのTR、SONY2SA896が復活した・・・

このTRは“改訂版 最新オーディオDCアンプ”が書かれた昭和52〜53年頃の最新TRで、同本において、当時の2段差動アンプに採用した場合にA607の4.53倍帯域が広い高域特性の良いTRとして登場している。

また、709CEを使用した初期レギュレーターから超高速ディスクリートレギュレーターの時代を通じて、そのレベルシフトエミッタフォロアーとして不動の地位にあったのがこれとそのコンプリの2SC1811だ。

Ep型
Vcbo=−200V
Vceo=−175V(−150V)
Ic=−100mA
Pc=750mW
Tj=120℃
fT=70MHz
Cob<3.5pF

GOA時代にレギュレーターがプッシュプルレギュレーターとなってレベルシフトが不要となり(併せて多分ディスコンとなったこともあって)歴史の海に沈んだが、実は持ち合わせがあるならばプッシュプルレギュレーターのプル側に2SB716−2SD756の代わりに起用すると大変良い(らしい)・・・(^^;


(01082504)



上で記載したとおりだが、右が勿論SONYの2SC1181

Ep型
Vcbo=240V
Vceo=175V(150V)
Ic=100mA
Pc=750mW
Tj=120℃
fT=140MHz
Cob<2.8pF

ちなみにVceoに括弧がついているが、A896,C1811とも2種あって「1」が175V耐圧、「2」が150V耐圧となっている。

ふ〜ん、で、「1」「2」ってどこに書いてあるの?

さぁ・・・型番の下のロット記号の数字のどれかかなぁ・・・(^^;






(01082501)


初期のゲルマニウムトランジスターに
はこんな形のものが多かったらしい。

何故かその足がひげのように異様に長いのが特徴だが、当時のゲルマTRは熱に弱かったので半田付け時の熱が伝わらないように長いリードにしていたという説がある。本当?

が、これはれっきとしたシリコンTR
Epa型
Vcbo=50V
Vceo=50V
Ic=500mA
Pc=350mW
Tj=175℃
Icbo=0.5μA
hFE=80
fT=120MHz
Cob<5.5pF

金田式DCアンプの最初のプリアンプの出力段エミッタフォロアーTRとして採用されたのがこれ。なんて知る人はおじさんだけ・・・(^^;





(01082502)

由緒正しき金田式DCパワーアンプの2段目差動アンプにはNECの2SA606(607)以外のTRはありえない!

はずのところ、金田さんのDCアンプの歴史においては、画期的なアンプにおいて定番以外の素子が用いられるという現象があって、左のNEC2SA915も記念すべき最初のGOAアンプであるNo−84“AB級240W+240W 対アース出力アンプ”の2段目差動アンプに採用されたという、実に記念すべきTRなのだ。

エピタキシャル型
Vcbo=−120V
Vceo=−120V
Ic=ー50mA
Pc=1W
Tj=150℃
Icbo=ー0.1μA
hFE=200
fT=80MHz
Cob=2.5pF

ちなみにこのコンプリは2SC1940

が、それ以来再活用されることはなかった・・・




(01100102)

放熱板に取り付けるにはアルミ座金が別途必要という不思議な形状をしたトランジスター、SONYの2SC1124−2SA706

Vceo=140V
Vceo=140V
Ic=1A
PC=950mW(7.9W)
Tj=120℃
ft=120MHz
Cob=6.5pF

70年代、709オペアンプを起用した第2世代大電流シリーズレギュレータにおいて3段ダーリントン制御TRの2段目にこの2SC1124が使用されたていた・・・なんて知る人は多くはないだろう。

80年となってすぐにレギュレーターがディスクリート化されたことに伴い、709と運命を共にして以後採用されることはなかったのだから・・・。

が、ディスクリートレギュレータにおいて同等のポジションを担ったのが2SC1431というSONY製TRであったことはなんとも面白い・・・。


(発掘者 izuさん)