モータ鑑定団
(2005年5月8日開始)



      motor Stator(固定子) Rotor(回転子)     Platter          strobopattern
SP-10
1970年 6月発売
82,000円 
モータ:2060スロット超低速電子整流子モータ
ターンテーブル:アルミ合金ダイキャスト直径30cm 慣性質量330kgcm2自重2.8kg
   
   開発者の小幡修一さんが、情報メディア学会誌において、「開発発表時点での発売目標価格は約30万円に設定していましたが、経営幹部の方針で、10万円以下に決定されて、この商品分野の業界トップを目指す強い指示に、研究・開発・製造部門全員の意気が高揚したのを憶えています。」と書かれている。 世界初のDDモータである。
30年以上経った現在でもメンテナンス無しに完動品が入手できることは、設計の優秀さを物語っている。この機種の唯一の弱点は、アルミシャーシの腐食かもしれない。
工業デザインとしても、日本には珍しくシンプルでかつ個性的なデザインである。直線と曲線が上手く融合したある意味日本的な美を現したデザイン。
工業デザインを担当された陰山忠司さんは、現在茨城県笠間市で陶芸家として活躍されている。オーディオがハイテクであった時代の名品といえると思う。
後でOEMされる兄弟機種に比べるとマグネットにインデックスマークがないのが特徴。これは位置検出ロータの位置決めを、現物で測定して決めたので必要なかったのかもしれない。

  
赤のマジックでの書き込みがあるのは、鑑定団員による書き込みではなく、オリジナルのままの状態から存在したものである。
磁石の材質はマンガン・アルミニューム磁石。
ローター中心に取り付けられたのが位置検出用歯車。ローターが20極=S・Nが10組なのでこちらの歯も10個になるのだが、当然ローター磁石と歯車の歯の位置には動作上関係性がある。
SL−1100以降では歯車取り付け位置は構造的に固定だが、SP−10では最適位置に調整後固定していたのかもしれない。という風景。
  
SP-10のプラッタ-は全面旋盤加工されており、外周は少しだけ低く、緻密な加工がなされている。当然AT-666はぴったり張り付く。 裏面。上部やや右寄りに、ダイナミックバランスを取った痕跡のドリル穴。     要注意!!

初代SP−10のプラッターには、アルミプレートに印刷されたストロボパターンを有するもの(右上)と、アルミにアルマイト処理でストロボパターンを直接描画したらしいもの(右下)の2種が存在していたことが判明。問題は、後者の場合赤外線フォトインタラプタが使用不能なこと。詳しくはこちら  
アルミプレートに印刷されたストロボパターン。
PD121 1975年8月発売
135,000円
ターンテーブル:30cmアルミダイキャスト製直径30cm、慣性質量340Kg・cm2自重2.5Kg
   
  
        オーディオ各社がSP10に追従するために次々とDDを投入した中で、三洋とティアックとともに遅れて発売されたラックスマンのDDプレーヤ。アームレスで、この時代の流行であるSME3009を実装することを前提としてデザインされていた。アルミダイキャストの堅牢なボディと木製フレームの優雅なデザインを特長とする。
   
コイルなどの基本構造がSP10と同じであることが分かる。位置検出コイルを接続する中央の丸型の基板が同じ型番であるが判別できる。明確に分かる違いとしては、位置検出コイルの固定の仕方と、コアの色である。60極ともなると位置検出コイルの取り付け精度が問題であることを示しているのかもしれない。固定の仕方による特性的な違いは現在のところ明らかになっていない。今後の鑑定団員の報告を待ちたい。

   
マグネットの材質がマンガン・アルミ磁石から変更になっているように見える。(色が違うだけかもしれないが)ロータの着磁のインデックスマークの白い線がロータマグネット上にある。位置検出のロータコア部の位置決めを行うためのものかもしれない。
   
回転軸がSP−10とは微妙に異なり、軸径が6.95mm(SP−10は11.96mm)とやや細いほか、軸受部分も回転軸の先端が局面加工となっている。 センター穴はSP-10のそれと異なり、センターシャフトの径で開いている。また縁にはMK2のそれのように3mm位のフランジがある。  裏側からみると、ストロボパターン以外はYP1000IIと同じようなデザインに見える。バランス・テストをパスしたシールが貼ってあるが、テクニクスの純正品のようにドリル跡が見つからない。ストロボパターンの下にあるのかもしれない。他の兄弟機種にも共通する謎となっている。ストロボパターンは金田式の心臓部なので、非破壊で確認することが難しいため、今後もしばらく謎のままかもしれない。        ブラックライトをあてて、文字を浮き上がらせるという変わったデザイン。ブラックライトがパルス駆動となっているため、ストロボの文字が綺麗に浮き上がる。ストロボパターンの位置の精度は高いと思われるが、金田式のFGに利用するには工夫が必要。   
YP1000 1975年発売 140,000円
モータ:DCサーボモーター(20極60スロットブラッシュレス)
ターンテーブル:31cmアルミ削り出しヘアーラインアルマイト処理(重量2.4kg)
回転数:331/3,45rpm 2スピード
回転数調整範囲:±6%・各回転数独立調整
SN比:60dB以上
ワウフラッター:0.03%以下(WRMS)
     
                              
        ヤマハのYP1000のモーター。  こうして見ると元祖SP−10とPD121及びYP1000は中央の丸型基盤が同じ形番であり、モーターは基本的に同じものであったことが分かる。ただし、SP−10だけはスピンドル軸径がより太かった。   さらにロータも見るとPD121とYP100のモーターは全く同じものだったということが分かる。                  YP1000のプラッタ−は独自ですねぇ。SP−10属で裏面中央部がフラットなのはこれだけのようで、同社のYP1000U用とも違うとは面白い。                       
YP1000U 1977年発売150,000円
モータ:20極60スロットDCサーボモーター
ターンテーブル:31cmアルミ削り出し2.8kg
ワウフラッタ(WRMS):0.03%以下
SN比:60dB以上
回転数調整:±6%
  
        こちらはヤマハのYP-1000IIのモーター。          SP-10のものより少し径が大きく、重量もあるようだ。YP-1000はプラッター表面に埋められた3本のゴムのリングでレコードを支えるようになっていたが、これはドーナツ状のゴムシートが乗っている。 ゴムシートが嵌まる部分が1段低く加工されているため、これもAT-666をそのまま載せるには適さないと思われる。 裏面を見ても、ダイナミックバランスを取った形跡はない。 ストロボパターンはSP-10同様の印刷だが、明確で平面性も良好のようだ。ここは金田式制御にも適していそう。
DD10                       
        マイクロ精機のダイレクトドライブプレーヤーDD10のモーター。ローター上面には“MICRO”と表示のあるプレートが貼られているが、外観からこのモーターの正体は明らかですね。              径310mm、2.4kg。外周部分の上面と側面は旋盤で平滑に仕上げられているが、内側の黒く塗装された部分は鋳造した表面そのままのようで、平面精度は期待できない。この部分は外周の旋盤仕上げの部分より僅かに低くなっていることもあり、AT666をそのまま載せても密着してくれないだろう。 裏面。ダイナミックバランスを調整した様子は見られない。もともとバランスが取れていたのかもしれないが。    ストロボパターンはSL1100のように浮き彫りになった表面を切削加工したもの。
SL-110
(SL−1100)

1971年11月発売
72,000円(SL−1100)
モータ:20極15スロット超低速電子整流子モータ
ターンテーブル:アルミ合金ダイキャスト直径35cm 慣性質量320kg・cm2自重2kg

           
              MJL-12A SP−10登場後1年にしてアーマチュアコイルの巻き方はこちらに変更されてしまったことが分かる。以降のテクニクスDDターンテーブルのモーターは全てこの巻き方だから、現在に続くSL−1200シリーズの直系の祖先と言う意味ではこちらか。   ローターの磁石の材質はこれ以降フェライト磁石。    中央の歯車の歯の形状もSP−10とは微妙に異なる。こちらは歯が台形状だ。
この点はSL−1200用のモーターも同じ。
   
SFTE110            
SL-1200
(SL−120)
(SP−12)
1972年11月発売
65,800円(SL−1200)
56,800円(SL−120)
モータ:20極15スロット超低速電子整流子モータ
ターンテーブル:アルミ合金ダイキャスト 直径33cm慣性質量310kg・cm2 自重1.75kg
       
         MJL−9A    次に登場したのが今に続くSL−1200の初代。この初代用モーターはSL−1100用から化粧を落としただけで構造は全く同じもののよう。 残念だがSL−1200もMK2以降はクォーツロック化されたものの、極数スロット数が削られ(16極12スロット?)モーター自体の価値は低下した。          SFTE120             突起数上から133個/周
         180個/周
         160個/周
         216個/周
と、SL-1100と同じ。というか、商用電源周波数によるストロボだから皆同じというとか。
SP-10MK2 1975年 6月発売
150,000円
モータ:クォーツロック20極15スロット超低速電子整流子モータ
ターンテーブル:アルミダイキャスト直径32cm慣性質量380kg・cm2自重3.0kg
        MJX−12A

SP−10の名前を継いだもののモーター自体は初代SL−1200用とほぼ同等だ。クォーツロックの制御アンプが非常に複雑かつ巨大で、コストの殆どがそちらに回ったためだろうか。残念。
  
このモーターになって初めて周波数発電機(FG)が登場した。軸中央部にあるのがそれだ。勿論クォーツロック対応のため。ただのプラッタ−のように見えるが実は190個/周の歯を持つ歯車になっている。    ローターの方も中心が10の歯を持つ歯車から、内周に190本の溝を彫り、外周に10個のひし形状切抜きを有する銅版帯が巻かれた磁性体に変更されている。勿論FGによるクォーツロック対応のためだが、上手く考えたものだ。 FG用に内周には溝が彫られてているのだが、どうやって彫るのか、手間そうだ。
外周に巻かれたのが歯車の歯の代わりをなす菱形状の切り抜きがなされた銅帯だが、切り抜きは菱形と言うよりは台形状といった方が正しい。
   
SFTE102−01
SFTG102M03(ラバー)   
    ラバーを剥がした姿。
確かにSP10用には劣るが、といって、SL1100用&SL1200用に劣るとは思えないのだが(^^;
   
190個/周とFGに同じ。よってこのパターンをフォトインタラプタで検出してボルテージコンパレータに入れれば他に制御部の変更を要せず動作するはず。
ところで、ワンパターンで33&1/3rpmにも45rpmにも78rpmにも対応するのは、クオーツロック化とともにストロボ発光がクオーツロック発信信号を活用した周波数切り替え方式になったため。
  
                   
TN-400 1973年月発売
55,800円 
モータ:20極60スロット超低速DCサーボモータ
ターンテーブル:アルミダイキャスト直径30cm 慣性質量335kg・cm2自重2.4kg
  
      20pole 60slotのシールが張ってあり、モータの構造をあらわしている。
本体のサイズとロータのサイズは、ほぼ同じであるが、抜け止め用の金具が、前面にないのも大きな違い。
SP10系の特徴である上面中央部のダイキャストの金具が見えない。
果たしてステータコイルは、同じ色分けになっている。ステータ巻き線と回転検出巻き線の引き出し方法は中央のドーナツ状の基板を介して引き出される。
SP10系の特徴の位置検出コイルの構造が大きく違うのに着目して欲しい。フェライトコアのコイルが3個、120度ずつ離して配置されている。SP10では励磁コイルと検出コイルの2つのコイルで検出していたが、このモータでは、1つのコイルのインダクタンスの変化で位置を検出する。このため金田式への転用は難しいが、軸受け構造や巻き線構造は丁寧に作られているので、ホール素子を使った実験などに適しているかもしれない。
ステータのコイルのコアが緑色の塗料で塗装されているが、これはMKIIなどと同じでコイル巻き線の保護が目的か?
軸受けの外側の黒いドーナツ状のものは、磁気反発用のマグネットである。 
フェライトマグネットが、同心円状に3つ配置されている。一番外側がモータの駆動用のロータマグネット。2番目が位置検出用のマグネット。中央のマグネットがベルトドライブの時代からTEACの得意技であった磁石の反発を使った軸受け加重低減用マグネットである。
ロータもダイナミックバランスを取った痕跡があり、DDでは後発メーカであったTEACの心意気が伝わってくるようだ。

 
軸の先端には、金属製のボールが埋め込まれていてSP10に似ている。
軸の太さは、10mmでSP10ともYP1000系とも違う。

 
アルミダイキャスト製であるが、DENONのDP3000系のような構造となっている。AT666をそのまま載せるのは難しいだろう。

    ダイキャストで作られた突起がある。ちょうどSL−1200を伏せたような構造になっている。ストロボ面が斜めになっているため、フォトインタラプタの取り付けの難易度は高い。

 

*モーター鑑定団推奨Link
 http://www.vinylengine.com/
 アナログ好きのかつての青年にはこたえられないとんでもないサイト(^^;
 http://www.theturntablefactory.com/index.html ターンテーブル工場におけるテクニクス&SL−1200の評価やいかに!?(^^;  
 http://www.vintagetechnics.com/ 松下さんが泣いて喜ぶかどうかはわかりませんが、テクニクスのかつての栄光がここに(^^;
 
http://web3.incl.ne.jp/tetsu/c8dekirukana/mtSimAnim.html このシミュレーションで20極15スロット超低速電子整流子モーターの動作原理を勉強すべし

*モーター鑑定団情報
 テクニクスDDモーター用純正オイル:
SFW0010 現行SL-1200MK5でも指定パーツのため現在でもサービスから入手可能

*モーター鑑定団資料室
 SP−10 Service Manual
 SL−1100 Service Manual
 SP−10MK2 Service Manual

 Direct Driven Turntable For Phonograph Record (ダイレクトドライブターンテーブルに関する合衆国特許)
 Rotating Electric Machine With Reduced Cogging (20極15スロットモーターに関する合衆国特許)

   



(初代SL−1200モーター制御部の研究)


気まぐれで初代SL−1200のジャンク品を入手し、ある日そのプラッタ−を外してモータ−の回転具合を眺めていたのだが・・・・・・、

この回転具合は金田式制御アンプで回す我がSP−10MK2のモーター単体での回転具合に良く似ているなぁ・・・、と思って初段SL−1200のオリジナル制御手法に興味を持ったのだった。

な〜んと、その結果は・・・

発信器(OSC)の出力波形。端子F−G間。

縦軸 1V/dip、横軸10uS/dipなので、発振周波数は50kHz弱、振幅はピークで±3V程度となる。

本来の発振周波数は50kHzなので、ちょっと誤差が出たが、波形自体はきれいな正弦波。

上の正弦波が位置検出コイルの1次側に流れ、ローターに取り付けられた磁性体によって振幅変調されながら電磁誘導により位置検出コイル2次側に起電力を生じ、これがダイオードで検波されローパスフィルターで高周波が取り除かれて、直接ローターの位置を示す低周波になる。

これは33&1/33rpmで回転中のもの。縦軸50mV/dip、横軸50mS/dipなので、周期は180mS(=5.556Hz)、振幅はピークtoピークで±60mV程度となっている。

したがって位置検出コイルの伝達効率は0.06/3=2%となる。これが我がSP−10UK式制御アンプでは0.45/15=3%だった。ばらつきの範囲内なのか、K式では位置検出コイル一字側へ加える振幅が非常に大きいためか、はたまた発振周波数が高いためなのか、は不明。(^^;

残念ながらその波形は正弦波からはかなり崩れている。
こちらは45rpmで回転中のもの。縦軸50mV/dip、横軸50mS/dip。
なんと、初代SL−1200は金田式モーター制御アンプと同じで(というより金田式モーター制御アンプが初代SL−1200と同じと言うべきか(^^;)、上の位置検出コイル2次側に生じた位置信号波形をそのまま利用して増幅しモーターのステーターコイルをドライブするものだったのだ。

これがそのドライブ波形(A1,A2)。縦軸0.5V/dip、横軸50mS/dipで33&1/3rpmで回転中のもの。

なんとも綺麗な正弦波。A1,A2の信号もぴたりと120°ずれている。

これが上の位置検出信号を増幅したものとはにわかには信じられないが、不思議にもこれがそうなのだからしょうがない。

が、実を言うと通常回転状態では制御部からの制御が入るのでかなり波形は乱れる。ので、このとおりではありません。(^^;
こちらは45rpmで回転中のドライブ波形(A1,A2)。縦軸1V/dip、横軸50mS/dip。ピークは±2V程度だ。
おまけ

初代SL−1200にはFGはなく、ステーターコイルにバイファイラー巻きされた検出コイルに誘導する起電力を直流化し、速度信号としている。って、金田先生の「時空を超えた」における初代SP−10の解説そのものなのだが(^^;、これを位相制御するためには何らかの手法でFGに代わる位相信号検出手法を採用しなければならない。

ので、SL−1200のプラッターの外周に付いているストロボ用突起を活用する。

と、こういう信号が得られる。2004年10月号のNo−179で採用された、tetsuさん考案になるフォトインタラプタを使った検出
手法だ。

縦軸2V/dip、横軸5mS/dipなので、ピーク±5V(電源の都合でこれは電源電圧12Vでのものです。)、周期約8.3mS=120Hzと、なかなか上手く検出出来ている。(^^)

こちらは45rpmで回転中のもの。こちらは周期約6.15mS。ということは周波数=162Hz。

上手く行きそう。(^^) 斜めになったストロボ突起面に上手く近接して取り付けられるかという難しい課題はあるが、それがクリアできれば初代SL−1200もNo−179のSL−1100用制御アンプでドライブ可能という確信はさらに深まった


のだが、肝心のフォトインタラプタ、シャープGP2S22はすでに生産終了品で入手不可能。な〜んと(嘆)

フォトインタラプタ自体旬を過ぎた素子なのか、代わりになるちょうど良さ気なフォトインタラプタがなかなか見つからなかったのだが、あった。(^^)

コーデンシ(株)のSG2BC。
直径4mm、焦点距離0.8mm、可視光カット型赤外線フォトインタラプタでピン配置も形状もGP2S22と全く同じよう。

左は勿論これによるもの。

はは。(^^;

やはり隠さずに定常動作時のドライブ波形(A1、A2)をば。

左、縦軸1V/dip、横軸50mS/dipで33&1/3rpmで回転中のもの。

正弦波からはかなり遠くなっているが、上の位置検出コイル2次側に生じた波形には随分似てきたように思える。
こちらは45rpmで回転中のドライブ波形(A1)。縦軸1V/dip、横軸50mS/dip。やはり上の位置検出コイル2次側に生じた波形に似ている。

さて、
上で、初代SL−1200は金田式モーター制御アンプと同じで位置検出コイル2次側に生じた位置信号波形をそのまま利用して増幅しモーターのステーターコイルをドライブするものだった、と書いたのだが、それはある種正しいものの、ある意味正しいものではなかった。(^^;

左はドライブ波形をオシロのDCモードで見たものであるが、波形のプラス側とマイナス側の違いが実に鮮明だ。プラス側は全く綺麗な正弦波ではないか。何故か?

初代SL−1200のモーター制御アンプのドライブアンプはその回路図から分かるとおりシングル動作であり、ステーターのアーマチュアコイルをプラス側にドライブすることは不可能なのである。なのに、左のとおりドライブ電圧はプラス側にも振れているように見える。のは、実はこれは制御アンプの発生したドライブ電圧ではなく、モーターアーマチュアコイルに発生した逆起電力に違いないのだ。

上で、あまりにも綺麗な正弦波になっている制御アンプのドライブ波形を見たが、あれは外部から回転力を補助して制御アンプからの制御が掛からないようにした場合のもので、それはモータアーマチュアコイルに発生した逆起電力そのものなのだ。と、はせがわ鑑定団長から教えていただいたのであった。(^^;
こちらは45rpmで回転中のものだが、初代SL−1200のモーター制御アンプは、振幅のマイナス側しかドライブしておらず、プラス側は慣性に任せるものだったことが良く見て取れる。まぁその間も他相のマイナス側でドライブされるのでモーター自体が慣性回転するということではないが。とは言えパルス制御ではないもののある種間欠ドライブだった訳だ。

この点PPアンプでプラスマイナスとも制御し、かつ、初代SL−1200の場合はアーマチュアコイルを一方向ドライブしているのに対して、金田式ではこれを両方向ドライブしているのであるから、これを無視して同じと言ってはK先生に叱られるかも・・・だ。(^^;
初代SL−1200。30年以上前に製造されたものだが程度は非常に良好。アルミダイキャストのフレーム表面にもプラッターにもアルミ特有のさびやよごれは見られない。

オリジナル制御アンプも完動でストロボもピッタリとまり、微調整もちゃんと利く。ただし、クオーツロックではないので長期的には速度は変動する。ので、速度微調整トリマが必需だったのだなぁ。

問題は音なのだが、これがなかなかに侮れない。案外力強く伸びやかで、これでも十分じゃないか。(^^; モーターにトルクがあり、制御も単純であることが利いているのかもしれない。

こちらは四代目のSL−1200MK4。放出済みで既に手元にはない。

クオーツロックではあるのだがモーターにトルクがないのかプラッタ-にほんの少しでも外力を加えると殆ど抵抗せず回転が変動してしまうという、何のためのクオーツロックなのか良く分からないものだった。この辺をSP−10MK2に比較するともはやおもちゃという感があった。外観や付属のアームなどは非常に良さ気なのだが・・・。

音がどうだったか・・・・・・は、もう忘れた。(^^;



(2005年5月22日)




(SP−10駆動波形の観察1 by はせがわ氏)




モータ駆動波形(上
:2V/div)と回転検出巻き線の起電力波形(下:2V/div時間軸(50mS/div

駆動コイル(3A)と同相の回転数検出用巻き線(3D)を観察した。基本的には正弦波が出力されているが、駆動トランジスタがオンになるタイミングとオフするタイミングでノイズが載っいる。






モータ駆動波形(上:2V/div)と位置検出コイル波形(下:1V/Sec)時間軸(50mS/div
これは、モータの駆動波形(3A)と、位置検出コイル(3S)の波形。位置検出コイルに誘起される高周波信号のピークに近いところで、駆動トランジスタがオンになって電流が流れているのが分かる。位相角度で言うとちょうど120度。三相ブラシレスモータの120度駆動という方式である。位置検出コイルの出力が正弦波ではないのは、120度通電にするために苦労して歯車の形状を決めているためのように私には見える。







モータ駆動波形(上:2V/div)と位置検出コイル検波出力波形(下:0.5V/div時間軸(50mS/div

位置検出コイル(3S)に誘導した信号を検波した波形。








金田式アンプでのモータ駆動波形(3A,下:2V/div)と回転数検出巻き線(3D,上:1V/div)
金田式アンプで駆動した場合の駆動波形と回転数検出巻き線の誘導電圧。位相制御を掛けない状態での波形。

位相制御を掛けた場合には、駆動波形側の影響が検出巻き線側に誘導してしまう。↓





金田式アンプでのモータ駆動波形(3A,下:2V/div)と回転数検出巻き線(3D,上:1V/div






(2006年3月5日)





(初代SL−1200駆動波形の観察)



他にもあった機種については分からないが、少なくともSP−10、SL−110、SL−1100、そしてSL−120、SL−1200については、そのモーター駆動方式は同じものだったようだ。

はせがわさんが上のSP−10の駆動波形の観察でおっしゃっておられるように、ユニポーラ三相120°通電方式という、ブラシレスモーターの初期の段階で使われた方式だったようである。


上が33rpmで回転中のモーター駆動波形、下は45rpm。
プラス側が正弦波なのでプラス側は正弦波で駆動されているように見えるが、実はプラス側は制御されていないのである。このプラス側の正弦波は、駆動コイル自体に発生した誘導電圧波形だ。
で、マイナス側に振幅が移行してやや過ぎた地点、すなわち位相角度120°の当たりで正弦波から外れた波形になるのが分かる。はせがわさんおっしゃるとおり、ここで制御トランジスターがオンになって制御回路からモーターに制御電流が流されるわけだ。
左は定常回転状態であり、こちらはプラッターに負荷を与えてわざと回転を遅くした場合のもの。マイナス側の波形のピーク電圧絶対値が大きくなっている。プラス側の正弦波の方はなにも変わらない。
回転が遅くなったので、制御回路から加速信号が出されたのだ。その結果マイナス側の振幅が大きく伸びた訳だ。
すなわち、これがSL−1200(1100もSP−10も)の制御回路による速度制御の内容。回転速度は、三相のマイナス側だけで制御する訳だ。
こちらはプラッターの回転を手でわざと早回しにした場合の駆動波形。マイナス側もすっかり正弦波になってしまった。のだが、この場合は制御回路のトランジスターがオフになって、モーターと駆動回路は実質切り離されており、正しくは駆動波形ではなくモーターが発電機として生成した誘導電圧波形そのもの、ということになる訳だ。これはユニポーラ駆動なので必然的なのだが、結果、SP−10、SL−1100、SL−1200の駆動回路の速度制御は、回転の遅れには対応するものの、進みには対応できず、要するに摩擦によるなりゆきまかせ、ということだ。(^^;
左も右も、モーター駆動波形と位置検出コイル誘導波形を並べて見たもの。これと上のはせがわさんによるSP−10の同じ写真を観ると、いくつかのことが分かる。
@駆動回路オンは、位置検出コイルの前面に歯車の歯が位置する時点で行われていること。
Aそのオンオフポイントの位相角度はやはり120°であること。
Bこれらのモーターを初代SP−10属と考えると、これらSP−10属ではその歯車の波形は、はせがわさんおっしゃるように120°通電の観点で決定されたと解するのが妥当であること
Cで、そうなるとモーター駆動の観点からは全く関係ない事象なのだが、SL−1200の歯車では、歯車が欠けた部分における位置検出コイルの誘導波形に例のふたこぶらくだがなさそうなこと。(^^;
そこで、こちらはモーター駆動波形と位置検出コイル検波ローパス後の波形を並べてみたもの。左から定速、遅れ、進みの各状態。駆動波形と位置検出波形の位相が合っているのはSP−10属の場合、検波で通過するのが誘導高周波のマイナス側だからであり、このマイナス側の波形が歯車の歯の部分で作られる波形だ。で、この波形はSP−10のそれよりも遙かに正弦波に近い。(^^;
両者におけるこの違いは、そのローター側に配置された両者の歯車の形状の違いによる。左SL−1200、右SP−10。通電角120°は距離では1/3であるから、計測するとSL−1200における通電オンオフポイントは歯車の歯の端の台形に削ってある部分より内側に1.3mmのポイントであり、SP−10ではそのポイントは歯車の歯の角から内側に1mmのポイントだ。この位置は位置検出コイルの片方の前面に歯の平面が位置するポイントのようだ。素朴な目で見るとSP−10の歯車の方はいかにも精緻にポイントを選んで設置しているようなのに対し、SL−1200の方は大量生産的だ。が、こうしてみるとSL−1200の歯車の形状の方が洗練されているようであるし、不要と思われる台形状の造形等からするともしかすると正弦波駆動も検討されたのかもしれない。ま、その辺は知る由もないが、結果的に位置検出コイル誘導波形もかなり正弦波的なものになっている。ので、ええぃ、この際SL−1200の歯車をSP−10に移植してやろうか。と一瞬思ったのだがすぐ諦めた。残念なことに径が違う・・・(^^;




(2006年5月27日)






(初代SP−10のFG回路に赤外線フォトインタラプタは不可!?)


ある日、T.Oさんからメールを頂いた。

SP−10用の制御アンプを製作中なのだが、
SG2BCでやってもGP2S22でやってもフォトインタラプタでプラッターのストロボパターンからFG信号を拾うことが出来ずに困っている。なんとか智恵を貸して欲しいというものだ。

最初はフォトインタラプタの取り付け具合がわるいのではないかなぁ・・・と思っていたのだが、メールのやりとりをするうちに、どうもそうではなく、プラッターの白黒のストロボパターンが何故か赤外線を全て反射するためにFG信号が得られない状態なのだということが明らかになった。

えぇぇぇ・・・・・・、と、これには驚いた。

何故って、ストロボパターンの白黒というものは、白い部分は光を殆ど反射するから白色であり、黒い部分は光を殆ど吸収するから黒色なのだ。可視光線と赤外線は確かにその周波数は異なるものの、ごく近い位置にある電磁波だ。

なのに、これが事実だとすると、
T.OさんのSP−10のプラッターのストロボパターンの黒の部分は、可視光線はほぼ吸収するのに、これにごく近い位置にある電磁波である赤外線は反射しているということになる。

にわかには信じがたい。が、事実なのだからしょうがない。

で、要するに私はこの間想定外の事態に何も有意義なアドバイスをすることは出来なかったのである。(爆)(^^;;;

結局、T.Oさんは、機械彫刻という手法でプラッターのストロボパターンの一番外側の本来白のところに216個の長穴を彫り込み、さらに
彫り込んだ丸穴の凹みにつや消し黒塗料を塗り込んでFG信号の取得に成功したのだ。

全く素晴らしい。その完成への執念とご努力には敬意を表する以外にない。(^^)

で、その機械彫刻、つや消し黒塗料塗り込み後のSP−10のストロボパターンがこれだ。プラッター裏面一番外側の4本目のストロボパターンの本来は白だったところが丸穴で彫り込まれ、黒の艶消し塗料が塗り込まれている。だから写真では黒面に黒穴が彫り込まれていて、これでFG信号が取り出せるのだろうか?という不思議な感じを受ける状態になっている。が、こうすることによって黒で艶消し塗装した丸穴部分が赤外線を吸収し、もとから黒い面は赤外線を反射するので、これで赤外線フォトインタラプタでFG信号が上手く取り出せるという訳なのである。

めでたし、めでたし。(^^)



と言うわけで、初代SP−10のプラッターにはストロボパターンがらみで異なる2種類が存在することが明らかになったのだ。

知っていた人は知っていたのだろうが、残念ながら知らなかった。(^^; ようやく今回それが分かった。

風の噂によると、K先生のオリジナルSP−10制御アンプのFG回路が赤色LEDとフォトTRの組合せという可視光を利用したものになっているのは、この事実を踏まえたものであるらしい。

分かってしまえば、あ、そうなのか。なのだが、今後SP−10によるターンテーブル制御アンプを製作しようとされる方は、入手した個体によって赤外線フォトインタラプタを使えるプラッターか使えないプラッターかを確かめた上でFG部分をどうするか検討する必要があるということに留意されたし。ということになる。

すなわち、オリジナル通りの
赤色LEDとフォトTRの組合せならどのプラッターに当たっても大丈夫。またどちらのプラッターでも可視光型のフォトインタラプタは多分使えるだろう。赤外線型のフォトインタラプタについては赤外線を吸収するストロボパターンのものに運良く当たった場合のみ使用可能。ということになる。

で、どれが赤外線もOKで、どれが赤外線が駄目なやつなのか、ロットで分からないのだろうか? な〜んて、松下さんでもあるまいし、今となってはそんなこと都合良く分かるはずもない。ので、入手した個体でそれぞれ自ら試して確かめるべし。(^^;

あぁ、私がこの事実をもっと前に分かっていれば、T.Oさんには可視光型フォトインタラプタを利用することなどをアドバイスできたのだが・・・m(__)m


(2006年11月5日)