BATTERY DRIVE

完全対称型 DC POWER AMP 作ってみる




・ある日ジャンクボックスをガラガラしたら出てきた。

・K式御用達のデュアルトランジスタである2SA798や2SC1583と同様の形状をしている。

・調査してみると、やはりそれらと同様に三菱製のデュアルトランジスタだ。が、2SA798や2SC1583と違ってベースが共通となっており、能動負荷や定電流回路用途を想定して作られたもののようだ。

なるほど。いにしえにはこのようなデュアルトランジスタも製造されていたのだ。これなどはGOAアンプ2段目のカレントミラー回路にぴったりだと思うが、当時はモールド型トランジスタはモールドの固有音がして音が悪いと断じられていたのでK式では使われることがなかったわけだ。が、今やモールドの2SC2240が音の良いトランジスタになっており、まさに隔世の感がある。まぁ、その2SC2240も既にディスコンと急激に進むディスクリート半導体の絶滅を前にしては選んでもいられないわなぁ。

・で、これも縁あって我が家にやってきたものだが、このまま朽ち果てさせてしまっては不憫。

・持ち主の方もいつ朽ち果てるかも知れないし。(爆)

で、これがあれば少しは変わった“完全対称型”パワーアンプが作れるかもしれない。

・ので、K式も完対後永らく止まったままの徒然に
この際ジャンクボックスに眠るこれら同様の境遇のものを使って
パワーアンプを作ることにしたのだった。
・で、回路はこんな感じ。

一応“完全対称型”である。

・ちょっと変わっている点は、今回のデュアルトランジスタを用いて終段のバイアス電圧とドライブ電圧を拵え、同時にそれに終段の温度補償も担わせることだ。Q3、Q10、Q11、Q12の2SC2240がLTSpice上のダミーで、実際にはここに今回の掘り出し物である2SC2291を起用するのである。

・また、出力段の2SC2705、2SC5200も実際に起用する素子のモデルがないためにLTSpice上で代用したもので、実機ではここにジャンクボックスで眠っている古石の2SC1161、2SD218を起用する。

・位相補正は、終段の三段ダーリントンエミッタフォロアの入り口のC1とC2で上下対称に行う。

電源はこれもリチウムイオンバッテリーとする。

・果たして上手く動作するか?
・早速LTSpiceでその利得−周波数特性を占う。

・と、赤がオープンゲイン、青がループゲイン、緑がクローズドゲインである。オープンゲイン(赤)とループゲイン(青)は上から負荷50kΩ(無負荷相当)、64Ω、32Ω、16Ω、8Ω、4Ωの場合である。クローズドゲイン(緑)もそうなのだが、全ての線が重なって一本になっている。

・オープンゲインはR10、R11、R21、R22で調整可能なので、ここを12kΩとして適切なオープンゲインとする。というか、最近作った他のバッテリードライブパワーアンプ達と同程度のオープンゲインとする。

・もちろん“完全対称型”なのでK式で言うところの速度型モーショナルフィードバックが掛かる特性となっている。まぁ、“完全対称型”でなくともこのような特性にはなるが。(爆)

・また、ループゲイン(青)が0dBに沈む利得交点周波数は私のような素人には適切とされる3MHz以下を満たしている。し、クローズドゲイン(緑)の1MHz近辺での減衰カーブもなだらかで、位相補正が適切であることも分かる。

・上手く動作するようである。
・次に8Ω負荷時の全高調波歪率を、基本周波数1kHz、電源電圧±15V、出力1Vr.p.m(0.0655V入力)の場合と、電源電圧±20V、出力10Vr.p.m(0.655V入力)の場合でLTSpiceで占う。
出力1Vr.p.m(0.0655V入力) 出力10Vr.p.m(0.655V入力)
・Total Hermonic Distortion: 0.007565 %
・Total Hermonic Distortion: 0.026724%
・結果は、最近作ったバッテリードライブパワーアンプ達に比べると小さくなかなか良好。と、同程度のオープンゲイン、クローズドゲイン設定でより良好な歪率なので、動作に問題はないよう。良いのではなかろうか。(^^)