レコードプレーヤーの製作
(完成時期 未定)

単なる予告編か?


SP−10MK2用モーターSP−10MK2用モーター





















ここ10年近くになると思うのだが(記憶が定かでない)、表題の事項が一つの課題となっている。遅々として進まない。少年老いやすく学なんとか・・・ではないが、月日の立つのは余りに早く遠慮も容赦もない。
アナログだって良く分からないのに馴染みのないデジタルICを集め、回路の意味を多少は理解しながら複雑な制御基盤の配線をするなんていうことをたまにやってはしばらく休むという感じで続けてきたが、休む期間がずっと長くてもうこんなに時間が経過してしまった。

上の写真は、このためなかなか出番の回ってこないDDモーターだ。
こういうものを見て目を輝かせる少年が今はいるのかどうか分からないが、昔は大分居たように思う。私もその端くれかなぁ〜(その道を職業には出来なかったが)。

TechnicsのSP−10MK2用のブラシレス3相DCモーター。右の写真の左側がステーターで右側がローターだ。左の写真はステーターをやや拡大したもので、15個のステーターコイルとその内側に120°の角度で取り付けられた位置検出用の対のコイルが3組見える。この位置検出コイルでローター、即ちこれに直結するターンテーブル=レコードの回転位置を検出しながら、3組に分かれたステーターコイルに互いに120°位相のずれた電流を流して回転磁場を作り、ローター=ターンテーブル=レコードを滑らかに回転させる訳だ。

ず〜と昔。SP−10などはとても高くて貧乏学生が手に入れられる筈はなくそこそこのDDターンテーブルを買ったのだが、実は名ばかりのDDプレーヤーでターンテーブルの慣性に頼るパルス制御の間欠カックンカックンモーターだったことを思い出す。
これだとカックンカックンの間は全く無制御の成り行きまかせで、ACモーターでベルトドライブや糸ドライブした方がまだマシだっただろう。DD全盛時代だったからメーカーにとってはDDと名乗れることが重要でそれだけでよかったのだ。というより、そんな安物を買うおまえが悪いと言われるかな。(^^;
 

モータードライブアンプ制御部



















それでも、最近になってようやくターンテーブル制御アンプの形が見えてきた。上の左の写真はモータードライブアンプで、右は制御部。制御部は残念ながらまだ全ての組み込み・配線を終了していない。この他にレギュレーターと位置信号発振器があるが、現段階ではモータードライブアンプ位置信号発振器の動作確認が済んだ状況で、その後はまたしばらく止まっている。

だが、ここまで来ればモーターを回すのも最早時間の問題のように思う。いつとは言えないが、上手く回転するか失敗するか近い内に運命の日はくるだろう。意を決してエイヤとやる気にならないとだめなんだが。(^^;;
もし、成功すればこのページも次に進むことになるものと思うが、失敗すれば削除かもしれない。

もっとも、仮に成功したとしても肝心のモーターを取り付けるボードやトーンアームの手配・加工が、その後の課題として金銭的にも労力的にも大変なので、本当に完成するかは自分でも今のところ眉唾ものだ。実はそれを考えるので制御アンプの製作が遅々として進まないのかもしれない。


(ということで、続きは未定です。)
2000年7月記




































































また半年が過ぎて21世紀を迎えた。が、宇宙の摂理は人の作った区切りとは無縁。何もなかったかのよう時が流れていく。が、宇宙の摂理の微かな現象に感じ意味を見るのが人か。年明けから雪が降り続く2001年の正月、ふと、久しく放っておいたターンテーブル制御アンプの制御基盤に手を付けた。残る時間を観ろ、と無常に舞う雪の音に促された。よ〜し。ターンテーブル制御アンプ、DDモーターが果たして回るか回らないか、ここらで組み上げてしまおう。

3連休何もせずに一心不乱に配線作業に没頭し、ついにDDモーターを回す段階までこぎ着けた。後は審判あるのみ・・・

結果、新世紀の幕開けに本当にありがたい結果となった。

これでこのページも次に進むことになった。

ターンテーブル制御アンプ 製作記

(2001年1月8日 回った)

ターンテーブル制御アンプ。これに限らず自分が回転系に手を付けるなどとは当時夢にも思っていなかった。金田さんがMJ83年5月号のNo−73「PLLクォーツロックモーター制御システム」で回転系に手を付けられてからも、それら回転系の記事は横目で見ていただけだったように思う。最初のターンテーブル制御アンプであるヤマハGT−2000用のNo−80「サーボアンプ研究」が載ったMJ84年8月号は結局買わなかった記憶がある。次のテクニクスSP10−MK1,MK3用のNo−89「モーター制御アンプ研究」も読んだ記憶が全くない。

いつ、どうしてターンテーブル制御アンプに手を付ける気になったのか、もう忘れてしまったが、まだ間に合う内にその気になったのは幸いだった。今となってはターンテーブル制御アンプ用の部品や、そもそもDDモーターが手に入るのだろうか。(そう言う意味ではこの製作記も今となっては誰の役にも立たないものなのかも知れないのだが、広い世の中、私と同様かつて部品は集めたものの未だ製作に至っていないという人がいるかも知れないし。)

87年2月号のNo−95「ターンテーブル制御アンプ」、89年2月号のNo−108「モーター制御アンプ」、89年10月号のNo−112「レコード再生システム」、92年3月号のNo−124「ターンテーブル制御アンプ」と、テクニクスSP−10MK2用に発表された記事は偶然だが全て手元に残っている。さらに単行本の「オーディオDCアンプシステム」にはSP−10MK1、MK2、MK3用のターンテーブル制御アンプが掲載されていてこれも手元にある。これらが皆手元に残ったことも幸いだった。記事を見比べてMJにつきもののミスプリを正しい方向に推測し、解説・説明の内容をより正しく理解することが可能だったからだ。

思い起こせば、タカスのIC−301−74という制御部に使われている基盤を、ある日梅沢で見つけたのが製作の始まりだったような気もするが、それが何時だったかも記憶がない。が、それから徐々に部品を集め、順次基盤を組み上げ、忘れるほどの年数を重ねてしまってようやく最終段階に至ったのだった。


(モータードライブアンプ)

モータードライブアンプ。電池式GOAパワーアンプはこのモータードライブアンプから生まれたものだ。その意味で電池式GOAパワーアンプの元祖だ。

これがなかったら電池式GOAパワーアンプの歴史はなかったのか、なんて分かるはずもないが、回転系の制御に関する金田さんの記事は92年3月号のN0−124「ターンテーブル制御アンプ」で打ち止めになっているから、モータードライブアンプはこのGOA型式が未だに最新式だ。

完全対称型式・・・も考えられないことはないが、上手くいく保証はないし、大体作ることが重要なのであって実験する余裕などあるはずもない。だから当然GOA型式で作る。

ただ、同じGOA型式のモータードライブアンプも電池式GOAの発展の歴史が反映されていて、金田さんの各記事でも時期によって微妙に回路が違っている。No−124が当然最新式でA607、C960のメタルキャンTRを多用し、フィードバック型カレントミラーを採用したもので、多分これが最も良いのだろうけれど採用しなかった。過剰に思えたのだ。

結論的には、回路図のとおりフィードバック型カレントミラー採用前のGOA型式で初段にK30を用いた(その点だけが)独自のモータードライブアンプになった。電池式GOAパワーアンプは初段の動作電流は0.3mAが通則だが、2N3954ファミリーではなくK30を初段に用いた場合はもう少し電流を流した方が良いというのが経験則なのでそうしてある。K30を用いたのは単に安いから。結果、初段のドレイン抵抗が小さくなっているので2段目差動アンプの位相補正Cは倍にした。それ以外はNo−108搭載のモータードライブアンプに同じだ。

モータードライブアンプの特徴は出力段がインパーテッドダーリントンで、しかも「効率を良くするため、エミッタ抵抗もベース抵抗も使っていない」ことだ。金田さんはこれが「モータードライブアンプに最適な回路」とNo−124でおっしゃっておられる(勿論今どう思っておられるかは分からない)。が、私はかつてインパーテッドダーリントン出力段を採用した初期の電池式GOAパワーアンプを製作してそのアイドリング電流の安定が悪いことに難儀した経験がある。これも同じじゃないのかなあ・・・と思いつつ動作確認と調整をした。

この段階では初段のゲートがオープンだからアースにショート配線して調整する。何の問題もなく動作する。さてアイドリング電流だ、と思いつつバイアス回路のC1775のB−E間にVRを入れて調整してみたら、VRの回転に対しアイドリング電流の変化が不思議なほどに鈍感だ。2N3055とMJ2955のhFEがかなり大きいせいもあるのかB−E間抵抗は9.1KΩと大きいものになったが、これに直列に数百Ωの抵抗を入れてアイドリング電流を調整する必要がないのだ。3台とも9.1KΩ1本でOKでみな大体19mA程度のIoになる。しかもその安定度は高い。「アイドリング電流は極めて安定だ」と金田さんがおっしゃるとおりだ。キツネにつままれた気分。

出力Voオフセットは制御部の調整で呑み込めるのでシビアになる必要はない、とはなっているが、一応電池式GOA時代の流儀で初段ドレイン抵抗にシリーズに小抵抗を入れる調整で0にした。

(レギュレーター)

制御部用の±5V電源の超高速PPレギュレーターは回路図のとおりで、特にコメントすべきことはない。「オーディオDCアンプシステム」掲載のそれそのものだ。

が、双信の丸形ポリカーボV2A0.47uFはトリテックで代用し、同じく2.2uFは4端子型ではなく普通の2端子型。また、当然2SA566なんてあるわけがないし、いつ頃だったか、知らないうちに2N3741まで入手出来なくなってしまっていたので、+5V電源にも2SC1161をダーリントン接続で起用している。入力電圧と出力電圧の差が大きいからこれで何の問題もない。

あとは違いがない、と思ったらオリジナルの−5V電源の方には差動アンプのカスコード出力とベース間に位相補正の2pFが入っているが、これには付けていない。別に発振している様子もないのでいいんじゃないかなぁ。

さて、電池をつないで出力電圧を見てみると4.5Vだ。ちょっと低い。原因は基準電圧を作るツェナーダイオード。これがHZ3B2を取り付けてしまっていたのだ。HZ3以降の記号はツェナー電圧を細かくランク分けした記号だ。B2よりC2の方がツェナー電圧は高い。早速C2に交換し、結果±5.2V程度の出力電圧となっている。

なお、このレギュレーター基盤には電池からの±15V線とアース線も配線し、電源関係の中継ポイントとしている。

(位置信号発振器)

これは上の各製作記事でもほとんど同じ回路なのだが、ツェナーダイオードが5.1Xのときと5.6Xのときがあってどっちが正しいのか、どちらでも良いのかよく分からないが、結果的にはNo−124と同じ回路になっている。

これで93.23KHzの正弦波を発振するウィーンブリッジ発振器であるらしいが、私には知識がない。

動作確認と調整はオッシロがあると簡単のようだが、ないのでNo−124の記事に従って1S1588を通してテスターのDCVで発振器の出力電圧で調整する。これが最大になるようにVRを回すだけだ。

最初VRを右一杯にしておき、徐々に左に回すとなるほど出力電圧が出てきた。これが最大電圧になるようにすれば調整は終わり。ダイオードの極性を反対にして負側の出力電圧も確認する。

ついでにあら探し。No−124でこのVRの抵抗値が記事では500Ωになっているのに回路図では1kΩになっている。金田さんの幾つかの製作記事でも500Ωのときと1KΩのときがあるのだが、どっちが正しいんだ?

正解は1KΩか、右の写真のVRは大は小を兼ねるで1KΩなのだが調整後の位置はほぼ真ん中だ。

(制御部)

制御基盤制御部の前に「FGアンプ」があってしかるべきだが、No−112でツインT型トラップが採用されFGアンプが不要になった。No−124でもそれが踏襲されている。

右はターンテーブル制御アンプの制御基盤の裏側。この制御部はNo−124に基本的に同じもの。従ってFGアンプはない。最新型であることもあるが、FGアンプが不要であることもNo−124を採用した理由ではある。高価なFD1840も不要だし手間も減るし。(^^;;

ところでターンテーブル制御アンプもこの92年3月号のNo−124がすでに9年を経ているのに未だ最新型。永遠に最新型になってしまうのかなぁ。


さて、オッシロも持たない電子回路素人の私がデジタル回路の制御部を作ってターンテーブル制御アンプを動かすことに成功するためには、ただひたすら回路図と照合して誤配線を皆無にすること以外にない。

こうして見るとジャンパー線だらけでゴチャゴチャだ。細かくてそうとう根を詰めて掛からないとやれた作業ではない。これでどこかに誤配線があって上手く動かなかったら、原因を解明・特定して修正するなどということはそれこそ大変な作業だ。殆ど不可能かもしれない。

だからいちいち回路図と照合し、記事の配線図面を確認しながらやってきた。これに何年も費やしてしまったのだ。別にそんなにもの時間を要すべき作業ではないのだが、面倒なのでなかなか集中して取りかかれなくて多少作ってはただ放置していた時間がよっぽど長かったというだけだが。

が、ようやく終わった(^^)。
最後にもう一度基盤上の配線経路を確認し、確認した部分の回路図にチェックの色を付けて、間違いのないことの確認に万全を期した・・・つもり(^^;。勿論、記事の基盤配線部図面にはつきものの間違いを数カ所確認している。回路図の方には間違いはないと思う。

あとは成功するか失敗するか、結果は二つに一つ。祈るしかないかな(^^;;

(調整)

さあ調整だ。
レギュレーター、位置信号発振器、モータードライブアンプの調整はすでに済んでいる。問題は制御部だ。

即レギュレーターから±5Vをつなぐ、なんてことはしない。とりあえず制御基盤の電源ラインをテスターで当たってはんだミスなどでショートがないか確認する。電源ラインがショートしていたらレギュレーターまで即アウトだ。電源ラインはクロックパルスジェネレーター部とそれ以外が基盤上で別々なのでそれぞれチェックする。結果ショートはないようだ。

だが、レギュレーターはまだ使わない。取りあえず乾電池を電源として間に電流計を挟んで、先ずクロックパルスジェネレータ部に電圧を与えよう、と思ったら、アレ、こいつMC14069UBじゃない。CD4069UBEとある。いいんだっけ?買ったときにセカンドソースかなんかの完全互換を確認したよな〜、と思うが記憶にない。やや不安になったがここまできたらもうしょうがない。が、直後金田さんの記事にある基盤写真を見てやや安心した。彼の方も実際使っているのはTC4069UBPというやつだ。

これに意を強くして決行だ。と、電池をつなぐ・・・。5mA程度しか流れない、ので電源関係の配線ミスはないな、と取りあえず安心し、No−108の記載にしたがってジェネレータ出力(MC14069UBの4番ピン)とテスター間に1S1588を入れてVmを測る。ダイオードの向きを変えて反対側のVmも測る。とあるのだが、このラインには±5Vの中点のアースラインはないんだよなぁ。どこを基準に測るんだ?
しょうがないので本来のアースである電池の中間点を基準として測ってみるとプラスもマイナスも取りあえず電圧は出る。発振していないと0.2V以下にしかならないと書いてあるから、発振はしているようだ。だが、これでいいのかなぁ?

と、「テスター1台で調整が完全に出来る調整方法」が載っているNo−108に従って調整をはじめたのだが、その後を読んでみるとあまりに面倒だ。各ブロック毎に動作確認をするのは良いのだが、そのためにせっかくした配線まで外さなければならない。ふ〜む・・・

決断!は安易に流れ、これらの手順は上手く動作しなかった時に辿ることにしよう(^^;;

というわけで、制御部は上手く動作するんだ、という前提でのレベルシフトの調整を早速行うことにしてしまった。「オーディオDCアンプシステム」やNo−124はこの方式なのだ。

となるともう各基盤間とDDモーター間の配線をしなければならないので、やってしまう。レギュレーターもつないでしまった。ただし、モータードライブアンプ出力とDDモーターのステーターコイルを結ぶA1、A2、A3は指示どおりつながない。また、加算アンプLF356HとゲインコントロールアンプLM13600N間の配線を外してLM13600Nからの線をアースに接続した。P1のC1775のRE部分にVR2KΩをつなぎ、P2、P3の方には取りあえず560Ωをつないでおく。これらは指示どおりの手順。
この作業で留意すべきは、P1、I1、A1とある数字はダテではなくて、1は1どおし、2は2どうし対応しているから、その信号経路で正しく配線することだ。

さあ、ここが最初の正念場。電池を結線する。やや腕が震える。電源ラインの電圧をテスターでチェックすると・・・±5Vラインに異常はない。取りあえず安堵だ。

次はモータードライブアンプのA1出力にテスターをつなぎ、ターンテーブルを手で恐る恐る回してみる。
お〜〜!テスターの針がちゃんと上がり下がりしてくれる!最初の関門は突破だ!、と喜んだのは良かったのだが、記事の調整法に従ってVRでプラスマイナスのピーク値が揃うように調整しようとしたら、プラスもマイナスもピーク値が一つではないではないか。しかも絶対値は10V前後にもなって、No−108における金田さんの実測値6.5〜7.5Vとは大分かけ離れている。おかしいなぁ。それにピーク値が一つでないのに金田さんの実測値のように小数点以下2桁までなんてどうやって揃えるの?

しばし考えた。やはり読むとやるでは大違い。
と言うわけで位置検出部の構造と位置検出波形の発生メカニズムをおさらいすれば、コイルの起電力の変化をもたらすためにローターにはCu板のスリットが10個ある。これによって起電力はモーターが1回転する間に10回のピークを発生するわけだ。しかもスリットの微妙な形状の違いなどが原因で各スリットによって起電力に差が生じるということらしい。

そう考えて読めばNo−112の調整方法の記載にこれを言っている部分があった。「回転角によってピークの高さが多少変わるので、平均的に対称になればよい。」これだ!!
また、No−95の記事にも重要な記載を見つけた。「Vmは7〜10Vくらいになる。」いつもそう書いてよ〜(^^;;

と分かったので調整した結果はこのようになった。

モータードライブアンプ出力電圧ピーク値(調整後。調整内容は備考欄のとおり)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ±各平均 ±両平均     備   考
P1−A1 9.25 9.4 9.4 9.3 9.5 9.6 9.4 10.1 9.4 9.6 9.495 9.2 RG=1KΩ
8.9 9.35 9.2 9.3 9.2 9.2 9.2 8.4 8.4 7.9 8.905 RE=910Ω+43Ω
P2−A2 9.4 9.6 9.3 9.7 9.2 9.4 9.25 9.4 9.4 9.35 9.4 9.1825 RG=1KΩ
9.3 9.3 9.3 8.6 8.5 8.2 8.8 9.2 9.1 9.35 8.965 RE=1.2KΩ+91Ω
P3−A3 8.6 8 8.2 8 8.1 8.1 8 8.2 8.3 8.1 8.16 8.26 RG=1KΩ
8 8 7.6 8.2 8.7 8.5 8.8 8.6 8.6 8.6 8.36 RE=1KΩ+47Ω
9.3 8.7 9.05 8.85 9 9 8.9 9.1 9.2 9 9.01 9.0725 RG=910Ω
9 9 8.5 9 9.45 9.2 9.45 9.25 9.25 9.25 9.135 RE=1KΩ+47Ω

A1とA2はもう少し−側の絶対値を大きくできれば良かったと自分でも思うが、

@ スリットによってこの程度にばらつく私のSP−10MK2用DDモーターは果たして正常なのか?
A ±各平均の揃え方はこの程度で良いのか?
B A3は±各平均がA1、A2より低かったので帰還抵抗RGを910Ωに変えて一応三台のピークを揃えたつもりだが、三台のモータードライブアンプの±両平均の揃え方はこの程度で良いのか?

など、どなたかご存じの方がいらっしゃいましたらご教示頂ければ幸いです。よろしくお願いします。

ここまでくれば、頂上はもうすぐだ。次はモーターを自力で回す番だ。と、外していたA1、A2、A3のモータードライブアンプ出力をDDモーターのステーターコイルにつないだ。これも正しくつながないと駄目だから、モーターからの線の色を再確認する。まだ加算アンプLF356HとLM13600N間の配線はつながず、LM13600Nからの線はアースに接続したままだ。だから速度制御も位相制御も働かないが、モーターは勢い良く回るはずだ。
第二の正念場。回ってくれよ。と電池をつなぐと・・・・・・
回った!回った!
勢い良くと言う金田さんの言葉からしてビュンビュンという感じで回るのかと思っていたが、そんなに勢いがイイ感じではないけれどとにかく回った。言葉はそれぞれの感覚だから、多分これでイイんだろう。
このDDモーター。私が手に入れてからもすでに5年以上にはなっていると思うが、製造から考えれば作られて何年振りに回ったのだろうか?なんて思ってしまった。ようやく働かせてやれそうだ。

が、次が本当の正念場だ。制御基盤が正しく出来ているかどうか。今までの調整では実は何も立証されていない。速度制御と位相制御が本当に掛かって正しく回るかどうか。いよいよだな。高ぶる心を抑えて平静を装いながら、加算アンプLF356HとLM13600N間の配線を回路図のとおりにつなぐ。この線を通じて制御信号が送られるのだ。

やれることはやったし、
もう審判を待つしかない。


と、久しぶりに体が振るえるような感覚を覚えながら電池からの電源線をつなぐ。
どうだ・・・

回った!回った!感激!

と行きたいところだが、何かおかしい。
ずいぶんゆっくりでぎこちない回り方だ。う〜ん・・・・・・もしかして失敗か・・・
だんだんと血の気が引いてくる・・・・・・・・・

ああ、これだ!

半固定抵抗の位置を指定の位置にしていないじゃないか。(^^;;
位相制御用は左一杯、つまり最小で、速度制御用はセンターにすべきなのに、皆基盤に取り付けた時のままの右一杯、つまり最大位置になっている。これじゃ駄目だ、と早速指定位置に直した。

再度トライだ。
上手く回ってくれ・・・・・・
ん・・・今度は上手く回っているような感じ・・・。
ストロボ板に蛍光灯を当てて速度制御用半固定抵抗を回してみる・・・、おお!ちゃんと回転速度が変わって、ある位置でストロボスコープの縞が停止する!
回転数切り替えスイッチで切り替えて調整すると33回転も45回転も上手く調整できる。ということは・・・・・・

やった。上手くいった。\(^○^)/

だが、喜びは長くは続かない。
ちょっとおかしいことに気づいたのだ。どうも速度切り替えスイッチの動作が本来とは逆のようだ。33回転側のはずの方で45回転になり、45回転側で33回転になっているような気がする。確認してみると間違いない。おかしい・・・・・・

それに位相制御VRを少し右に回して位相制御を利かせるほどに回転数が変わってしまう。位相制御を弱めると元に戻るのだが、これが位相制御は利かせ過ぎてはいけないということの意味なんだろうか。位相制御ってこんなものなのかなあ。

CD4059A回りの配線と切り替えスイッチへの信号の取り出し部分を再確認するが間違いはない。No−95も108も112も「オーディオDCアンプシステム」にあるターンテーブル制御アンプも確認するが間違いない。
なんでだ?としばし間違い探しをした・・・・・・・・・結果

MJ92年3月号57ページの上右側の制御部基盤の実体配線図に重大な誤りを見つけた!

なんとその左下のSW1aの45と33の数字が逆なのだ。実体配線図どおりに結線すると回路図とは逆になって、スイッチ33回転側で45回転になり、45回転側で33回転になるのは当然なのだ。こりゃ致命的バグだよ〜。なまじ回るからなおさらだ。と、「パターンは間違っている」という彼の方の製作記事を読む場合の鉄則を忘れ、この部分で回路図との照合を怠ってしまった自分の過ちは棚に上げてMJのせいにする。(^^;;

さっそくこの部分の配線を正しく直してターンテーブルを回してみた。結果は位相制御のすごさを目の当たりにするものとなった。同時にこのとき私は制御アンプの成功を確信した。本当の\(^○^)/の気持ちがやってきた。\(^○^)/\(^○^)/

速度制御VRの位置は配線を変える前のままなのだ。要する速度制御は正しく調整されていない。位相制御VRも配線を変える前のままでほんの少し右に回った7時か8時位の位置だ。すなわち調整前なのになんと33回転も45回転もぴったりストロボの縞が停止して回ってしまっている!本来の調整手順に従って位相制御VRを左一杯、すなわち位相制御を0にすると回転数は狂いストロボが流れてしまう。なんと位相制御ってこんなにすごいのだ。少々の速度制御の狂いなどものともせずにクロックに合わせて強制的に正しい回転をさせるのが位相制御なんだ!と実感したのだった。

全てを理解した。No−124の実体配線図どおりに配線すると、速度制御と位相制御の制御回転数が反対になってしまい速度制御が33回転で回そうとするときに位相制御は45回転で回そうとするバッティング状態になってしまうのだ。そして位相制御は非常に強力なため、この状態で位相制御を利かせると速度制御に優って制御しようとするためホンの少し位相制御VRを回しただけで回転が狂ってしまう。45回転で回っているのを強力に33回転にしようとし、33回転で回っているのを強力に45回転にしようとするのだからあたりまえで、これが最初の状態だ。

この配線を正しくした直後は、速度制御は正しく33回転と45回転にはなっていなかったのだが、位相制御が多少利いていてその効果が絶大なため正しい回転数で回ったのだ。すなわち、速度制御の多少の狂いは位相制御が強力に正してしまった訳だ。

こうなれば速度制御も位相制御も上手く機能していると確信するしかない(^^)。ターンテーブル制御アンプの製作は成功したのだ\(^○^)/

調整しなおそう。位相制御を0にして先ずは速度制御VRで正しい回転数に速度を合わせる。今度は33回転も45回転も正しいスイッチの位置で上手く調整出来る。ストロボの縞もピタッと止まる。次に位相制御VRを少し右に回し軽く位相制御を掛ける。さっきとは違って回転数が変わるなんてことは今度はない。逆に回転がピタッと微動だにしない感じになる。これを経験すると、位相制御を掛けないで速度制御だけの場合はストロボの縞も微妙に揺れていることを感じてしまうほどだ。この状態で回転するターンテーブルに手を振れてみても少々の力ではビクともしないし、ストロボの縞も停止したままだ。これは本当に凄い!これに比較してしまうと同じテクニクスの現行品SL−1200MK4はおもちゃだなぁ。(使っている人ごめんなさい。私も使ってますのでm(_ _)m)

乾電池からの電源ラインに電流計を入れて消費電流を測ってみると、±12Vの電圧で33回転では+側は155mA程度を中心に±5mA程度の振幅でふらふらと針が揺れている。−側は150mA程度を中心に同じく±5mA程度の振幅でふらふらと針が揺れる。45回転にすると中心が5mA程度増加する。やや+側が多いが許容範囲だと自分では思っている。が、この辺は金田さんの記事には記載されていないので正常なのか異常なのか分からない。だが、少なくともこの程度の消費電流であるならば単一ネオでも実用になる範囲だと思うのでまずは良いのではないだろうか。どなたか知識のある方この辺ご教示いただければ幸いです。

(ちゃんと本を読め!>私 目を凝らして良く見たらNo−95の記事にちゃんとあった。「消費電流は135mA(331/3RPM)、137mA(45RPM)で、±15Vの電池が±7.5Vに下がるまで使える。3ウエイのステレオパワーアンプと同等の寿命だ」そうだ。「オーディオDCアンプシステム」にもそう書いてある。(^^; そこで電池を足して±15Vで消費電流を測ってみたら、消費電流は減るだろうとの予想に反して±12V時と同等か逆に5mA程度増える結果となった。私のは消費電流がやや多い。(2001.1.14追加))

電源オン時や回転数切り替え時は急激に電流が増えて素早く定常状態に持っていこうとする。また、ターンテーブルに手を振れて負荷を加えると、その負荷の強さに比例するように素早く電流が増加する。速度制御、位相制御の賜だろう。

ついでにスタートストップスイッチだが、これでモーターを停止状態にしても消費電流は定常時から20〜30mA減った程度にしかならない。が、ターンテーブルを手で回そうとすると重く回りにくい。消費電流も早く回そうとするほどに増える。なるほど、この状態はモーターを停止状態に制御している訳だ。

さて、右はようやく各基盤とSP−10MK2用DDモーターを結線して、取りあえずの調整も終わり回っているターンテーブルと制御アンプの姿である。全くのバラック状態だ。だから、レコードプレーヤーが完成したという訳では全くない。
問題はこれからだ。

先ずは制御アンプをケースに収めてやらなければなるまい。

そして、
発砲スチロール箱に収まったままのDDモーターも相応しいボードに収めてやらなければならないし、トーンアームも新調しないとなぁ。トーンアームなんて国産は全滅しているから外国産しかないよなぁ。
ボードもどうしようかなぁ。出来れば彼の方のようにSP−10MK2に相応しい器に収めてやりたいが、悩ましい問題だ。
ここまで来たら一刻も早くこれで音を出したいところだが、先立つものがなぁ・・・

と、あれこれ考えつつも、今は裸のターンテーブルが静かに回っているのをただ眺めている。(^^) やつにはまた笑われる。が、この気持ちはやつも分かってくれている。

(2001年1月13日記)


(補足)

モータードライブアンプの出力電圧のピーク値調整をやり直した。もう少しピーク値を揃えられないだろうか、と考えたのだ。これが揃っている方がモーターの回転がより滑らかになる筈だ。
結果は次の表のとおりとなった。

モータードライブアンプ出力電圧ピーク値(調整後。調整内容は備考欄のとおり)
                                               室温 20℃
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ±各平均 ±両平均     備   考
P1−A1 8.95 9.10 9.00 9.05 9.05 9.00 9.10 9.20 9.00 9.65 9.11 9.15 RG=1KΩ
8.80 8.40 9.00 9.50 9.40 9.60 9.45 9.50 9.40 8.85 9.19 RE=910Ω+43Ω
P2−A2 8.95 9.00 8.95 9.10 9.25 9.00 9.60 8.80 9.05 8.90 9.06 9.06 RG=1KΩ
9.40 9.20 9.40 9.35 9.35 9.35 8.65 8.60 8.30 8.95 9.06 RE=1.2KΩ+82Ω
P3−A3 9.05 9.20 9.00 9.60 8.90 9.20 9.00 9.05 9.00 8.95 9.10 9.11 RG=820Ω+68Ω
9.45 9.45 9.40 8.80 8.70 8.40 8.90 9.40 9.20 9.50 9.12 RE=1KΩ+68Ω


かなり揃ったと思う。が、これを調整する過程で、モータードライブアンプの出力電圧ピーク値もドリフトするものだということが分かったのだった。これが表の右上に室温20℃と入れた所以。

考えてみればDCアンプなのだからオフセットやドリフトはあって当たり前。結論的には、@自己発熱に伴うと思われる−から+へのドリフトと、A外気温上昇に比例すると思われる+から−へのドリフトがあって、@は電源オン時から短期的に1V弱程度ドリフトして安定し、Aは外気温に合わせてドリフトするが量的には@の1/4〜1/5位の感じ、というものが複合して現れるようだ。

これらを考慮しないで素早く調整してしまうと、ドリフトによる−側の過大値を当初調整してしまうので、安定時には+側にシフトした調整結果になってしまうようだ。前回の調整結果もそうなってしまっただろう。ではこれを考慮して調整すればどのような使用環境下でも正しくピーク値を揃えられるか、というと残念ながら外気温に比例するAのドリフトもあるので±各平均をどの温度でも揃えるということは困難だということになる。となると次善の策は平均的使用環境温度においてピーク値が揃うように調整する、ということにならざるを得ない。

よって、今回の調整は、実際の使用環境の平均室温は20℃ぐらいだろうということで、暖房で室温を20℃にして、さらに電源オン後のドリフトも安定した後に調整して得た結果である。
上手く揃ったと思うがこうなるまでにはかなり手間だった。単純作業だが(^^;

手間を掛けて揃えたことによってメリットがあったのか?
が問題だが、目に見える効果としては電池の消費電流を測るテスターの針が殆ど振れなくなった。微動だにしない訳ではないが振幅は±1mA程度の範囲でおさまっている。また33回転と45回転時の消費電流の差も縮まった。45回転時3mA程度しか増加しなくなった。

そうじゃなくて音はどうなの?
これが悔しいことに未だ音を出せる段階になっていないので分からない。(^^;;

(2001年1月27日)

(番外)



















出番が近づいてきたDDモーター。いよいよだな・・・と久しぶりに発砲スチロール箱から取り出してみたらその出自を示すものが出てきたので記念撮影したもの(^^;; 

左の写真はDDモーターの裏側。
真ん中上に製造データを示す票が貼ってあった。

DIRECT DRIVE PHONO MOTOR
DC32V 331/3、45、78 r.p.m
MODEL MJX−12A
MATSUSHITA ERECTRIC
INDUSTRIAL CO.LTD
LOT NO.
   13May90N2

とある。素直に読めばこのDDモーターは1990年5月13日生まれということか。以外に新しい。

右の写真は補修パーツとしての型番など。が、いまでも補修パーツとして入手可能なのか?は知らない。(^^;;

(2001年2月1日)



モータードライブアンプ1&2の出力波形
丁度120°ずれた正弦波(のような波形)になっている。
2現象オシロなので二つの出力しか映し出せないが、3現象で見れば1つ目の山と2つ目の山の間にもう一つ山が入ったものになるはず(^^)


(2001年8月25日)


(制御アンプの動作を観る)



「先ずは制御アンプをケースに収めてやらなければなるまい。」と考えてからもう1年半以上の時が過ぎてしまった・・・。

時の流れはまさに光速。汽車に乗ってのんびりしているうちにも車窓の風景は絶え間なく移り変わり、気づいてみれば全くの別世界。なのだ。

「オマエ自身モナーー」と、聞こえぬ声にまた促され、急遽ケースの板金加工をして制御基盤類をその中に収めた。

ケースはタカチのOS49−26−33BXだが、後のメンテナンスを考え、最近のK式に習って桟を渡してこれに基盤を取り付ける構造とした。

そうすると天板だけでなく底板も取り外し自由になって、写真のようにケースに取り付けた状態で基盤裏側もアクセスフリーになるのである。

なお、モーターとの結線は、「ちょっとDCな・・・ページ」を参考にさせていただきm(__)m、4種に分けてDINコネクタで行うことにした。指定のコネクタだと、なんと直径30mmの大穴を明けなければならないのだ。油圧シャシパンチでもなければとても明けられるものではない。で、このDINコネクタ方式、結果は実に上手い方法だと思った。

なのに、未だターンテーブルベースを作っていないので音が聴けない・・・(嘆)

のではあるが、実はこの間、低級な学生用?オシロスコープを手に入れてしまっていたのである。
未だ音の聴けない徒然に、この際、この裏側からプローブを当てて制御アンプの動作を観てみようか・・・、と思ったのだった。

「そんなことするより、早くターンテーブルベース拵えれ!」と、どこからか聞こえぬ声・・・(^^;

(なお、以下は実際はプローブを×10モード、縦軸は表記の×0.1モードで観測したものです。)


@位置信号発振器の出力波形
 (縦軸 10V/div 横軸10μ/div)

軸が写っていないが、これは、モーターとつないでいる状態での位置信号発振器の出力波形だ。周期は10μS弱でまあ93KHzということになるが、なんとその振幅は、ピークtoピークで30V(±15V)にも達している。
これが共振の効果というものなのだろうか。

ただ、B級動作でもないのに上下のつながり部分にやや湾曲した感じがある。のは何故か?は不明。だが、ぶれも滲みもなく非常に安定しており、何ら支障もないようだから良いのだろう。

この位置信号発振器の出力がなければモーターは決して回転しない。なぜなら、この出力によって電磁誘導で位置検出コイルに生じた起電力を、モータードライブアンプで増幅してモーターに駆動力を与える、それによってモーターが回転する、という仕組みであるからだ。

その意味ではターンテーブル制御アンプの要となる信号なのだ。



A位置検出コイル出力信号(検波、ローパス後)
 (縦軸0.2V/div 横軸50mS/div)

上の位置信号高周波をステーターに取り付けられた位置検出コイルの1次側に流すと、ローターに取り付けられたスリットによって振幅変調されながら電磁誘導により位置検出コイル2次側に起電力を生じる訳だ。で、これを検波しローパスフィルターで高周波を取り除くと、右のような直接ローターの位置を示す低周波になる。

2現象オシロで二つの信号を表示しているのだが、まあ、正弦波のような波形となっているし、位相は120°ずれたものになっている。

これは33&1/3rpmで回転中のものだが、当然周期は180mS(=5.556Hz)であり、振幅はピークtoピークで0.9V(±0.45V)程度となっている。

この低周波信号を、モータードライブアンプで所要のゲインで増幅してモーターのステーターコイルを駆動する訳だ。





BLM319の4番ピンの入力波形
 (縦軸 20mV/div 横軸 5mS/div)

こちらは実に規則正しい正弦波であるが、振幅はずっと小さくピークtoピークで20mV程度だろうか。周波数は105.5Hz(のはず)である。

これは、回転するモーターがその回転速度を外部に伝えてくるFG信号なのだ。これもターンテーブル制御アンプの要となる信号で、この信号がなければ速度制御も位相制御もない。要するにモーターが送ってくるNFB用信号である。

この信号の周波数を求める周波数になるように制御するのが速度制御、さらにその位相まで固定しようとするのが位相制御ということになる。

写真はその速度制御、位相制御がかかってモーターが33&1/3rpmで定速回転している状態でのものだから、ぴくりともしない正確な正弦波でないと困るのである。(^^;

と言うわりには光線が大分滲んでいる。のだが、この滲みは、ツインTトラップでも取りきれない上の強大な位置信号発振器の出力信号の残滓でもあり、機械的な取り付け精度の限界から来るFG信号自体のゆらぎでもあるのだろう。だからLM319には2.5mVのヒステリシスが設定されている訳だ。

ちなみに、何故105.5Hzなのだろうか?それはローターに190個の磁石が取り付けられているからだろう。




B-2 LM319の1番ピンの出力波形
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div)

これが、上のFG正弦波信号を高速ボルテージコンパレータLM319Hが方形波に変換して出力した波形である。

振幅は勿論10V(±5V)であり、周波数は105.5Hz(のはず)である。

上のノイズを含むピークtoピークで20mV程度の微細なアナログ信号が、こうしてピークtoピーク10Vの巨大なデジタル信号に変換された訳だ。アナログ信号から取り出された情報はその周波数という時間情報だけだが、活用したいのがまさにその時間情報なのでこれで良い、という訳だ。

この方形波信号が上手く生じないと、当然これ以降の速度制御、位相制御のためのデジタル処理が正しく動作しない。はず。その意味では、制御アンプシステムのNFB入力部分における重要なAD変換なのだ。






C14069の4番ピンの出力波形
(縦軸 5V/div 横軸 0.5μS/div)

今度は14069の4番ピンの出力波形だ。軸が写らなくて残念だが、これで縦軸ピーク±5V(10V)、横軸周期1μS=1MHzの方形波である。測ったわけではないのでぴったり1MHzかどうかは不明だが。

これもまたターンテーブル制御アンプの要となる信号で、これがシステムの時を司って最終的にモーターを定速回転させるのである。

これをCD4059Aで分周して、105.5Hz(33)と142.4Hz(45)のクロックパルスを作る訳だが、ということは、これ(1,000,000Hz)を1/9479して105.496Hz、1/7022して142.41Hzということなのだろう。
が、分周。話としては分かるが、実際どういうことなのかは良く分からない。(^^;

まあ、それはともかく、これが位相ロックの基準信号なのだ。


DCD4059Aの23番ピンの出力波形(その1)
 (縦軸 0.1V/div 横軸 0.2μS/div)

その分周後のクロックパルスの姿を捉えようとあれこれオシロを操作していて、ありゃ、何か見えたわい(^^; というのがこの波形。

縦軸ピーク0.1V、横軸約0.4μS=2.5MHzの妖しい発振波形だ。

2.5MHzということからして、これは勿論分周後のクロックパルスの姿ではない。いうなればノイズの類か。

では、と、クロックパルスの姿を求めてオシロをガチャガチャと操作するのだが・・・ほかには何も見えてこない。

う〜ん。「時間幅1μSの正パルスであり、よほど注意深くトリガーをかけないと見逃してしまうほどだ」と、K先生もおっしゃるクロックパルスの姿は、やっぱり我が低級オシロでは捉えられないのだろうかなぁ・・・(嘆)



ECD4059Aの23番ピンの出力波形(その2)
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div)

だが、
良く考えると、クロックパルスは周期105.5Hzなのだから、オシロの時間軸はmSオーダーにしなければトリガーがかからないのでは?

と、気づいて、オシロを縦軸 5V/div 横軸 5mS/div に設定してそれこそ注意深くトリガー調整したり、ブラウン管の光度を上げたりしていたところ・・・、ありゃ、何か薄い点が写ったぞ(..)

というのが右。

見えますかねぇ。写真の上から1/3ぐらいの箇所に横に等間隔で4箇所微かに点が発光しているのが。(写真中央やや右に写っている2つの点とその間の線はカメラのレンズの反射。それではなくて、それより上に微かな点)

これだ、これ!(光度を最高に上げたのでオシロのスケールも微かに写っているのはちょうど良い)これが縦軸−5Vを基準にしてピーク10V、横軸10mS弱=100Hz強(ということは105.5Hzに違いないぞ)のクロックパルスの姿でしょう。考えてみれば、横軸5mS/divのところにクロックパルスのパルス幅1μSということは、パルス幅はdivスケールの1/5000でしかないのだから、我が低級オシロでは線としても写らず、ピークポイントだけが点として微かに姿を見せたということなのだろう。

ふむふむ。なるほどねぇ。と、これを見てしばし考えた。そうか、分周というのは、要するに上の1MHzの方形波の波形を必要な数だけ間引くということなのだ。2分周なら波形を1個づつ間引く。ここでは105.5Hzにするために、1MHzの方形波の連続を9478個づつ間引いて9479個目毎に通過させている、ということなのだ。だからクロックパルスはオシロでは見つけにくい非常に短い時間のパルス(もともと1MHzの方形波の1波だからあたりまえか)になるわけだ。



FμA555の3番ピンの出力波形(その1)
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div)

モノステープルマルチの出力波形。すなわち回路図でFGチェックポイントとなっている部分の波形である。

概略+5Vが6mS、−5Vに4mS程度の方形波が連続しているように見えるが、これで33&1/3rpmで正常に回っている状態だから、まあ、Thの+5Vが5.4mS、Tlの−5Vに4.1mS トータルT=9.5mSの方形波なのだろう。

外乱により回転が速くなるとトータルTが短くなり、Thは一定なので−5VのTlが短くなる。逆に回転が遅くなった場合はトータルTが長くなり、Thは一定なので−5VのTlが長くなる。

このように、モーターの速度の変化がFG周波数の変化となり、それがこのパルス幅の変化となって、その状況がモータードライブアンプにフィードバックされて外乱に打ち勝ってモーターを定速回転させる、という仕組みな訳だ。



GμA555の3番ピンの出力波形(その2)
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div)

上に同じだが、こちらは45rpmで正常に回っている状態での出力波形。

Th=4.3mS、Tl=2.7mS、トータルT=7mS。 のはず。





HLF398H(速度制御側)の3番ピンの入力波形(その1)
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div 33&1/3rpm)

まあ、LF398H(速度制御側)の3番ピンの入力波形と言うよりも、上のμA555の3番ピンの出力波形を抵抗とコンデンサで積分した波形と言った方がよいか。
33&1/3rpmで定速回転している状態での波形である。

外乱でモーターの回転速度が変化すると、上の方形波の波形の変化に応じて三角波の波長が伸び縮みするとともに、そのピーク電位が上がり下がりする。

LF398Hに使用されるのは、この三角波のピーク電位情報だ。

これでモーター回転の速度(周波数)の変化が電位の変化として取り出された訳だ。あとはその電位変化に応じてゲインコントロールアンプのゲインを変化させ、モーターが定速回転するようにモータードライブアンプを制御するのだ。





ILF398H(速度制御側)の3番ピンの入力波形(その2)
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div 45rpm)

上に同じ。ただしこちらは45rpm定速回転状態時。



J14528Bの9番ピンの出力波形
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div)

これも見えにくいのだが、14528Bが出力するサンプリングパルスの写真だ。

上のCD4059Aの出力するクロックパルスと同様で、ほのかに発光する点にしか見えないのだが、写真下から1/3程度の所に横一線に4つの点が写っている。

これが、まさに縦軸+5Vを基準にして−10V、横軸9.5mS=105.5Hzのサンプリングパルスに相違ないのだ。時間軸に比べてパルス幅が数千分の1のために線としても写らないのだろう。が、クロックパルスのときよりも点の存在確認は容易なので、クロックパルスに比較すればパルス幅は広いのかも知れない。

このサンプリングパルスは、LF398Hが三角波のピークを捕まえる(サンプリングする)タイミングを規定しているものなので、モーターの速度(周波数)が変化すると、サンプリングパルスの周波数もそれに同期して変化する。



K14528Bの7番ピンの出力波形
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div)

こちらの方が写りがよいが、それはカメラの調子によるもので、そもそものオシロに写る明るさ等には差異はない。

振幅、周波数とも9番ピン出力に同じだが、振幅の極性は写真のとおり反転している。

なお、上の写真もこの写真も33 1/3rpmで回転している状況でのもの。45rpmに切り替えると各点間の幅が狭まる。

が、こちらはクロックパルスで時間を規定されているので、9番ピン出力のサンプリングパルスと違って、モーターの速度(周波数)が変化しても周期は変化しない。




LTC5081APの3番ピンの出力波形(その1)
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div)

こちらは位相制御の要となるTC5081APの3番ピンの出力波形だ。

位相比較機TC5081APは、クロックパルスとFGパルスの時間を常に監視し、その時間がずれた期間、FGパルス位相が進んだとき(モーター回転が速くなったとき)は+のパルスを、FGパルス位相が遅れた時(=モーターの回転が遅れた時)は−のパルスを、3番ピンに出力するはず、だが、これは・・・

なにか上のクロックパルスかサンプリングパルスのように、±5V(写真では+5V側が良く見えるが、よくよく見ると同じタイミングで−5V側にも光点があることが分かる)、105.5Hzで短い時間幅のパルスが出ているようだ。

これで正常なのだろうか。



MLF398H(位相制御側)の3番ピンの入力波形(その1)
 (縦軸 2V/div 横軸 5mS/div)

と思って、上の状態で位相制御側のLF398Hの3番ピン入力波形をみたものが右だが、何の入力もない。0Vだ。

こういうことか。

この2枚の写真は、33&1/3rpmで定速回転している状態でのものなのである。すなわち、理想的に定速回転しているとすれば、クロックパルスとFGパルスの位相差は0°のはずである。

そう。位相制御は、位相差0°の状態で回転していれば制御量は0になる。ということなのだ。



NTC5081APの3番ピンの出力波形(その2)
 (縦軸 5V/div 横軸 5mS/div)

本当にそうか? と、確かめるために回っているターンテーブルに指を当ててわざと回転位相が遅れるようにしてみたら・・・TC5081APの3番ピンの出力波形は右のようになった。

なるほど。0Vを基準に−5Vのパルスが出力されてきた。指に力を加えて回転位相がより遅れるようにするほどに−5Vのパルス幅が広がる。

これでいいのだ。(^^)

ちなみにターンテーブルの回転が速まる方に外力を加えてやれば、0Vを基準に+5Vのパルスが出力される。



OLF398H(位相制御側)の3番ピンの入力波形(その2)
 (縦軸 2V/div 横軸 5mS/div)

これが上の状態でのLF398H(位相制御側)の3番ピンの入力波形。

位相制御をかけるべく、三角波がむくむくと立ち上がってきたぞ。
これでいいのだ。(^^)




さて、ここまでくるとどうにかして音を出してみたくなってしまう・・・(^^;

で、やってみた。モーターは発泡スチロールのケースに収めたままでターンテーブルを回転させ、別のプレーヤ−についたトーンアームを外からランデブーさせて強引に音出しする。

はっきり言って邪道だが、音は出た。

う〜〜ん、な〜んと生きた音がすることよ。生気や情感といったものが迫ってくる音だぞい。(^^)

もうこのままでもいいんじゃないか。このままの状態で、アーム取り替えてみたり、オーバーハングや水平、垂直、インサイドフォースなんかの調整で遊んでいるのも面白そうだ。

ではあるが、ベースだ、ベース・・・(^^;


(おまけ)

右はローターである。

ローターの内側は2重構造になっていて、外周の駆動力発生用磁石のほかに、軸付近にも右のような磁石らしきものが取り付けられている。

その磁石らしきものの外周に取り付けられているのが、位置信号高周波を振幅変調するためのスリットということになるが、スリットをくり抜いた銅板の帯が巻かれているわけだ。

スリットの形はとても正弦波的といえるものではない。三角と四角を組み合わせたような形状だ。これでは上のAのような出力波形になるのもやむを得ない、と考えるべきなのか、よくあれだけの正弦波的な出力が得られるように工夫したものだ、と考えるべきなのか。は不明(^^;

ところで、スリットは何故10個なのだろうか。それは位置検出コイルが3組だからだ。3組の位置検出コイルは当然1周360°を3分して120°ずつ離れて配置されるわけだが、これに発生すべき位置信号低周波も120°ずつ位相がずれる必要がある。よってスリットは、120°をXで割って1/3(120°/360°)の余りが生じる角度Xで取り付けられなければならない。となるとX=36°しかないのである。(←おっと嘘だった。解はほかにも幾つかありますね。(^^; でもまぁ→)だからスリットの数は360°/36°=10個なのだ。

さて、実は外側のスリットだけではなく、磁石らしきものの内側に見えるギザギザの溝にも注目する必要がある。何故ならこれがFGコイルに正弦波起電力を生じさせる着磁円筒(少なくともその役割を担うもの)に違いないからだ。正確に数えた訳ではないが、縦に掘られた溝の数は190本のようである。何故そんな半端な数値なのかは勿論分からないが、1周で190回磁石のNSが交代変化すると、FG周波数は33&1/3rpmで105.5Hzとなり、45rpmでは142.4Hzとなるのである。





こちらはステーターである。

外周は勿論ステーターコイルであり、15個が3組に分かれて120°ずつ位相のずれた例の位置信号正弦波(的波形)により駆動されて回転磁場を生じる。これによりローターが回転する訳だ。

で、その内側に120°ずつ離れて配置された位置検出コイルが3組見えている。

さらに内側の軸付近にあるのが周波数発電機(FG)である。その詳細な構造は外見からだけでは良く分からないが、外周部に歯車のようなギザギザがある。しかもその数は190個のようだ。

どうも上のローターの着磁円筒の溝(というか山)とこの歯車の歯のような部分がFGコイルを貫く磁束のやりとりをしているように思えるが、果たしてどんなものだろうか。知っている方がいらっしゃいましたらどうぞご教授願いたく。(^^;






(2002年10月4日)

(不埒な行為が天罰を招く!?)



ああ、至福の時だ。(^^)

金田式ターンテーブル制御アンプでドライブしたSP−10MK2。「ターンテーブルの存在を全く感じさせない音」とK先生おっしゃるとおりだ。どっしりと安定し、ぎっしりと充実し、はっきりと情感を奏で、すっきりと消滅する音達。まさに、明解で躍動感にあふれ、スリルに満ちた音楽を奏でる。

ボードづくりはそうそう容易ではないので、右のようにアームをターンテーブルに外部からランデブーさせるという実に不埒(^^;な方法によって、もうこのところレコードばかり聴いている。

が、またしても至福の時は長くは続かなかった・・・(泣)
なんと、ターンテーブル制御アンプ、何故か徐々に機嫌が悪くなり、遂に回ってくれなくなってしまったのだ。
ひぇー、なんで???(涙)


最初は、電源オン時にターンテーブルが定速回転に至る前に多少いやいやをするが如くにちょっとワンテンポ時間を要するようになった程度だったのである。
が、時と共にしだいに症状は悪化し、33&1/3回転から45回転に切り替え時にもいやいやをするが如くにちょっとワンテンポ時間を要するようになってしまった。
しかもそのいやいやをするような際、ちょっとガガッというような音も出る。

そうこうする内に、場合によっては、電源オンで定速に立ち上がらなかったり、33&1/3回転から45回転への切り替えが上手くいかない、という状況になってきた。だが、この状態でも、糸ドライブのターンテーブルのように立ち上がりで手で回転を助けてやれば定速回転にロックする状態ではあるのだが。

ありゃ、どうしたんだろう? ご機嫌斜めだなぁ・・・とは思いつつも、事態が徐々に進んだことから、これは多分電池の消耗によってモータードライブアンプの駆動力が足りなくなって、こういうことになるんじゃないか? などと軽く考えていたのである。

が、そうこうするうちにも状況は加速度的に悪化し、遂にその時は来てしまったのだった。電源をオンしてもターンテーブルはピクリともしなくなってしまったのである。・・・えぇぇぇ!?

重症なのか? と、原因と仮定した電池の電圧を測ってみると、±10V弱ではある。確かに大分消耗している。が、これってまだ使える範囲の電圧だろうに・・・
確かめるためには起電力の十分な新品電池に取り替えてみればよいのだが あいにく新品電池が手元にない。ので、やや中古の別の電池に取り替える。±13Vの起電力があった。これならちゃんと回るだろう・・・ 

という甘い期待は完全に外れ、これでも電源オンで上手く回転が立ち上がらない。手で手助けしてターンテーブルを回してやると定速回転にロックして回ることは回るだが・・・。回転数切り替えの方も上手く回転が切り替わらない・・・

これは電池のせいではない。ホントに重症だ。なんと、音を出すようになってまだ10日ばかり。まともに使わないうちに壊れてしまったの?
あぁ、美人はかくも薄命なのか・・・(涙)
それともこの不埒な行為が天罰を招いてしまったのだろうか・・・(嘆)


と、嘆いていてもしょうがない。ので、原因の究明を開始する。

こういう時に、制御アンプとモータ間を4種に分けてDINコネクタ4個で接続する構造にしたことがメリットになる。具体的に4種とは、@位置信号用OSC線(2本)AFG信号線(SONY OFCコード)Bモータードライブ出力線(3本)C位置信号&PC線(4本)で、勿論これら4種を全部つなぐことによりターンテーブルが正常に回ることになるのだが、あるものをつながないことによってモーター制御アンプの動作診断がある程度可能となるのだ。

例えば、@又はBを抜いてしまうとモーターは当然回転しない。Aだけ抜くと速度制御、位相制御がかからない状況になるので、モーターは高速で回転する。AとBを抜くと、モーターを手回しして、モータードライブアンプの出力電圧を測ることによりモータードライブアンプの振幅調整が可能。といった具合で、これによって制御アンプの動作の正常・異常や、異常であればその部位がどの辺なのかを、かなり的確に推測できるという塩梅なのだ。

ここではAFG信号線を外してみる。こうすると制御アンプ系のNFBが外れた状態になるので、モーターは制御を失って勢いよく高速回転するはずなのだ。電池消耗でのトルク不足が原因でモーターが回らなくなったのであれば、Aを抜いても回らないはずだ。まずこれを確認する必要がある。

で、消耗した電池を電源として、全てのコネクタをつないで電源オン。やはり回転を開始しない。そこでおもむろにAのコネクタを抜いてみたところ・・・

あ〜あ、高速で回転をはじめた。よって結論は早い。原因は電池の消耗による電源電圧の低下でモータードライブアンプの駆動力が低下したなどという単純なものではない。また、これでモーターが高速回転するからにはモータードライブ部には障害がないことが明らかなので、原因は速度制御部、位相制御部にある。ということになるのだ。

となると速度制御部、位相制御部の不具合の原因を探らなければならない。

のだが、
今の高速で回転している状態でAのコネクタをつなげば急速に速度を減じて定速回転状態にロックするし、電源オンで回転をはじめない場合でも、手で回転を助けてターンテーブルを定常回転状態に近づけてやればちゃんと定速回転にロックをするのだから、基本的に速度制御も位相制御も正しく動作している。と解するのが至当だ。

にも拘わらず、電源オン時や回転数切り替え時に上手く制御が利かないのだ。ということは、こういう過渡的状態においてのみ、何らかの原因で速度制御部、位相制御部が誤動作又は異常動作をしているということになる。


であれば、加算アンプLF356Hの出力信号の状況を観察すれば何か分かるはずだ。制御信号はLF398Hでパルス(デジタル)から直流アナログ信号に変換され、LF356Hの出力制御信号も当然直流信号であるので、その電圧の動きをテスターで観察すれば、ある程度状況は分かろうというものなのである。

観測の結果、次のようなことが分かった。(私のこの制御アンプのある電源電圧での状態。当然他の個体では出力電圧等は異なるだろう)

@定速回転状態におけるLF356Hの出力電圧は33&1/3rpm時−3.4V、45rpm時−3.2Vである。
A定速回転状態で回転が速くなるように外力を加えると出力電圧はさらにマイナス方向に変化し、回転が遅くなるように外力を加えると0Vの方向に変化する。また、その変化量は加える外力の大きさに比例する。
B33&1/3rpmから45rpmに切り替えた際、上手く切り替わる場合は、−3.4Vから一瞬すばやく−2.6Vに変化し、−3.2Vに戻って45rpmの定速回転状態になるのだが、上手く切り替わらない場合は、一瞬すばやく−2V台に変化するという動作をせず、逆に−3.7Vあたりに止まってしまって電圧が細かく変動する状態になる。ターンテーブルは勿論回転が上がらず、苦しげだ。
C45rpmから33&1/3rpmに切り替えた際には、−3.2Vから一瞬−4Vに変化し−3.4Vに戻って33&1/3rpmの定速回転状態になる。
Dスタートストップスイッチでストップ状態にしたときの電位は−4.55Vである。
EDの状態からスイッチを切り替えスタート状態にした場合、上手く回転が立ち上がる場合は、一瞬素早く−1.5Vに変化して−3.2V又は−3.4Vの定速回転状態に戻るのだが、上手く回転が立ち上がらない場合は、その変化をしないで、−3.7Vあたりに止まって細かく変動する状態となり、結果ターンテーブルは回転が上がらず、苦しげに音まで出して極低速でぎこちなく回るか、状態が酷い場合は回らない状態になる
F電源スイッチオンでスタートさせた場合、上手く回転が立ち上がる場合は、0Vから一瞬素早く+0.6Vに変化して−3.2V又は−3.4Vの定速回転状態に変化するのだが、上手く回転が立ち上がらない場合は、その変化をしないで、0Vからすぐに−3.7Vあたりに移行して細かく変動する状態となり、結果Eと同じ状態になる。
Gついでに、上のAのコネクタを抜いて高速で回転している状態での電位は+2.2Vである。

これでもう分かったように思う。過渡的電圧変化の電位は応答の遅い針式テスターによるものだから数値そのものにあまり意味はないのだが、ゲインコントロールアンプLM13600Nは、1番、16番ピンに加える電位によりそのゲインが変化し、それが−4V以下ではゲインが0となり、これが+の方向になるほどにゲインが増加するのだ。これを上手くコントロールするのがこの出力電位なのだ。

この観測結果からも、問題が電源オン時や回転数切り替え時という過渡的状態において、制御信号が上手く出ない場合がある、という点にあることが明らかだ。結局不具合の内容は、回転が規定より遅くて加速信号(+側への電位の移行)が出るべき時に出ないで、逆方向の減速信号(−側への電位の移行)が出てしまっていること、であるわけだ。

では何故過渡的状態において制御信号が上手く発生しないで、というか本来求められる方向とは逆の信号を出してしまうのだろうか。が、問題なのだが・・・

う〜む、こりゃぁ、高速ボルテージコンパレータLM319Hの誤動作なのではなかろうかしら、と、ピンと来た。

要するに位置信号発振信号以外にもある制御アンプ内のパルスか何かが何らかの原因でFGコイルに乗ってしまい、ツインTトラップもすり抜けて高感度動作をしているLM319Hを誤動作させているのではないか? という訳である。


そこで取りい出したのが手元にあったSEコン6500pF。

あそこは100HzばかりのFG低周波正弦波さえ通れば良いのだから、位置信号であろうとパルスであろうと余計な高周波ノイズをコンデンサでショートして減衰させてしまえば良いのではないか。ということで、コネクタのところでFG+とFG−間にSE6500pFをかましてみたのだった。この程度の容量なら低周波のFG信号には影響はないはずだ。

結果・・・大成功\(^○^)/

モーター制御アンプは何事もなかったかのように機嫌を取り戻した。
+10V弱の起電力に消耗した電池を電源としても、スイッチオンで一瞬に回転は立ち上がり定速回転にロックする。回転数切り替え時も一瞬にして切り替えた回転数に移行しロックする。勿論過渡状態時も無音で実にスムーズな動作なのである。

なるほど、そうか。FGアンプを省略し、高速ボルテージコンパレータLM319Hのヒステリシスレベルも下げて大幅に感度アップさせているNo−124は、そもそも高周波ノイズに弱いのかもしれない。ツインTトラップが付いているとはいえ、これは93KHzの位置信号発振信号を選択的に減衰させるもので、それ以外の周波数帯の高周波ノイズには効力がないはずなのだ。

だが、仮にLM319Hの誤動作が原因だとしても、何故電池電圧が下がっていく程に誤動作の頻度が上がり、症状の深刻さが増すのだろうか。

それはこういうことだろうか。

モーターを定速で回転させるためには、モーターには常に同じエネルギーを供給しなければならないはずだ。だから、エネルギー源である電池の電圧が下がればそれに比例して電流を余計にモーターに送り込む必要がある。こうなるように命令を出すのが制御回路なのだが、特に過渡期には所要エネルギーは安定時の比ではない膨大なものになるので、速度制御、位相制御とも所要の電流を送り込むべく最大限に大きな命令を出すのだ。結果、制御回路の出力は立ち上がりの鋭いパルス的なものになるのではないだろうか。特に位相制御部の出力は加速回路も付加されているのでそういう性質のもののはずだ。そしてそれは電池の起電力が下がるほどに顕著になるはずだ。
だとすれば、そのパルスが高周波ノイズとして何らかの経路を経てLM319Hの入力部に進入してしまい、結果LM319Hが誤動作を起こしてパルスを出力してしまう。LM319Hが規定以上にパルスを出力してしまうということは、結果として制御部がモーターの回転が規定より速いと解釈することであるので、今度は制御回路は即座に速度を下げるように命令を出してしまう。要するに巨大慣性によってターンテーブルが回転を始められないでいるうちに制御部は誤動作をして減速命令を出してしまうのだ。だから速度が上がらない。そうすると当然本来のFG信号の周波数が上がらないので今度はまた回転を速めるべくパルス的な加速命令を出してしまう。そしてこれがまたLM319Hの誤動作を引き起こして減速命令を出すことになってしまう。というような自己中毒状態になってしまっているのだ。

とまぁ、こんな素人推論の妥当性はどうでもよいのだが・・・(^^;、事実としては、この対策によりターンテーブル制御アンプが完全によみがえった、ということだ。即ちNo−124の場合、FG出力に乗ってしまうノイズによる高速ボルテージコンパレータLM319Hの誤動作に注意する必要があるということになろうか。

このコンデンサーによる高周波ノイズ消去法について手持ちのSEコン数種で試してみたところ、150pFでは効果がなく、3300pF、4700pF、6500pF、10000pFでは同様に良好な結果となった。


     


さて、これらの写真は位相制御をゼロとした状態でのモータードライブアンプの出力波形である。(真ん中左にカメラを持つ手の一部が写っていて気持ち悪いが気になさらずに。)

実は2現象で2台分を写しているのだが、ゆっくり左から右に走査される光線がカメラの露出時間の関係で一瞬に3台分が表示されたが如く写っている。ので、正確な姿を写すものではないのだが、傾向は分かる。これはどちらも33&1/3rpmで定速回転している状態でのものなのだが、左はFG出力に今回のSEコンをかませていない場合で、右はSE10000pFをかませた場合の状態なのである。

双方とも当然5.56Hzの正弦波状の波形なのだが、どちらにも細かくデジタル的に階段状の段差があるのは、105.5Hzのサンプリング周期で制御部から加減速信号が細かく出されていることによるものだろう。

この写真でも違いは明らかだと思うのだが、オシロで見ていると明白に左の場合のドライブ波形が汚い。汚い方が制御が的確厳密になさているのだ、という解釈も出来るが、定速回転時でもノイズでLM319Hが多少の誤動作を起こしている、とも考えられそうだ。が、事実はどちらなのかはこれだけでは分からない、というのが妥当だろうか。結局我が1台だけの事例では判断のしようがないのである。製作された皆さんの事例報告をお願いしたいところである。

なお、誤動作の原因としてLM319Hのヒステリシスレベルの設定もあるのではないか、と考え、LM319Hの帰還回路の15Ωを倍の30Ωとしてヒステリシスレベルを±4.5mVとやや鈍感にしてみたのだが、以上に記した現象の発現に何の変化もなく、その場合のモータードライブアンプの出力波形もコンデンサーのあるなしでこの写真と有意な違いはなかった。ので、ヒステリシスレベルの問題ではないものと判断した。

ということで不具合の原因追求は終了とし、最終的に今後ほかでに使う見込みのないSE4700pFを選んでケース内におさめたのである。



さて、これで心なしか音も一層良くなったように感じてしまう。

K式ターンテーブル制御アンプで回るSP−10MK2で聴くレコード。・・・う〜ん、涙もの(^^)
音楽が生々しく活動し、今まで聴いた事がないような再生音がレコードから再生されるのだ。

もっと早く作るべきだった、という思いもあるが、とにかく間に合って良かった。まだまだ楽しめる時間が自分にはあるはずだ。
こんな不埒な状態でもこれだけの音が出る。しっかりしたベースを作ればさらに良くなるだろう。
そうだ、これ以上天罰を招かぬようターンテーブルベースを早く拵えなくてはいけない。

また、こうなれば、モータードライブアンプのTRに「とびぬけて」音が良いとK先生おっしゃるかの名石もタイムカプセルから引っぱり出してきて試してみたい。あれの働き場所は正にここにある、と今心から思えるのである。
ただ、それで違いが分からなかったら・・・怖いなぁ(^^;



(2002年10月20日)






(ついに完成 \(^○^)/)

2004年12月8日(土)は、大潟村でDCアンプ試聴会が開催された日だ。

会も終わりに近づいた時、金田先生はおもむろにある方を紹介された。「この方がいなかったならば今日のDCアンプの発展はありませんでした。」と。

「へぇ〜、どんな人だろう」と、聴衆がいっせいに金田先生の指と視線が指し示す先を見た。勿論私もだ。そこにはややはにかんだ様子で日に焼けた丸顔の優しそうな感じの御仁が立っておられた。のが、かの名工、“H名人”だったのである。

近年、MJ誌の“HiFi追求リスニングルームの夢”欄に金田先生の音楽仲間の方々が幾人か登場され、DCアンプマニアの大工の名工であるH名人について言及されていたことから、「ああ、この人なのか」と、私も納得してそのお姿を拝見したのだった。

当日のお話によれば、河内スタジオのコンクリートホーンやミッドハイホーンを始め、金田先生のお仲間のリスニングルームなどまで、H名人の手になって金田式アンプの本当の音を奏でてきた作品には枚挙に暇がないほどのようであった。

その時にはまさか3ヵ月後にこんなことがあろうとは思いもしなかったのである。が、縁は異なものと言うべきか、実は偶然に過ぎないのだが、そのH名人の製作されたものであるらしいターンテーブルボードが我が家にやってきたのである。

えぇぇ、うっそぅ(゜゜)!! 





本当だろうか。

と、とりあえず梱包を解いて置いて見る。(^^;

なんと、この木の塊、あるだけで風格を感じさせるほどの存在感と質感はただ者ではない。その仕上がりぶりには一部の隙も感じられない。素晴らしい完成度だ。

寸法は横610mm、縦500mm、高さ100mm。体重は20kgを超えている。ということは比重は0.66程度。

バンザ〜イ。\(^○^)/




・SP−10MK1,MK2用のプレーヤーボードについては“音楽を愛する電子回路”下巻にもあるとおり、昔から厚さ24mm、横600mm×縦500mmの桜集成材を4枚、接着剤と木ねじで張り合わせて作ることになっている。その設計図は同書223頁の図37、図38のとおりだ。

・が、この作品にはその設計図と微妙に違うところがある。まず横幅が610mmであること。そのためこの作品はK先生の設計図に対して横が左右ともそれぞれ5mmずつ広い作りになっている。

・また、板厚も24mmというよりは25mmと言ったほうが正しそうだ。

     
・次にモーターの軸受けを収める丸孔。設計図では下から2枚目の板に直径30mmの丸孔を深さ15mmまで掘削するものとなっているが、この作品においては深さ15mmではなく、厚さ24mmの板を30mmの丸孔でくり貫いてある。正確な掘削の困難さとこの孔の意味を考えればこの方が合理的だ。

・また、下から2枚目の板に24mm幅で切り抜くモーターケーブル孔。設計図では縦の中心軸からモーター軸受け孔側に15mmまで切り抜くものとなっているが、この作品では中心軸までの切抜きとなっている。30mmの丸孔をくり抜いたことに伴い、この付近での強度低下を招かないための変更であろう。これでも機能的に何ら不都合はない。

・ところでこのモータ取り付け用の丸孔。上から2枚目の板は直径152mmの丸孔を開けるだけだが、一番上の板には同じく直径152mmの丸孔を開けた上に直径183mmの丸孔を深さ10.5mmで掘削加工しなければならない。こうしないとプラッターとボードの隙間が1cm以上空いてしまって見栄えが非常に悪くなってしまうのだが、この加工はやはり素人には無理だよなぁ・・・(^^;
・こちらはトーンアーム取り付け孔で、設計図のとおりである。

・設計図から想定していたところではあったのだが、こうして現物を見ると、これがSME−3012用であるとしても、それはSMEオリジナルの接続器具の使用を全く前提としていない、ということを改めて認識したのであった。(^^;

・って、これではオリジナルの横だし方式のケーブルは接続のしようがない。

・モーター及びアームの取り付け用ねじ孔等はピッタリ正確無比だ。
・後ろから見た風景。

・モーターケーブル孔、アームケーブ孔が見える。
    
・裏側の風景。

・木ねじが50本以上も打たれている。4枚目と3枚目だけでなく1枚目と2枚目、2枚目と3枚目も同様にこのようにして接着されているのだろう。

・これはかなり骨な作業のはずだ。
・モータ制御アンプとモーターを早速ケーブルで接続する。

・ケーブルの中継にはAT−1ではなくなつかしのAT−40を使ってみた。いにしえに金田式DCアンプの基盤として使われたのはAT−1ではなくこのAT−40の方なのだ。

・なんてことはどうでもいいのだが、こちらの方がケーブル中継用途では面倒がない。なお、指定では中継基盤はボードにねじで固定することになっているが、別にこのままでも外に引き出される恐れも、モーター金属部で接触ショート事故が起こる恐れもなさそうなのでこのまま空中配置とすることにした。
    
・あぁ。ようやくこのモーターを収めるべきところに収めることができた。

・このモーターは1990年5月生まれだから、生誕から15年にしてようやく働くべき場所を与えてやれたのだ。
   
・プラッターを取り付けた様子。

・残念ながらSP−10MK2のモーター及びプラッタ−はSP−10MK1のそれに比較すると量産用にコストダウン作業がなされていて、プラッタ−は剛性がダウンし、その分鳴きやすくなったものを裏にゴムを貼り付ける対処療法で措置されているという悲しい現実があるようだ。

・裏のゴムを剥がしてこぶしで叩いてみるとまるで釣鐘であるかのようにカーンと尾を引く音色の音がする。剥がしたゴムを上に置いて同様に叩くとそのダンプ効果でカンと言った感じで尾を引かずに音が止まる。

・が、金田先生はこのゴムのダンプ効果は大切な音楽まで吸い取ってしまうと仰っておられる。

・ま、必要ならまた自分で接着剤で接着すればいいだけのことなので、これはそれぞれ試してみられるのが面白い。(^^)

・おぉ、確かにゴムを剥がすと吸い取られていた音魂が蘇る。と思えるぐらいの効果があるかも。(^^;
    
・問題の3012からのケーブルの引き出し法なのだが、MJ2004年7月号の176頁に写っているように、金田先生は内部から2497で直接引き出されているようだ。さらにアーム内部のケーブルも2466PT?というケーブルに置き換えられているものと思われ、何らかの手法でこの両者を接続されている。

・ボードに開けられた孔の形状、SME3012の構造、金田先生の接続手法の想定などからして、こうするのではなかろうかと考えたのが左である。

・オリジナルの接続機構は2本の支柱以外は取り去ってしまい、その2本の支柱を使って内部ケーブルと外部ケーブルを中継する基盤を取り付け、これで中継に必要な強度を確保しつつトーンアーム取り付け孔に上手く収まる構造にするのである。

・ここでもAT−40を使った。25mm程に切ったダイエイ20芯の一方に内部ケーブルをはんだ付けし、ダイエイ電線のもう一方を基盤の表側から挿入してはんだ付けして、この基盤に外部引出しの2497なりのケーブルを取り付けて中継する。

・唯一の懸念は、こうするとオリジナル構造にあるシールド効果がなくなるということなのだが、103のインピーダンスが低いことが幸いしてか全く問題ない。MMカートリッジではこうはいかないのかもしれないが、インピーダンスの低いMCカートリッジを使用する限りでは問題はなさそうだ。
   
・いよいよ音だしの瞬間。

・ターンテーブルに最初に載る栄光を手にしたのは下の“合唱”である。

・はやる気持ちを抑えて慎重に針を円盤上に下ろす。

・音が出た瞬間、えぇぇぇぇ・・・(゜゜)!!とびっくり仰天。

・聴くことしばし・・・

・顔がだらしなく緩んでくるのを止めることが出来ない。

・イッヒヒヒヒ(^^; と、小躍りを始めてしまったのであった。

 ↑ 気が触れたか(−−)

・proprius PROP7770

・合唱

・1976年9月 デンマークのストックホルムでの録音

・地の響きのような荘厳なオルガンと力強く透明な合唱が深く広い空間に美しくこだまする。

・私の部屋はすでに無く、ややひんやりとした教会で木製の椅子に座っている。

・人の声とはかくも美しいものなのか。その響きは人間の悲しみと喜びを湛えて静かにそして遥かに天上に抜けていくのだった。



 

・EmArcy MG 36037

・Study In Brown

・CLIFFORD BROWN and MAX ROACH

・1955年2月 ニューヨークでの録音 モノラルである。

・いまさら言うまでも無いハード・バップの名盤

・が、勿論オリジナル版ではなく21世紀の再発盤(^^;

・いいですねぇ、図太くて。ジャズのエネルギーが塊となって迫ってきて圧倒されそう。

・モノラルであるのに臨場感溢れるこの感覚はこれいかに?
   
・VENUS TKJV−19143

・EASY TO LOVE

・STEVE KUHN TRIO

・2004年2月 ニューヨークでの録音

・CD屋に行ったらLPが置いてあったので買ってみたもの。古い録音の再発ではなく、21世紀の録音である。24bit Mastering とあるからレコーディングはデジタルだろう。

・21世紀のデジタルレコーディングであるのに、LPであることを意識してかわざわざ高低の帯域をカットしたような少し懐かしいサウンド作りをしてある。

・まぁ良い。むやみに高低を伸ばしたような薄っぺらなハイファイよりはゴリっとしてガツンとくるエネルギー感の方が好きだ。加えてジャケットのエロティックさ、演奏のリリシズム、この猥雑さが人間くさいのだ。
   
・CALLIOPE CAL.1611

・ORLANDO GIBBONS
 CHURCH MUSIC

・The Clerkes of Oxenford

・1975年12月の録音

・さぁ、教会に行って罪を告白し神に祈ろう。人間はこの世であらゆる罪を犯してしまっている。神に許しを請い、神の教えを心から受け入れ、神のために生きるのだ。

・そこにこそ真の心の安らぎと生きる望みが生まれてくる。

・あ〜、何と言う清らかで満ち足りた心の安寧。

・仏教は木魚と鐘による読経にしか至らなかったが、キリスト教は宗教音楽においても普遍的な芸術にまで達した。

・心が洗われ救われる思いに一瞬浸ってしまうのであった。
・キング SLA 1231−2

・MAHLER SYMPHONY No.3

・ZUBIN MEHTA 
 LOS ANGELES PHILHARMONIC

・1978年3月 U.C.L.A.での録音

・人間とは何なのか、そしてこの世とは何なのか。人は誰しもこのような根源的な問いを問うて絶望的な思いに陥る宿命を背負っている。あらゆる哲学や宗教はこの人間の根源的な絶望に応えることを希求し生まれてきたものだ。

・MAHLERが音楽で希求したものもそうだったのではなかろうか。人間とは宇宙が自らを認識するために開いた宇宙自身の心の窓であると宮沢賢治が法華経から悟った時の喜びがマーラーの音楽にはある。

・マーラーの音楽の中で私は一瞬宇宙と渾然一体となるのであった。
 
・RCA RVC−2150(ARL 1−2397)

・ベートーベン ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 作品31の3 & シューマン 幻想小曲集 作品12

・ARTUR RUBINSTEIN

・1976年4月 ロンドンEMIアビ−・ロード・スタジオにて録音

・世紀の巨匠、90歳にして何という瑞々しさ、優美さ。

・「私は、今、無限の視野の中で、時や場所にとらわれることなく、私の91年の人生の中を縦横無尽に駆け回り、更に、未来に向かって駆け出しつつある。私の真の人生は、今まさに、始まろうとしているのだ。いつも云うように、私の音楽は私の人生そのものなのだから、今こそ、私の人生は真の拡がりを示し、私の音楽は、真の深まりを見せはじめたと云えるのだ。」

・真の巨人だ。その巨人が今我があばら家に降臨し給いて、心の琴線を震わすピアノを弾きたまう。人生未だ見えず心渾沌とした未熟者は師の教えを賜りたが如く、深い安らぎに身を任せるのであった。







(2005年4月3日)


今日は久しぶりに自分の時間がとれそうだ。
都合のいいことに家人も皆外出したぞ。
この機を逃す手はない。リビングのメインシステムで新しいターンテーブルを試さねば・・・。

って、新ターンテーブル、時間もなくて今までは我が自室結界のサブシステムでちょっと聴いていただけなのである。その再生システムは、MCプリにNo−168、パワーアンプはNo−144(低音部)とNo−139(もどき)その2with2SD217(高音部)を当てていたのだが、スピーカーはビクターのSX−500DEという小型2Wayスピーカーなのである。一応SEコン使用の6dB/octデバイダ−でマルチ駆動はしているのだが、まっ、要すれば貧弱なスピーカーだ。(^^;

もともとウーハ−は20cm口径であるから低域が欲張れるはずはなく、バスレフで持ち上げてあとはちょん切れてしまうボンつき気味のあまり質の良くない低域で、体を芯から揺すぶる這うような低域など望めるはずもなく、当然これまでそういう低音は感じられなかったのだが、このターンテーブルにしたところ、驚いたことにこのスピーカーからそういう低域が出てしまったのである。だけでなく、このスピーカー、まるでコンクリートホーンを使用した4Wayオールホーンスピーカーシステムでもあるかのような音を繰り出すようになって何とも情緒豊かな音楽そのものを聴かせるのである。

えっ、いや(^^;、勿論わたくし的に。

ならば、我がTADによる2Wayメインシステムで新ターンテーブルを試さないではいられようか。
という訳。

う〜ん。待ちに待ったその機がようやく来たわい。 ウフフフフ(^^;











こちらにはテクニクスオリジナルのSP−10MKUシステムを置いてある。モーターがSP−10MKU、キャビネットは純正のSH−10B3だ。アームはオーディオクラフトのAC−3300で、S字型アームパイプAP−300を取り付け、オイルダンプを利かせてある。シェルは4PL、カートリッジはDL103だが、フォノケーブルはオーディオクラフト純正のままであり、カートリッジからの配線もごくノーマルのまま。

アンプ類は、こちらにはMCプリとしては我がNo−128?(完全対称型プリアンプ)、パワーアンプとして我が“
電流正帰還・電池式完全対称型パワーアンプ”(低音部)と“ヘッドフォンも鳴る電池式完全対称型パワーアンプ”(高音部)が置いてあったのでそのまま使用する。これらの電源は鉛蓄電池。勿論チャンネルデバイダ−はSEコンによる6dB/octパッシブデバイダ−である。






まずはこのシステムの音を確認しておこう。

早速お気に入りの円盤に針を下ろす。

う〜ん、流石に38cmウーハーとカットオフ280Hzの大型ホーンは伊達ではない。

地の底から湧いてくるような超低音やぶるんとくるベースに体が震え、厚みのある中域がガツンとやってくる。実に充実した音だ。総じて十分に良い音ではないか。

って、手前味噌だがK式DCアンプで駆動しているのだからそうでなくては困ってしまうわなぁ(^^;

が、ちょっと不安にも駆られる。もしかするとターンテーブルを替えても違いが出ないのではなかろうか・・・と。



ま、とにかくやってみよう。

って、ともに20kg超のターンテーブルの交換作業は骨だわい。(^^;

で、金田式モーター制御アンプでSP−10MKUのモーターをドライブする金田式ターンテーブル。
アームはSME3012−R、シェルはオーディオクラフトの4PL、カートリッジは勿論DL−103。ただしケーブル類はノーマルのままだ。

またしてもお気に入りの円盤に針を下ろす。





勝負は、針を下ろし音が出た瞬間に決してしまった。

圧倒的に情報密度が高い。

演奏のリズム感や各パートの動き、全体のハーモニーから盛り上がりまで音楽を表現するために必要な要素全てについてこのターンテーブルが優れている。

何よりも音楽の表情が深く、素晴らしい充実感を与えてくれる。

と、まぁ、“時空を超えた音楽再現”における金田先生のお言葉をそのままお借りして表現してみた。(^^; あまりにもピッタリだから。

なるほど。

これほど眼前に見るがごときの音楽再現能力を有するプレーヤーと比較してしまえば、「市販のダイレクトターンテーブルは概して音が抑圧され躍動感に乏しい半殺しトーンのものが多い。」と断じられたこともむべなるかなだ。

が、それは市販のダイレクトターンテーブルが悪いというより、DCアンプ制御方式のこのターンテーブルが良すぎると言った方が正しいのではなかろうか。

「これを一度でも聴いた人は音痴でない限り二度と他のターンテーブルでは聴けないという恐るべきターンテーブル、それがDCアンプ制御方式」なのだから。

この金田先生のお言葉の意味を、15年の時を経てようやく今日、現実の経験で理解したのであった。

「オーディオをやるにはまず音の入り口を固めることだ。ここを正常にしておかないと後の努力と苦労が無駄になる。音の入り口はできるだけ若いうちに完成しよう。それだけオーディオライフが充実する。」とは、“音楽を愛する電子回路”における金田先生のお言葉。

う〜ん、確かに15年分損をしてしまったような気はする。が、これから死ぬまでの間に取り返してやるわい。だ。(^^;






(2005年4月9日)


いや〜、M−NAOさんのHPの“ランクとロットの話”はとってもためになった。目からうろこ。(^^) 入り口見つけるのに6日も掛かったけど(^^;

下は、そこで仕入れた知識をもとに選りすぐってみたトランジスター。3組の2SA649−2SD218だ。
なお、2SD217が一個友情出演している。

ロットは2SA649がM24,M26,(1)L35A、2SD218がM08A,M15A,M17A。
友情出演の2SD217はM91だ。

“ランクとロットの話”で得られた知識で解釈すると、2SA649は左から1972年4月製、同年6月製でこれらは最初期ロット、一番右が73年5月製でこの時点で既にAロットになっているという訳だ。勿論MとLはhFEのランクだが、右側の2SA649の(1)の意味は不明(^^;

2SD218の方は左から1970年8月製、71年5月製、71年7月製で皆Aロットであることが分かる。なるほど、ということは2SD218は70年8月の時点で既に最初期ロットからAロットに移行していたということになる。

で、手持ちにもっといにしえと思われる2SD218がないので友情出演願ったのが2SD217なのだが、これはM91の数字部分に証拠のアンダーラインが付いていることからも1969年1月製ということになる。よって2SD217,218は69年〜70年の間において最初期ロットからAロットへ移行したものと推測してよさそうだ。







こちらはその裏側。

72年〜73年製の2SA649にはすでにE,Bを示す刻印がない。また、いわゆるスタンプもない。
70年〜71年製の2SD218にはE,Bの刻印があるほか、左側70年製の2SD218にはW8というスタンプがある。が71年製にはもうスタンプはない。
友情出演の69年製2SD217には勿論E,Bの刻印があるほか、スタンプもある。ただ、場所が丸の中で83と読める。手書きでもなさそうなので当初からのものと思うのだが、もしかすると以前の所有者がhFEを記入したものという可能性もある。

実はこのスタンプは製造上の機種識別記号だったのだろうと思われる。端的に“W8”とは“2SD218&8月”という意味だ。友情出演の2SD217の“85”はちょっと意味が分からないのだが(^^; それはともかく、

多分、この時代、同じ製造ラインで複数の品種を作っていたなどの事情で、チップをCANケースに入れてしまうと品種名プリントまでの間はその区別がつかなくなるため、このような識別用スタンプが押されたのではないだろうか。(違うかな(^^;)




何故なら、裏面のスタンプは程なく廃止されるのだが、実はそれがケース横の刻印に引き継がれているからだ。

左は上の2SA649(1)L35Aなのだが、“C5”という刻印が見える。“C5”とは“2SA649&5月”という意味に違いないのだ。

そして、この刻印の位置がものによって360°あちこち向いていて定まらないのである。要するに製造過程でケース取り付け角度の管理がなく、最終工程でメーカー名品種名をケース表面に印刷したのだろうことが推測される訳で、その間の品種取り違え防止の意味もあってこのような刻印が用いられていたのではなかろうか。

NEC製CANトランジスタでは70年代中後半期(77年?)製までこの刻印がなされていたようで、2SA627は“B”、2SA649は“C”、2SB541は“H”、2SD73は“Z”、2SD188は“空白”(数字のみ)、2SD217、218は“W”、2SD322は“N”など、品種ごとに固有のアルファベットが割り当てられていたようだ。

だが、この刻印も70年中期には数字が省略されアルファベット一文字のみになり、70年代後期には刻印自体廃止されたようである。

ついでに、TO66タイプにも同様な事例があり、たとえば2SA653は“A”だ。

が、なかには以上が当てはまらない事例もある模様だし、その意味ではそもそも眉唾ものの鑑定法かも知れないので、悪しからず。(^^;

って、なんでここでこんなことを書いているのだろう。(^^;






(2005年4月17日)




それは勿論モータードライブアンプに移植するため。 って、すっかりバレバレだが(^^;

冬眠していたタイムカプセルから引き出して再び現世で活躍してもらうことにしたバイポーラパワートランジスタの最高峰、2SA649−2SD218。

実を言うと、金田式を模倣するようになって30年以上でありながら、私は過去においてこの2SA649−2SD218を使用したアンプを作ったことがことがないのである。

パワーアンプはA級30Wで始めてしまったために、まだ2SA649−2SD218が入手できた時期に手に入れたのは2SA627−2SD188で、そのうち2SA649−2SD218は後継の2SB541−2SD388の出現とともにあっという間に完璧に入手難の幻のTRとなってしまったのである。

このため、2SA649−2SD218を使用したアンプは今日まで一度も作ることなく、したがってこの名石の音は一度も聴いたことがないのだ。

それが21世紀のインターネット時代の到来がこんな田舎にさえも幻のトランジスタがやってくる奇跡を招いてくれたのである。 あ〜、長生きはするもんだ(^^;

こんなトランジスタであるから、今となってはなまじの用途には起用したくない。と思うのが人情というもの。どこにどのように使ってやれば良いのかあれこれ思案していたのだが(実際はタイムカプセルにしまっておいただけ(^^;)、このターンテーブルの音を聴いて、この名石を使用すべき個所はここ以外にないと確信したのである。

ターンテーブルは、パワーアンプやプリアンプ以上にシステムの音を決める。「オーディオをやるにはまず音の入り口を固めること」なのだ。しかも金田先生は“時空を超えた音楽再現”においてモータードライブアンプに使用するパワートランジスタについて「音は2SD218−2SA649が断然良い。スピーカー用パワーアンプと同じ現象だ。」と仰っておられる。となれば、この名石2SA649−2SD218を起用すべき場所、そして私がこの名石の音をはじめて確かめるべき場所はここ以外にない。

ターンテーブル制御アンプのモータードライブアンプ。

で、今日はその心臓移植を執刀しようということなのである。現在使用中のMJ2955−2N3055を名石2SA649−2SD218に換装するのだ。さらに2SA606と2SC959なのだが、この際だから現在使っているB,FランクからA,Eランクのものにこちらも交換することにしようではないか、という訳。執刀に要する時間は6時間程度と想定される。結構大変なオペなのだ。関係のない部分に影響を与えないように慎重な配慮が必要な分、実は新たに作るほうがかえって簡単なことが多いのである。





・こういう場合に、基盤を桟に取り付け天板、底板とも取り外し自由にしたケース構造がありがたいものとなる。

・既存のMJ2955−2N3055、2SA607−2SC960を取り外し、替わりに2SA969−2SD218、2SA606−2SC959を取りつけ、合わせて温度補償の2SC1775Aもチェンジし、アイドリング電流調整もし直すなど、簡単そうで実際はそうでもない心臓移植オペは、詳細を記載してもしょうがないので、写真のとおり、写真で見ればまるであっという間の出来事のように完了したのだった。(^^;




こんなことで音が変わるなどと言っては普通オカルトだ。信号を増幅するアンプに使う素子ではなくプラッターを回転させるモーターをドライブするアンプの素子で再生装置の音が変わるなどとのたまっているのだから・・・(^^;

が、MJ2955−2N3055を2SA649−2SD218に交換して、MJ2955−2N3055もなかなか音の良いトランジスタであることをあらためて認識することができた。カラッとして特に高域が爽やかな感じで確かにより醇とした感じのNEC石とは音の傾向は別という感じだが、2SA649−2SD218がない場合は十分にその代役を任せられる音だ。

では、2SA649−2SD218はどうなのかというと、流石と言うべきか、一層音に艶やかさと滑らかさが増し、MJ2955−2N3055には微かではあるが音に特有の硬さがあったことが分かってしまうほどに音が自然になる。実にしなやかでふところが深くソースに刻まれた楽音どおりの音を出す、といった感じだ。だから一層音楽の情感が深く、装置の存在を忘れて音楽にのめり込んでしまう。

いずれにしても金田式ターンテーブルが奏でる音は熱い。音が生きているのだ。そして熱いのは人間の体温のせいである。音楽を奏でるのは人間であり、その人間が演奏を通じて音に込めた情感が、時と場所、すなわち時空(=宇宙)を超えて聴く者の心を突き刺し、揺さぶるのである。これがこの世では人間のみがなしえる心と心の共鳴の喜びであり、音楽を聴く喜びだ。

金田式ターンテーブルはこれをレコードで究極まで追求し実現してくれたものなのだ。金田先生に感謝し、そして、レコードを通じて音楽に込められた人の心の叫び、悲しみ、喜びに共鳴し、感動する日々、これが命尽きるまで続くだろう。








(2005年4月23日)





(完成記念試聴)


超有名?なパニアグア四題。(^^;


・harmonia mundi HM 1015

・MUSIQUE DE LA GRECE ANTIQUE

・GREGORIA PANIAGUA

・1978年5月の録音

長岡鉄男氏が「現時点でのアナログ録音の最高峰、あるいはデジタルを含む全てのレコードの中の最高かもしれない。立ち上がり、余韻、ホールトーン(スズメの声が絶えず入る)、Dレンジ、透明度、力強さ、厚み、リアルな音像と音場。すべてに圧倒的。」と評価された由、“幻の外盤A級セレクション”で紹介されている。

・A面に針を下ろした瞬間、炸裂する導入部分にまず度肝を抜かれてしまうが、全体を通じて優れた録音であって、要するに音が生なのだ。確かにSACDが出た現在も、これを凌ぐ録音はないのかもしれない。

・精神的充足を求めるべき音楽ではないが、時に日本の雅楽を想起させる部分があったりで面白さもあり、オーディオ的には間違いなく超絶優秀盤。

・スズメの声が絶えず入るとあるが、確かに鳥の声はスズメに限らず聞こえてくる。聴いている我があばら家自体に外から鳥のさえずりが入ってくるので(^^;、最近の携帯の環境着信音の如きで気づかないところもあるかも知れないが、とりあえずA−3、A−5、A−6、A−7、A−9、A−10、B−1、B−3、B−5、B−6、B−7、B−11,B−12では明瞭に聞こえてきた。あなたのシステムではどうですか?(^^;
・harmonia mundi HM 1050

・La folia

・GREGORIA PANIAGUA

・1980年5月の録音

・“ラ・フォリア”とはスペインの舞曲のことらしいのだが、このレコードは“古楽狂想”と邦題が付けられた如く“ラ・フォリア”のメロディとして有名なものを殆ど創作によって変幻万化させているもののようだ。バイクの爆音や爆竹音等も使われていて、その意味では遊びの要素が強いものということのようである。A面の最後はエンド周まで音が切られていて、昔レコードで針り飛びし同じところを繰り返し再生するような状態になることがあったが、わざとそんな状態になるように細工して作られていたりする。

・が、この世においては常人こそ平静を装った擬人に過ぎず、一見狂った如きの行いをなす狂人の方が余程純粋な人間である場合がある、という真実の主張を秘めているのか、そもそものメロディ自体がそうなのか知らないが、全編妙に物悲しく、リアリスティックだ。

・この録音もオーディオ的には間違いなく超絶優秀盤。

・このレコードにおいてもA面、B面とも弱音部分で絶えず鳥のさえずりが聴こえてくる。特にB面の鐘の部分は野外で生録したが如きの鳥の喧しさだ。

・harmonia mundi HM 1025
(写真は日本ビクター VIC−28086)

・VILLANCICOS

・GREGORIA PANIAGUA

・1979年3月の録音

・“古樂追想「ビリャンシーコ」”と邦題が付けられている。が、それではよく分からない。要すれば15〜16世紀頃のイベリア半島における民謡と言うか世俗歌曲と言うことらしい。ただし、グレゴリオ・パニアグアのその独特の流儀によって演奏されているということのようである。

・スペインの地はイスラムとキリストの勢力が中世争った地であり、西方、東方両者の特徴が微妙に交じり合って独特のイベリア文化を醸し出しているが、この世俗歌曲にもその特徴が良く現れている。素朴な歌曲だが、それらは時にアラブっぽく、時に聖歌っぽい。

この録音もオーディオ的には間違いなく超絶優秀盤。ラ・フォリアのようないたずらをしていない分、音は全く素直で自然で、そのリアルさはオーディオ的快楽の極みである。そして、人の歌声がまた大変に素晴らしい。
・harmonia mundi HM 389
(写真は日本ビクター VIC−28107)

・MUSIQUE ARABO−ANDALOUSE

・GREGORIA PANIAGUA

・1976年10月の録音

・“古楽幻想「アラブ=アンダルシアの音楽」”と邦題が付けられている。これは15世紀末までイスラム教徒が支配したイベリア半島南端のアンダルシア地方で独自に発展を遂げたアラビアンミュージック。スペインの音楽ではあるがアラブの血が濃く、灼熱の太陽の日差し、広大なモスク内での敬虔な祈り、ジブラルタル海峡の波の香りなどが頭に想起され、実にエギゾティックだ。

・長岡鉄男氏が「録音は素晴らしい。弦も管も打楽器もそれぞれバツグンだが、出色は1面終りの2曲に使われる水のたれ流しの音。カートリッジ、スピーカーのキャラクターが一瞬にしてわかってしまうほどリアルで恐ろしいものだ。」と評されている。

・私の聴く限りでは水のたれ流しは1面の終りの1曲でしか聞こえないのだが、確かにこの水の音を含め音のリアルさは超絶品だ。すなわちこの録音もオーディオ的には間違いなく超絶優秀盤。ところで、1面の終りの1曲には水の音だけでなく、ホールの外を走っていく車の騒音も入っている。そこのみならず、このレコードでは鳥の声に替わって車の騒音がいくつかの場面で入っているのだが、田舎にあるのか、1台ずつがたまに走っていくだけ。




(2005年4月24日)






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