“オーディオDCアンプ製作のすべて 下巻”
半導体DCマイク(もどき)
製作記
2004年の夏は恐ろしく暑く長かった。が、8月も終わってようやく秋らしくなってきた。(^^) ここしばらくは何もする気にならなかったが、気候も少し万物に優しくなってきたところで懸案の“あれ”に手を付けてみようか、という気になったのである。
“あれ”とは何か? な〜んて左の写真で明々白々だが、無論DCマイクである。まぁ、作ったところで録るべき対象があるわけではないのだが・・・、いいか(^^;・・・、と。
そうなると何よりマイクカプセルがないことには始まらない。無論金田式DCマイクのマイクカプセルはショップスMK−4かAKGのCK−1に決まっている。これ以外はない。が、このうち今も現行品のMK−4はその値段が1個7〜8万円もするらしくとても手が出ない。となるとCK−1なのだが、こちらはとうにディスコンで入手不可能。
なので、AKGの現行品からCK−1と同じ単一指向性のCK61−ULSを使う。これはC480Bというコンデンサーマイクに使用されているカプセルだ。K先生指定外であるからこの時点で製作するDCマイクは“もどき”となることに決してしまうのだが、ネット上では幾つかこれを使用したDCマイクの製作例が報告されており、それなりに使えるようである。し、さらに値段もとある所で1個15,500円と、これなら何とかやつの目を盗んで手に入れられるわい(^^;、と速攻で入手してしまったのであった。目出度し目出度し。(^^)
が、良く調べてみるとAKGのCK−1はなんと2004年の今現在において現行品なのだった。え〜〜!
確かにCK−1は1993年をもってディスコンになったようなのだが、どうもその後も世界中からその復活を求める声高くしてついに2年ほど前に復刻されたようなのだ。現にAKGのWEBサイトにCK−1を使用したC451Bというコンデンサーマイクが製品として紹介されておりこれが日本でもちゃんと販売されている。ということはそのカプセルであるCK−1も当然入手可能なのではなかろうか。
う〜む。が、既にCK61−ULSを入手済み。この上CK−1と言ってもやつの許可は出ないわなぁ・・・(^^;(爆)
というわけで、AKGのCK61−ULSを起用した“オーディオDCアンプ製作のすべて 下巻” 半導体DCマイク(もどき)である。
(2004年9月1日)
下巻掲載の半導体DCマイクのPSpice(評価版)イメージ。
負荷は100kΩ。初段ステップ位相補正は回路図では560Ωとなっているが基盤配置図及び文中では2.4kΩとなっており回路図は誤植のようだ。ここでは初段定電流回路のR2を2kΩとしているがこれはツェナーが違うために動作電流をオリジナルに近いものとするためこうなったもの。
早速オープンゲインとその位相を観る。
その前に各部動作点。
緑が電圧利得で軸は左側1、赤がその位相で軸は右側2。
オープンゲインは低域で82dB。−3dBのfcは10.2kHz程度。負荷が100kΩと高いため(実際はNFB抵抗の51kΩがパラに利くので34kΩ程度となる。)かなり大きなオープンゲインだ。GOADCマイク回路のシミュレーション結果はオープンゲインが68dBだったからそれに比して14dB大きい。
位相補正は適切でオリジナルのクローズドゲイン38dB設定は勿論、これなら20dB設定でも安定に動作しそうである。
初段ステップ位相補正の抵抗は2.4kΩだろうと推測したが、PSpice(評価版)にも評価してもらおう。
R11=600Ω、1.2kΩ、2.4kΩ、4.8kΩ、9.6kΩのパラメトリック解析。
見方は同じだが、凡例左からそれぞれR11=600Ω、1.2kΩ、2.4kΩ、4.8kΩ、9.6kΩの場合。
オープンゲインが40dBから20dBとなる1MHzから10MHzにおける位相の回転具合がポイントであるわけだが、56pFの方は位相が戻る周波数がこの辺になるように規定しており、その戻りの程度をR11が規定している。オープンゲイン38dB程度のポイントにおける位相回転が−120°以内程度に収まるように調整できれば取りあえず良いわけだが、R11=600Ωと1.2kΩでは−120°を超えていることからちょっと妥当ではないという結果である。
2.4kΩ以上はみなOKだが大きくするほどにそれ以上の高域側での位相回転が速くなるから総合的には2.4kΩが最も適切な値のようだ。やはり記事回路図の560Ωは誤植だろう。
今度は負荷R20を781.25Ω、1.5625kΩ、3.125kΩ、6.25kΩ、12.5kΩ、25kΩ、50kΩ、100kΩ、200kΩとした場合のパラメトリック解析。無論観ようとするのは低負荷対応可能性。
凡例左からR20=781.25Ω、1.5625kΩ、3.125kΩ、6.25kΩ、12.5kΩ、25kΩ、50kΩ、100kΩ、200kΩの場合である。
予想外に上手く行っている。などと言ったら怒られそうだが(^^;、負荷3.125kΩ時でも68dbとGOAマイクアンプ並みのオープンゲインが得られている。また、どの負荷値でもクローズドゲイン設定20dB以上であればNFB安定は確保されそうだ。これなら録音アンプ側の入力インピーダンスは普通に10kΩ以上あれば全く問題ないようだ。
なお、高負荷抵抗になるほど負荷に比例して伸びるはずの電圧ゲインが伸び悩むのは2段目の出力インピーダンスの高さが十分でないためだろう。
次に負荷R20を100kΩに固定してパラにC2を入れ容量負荷耐性を観る。
C2=750pF、1500pF、3000pF、6000pF、12000pFのパラメトリック解析。
凡例左からC2=750pF、1500pF、3000pF、6000pF、12000pFの場合。
パラになる容量が増加するほどにオープンゲインの帯域は狭まり、位相回転も速くなる。750pFの場合で位相回転は1MHzで−135°に達しているからNFB安定度は大分落ちているが、パラの容量が増えるほどにオープンゲインの高域での減少が大きいことが利いてどの容量の場合もNFB後に発振することはないものと思われる。が、その場合でも高域ほどNFB量が減少するので高域ほど歪率は悪くなるだろう。
電源電圧を±25Vに限定するときは、2段目のTrを2SJ103に変えてもよい。電流帰還抵抗150Ωもいらなくなり、いっそう回路がシンプルになる。この場合は出力段アイドリング電流Ioが6〜7mAになるようソース抵抗を調整する。とある。ので早速やってみる。ただし、終段のアイドリング電流を何故6〜7mAにするのか?その理由がちょっと分からない。
R20=781.25Ω、1.5625kΩ、3.125kΩ、6.25kΩ、12.5kΩ、25kΩ、50kΩ、100kΩ、200kΩのパラメトリック解析で一挙に観る。
動作点はこう。
凡例左からR20=781.25Ω、1.5625kΩ、3.125kΩ、6.25kΩ、12.5kΩ、25kΩ、50kΩ、100kΩ、200kΩの場合。
2段目2SA872Aの場合に比較するとオープンゲインは7dBほど小さくなるが、負荷6.25KΩで67dBのオープンゲインが得られており、こちらも入力インピーダンス10kΩ以上の録音アンプが負荷なら問題なく使えそうである。また、位相補正も適切でこちらもクローズドゲイン設定20dB以上なら全く安定動作するものと見込まれる。
ただし、子細に観ればTrの方がオープンゲインが大きいのに帯域は広くなるようだ。
(2004年9月4日)
最大の難関はマイクケースの加工だ。いやアンプケースは市販のケースをそのまま使うので正確に言えばマイクホルダー部の加工である。
写真左上がマイクケースの材料。
アルミ等辺アングルがタカチのH−11。アルミチャンネルが同じくタカチのH−87。そしてアンプケースとしてタカチのアルミダイカストボックスAS−112。と言いたいところだが、K先生が「アンプケースには最適な材料が見つかった」とされるのは相当昔のことであるらしくAS−112はとうの昔にディスコンで入手不可能。そこで代わりに入手してみたのが同じくタカチの現行防水・防塵アルミダイキャストボックスBD7−10−4N(定価1,230円)。無垢のアルミの質感が気に入ったのだが内部にちょっと余計な出っ張りがあるところは加工上要注意だ。またAS−112よりちょっと幅が広く背が低いのでややずんぐりむっくりになる。(^^;
さて、問題のマイクホルダー部の製作のためにはドリル(出来ればボール盤)、平ヤスリ(大、中、小)、金鋸、カッターナイフ、3mmタップ、丸穴用パンチ、万力、板金用の直角定規が必要だ。と“オーディオDCアンプシステム 上巻”で指定されている。さらにリーマーも必要だろう。が、あるのは電動ドリルと平ヤスリ一個と金鋸とカッターナイフとリーマーだけ。(^^; シャシーパンチはないことはないがこれでは厚さ3mmのアルミには歯が立たない。指定のパンチとは多分油圧式パンチなのだろう。
と言うわけで、丸穴はまぁドリルで10mmまで開けて後は手動式リーマーとカッターナイフで何とかなるだろう、いつものキャノンコネクタ用ケース加工同様に、とは思ったが、アルミチャンネルの45°のカットなどどうすれば上手く行くのかと途方にくれてしまう。
が、最終的にはヤスリで何とか辻褄を合わせようという基本方針のもと作業敢行を決意し、少し大きめに切り出して後はギーギーガーガーと体力と根気勝負でヤスリを掛け、何とか右上の写真のようにアルミの削り出しが終了したのだった。そしてアルミダイキャストボックスとの結合にはやはり工夫が要ったのだが何とか結合にも成功した。あ〜でけたでけた。我ながらなかなか上手く行ったわぃ。(^^)
という訳でちょっとマイクカプセルを仮付けしてみる。
う〜ん、良さ気(^^)
あとはもう少しヤスリとサンドペーパーで磨き込んで優雅に仕立て上げてやらねばなるまいて。ルンルン♪♪
(2004年9月5日)
M−NAO師匠から電源オン時の過渡的状態のシミュレーションをせよ! との指令である。
その意味するところは、電源オン時に成極電源62Vから1GΩ→1000pF→150MΩ→アースの経路で1000pFの充電電流が流れることによって150MΩにプラスのDC電圧が発生し、これがマイクアンプで増幅されマイクアンプ出力に過渡的に大きなプラスの電圧が生じることになるのだが、これらがどの程度のレベルでどの程度の時間生じるものなのか、そしてそれによってアンプ素子が危険にさらされることはないのか、これらをシミュレーションによって考察せよ! とのご下命なのである。
よって以下の回路である。
入力側1GΩと1000pFの間につながっている50pFはマイクカプセルである。“オーディオDCアンプシステム”上巻においてK先生は「ショップス(MK−4)やAKG(CK−1)の容量は50pF前後と推定される」と記しておられるのだ。また各電源がパルス電源になっているのはこうしないとPSpice(評価版)が過渡解析してくれないからだが、立ち上がり時間等を0としパルス幅を20秒としているのでこれで電源オン時の状況は支障なくシミュレーションできる。結果的には±36V電源の方は普通に電圧シンボルでも有意の差はないようなのだがこの方が実際の電源オン時の様子に近いと思われるのでこれでやってみることにした。
早速電圧プローブを入出力部分に取り付けて観てみよう。う〜ん、楽しみ(^^)
結果
勿論縦軸が電圧(V)、横軸が時間(秒)であり電源オンから15秒間をシミュレーションしたものである。
勿論緑が入力2N3954のゲートにおける対アース電圧(=150MΩ両端電圧)であり、赤が出力対アース電圧(=100kΩ両端電圧)である。
このグラフからは次のことが分かる。
@電源オンの瞬間、入力2N3954のゲートにおける対アース電圧(=150MΩ両端電圧)は5V弱に達し、1000pFの充電進行と共に減少して10秒弱で0Vの定常状態に至る。
A@の結果出力対アース電圧(=100kΩ両端電圧)は即プラス側に飽和して電源電圧に張り付き@の電圧降下とともに3〜4秒後から電圧降下して11〜12秒後に出力オフセット0Vの定常状態となる。
過渡的状態はまぁ12秒程度ということだ。
入力2N3954のゲートにおける対アース電圧(=150MΩ両端電圧)のグラフだけを取り出して拡大したもの。
最大で4.85V程度だろうか。
したがって結論としてはこの程度の電圧であれば2N3954にとってはなんら問題はないものだ。ということになる。
さらに言えば師匠ご指摘のとおりいにしえのK先生の著作“最新オーディオDCアンプ”には2N3954の詳しい規格が載っていたのである。それによればVDSO、VDGO、VGSOともに50Vであり、Gate to Gate Voltage は±100V、Any Lead to Gate Voltage も±100Vなのである。ということは、そもそも2N3954の絶対最大定格からしてシミュレーションするまでもなくこの電源オン時の過渡的現象は2N3954に何のダメージを与えるものではなかったのだ。(^^;
が、2N3954は良くとも、過渡的に出力がプラス36Vの電源電圧に張り付くことによって出力下側の2SC959には70V近い電圧が過渡的に掛かることになる。こちらには問題がないのだろうか。
とりあえず2SC959のVCBOは120VでありVCEOも80Vであるから耐圧的には何ら問題ない。のだが、となるとあとは電流(損失)だ。なので終段の過渡的な電流の動きを観てみる。
おぉ。おもしろ〜い。(^^;
なんと、オン時の過大入力でアンプ終段は気絶してしまうのではないか。
気絶約3秒。この間終段アイドリング電流はほぼ0になってしまって4秒あたりから漸く復旧するわけだ。過大な電流も流れない。
ということは終段は耐圧さえ十分であれば何ら問題ないということになる。ので、DCマイクにおける電源オン時の過渡的現象は終段2SC959にも何らダメージを与えるものではないという結論だ。
結局、電源オン時の過渡的過大電圧出力はアンプ素子にとって何の問題もないものなので心おきなく電源オンオフをして良いということになる。
めでたしめでたし。(^^)
が、DCマイクにつながる録音アンプ等についてはまた別問題なので要注意!(^^;であって、K先生の最新単行本下巻のDC録音アンプにもちゃんと入力にミューティングスイッチが付いているのである。
「もとより何ら問題はないのだよ・・・」 はっ m(__)m
(2004年9月11日)
また識者の方よりお叱りを賜った。ので訂正をば(^^;
上の方でAKGのCK−1が現行品で入手可能なのではないかと書いたのだが、現行品であることはある意味正しいものの、残念ながらCK−1単品で入手できるものではないようなのだ。
左の写真はイメージなのでスケール・角度などが違っていて正しく比較できるものではないのだが、写真左が復刻された現行品C451B。そして右が10年以上前にディスコンになったC451EでマイクカプセルにはCK−1が使われている。
が、C451Eというのは実はマイクカプセルの下のアンプ?部分の名称で、当時のC451Eも現行のC480B同様にマイクカプセルが交換可能な構造であったとのことなのである。すなわち単一指向性のCK−1だけではなく無指向性や超単一指向性等のマイクカプセルを組み合わせることが可能になっていたようで、その合体のために右の写真でマイクカプセルCK−1とC451E本体の間にはねじ込み用のマウントが銀色に輝いていることが分かる。
ところが、復刻の要望はこのC451EとCK−1の組合せに対するものが圧倒的で、このため復刻されたC451Bはマイクカプセル交換式ではなくCK−1とC451Eの組合せが構造的にも固定されたものとなっているとのこと。で、写真左のとおり新しいC451Bにはマイクカプセルと本体間にはねじ込みマウントらしきものがないことが分かるのである。
よって、マイクカプセルCK−1は確かに復刻されて現行品ではあるものの、C451Bというマイク製品に一体化した形で存在しているものであって、単独のマイクカプセルとしては入手できないものである。ということであるらしいのだ。
そうなんですか・・・
となると、・・・やはりCK61−ULSを使うしかないですわなぁ。とCK61−ULSを見る。(^^;
(2004年9月13日)
DCマイクアンプ自体は要するにクローズドゲイン設定38dBのフラットアンプであるから回路的に難しいというものではない。が、サンハヤトのユニバーサル基盤ICB−288は、小さいケース内に収めるためにはこれしかないとはいえ、やはり難儀だ。
まずはカットしてから部品を取り付けるか、部品を取り付けてからカットするかが思案のしどころだ。サポーターの取り付けしろがあるのであればカットが先に決まっているが、ケース幅からして取り付けしろなしの幅でカットしなければならない。サポーターなしで基盤に部品を取り付け、裏の7本撚り配線をするのは経験的に極めて困難と思えるし、かといって部品を取り付けてしまった基盤をカットするのもなかなか難儀だろう。
結局は左のようにカットは後回しにした。が、わたくし的には正解だったように思う。2.5mmピッチのランドは小さくかつ剥がれやすい。基盤をサポーターで支えて7本撚り線を精密ドライバーでしっかり固定しながらでなければ私の技量では配線作業は殆ど不可能に近い。
また、例の如く回路図や基盤配置図は間違っているので注意が必要だ。すでに各所で指摘されているが、図27の回路図では2SK1775Aは2SC1775A、初段位相補正回路の560Ωは2.4kΩの間違い。また、Io=11.72mAが終段2SC959のアイドリング電流であるかのような位置に表示されているがこれもミスプリと言えばミスプリだろう。図30の部品配置図の上の部品面では、左チャンネルTr6,7のBとEの表記が逆でそのエミッタ抵抗150Ωの差込穴位置も取り違えられている。また、マイクカプセル(+)への配線取り付け位置もSE1000pFの150MΩ側に表記されているが勿論1GΩ側の間違いだ。さらに初段トリマーの足の表記が左右で対称になっているがこれも無理というもの。(^^; 下の裏側配線面では右チャンネル初段位相補正コンデンサー56pFの取り付けランドが1つ下にずれている。といったところか。
基盤の製作が終われば調整だが、この状態で初段FD1841(2N3954の代わりに手持ちを使用)のゲートをアースにショートして±36V電源だけをつないで終段2SC959のアイドリング電流とアンプ出力のオフセットを調整する。上のシミュレーションで問題なく安定動作するだろうことが予測されていたとおりで不安定そうな挙動は何もなくスムーズにオフセット電圧は0Vに調整できた。38dBという大きなクローズドゲイン設定だがオープンゲインが低域で80dB以上と巨大に確保されているためもあってかオフセット電圧はかなり安定でドリフトは小さい。
次に終段2SC959のアイドリング電流を56Ω両端電圧から測ってみると上側で4.5mAしかない。ん?そりゃいにしえの虎の子2SC959はhfeが小さいとはいえ11.72mAとは違いすぎるのではないか? と思ったのだが、図27の回路図をよくよく見ると図中の電圧表記から上側の56Ωの両端電圧は359.3mV、ということは終段上側の2SC959のアイドリング電流は6.42mAなのである。文中で2段目に2SJ103を起用した場合は出力段アイドリング電流Ioが6〜7mAになるようにソース抵抗を調整するとあって、なんで2SA872Aの場合11mA以上で2SJ103の場合6〜7mAにするのかが不思議だったのだが、なんと言うことはない、どちらの場合でも出力段のアイドリング電流は6〜7mAが正解なのだ。図27のIo=11.72mAの表記位置が間違っているのである。Io=11.72mAとは多分マイクアンプ1チャンネル全体での消費電流なのだ。したがってあの表記位置は電源+36V直近にあるべきものなのである。
で、我がDCマイクアンプについてはhfeの小さい虎の子2SC959を使ったためか出力段アイドリング電流がやや少な目となったので、2段目共通エミッタ抵抗の2.7kΩを2.4kΩに交換した。これで当初5mA程度のアイドリング電流となるがこれでも終段2SC959はかなり発熱し最終的に6mA程度のアイドリング電流で安定するようである。なお、終段下側は2段目右側の動作電流分が加わるので当然これに+1mA程度のアイドリング電流になる。
最終的にこれをケース内に収めて数時間動作させた後のDCマイクアンプの+36V電源の消費電流は全体で21mA程度になる。ので、設定は適切なものと思われる。が、これでも終段2SC959の発熱はかなりのものでなんとアルミケースが暖まるのである。これからしても終段2SC959のアイドリング電流設定を11mA強などには間違ってもしないのが吉のようだ。
さあ、基盤をケースに収めよう。ここまで来れば完成は間近だ。(^^)
と、それがこの状態である。基盤はサポーターを取り付けるスペースがないのでケースから浮いた状態であるが、K先生のおっしゃるとおり入出力の配線に適度に支えられてケース内に浮いたままで上手く収まっている。万が一の場合接触するおそれがあるのはこの部品面とケース裏蓋であるので、K先生のアドバイスに従って裏蓋表面には絶縁用のビニールテープを貼ってある。
右下に見えるのはケースへのアースであるが、本来外部環境における電子・電気機器ケースとしての使用を想定してあるらしくアース用の取り付けネジ穴が切ってありネジも附属しているのでそのまま活用したもの。
ところでこのケース、上でタカチの現行防水・防塵アルミダイキャストボックスと書いたのだが、最近タカチ電機工業から送られてきた2005年版総合カタログによるとなんとBDシリーズはディスコンになってしまったのであった。よってこのタカチBD7−10−4Nも最早現行品ではなくなってしまった。(^^;
が、後継品としてBDNシリーズがリリースされており内容的にはほぼBDシリーズに同じのようだから、AS−112代わりとしてはBDN7−10−4Nが現行品として同様に使えるものと思われる。
(2004年9月19日)
(その後の1)
ある日、このトランジスタ式DCマイクアンプについては、初段ステップ位相補正は不要なのではないかなぁ・・・と思った。
ので、早速やってみることにしたのだった。
そこで、先ずは初段ステップ位相補正2.4kΩ+56pFを入れたオリジナル状態での方形波応答を観る。
DC−MIC 位相補正2.4kΩ+56pF 100kHz |
DC−MIC 位相補正2.4kΩ+56pF 10kH |
100kHz方形波応答で明確だが、数百kHz付近と思われるポイントのピークを原因としてオーバーシュートとアンダーシュートが生じている。10kHz方形波応答ではそれが左肩の髭となって現れている。
別にこれが問題ということではないのだが、このオーバーシュートを生じるように調整することによって応答スピードが速くなるということでもないと思うので、これを生じないように出来るならばその方が良いのではなかろうか。と思うのである。
まして、それが初段に入れたステップ位相補正素子によるもので、しかもその位相補正素子がなくとも位相補償が適切で、発振に至ることなどない、ということであるならばなおさらのような気が。(^^;
そこで、早速我が半導体DCマイク(もどき)から初段ステップ位相補正素子を撤去したのであった。
その結果の方形波応答がこう。
DC−MIC 位相補正なし 100kHz |
DC−MIC 位相補正なし 10kHz |
クローズドゲイン設定が38dBということもあって高域カットオフ周波数は1MHzにやや届かないかな、という感じのそれぞれの方形波応答波形だが、こちらはオーバーシュートもアンダーシュートもない。
上の場合の波形とこちらの波形を比べれば、上の場合に立ち上がりの傾斜が急になる、すなわちスルー・レートが改善されている訳でもないことが分かる。
ので、ならばこちらの方で良いのではないでしょうか。(^^;
この辺をPSpice(評価版)のシミュレーションで観てみる。
先ずはステップ位相補正あり。
結果はこう。
上からピンクがクローズドゲインの位相、水色がオープンゲインの位相で黄色のループゲインの位相と殆ど重なっている。
次の赤がオープンゲイン、低域38dB付近の青がクローズドゲイン、そして緑がループゲイン。
ループゲインが0dBに沈む周波数ポイントは420〜430kHz付近であり、そのポイントでのループゲインの位相の遅れは−125°程度なので十分安定範囲にあるのだが、クローズドゲイン(青)に350kHz付近で1.5dB程度のピークが生じてしまう。
そして実はこのポイントにおいて位相をここまで遅れさせる原因が初段のステップ位相補正にあり、その結果方形波応答にオーバーシュート、アンダーシュートが生じているのである。
何故なら、こちらが初段ステップ位相補正を外した場合。
結果。
ループゲインが0dBに沈むポイントは700kHz超と高域に伸びたにもかかわらず、そのポイントにおけるループゲインの位相の遅れは−100°とかえって位相余裕が増えている。結果、クローズドゲイン(青)には全くピークが生じていない。これなら方形波応答にオーバーシュート、アンダーシュートが生じないのも当たり前だ。
ので、初段ステップ位相補正は撤去してしまった。(^^)
これで、我が半導体DCマイクはまずます“もどき”に堕落するのであった。(^^;
よって、回路はこう。
なお、勿論のことながら良い子は真似してはいけません。(爆)(^^;
(2006年11月3日)
(その後の2)
ちょっと右のようなものを作った。
もう少し小型でコンパクトなものにしたかったのだが、相手先の入力インピーダンスを10kΩ程度まで想定するとなると、0.1uFでは159Hzになってしまって適当でない。最低でも1uFで15.9Hzは必要だ。が、過去の経緯からしてちょうどその辺にはV2A2.2uFしかない。のでこれだ。結果低域カットオフ周波数=159/(10*2.2)=7.2Hzと問題ない。で、これを下のようにDCマイクに内蔵する。ぎりぎり上手い具合で内蔵できた。
どうせ録音アンプ入り口でDCカットするのだから、電源オン時に過渡的に発生する30VものDCオフセットから録音機の方を保護するためにもマイク自体にDCカット機能を持たせることにしたのである。これで我がDCマイク(もどき)の汎用性と安全性は大幅に高まった。が、“もどき度”も高まった。(爆)
な〜んて。(^^; うそ。
確かに“もどき度”は高まるのだが、これで電源オン時の安全性は高まったりはしない。(爆)
この時定数では電源オン時カップリングコンデンサーにそれなりの充電電流が流れるので、これにより30V近いDCオフセットは結局録音機側に伝わってしまうからだ。だから、録音機側がこのDC電圧に耐えられないものである場合は、このDCマイクは電源オン後15秒ぐらい待ってオフセットが収まってから接続するか、カップリングコンの後ろにミューティングスイッチを入れてその間マイク出力をアースに流しておく、といった対策を講じることが必要だ。
ではこのカップリングコンデンサーは何のために今回加えたのか?
それはマイク運用時のDCドリフトをカットするため。これはDC電圧としては微少だがそんなものを録音する必要はないし後続の機器にとっても有害無益だからだ。勿論、普通の録音機のLINE入力にはDCカットのコンデンサーが入っているとは思うのだが、念のためでもあり、また、時にはこのマイクの出力を我がCDラインアンプに直接入れてヘッドフォンでモニターしたりする場合もあるのでこうしたのである。この意味では安全性は高まるのだ。
(おまけ)
サンプル音源を右に。
同じ音源を同じ条件で2種のマイクで録ったもの。CD−Rに焼いて比較試聴されると面白いかも。との趣向。(^^)
R−09の内蔵マイクもなかなかの音質と評価されている筋もあるようだし、果たしてK式DCマイクとの比較であなたの評価はいかに?
えっ!?私の評価?(^^;
そうですね。まぁ、R−09の内蔵マイクもそれなりに良いのではないでしょうか。
と、余裕の評価をば。(^^)
なお、最後にいつものお断りだが、我がDCマイクは“もどき”であり、本来のK式DCマイクの性能が出ているかどうかは知らない。ので、あしからず。(^^;
GET ALONG TOGETHER by R-09 built-in MIC
音源:オルゴール
マイク:R−09内蔵マイク
レコーダー:R−09
Sample Rate:44.1kHz
Rec Mode:WAV−16bit
GET ALONG TOGETHER by DC MIC
音源:オルゴール
マイク:金田式DCマイク(もどき)
レコーダー:R−09
Sample Rate:44.1kHz
Rec Mode:WAV−16bit
(2006年11月7日)
(ちょっと妖しきシミュレーション:完全対称型DCマイク VS.GOA DCマイク)
これは我が半導体DCマイク(もどき)のPSpice(評価版)回路イメージ。勿論音楽を愛する新単行本掲載の半導体DCマイクを模倣したものでいわゆる完全対称型である。
新単行本に記載されているが、このマイクアンプの出力は入力インピーダンス100kΩの録音アンプで受けることが正しい作法である。
これが、作法どおり100kΩを負荷とした場合の特性。
上からピンクがクローズドゲインの位相。水色がオープンゲインの位相、黄色がループゲインの位相で両者は殆ど重なっている。次の赤がオープンゲイン、緑がループゲイン、そして青がクローズドゲイン。
クローズドゲインは38dB。これはいにしえから不変のDCマイクアンプのゲイン設定値。DCマイクの高感度を支える一つの要素だろう。
オープンゲインは低域で82dB。これによって、ループゲインは低域で44dBである。ループゲイン≒NFB量であるから、このDCマイクはクローズドゲイン設定が38dBと他のDCアンプと比較すると高い設定となっているものの、十分なオープンゲインを稼いでNFB量も適量となるよう設計されている訳だ。結果、ループゲインが0dBに沈むポイントも1MHz付近と常識的で、位相関係もごく素直。良い設計だ。(^^)
代わってこちらは時空を超えた旧単行本掲載のDCマイクのPSpice(評価版)回路イメージ。この時代だからいわゆるGOA型であるが、2段差動アンプにPPエミッタフォロアを付加した非常にオーソドックスな回路構成である。
これも負荷を100kΩとして同様に観てみる。
上からピンクがクローズドゲインの位相。水色がオープンゲインの位相、黄色がループゲインの位相で両者は殆ど重なっている。次の赤がオープンゲイン、緑がループゲイン、そして青がクローズドゲイン。
クローズドゲインは38dB。いにしえから不変のDCマイクアンプのゲイン設定値だ。オープンゲインは低域で72dBと完全対称型より10dB低い。これによってループゲインも低域で34dBとなり、ループゲイン≒NFB量であるから、このGOADCマイクは上の完全対称型DCマイクと比較するとNFB量が低域では10dB小さいということになる。この辺多少違いが出たが、その他で観るとループゲインが0dBに沈むポイントは1MHz付近と常識的であり、位相関係もごく素直で、こちらも良い設計だ。(^^)
負荷が変動した場合の特性はどうか。
先ずは負荷インピーダンス(要するに録音アンプ側の入力インピーダンス)を変えてみる。
パラメトリックシミュレーションで負荷rval=100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩの場合を一挙に観る。
第一にオープンゲイン。
オープンゲインは、負荷100kΩ時低域で82dBのものが、負荷10kΩでは74dB、負荷1kΩでは58dB、負荷100Ωでは36dBと、負荷によって大きく変動し、結果、ループゲイン≒NFB量も負荷100kΩ時低域で44dBのものが、負荷10kΩでは36dB、負荷1kΩでは20dB、負荷100Ωでは0dBと、負荷インピーダンスの低下に伴って大きく低下することが分かる。って、これは完全対称型だから当然の結果だわなぁ・・・(^^;
第二はクローズドゲイン。
第一の結果NFB量をある程度確保できる負荷1kΩ以上の場合はクローズドゲインを設定値の38dB確保できるものの、NFB量が0dとなる負荷100Ωの場合はクローズドゲインを設定値確保できずそれが32dBとなってしまっている。
第三は位相。
位相補償はワンポール補償の電圧帰還型というオーソドックスなタイプであり、負荷変動には安定であることが分かる。
で、私見だが、このDCマイクは負荷100kΩというより負荷10kΩで動作させるのが最適なのではなかろうか。また、要するに一般的表現では録音アンプの推奨入力インピーダンス10kΩ以上ということでもある。逆に言うと負荷10kΩ以下にするのは妥当でない。負荷が10kΩ以下に下がるほどにNFB量が大幅にダウンし、DCマイク本来の音が出なくなる可能性がある。結論としては、この完全対称型DCマイクは、完全対称型という回路形式故に低インピーダンス負荷ドライブ能力にそもそも欠けると考えるべきなのである。録音アンプ数台をパラにしてこのDCマイク出力を同時に受けるという使い方は、この完全対称型DCマイクの場合は要注意なのだ。各録音アンプの入力インピーダンスを良く調べて、パラ計算で10kΩ以下になるようなら、それは止めるべきなのだ。
同じことをGOADCマイクで行う。
負荷が変動した場合の特性はどうなるのか。
一目瞭然。(爆)(^^;
問題は第一のオープンゲインなのだが、こちらは負荷が変動してもオープンゲインは殆ど変化しない。72dBのオープンゲインが負荷100Ωの場合に69dBと3dB低下する程度だ。従って第二のループゲイン≒NFB量も殆ど変化せず、オープンゲインと同様に負荷100Ωの場合に31dBと3dB低下するだけだ。結果クローズドゲインはどの場合でも38dBの設定値を確保し、位相関係も全く安定を維持したままだ。
完全対称型と違うこの結果は、GOA形式が増幅動作を2段差動アンプに任せ、終段PPエミッタフォロアを文字どおりバッファ(緩衝帯)として使っているからである。要するに、終段PPエミッタフォロアは負荷の変動が2段差動アンプの増幅動作に影響を与えないために存在しているのであるから、この結果は当然の結果であり、逆に言えばこの結果でなければ終段PPエミッタフォロアを加える意味などないのである。
で、私見だが、このDCマイクは完全対称型DCマイクと異なり、負荷インピーダンスに気を使う必要性は実用上殆どない。録音アンプの入力インピーダンスは10kΩ以上を確保されているのが普通であるからだ。また、録音アンプを数台をパラにしてDCマイク出力を送ってやるという場合も、このGOADCマイクなら余り心配する必要はない。このGOADCマイクなら負荷が100Ωとなってもその動作に殆ど本質的変化がないからだ。さらに、インピーダンス数100Ωのヘッドフォンなら直接ヘッドフォンでモニターしても大丈夫だろう。GOADCマイクはそのぐらいの低負荷インピーダンスドライブ能力がある。この点は上の完対DCマイクに対するGOADCマイクの際立ったアドバンテージである。
次に、容量負荷耐性を観る。
先ずは完全対称型だが、負荷インピーダンスを100kΩとして、容量については、これとパラにパラメトリック解析でcval=100pF、1000pF、10000pF。これで負荷に容量がパラになった場合の特性がどうなるかを観る。
結果がこれだが、分かりやすい結果だ。(^^)
要するに、容量のインピーダンスが100kΩにパラのインピーダンスになって、この結果、その合成インピーダンス値に比例してオープンゲインが決定されるという、完全対称型のオープンゲイン決定則がそのままなのである。
容量のインピーダンスは当然周波数が高くなるほどに低くなるし、そのインピーダンスが低下を始める周波数は容量値が大きいほどに低くなる。
結果、容量負荷が無かった場合には5.5kHzだったオープンゲインのfc(△3dBポイント)は、容量負荷が100pFの場合は5kHz、1000pFの場合は3.5kHz、10000pFの場合には900Hzと、容量に比例して下がっていくのである。
これに伴い、パラになる容量が大きくなるほどに高域のNFB量が減ってしまうから、音に影響する可能性が高い。また、10000pFがパラになった場合はループゲインが0dBに沈むポイントも130kHz〜140kHzに低下し、結果クローズドゲインのfcも130kHz〜140kHzと低下しているので、1MHz方形波は三角波的に鈍ってしまうだろう。要するにスルー・レートもかなり小さくなりそうだ。
私見だが、この完対DCマイクの許容容量負荷は、1000pFまでが限度といったところだろう。まぁ、普通にプライベート録音に使う分には十分だと思うが、業務用途には向かないことは確かだ。
ただ、完全対称型の回路形式により、この場合如何なる容量負荷に対しても動作安定性が確保されるのは完対DCマイクの利点と言えるだろう。
同じことをGOADCマイクで行う。
結果がこれだが、おぉっと!これはいけない。容量負荷が10000pFの場合クローズドゲインの1.2MHz付近に7dB程度のピークが生じている。1000pFでもピークは生じていないが4MHz付近で周波数特性が盛り上がっている。これだと10000pFの場合高域で発振してしまう可能性が高い。要するにGOADCマイクの場合は容量負荷で動作安定性が損なわれる恐れがあるのである。
その理由は、この特性図を観れば明らかで、アンプ出力に容量負荷が繋がっても終段PPエミッタフォロアのバッファ効果でオープンゲインは殆ど変化しないのに、オープンゲインの位相の方はパラ容量が大きいほどに回転を早めてしまうという、ゲインと位相回転の分離現象を起こしてしまうからだ。
これは危険だ。完対DCマイクと違って、GOADCマイクは容量負荷に要注意だ。
な〜んて。(^^;
まぁ、それは事実なのだが、別に対策が無いわけではない。下のようにアンプ出力に小抵抗をシリーズにすればこの問題は解決する。(^^)
この手法は、いにしえにGOAプリアンプ等で採用されていたので別に目新しいものでもなんでもないのだが、早速その効果を観る。
結果はこう。
たかが47Ωの抵抗を一つ入れただけで100kHz以上の位相回転は大幅に押さえられ、結果10000pFが負荷にパラになっても全く安定に動作する状態になった。しかもループゲインが0dBに沈むポイントもクローズドゲインの高域fcも殆ど変化せず1MHzをキープしているから、完対DCマイクの場合と異なり、1MHzの方形波も殆ど鈍ることなく通るものと思われる。
実のところ、シミュレーションではパラ容量が100000pF=0.1uF程度までなら殆ど問題なさそうな結果なのだ。PPエミッタフォロアのバッファ効果とは絶大なものだ。(^^)
という結果を受けて、であれば完対DCマイクの方も出力に47Ωをシリーズに繋げば容量負荷耐性が高まるのではないかと素人は考えたりするわけだが・・・(^^;
ざ〜んねん!ながらそうは問屋が卸さない。(^^;
容量が大きくなるほどに高域のオープンゲインが小さくなってしまうのは同じで、これは本質的な回路形式からくるものなので小手先の手法では何ともならないのである。
と、言うわけで、完全対称型DCマイクとGOADCマイクではどちらが優れていると言えるだろうか? という命題にはどう答えるべきか。
私見になるが、もし完全対称型DCマイクの音がGOADCマイクと同等であるならば、完全対称型DCマイクには存在価値はない。というぐらいGOADCマイクの方が優れている。と言うべきだろう。
完全対称型DCマイクは、負荷条件の汎用性が低く、本来マイクのごく近くに録音機を設置して使用すべきマイクなのである。これに対してGOADCマイクはかなり汎用性が高い。アマチュアがプライベート録音に使う位の普通の用途ではどちらでも実質差はないと思うが、より業務的に負荷インピーダンスや負荷容量などが厳しいヘビデューティな用途となると、完全対称型DCマイクは全く向いていない。
多分、真空管DCマイクはさらにそうだろう。
したがって、これらDCマイクの存在理由はただ一つ。“音”以外にない。
が、この点は他のDCマイクを持っていない私には判断のしようがない。ので、悪しからず。(爆)(^^;
(おまけ)
完全対称型はGOAのようにバッファを持たない回路形式である。
だから完全対称型は、それぞれの想定負荷インピーダンスによって専用設計が必要だ。
完全対称型DCマイクも、より低インピーダンスの負荷まで想定し、より大きな容量耐性まで持たせたいということであれば、それに合わせた設計が必要になる。
って、そんな大それたことを私ごときがやってもしょうもないのだが・・・(^^;
NFB回路のインピーダンスを1/10にして低インピーダンス負荷対応能力と容量耐性のアップを図ろう。この場合でも所要のNFB量が確保できるように2段目差動アンプの電流帰還抵抗を廃してオープンゲインを確保する。これで2段目差動アンプの出力インピーダンスは低くなってしまうという懸念は無用で、受け側の終段負荷抵抗も51kΩ以下から5.1kΩ以下に低下するので問題はない。この最低限の変更で低インピーダンス負荷対応能力と容量耐性のアップを図る。
早速その特性を観る。
負荷rval=100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩの場合のパラメトリックシミュレーション。
オープンゲインは、負荷100kΩの場合82dB、負荷10kΩの場合80dB、負荷1kΩの場合70dB、そして負荷100Ωの場合51dB。
ループゲイン≒NFB量は、負荷100kΩ44dB、負荷10kΩの場合42dB、負荷1kΩの場合でも32dB、負荷100Ωの場合は14dBであり、ループゲインが0dBに沈むポイントも負荷1kΩまでは1MHzを確保している。
クローズドゲインも負荷100kΩから1kΩまでならば38dBの設定値を確保している。
さすがに負荷100Ωの場合は36dBに下がってしまう。
と、これなら負荷1kΩ以上で十分な実用性を持つ完全対称型DCマイクになりそうだ。
容量負荷耐性はどうか。
cval=100pF、1000pF、10000pFの場合のパラメトリックシミュレーション。
なお、この場合2段目差動アンプの例の箇所に2pFを入れて位相補正してある。
基本的には完全対称型なので、負荷容量に比例してオープンゲインとループゲインがより低域から低下を始めることに変わりはないが、それでもオリジナル状態よりはそれが大分高域に移動しており、結果ループゲインが0dBに沈むポイントはパラの容量負荷が10000pFでも300kHzとなっている。から、まぁ、なんとか10000pFの容量負荷に対しても実用範囲になったと言えるだろうて。
と、まぁこの設計でそれなりに汎用性は高まるように思うが、実際に作って試した訳ではないので果たしてこのシミュレーションどおり上手く行くかどうかは知らない。し、肝心の音がどうなのかなど一切分からない。ので、悪しからず。(^^;
(2006年11月12日)