ブライヤーの謎

パイプの原料となる エボーションやプラトーはどのように作られるか ご存知ですか?
日本パイプクラブ連盟会誌 に ブライヤーの産地の一つである イタリーのリボルノに柘氏が
尋ねたコラムがあった。 レポートで述べられている出荷までの工程を簡単に述べると





ここで一つ疑問に思う事がある約24時間の煮沸 この工程で一体原木に何がおきるのか?
と疑問に思い数年前図書館に行き いろいろな研究論文や参考になる本を読んだ。
ここで煮沸に関して特記した論文を見つけてあったのだが あくまでも推論となってしまうを
留意していただきたい。 又最近 キュアリングしてないパイプは生の木というような誤解を
招くような事をいう方がでてきたのでHPに記載する。


疑問1、煮沸は木材に対しどのような効果を与えるのか
  1,あく・樹液を水分と置換する。後の乾燥で重要
  2,煮沸により木材の生を抜き 後の変形防止をおこなう。
  3,煮沸により木材の組成リグニン・へミセルロース・セルロースのうちヘミセルロースを
   アクと樹液と共に溶脱させる。セルロースとヘミセルロースは共に細胞壁を構成している
   多唐体であるがヘミセルロースの方が分解されやすい。
   これにより細胞膜は薄くなりより多孔質なものとなる。
   下の写真は、赤松の断面を、80度で煮沸時間と共に電子顕微鏡で観察した結果だが
   煮沸時間が長いほど細胞壁膜が減少し孔が大きくなる結果がでている。
  4,下に煮沸条件によるブリネル硬さ調査結果を示す。
   煮沸時間4時間、120時間のどちらにおいても処理温度の増加により硬さは減少する事がわかる。
   注目してもらいたいデーターは白抜き○と白抜き▽です。
   80度以降では、煮沸時間120時間の硬さが著しく低下しておりこれは細胞壁膜が現象したことによる。
   一方80度以下では 4時間、120時間とも硬さの減少はみられない。
   ブライヤーの煮沸では、生抜き アク抜き・樹液抜きが目的なので高温で煮沸していると考えます。

    写真1、煮沸時間と細胞

   a:煮沸前 b:48時間煮沸後 c:120時間煮沸後
    写真2、煮沸時間とブリネル硬さ


これらから同じ木材でありセルロース・リグニン・ヘミセルロースからなる ブライヤーでも
同じ事象がおきていると考えられる。
つまりエボーションやプラトーは煮沸により  後の変形防止  あく抜き・樹液抜き
孔が大きくなることによる多孔質へ(吸湿性が良い) また孔が大きくなる事により塗料の
浸透性もよくなり塗料がのりやすなる。
硬度が落ちることにより快削性の良い性質に改質されていると考えられます。
 参考ですがパイプ会誌に載っていた煮沸している大がまの写真です。

ぐつぐつと煮ているのでしょうか手前に水を補給するホースがみえます。


このように作家なりメーカーが作っているパイプというのは決して生ではない と言う事。
生だったら吸っているうちに変形や樹液の染み出し 木ヤニが でてきて製品として成り立ちませんよね。

2、アルジェリアンブライヤー?

さてここで前から思っている疑問だが 良質なブライヤー=アルジェリアン産 という方がいる。
これを疑問に思っている。 同じ種類 同じDNAを持つ樹木なのになぜ?  
何が違う? 例えば同じような緻密さを持った木目を持つ 
イタリー産 ギリシャ産 でどこが違う? パイプの出来不出来は関係ないのか?
喫手の技術・体調は? 美味いOBパイプ=アルジェリアン産 それ以外は・・・・ 
全くもってナンセンスだ。 せめてアルジェリアン産のブライヤーはほかの産地よりも
煮沸時間が長かったなど 具体的な事象を挙げてもらえれば少々信じるのだが・・・・


3、キュアリングって・・・・

キュアリングについて 作家やメーカーの中には さらに美味しくする為の手法として
オイルキュア等をおこなっていますね。
有名なのがダンヒル社で1960年以前までは行なっていたようです。
このオイルキュアリングと呼ばれる物ですが 煮沸を更に進めた形になると考えてます。
つまり更にヘセミロースの溶脱を進め 孔を大きくし 又樹液等のあく抜きを
進めるわけです。この結果 パイプは更に吸湿性が上がります。
つまりスポンジ化が進む。 ここで忘れてはいけないのは、上記の硬度低下による
快削性の向上があるわけですが 反対にはこれは脆弱性という弱点も生みます。
数年前 フレスコワールドでフレ爺がダンヒルの秘密と言う記事(今は削除されています) の
中でダンヒルパイプは、スポンジのようで削りやすかったという事を言っていました。
つまりオイルキュアされたパイプというのはこの辺の事と結びついているように考えられます。

4、所見
さていろいろとつづってきましたが 数年前にはこの記事は書けました。
なぜ今まで書かなかったのか? なんだかんだとスポンジのような工夫しようが
美味しく吸えるような 煙道をつくろうが 過燃焼でジュースだしまくりでカーボンならぬ
タールをパイプにつけるような下手糞 喫手が使っても糞の蓋にもならないと思ってたからです。
つまりパイプに負けないくらいな多孔質な良質なカーボンをつける事ができ
ジュースをさあまり出さない 上手な喫手ならばより工夫されたパイプというのは、
その力を発揮するのでしょうね。
どんな道具を使おうが使い手次第という結論を出していました。
但し各々がその喫方が良いという方法が一番なので上記のようにパイプはこうあるべきだと
なってしまう記事になるのが嫌で書くのをためらっていました。
結局どんな喫方でいろいろなパイプを吸うのは自由なので自分のスタイルを持って
楽しめというのが私の所見とさせていただきます。