3dB/oct. filter(ホワイトノイズ−ピンクノイズ変換回路)


 LPFにせよHPFにせよ、1次のフィルターでは信号が減衰する部分(ロールオフ)の傾きは、(f0あるいはfcから離れた周波数のところでは)どれも6dB/octとなります。つまり周波数が2倍または半分になるごとにフィルターを通した出力“電圧”も2倍または半分となるわけです。
 2次のフィルターではこれが12dB/oct、3次のフィルターでは18dB/octと、6dB/octの整数(次数)倍になり、その中間値は有り得ません。
 しかしオーディオなどの特定分野の用途には、3dB/octの減衰特性をもつフィルターがほしい場合があります。例えばピンクノイズです。ホワイトノイズはどの周波数帯域でも均等なエネルギー(スペクトル)をもっていますが、ピンクノイズは周波数の高い部分ほどスペクトルが低くなっており、その傾きは3dB/octです。つまりピンクノイズは、周波数が2倍になるごとに“エネルギー”が半分となるランダムノイズなのです。
 ピンクノイズはオーディオルームの音響特性を測るときに、便利な信号源となります。これを音にしてオーディオルームに放射させ、マイクでとらえた音圧レベルをBPFで各周波数帯域ごとに読み取れば、その周波数特性(伝達特性)がただちに測定できるからです。
 もし信号源(音源)にホワイトノイズを使うと、通常BPFのQはどの周波数でも一定となるため、中心周波数f0が高くなるほど通過帯域幅が広くなり、より多くの音のエネルギーをBFPが通すことになって、音圧レベルの周波数特性が正しく把握できません。
 そこで周波数に反比例して含むエネルギーが減少するピンクノイズを信号源(音源)に用いておくと、過不足を補償しあって具合がよいことになります。
 ピンクノイズを作り出す手軽な方法は、3dB/octの減衰特性をもつフィルターにホワイトノイズを通すことです。しかし通常の方法では、こんなフィルターは作れませんので、小細工が必要です。

 上図をご覧ください。これは通過帯域が3dB/octの傾きになっている実用的なフィルターです。
 フィルターの原理はオーディオイコライザーアンプと似たようなものですが、減衰特性を3dB/octにするために、負帰還部分に入れる回路網を定数の異なるC-R直列回路を多段並列接続によって構成し、各周波数でフィルターとしての減衰が少しずつ効くようにしてあります。こうすることによって、だましだまし減衰特性を3dB/octに近似しているのです。
 次図には、抵抗に±5%の誤差のものを、コンデンサに±10%の誤差のものを使用したときの特性実測例を示しました。理想的な3dB/octの傾きからの離脱の程度(偏差)は、オーディオ帯域においては±0.5dB以内に収まっているようです。

 この実験のあと、理想的な3dB/oct特性にいっそう近いC-R回路網の定数を数値計算で調べてみたら、表のような結果になりました。
抵抗[kΩ]コンデンサ[F]
510none
5100.01μ
2200.0047μ
1000.0022μ
430.001μ
18470p
8.2220p
none100p
 使用部品に誤差がないものとすると、次図のように13Hz〜28kHzの範囲において、理想特性からの偏差(電圧換算)は±1%以内に収まります。

 30kHzより周波数の高いところ(100kHzあまりまで)では理想特性より高めの電圧が出ますが、実際のOPアンプを使った回路では、このあたりで周波数応答特性が悪くなりはじめ、出力が多少落ちてきますので、キャンセルしあってちょうど良いくらいかもしれません。
 位相はオーディオ帯域全体にわたって、ほぼ均等に45度遅れます。数値計算上は、100Hzの少し手前から20kHzあたりまでで43〜45度に収まる結果となりました。
 なお、数値計算でさらに精密な3dB/oct特性になるようなC-R回路網の定数を調べたら、下図のような回路になりました。この回路はホワイトノイズを正確な3dB/octフィルタで理想的なピンクノイズに変換するものです。参考まで。