我が家の漬けものは数が多い、瓶、かめ、樽などで1年中漬けこみ最高の時を戴く、毎日違った素材を戴くなど味わい
深く、楽しみ、この楽しみはお友達、親戚、の食卓に鎮座お邪魔し、時には我が家の漬け者たちは、確り、旅支度させら
れ空を飛び本州、九州の友、知人のお家に日頃の御無沙汰のお詫びにお伺いしたり、その他にも色々、漬けもの達の役目
は大です。
長い間、漬けものは漬け続けていますが、漬けものほど思い道理にいかないものは無い毎年毎月漬けても完成されたと云
えるものは滅多にない、一日違っても味も食感も違ってくる、漬けものを漬けてから、たった−日だけ最高の味の時が有
る。その瞬間その時に巡り合うのは、漬け手の本人、もしくはその家族だけではないでしょうか?
その時をおえたら人の一生の様に毎日時間亥りみで味も食感も衰えてゆくのです。
大袈裟に云う様ですが50年ほどの漬けもの歴を振り返る時、漬けものは一家のホームドラマみたいなものだと思います。
季節、温度、日数など、楽しめる半面漬け始めの三日間は気が抜かない様に、こまめにチェックしなければいけません。
兎に角漬けものは日 数、温度、がポイントどころでしょう。北海道は雪国ですので寒さが厳しいのでその対策も大変に
なって来ます。シバレ(凍ると云う北海道弁)ないように冬季には、羽毛布団を何枚もかけて、守ります。沢庵漬けなど
は、一度大根に氷が入り、食卓で溶けたら家族で大根にあらず、この姿は蓮根ダァー何て言われ、羽毛布団は冬季の漬け
ものには欠かせないアイテムの一つです。
北国の四季に採れる多様多彩の野菜の採りたてを、塩分ほんのわずかで漬けるものは2〜3日分、漬け床用の物は時間
短縮で漬けたり、伝統的な月時込みのものは、塩分を控えじっくりと漬けこむ、一年を通して時期のモノ、梅漬け、ラッ
キョウ、ピクルス、ニンニクの酢漬け、今年の出来はどうなの?と自問自答を繰り返して五十年余りが過ぎました。振り返
り思う時、亡き母が秋が深まると手を真っ赤にして、一週間がかりで、一冬中の色々な漬け物を、(むろ)、−杯に漬けて
いました。
母の漬けものは、雪に閉ざされる田舎の(東藻琴村〜昔は町ではなかった!)蓄えの為の保存食のせいか、野菜だけに
あらず、イクラ漬け、鮭の焼き漬け〜これは大きなカメで醤油と砂糖の煮詰めたとろりとした漬け液に網焼きした鮭の切
り身を(外で焼いていた)熱い内に漬け込むため何度も外とむろの間を往復していた、働き者の母の姿とそれらの御馳走を
何カ月もの雪解けまで美味しく飽きもせず食べた、子供の頃を思い出されます。
母の数知れない漬け物の、見よう見まねで漬け物の年月を重ね、量こそ少ないのですが親と同じ事をしている私がいて、
千の風の母が笑いながら見て居るかも知れません。
能正郁子拝
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