聖書のメッセージ


2016年2月28日(日曜)

受難節第3主日礼拝
北千住教会 持田嗣生牧師

「ペトロが否んでも」
聖書 ヨハネ18章12−27節


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   シモン・ペトロは立って火にあたっていた。人々
 が、「お前もあの男の弟子の一人ではないのか」と
 言うと、ペトロは打ち消して、「違う」と言った。
 大祭司の僕の一人で、ペトロに片方の耳を切り落と
 された人の身内の者が言った。「園であの男と一緒
 にいるのを、わたしに見られたではないか。」ペト
 ロは、再び打ち消した。するとすぐ、鶏が鳴いた。
       ヨハネ18章25−27節 聖書・新共同訳
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 12−13節に「一隊の兵士と千人隊長、およびユダヤ人の
下役たちは、イエスを捕えて縛り、まずアンナスの所へ連
れて行った。彼がこの年の大祭司カイアファ(AD6-15年大
祭司在位)のしゅうとだったからである」とあります。ユ
ダヤでは大祭司が最高の政治的、宗教的指導者でしたから、
アンナスの所へ連行されたことは異常なことでした。アン
ナス自身も5人の息子も大祭司になり、彼は退任後も大祭
司の称号を持ち、また神殿のいけにえの屋台は「アンナス
市場」と言われていましたから、彼は強大な権力を持って
いました。
 主イエスはそのような神殿を『わたしの父の家を商売の
家としてはならない』と言って、2章13節以下にあるよう
に実力行使をされたのですから、アンナスは主イエスを捕
えて殺そうとたくらんでいたに違いありません。 
 アンナスが主イエスに弟子のことや教えについて尋ねる
と、主イエスはご自分が世に向かって公然と話して来たこ
とを告げ、それを聞いた人々に尋ねるがよい、と言われま
した。アンナスは主イエスの言動を知った上で殺すために
捕えたのですから、改めて尋問する必要はなかったのです。
するとひとりの下役が、大祭司に対してそんな返事の仕方
があるか、と言って、主イエスを平手で打ちました。こと
の推移を充分知らない下役はこのようにしたのでしょうが、
主イエスは『何か悪いことをわたしが言ったのなら、その
悪いところを証明しなさい。正しいことを言ったのなら、
なぜ私を打つのか』と言われたとあります。主イエスは父
が備えられた十字架への道を忠実に歩まれますけれども、
アンナスに対してもまた下役に対しても、主イエスご自身
との真実な関係において振る舞うように問いまた求めてお
られます。
 ペトロは大祭司の知り合いのもう一人の弟子によってア
ンナスの庭に入りますが、女の門番が『あなたも、あの人
の弟子のひとりではありませんか』と言うと、ペトロは
『違う』と言い、次にそこにいた人々が同じように言うと、
ペトロは『違う』と言い、更にペトロによって片耳を切り
落とされた人の身内の者が、『園であの男と一緒にいるの
を私に見られたではないか』と言うと、またペトロは否認
し鶏が鳴きました。ペトロは主イエスが最後の晩餐の席で
言っておられた通り、主イエスとの真実な関係を否定しま
した。ペトロの命は主イエスとの真実な関係を成り立たせ
保持するためには無力でした。しかし主イエスは『後につ
いて来ることになる』と、ご自身の恵みによってペトロが
主との真実な関係に生きる者とされることを告げておられ
ます。
わたしたちも、自分で主イエスとの真実な関係を成り立た
せることは出来ません。しかし主は恵みの御業によって、
ご自分との真実な関係に生かすお方だと告げられています。