聖書のメッセージ


2015年08月30日(日曜)

聖霊降臨節第15主日礼拝
北千住教会 持田嗣生牧師

「あなたを罪に定めない」
聖書 ヨハネ8章1−11節


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   これを聞いた者は、年長者から始まって、一人ま
 た一人と、立ち去ってしまい、イエスひとりと、真
 ん中にいた女が残った。イエスは、身を起こして言
 われた。「婦人よ、あの人たちはどこにいるのか。
 だれもあなたを罪に定めなかったのか。」女が、
 「主よ、だれも」と言うと、イエスは言われた。
 「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。
   これからは、もう罪を犯してはならない。」〕
           ヨハネ8章9−11節 聖書・新共同訳
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 イエスが神殿の境内で民衆を教えておられると、律法学者
たちやファリサイ派の人々が、姦淫の現場で捕えられた女を
連れて来て『この女は姦通している時に捕まりました。こう
いう女は石で打ち殺せとモーセは律法の中で命じていますが、
あなたはどう考えますか』と詰問しました。これは訴えるた
めの口実であったとあります。ユダヤ人指導者たちは以前か
らイエスを殺そうと機会を狙っていました(5章参照)。
 イエスがもし、『律法通りにこの女を石で打ち殺せ』と言
われれば、イエスの告知する神の恵みの福音は有名無実だ、
と言うでしょう。他方、もし『この女を開放せよ』と言われ
れば、律法を破ったと言って訴えるでしょう。
 その時、イエスは屈み込んで指で地面に書き始められたと
あります。すると彼らがしつこく言い続けるのでイエスは
『あなたたちの中で罪を犯したことのない者が先ず、この女
に石を投げなさい』と言い、また身をかがめて地面に書き続
けられたとあります。すると年長者から一人また一人と立ち
去り、イエス一人と真ん中にいた女が残ったとあります。ど
うしてこんな事態が起こったのでしょうか。
 神殿の境内は石の板を敷き詰め、石畳となっていました。
通常、石畳に何かを書くときには決して指で書いたりはし
ません。そんなことをすれば、皮膚が破れ出血します。こ
の主イエスの仕種については、わたしたちは一つのことだ
け知っています。それはモーセによって与えられた十戒は、
神がご自身の指で石の板に記してモーセに渡されたと言う
ことです(レビ記20:10.申命記22:13-24参照)。イエスの
この仕種は神がモーセによって与えられた律法(十戒)を指
し示していました。そこには姦淫してはならない、殺して
はならない、隣人のものを欲してはならない等など記され
ていました。そこにいた人々は十戒により自分の罪を示さ
れて、この女を裁くことは出来ない者であることに気付か
され、その場を去って行ったのでしょう。主イエスのおら
れる所では、人が人を裁くことはなくなったのであります。
 しかし人間同士のことですべてが終わるわけではありま
せん。主イエスを遣わされた神はどうされるのでしょうか。
イエスは言われました。『わたしもあなたを罪に定めない。
行きなさい。これからは、もう罪を犯してはならない。』
主イエスはこの女に罪の赦しを与え、同時に、『再び罪を
犯すな』と言い、この女を主イエス・キリストにあって、
罪との戦いに勝利する新たな生活に導かれたのでありまし
た。
 わたしたちも、主イエス・キリストによる罪の赦しの喜
びに与り、更にキリストにあって罪に勝利する希望の生活
へと導かれているのであります。この主にある喜びと希望
を感謝し、共におられる主にある歩みに勤しみましょう。