鉱泉と鉱山跡
高さ46mの観音像のようなローソク岩は、
それこそ観音岩とも呼ばれ、積丹付近は奇岩が多い。
海岸付近でも山から近く、
川幅は狭い。
林道を歩くと余別岳へのベースキャンプとして、
山小屋が現れる。
しかし夏道の登山道は無く、山小屋もほとんど使用されていないようだ。
やがて林道は完全廃道となる。
ここからはGPSに従っての藪漕ぎとなる。
左手からは小川のせせらぎが終始聞こえる。
イタドリや藪のトンネルを歩く。
湿気が多く、藪に逆らわないように歩く。
この先の工程のほうが遥かに長い。
足元にはきのこが群生している。
先が見えないので、足元ばかりに目が行く。
朽ちた木橋がある。
森林軌道やトロッコの橋のような雰囲気がある。
突然、廃道が途切れた平場に、
何か遺構がある。
近づいてみよう。
桶のようなバスタブのような、
そしてパイプから水が流れる。
これは温泉跡だ。
地形図にも載らない謎の遺構だ。
片方のバスタブは空で、
もう片方にはパイプからランダムのリズムで、
水が流れ出ている。
バスタブ内は赤黒く、湯の花が堆積している。
水の温度は冷たくとても入れる温度ではない。
水は少しの硫黄臭がありとても塩辛い。
再び激藪を歩き、
左岸を目指す。
ようやく河原に到達した。
ここからは沢登りとなり、
更に上部を目指す。
中流域だろうが、岩は大きく深いところもある。
慎重にルートを選びながら登る。
しばしゴーロが続く。
水は冷たいが、天気がよく
スラブでは寝転んで休憩した。
緑の木々の間から、
空を見る。
遡行日和だ。
大岩の連続する巨岩帯に来た。
突然崩れるような岩も無く、
また苔も所々しか生えていない。
河原に腐食した50A程度のパイプが埋もれる。
ようやく、第一の遺構だ。
右岸〜左岸と何度も渡渉しながら歩く。
この付近でも標高は300m程度。
目指すポイントは450m付近。
すこし川幅も狭まりゴルジュとなった。
青々した水面はかなり深い。
崖をへつりながら、上流を目指す。
深い淀みを避け、草付の部分を歩く。
鹿道も無く、魚影も見えない。
甌穴(おうけつ)とも呼ばれるポットホール。
ここは珍しくダブルだ。
岩の脆い部分が長年の渦流によって侵食された跡だ。
こちらはより顕著な円形の甌穴だ。
小石が水流でグルグルと岩を削り、
やがてできた自然の造詣だ。
川幅は変化し、再び少し広がった。
鉱泉から1.5時間で、
標高400m付近まで来た。
オーバーハングの大岩と、
その奥に何かが見える。
穴のようだ。
崩れかけた岩肌に穴が見える。
近づいてみよう。
小さな穴だ。
人も通れなさそう。
謎の穴は地上2m付近にあり、
元はもっと長かったようだ。
度重なる侵食でトンネルだけが露出したようだ。
水路なのか内部にはレイルも無く、
しかし、明らかにトロッコ軌道のためのようだ。
長さは5m程度で、
流れた大木が貫通し通り抜けは出来ない。
付近にはRCの塊があり、
ヒューム管の水路が崖を這う。
ダムか水路の施設があったのかもしれない。
ダム跡上からゴルジュとなり、
F1が現れる。
高さも無く、左岸をへつる。
CSを越えるとF2に接近する。
水量は多く、
深みが多い。
F2をへつる。
深い。深さ2.3mはありそうだ。
ほとんど懸垂状態で登る。
再び配管が落ちている。
やはり鉱業がかつてあったのだ。
今度は右岸をへつる。
谷はルンゼのように狭くなる。
平場がほとんど無くなった。
石垣らしき遺構があった。
こんな山中に・・・。
水嵩は変わらず、
谷間で流れは速くなる。
もう少し登ってみる。
巨岩の間に発見したレールの遺構だ。
これは軌道に痕跡で間違いない。
付近には辛うじての平場もある。
更にレールが残る。
異常に曲がっているのはどこか上流から流されて来たからだろう。
6s級のか細いものだ。
チョックストーンの先に車輪らしき遺構があった。
自転車や二輪車ではなく、
紛れも無くトロッコのものだ。
埋もれた長い車軸にディスクブレーキらしきフランジと、
チェーンとそのテンショナーらしき部材。
鉱石を積み出していたのは間違いない。
フックのついたねじりコイルバネがある。
線形は6o程度もありかなりの荷重が掛かったのかもしれない。
深い山中の自然に合わない風景だ。
長い遡行の果てにたどり着いた、
かつての遺構。
鉱山は確かにあったのだ。
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