洞内湿度82%
坑口を入ってすぐ、
上部が土圧により大きく湾曲している。
ここまで大きな変形は珍しい。
入坑から足元にはレイルが。
軌間は510mmのナローゲージだ。
やがてレイルは蒼い水に水没し、
この蒼い水は終始続く。
側面にはサクションホースが配置してある。
支保工の中、水没しながら歩く。
水嵩は脛まである。
坑木にはカビが育つ。
鋼製の支保工と坑木が組み合わさる。
鋼製の支保工は後で付け足したのかもしれない。
坑木の腐食は激しい。
所々は岩石が崩れている。
これだけ水が多いのは岩盤が弱いのかもしれない。
崩れた岩石が鋼製の支保工さえ押し曲げる。
坑道自体は平和に続く。
脇には腐食した箱があった。
トロッコなのか塞がれた横坑なのか。
少し進むと、突然白い支保工が現れた。
何だこれは。
これはどうやらカビの一種で、
ブラブラと垂れ下がり、嫌に柔らかく匂いは無い。
かなりグロいが、突き進む。
坑内は急に水滴が雨のように降り出した。
上部に水源があるのか、
夏だと言うのに非常に寒くなってきた。
坑内面には杭が多数打ち込まれている。
ロープやワイヤー、照明を吊るしたのか。
側面にはやたら垂直な部分がある。
多くが鋭利な岩石面なのに、
ここだけは壁のようだ。
坑道は続く。
すでに50m越。
(カーソル画像上で実際明度)
足元は相変わらず蒼い水で、
白い藻のような陰がある。
硫黄臭は無いが、水温は冷たい。
梁のように天井に係る坑木。
土圧で変形し、
もうその役目は果たしてないようだが。
またもや垂直な坑内面が続く。
蒼い川は深く、
処により膝下まである。
進むと坑内分岐があった。
分岐の先は閉鎖され、大きな水槽のようなプラントがある。
足元には黒い糸状の藻が発生している。
少し進むとコウモリが群生している。
結構な密度だが、今は先へ進む。
本坑は直進で続く。洞内距離150mを越え、
掘削坑と位置的には同じ付近まで来たはずだ。
但し標高差は50m以上あるようだ。
現在の気温13℃。
湿度は82%。
季節は夏の盛りだが。
蒼い川がレイルを跨ぐ。
結構な水量になってきた。
この先で再び左へ坑内分岐する。
分岐の先は水没した静かな掘削坑だった。
自ら泥で塞き止めたダムで、
水深は50cm以上ある。
ここから本坑はやたら湾曲する。
レイルのRは小さくなり、
クネクネと続く。
レイルの曲がりに沿って歩く。
頭上の赤いマーキングは、
所々の吐出した岩石面の注意マークだ。
コウモリが飛び回る。
このコウモリは羽根音も無く静かに飛ぶ。
いつのまにか太いサクションホースは無くなり、
更に坑道は続く。
坑内面の随所には鉱石が光る。
主に天井面にチャートがある。
およそ坑内250mを越えて、
複線も可能な太い坑道となる。
その後は急激に細くなり、
しかしまだまだ続く。
先ほどのは退避坑部分だったのかも知れない。
坑道は続く。
すこし空気の流れが静かになってきたようだ。
奥には更に続く。
安全のため、出っ張った天井面には、
赤いマーキングがある。
でも、何度か頭を打ってしまった。
コウモリが密集している。
騒ぐことも無く、
みなさんぶら下がっている。
キクガシラではないかわいい顔のコウモリ。
ブルブル震えている。
空気は澄んでいると勝手に安心する。
少し触れると暖かく、毛に覆われている。
「キーッ!」と鳴いて飛び出した。
鉱水の鍾乳石が伸びる。
色は赤く、長さは200mm程度はある。
空気の淀んだ300m付近で撤退を決める。
坑道はまだまだ続きそうだ。
よくぞ残存した通洞坑。
こうもり達にとっては安住の地。
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