崩れる氷筍たち
都市部の積雪がゼロとなったこの時期でも、
峠付近はまだまだ冬季閉鎖の道路も多い。
夏路の無いヤマはこのような積雪期のアタックがベストだ。
今回は標高300M付近から一気に登る。
もちろん道は無く、スノーシューを履いてのアタックだ。
ここから約1.5時間の登攀となる。
ひたすら登り、そしてこの風景の中に廃祉がある。
残雪も多く、カンを働かせて、
沢沿い、そして斜面に目を凝らす。
崖を巻きつつ、発見したのは岩盤の裂け目だ。
鉱山の中心からやや西にある。
果たしてその正体はただの崩れた痕跡なのだろうか・・・。
岩の裂け目は埋没せず、少し続いているようだ。
坑口から落ちる雫により氷柱が形成されている。
少し潜りこんで、自然の洞窟か人工的なものか見定めてみよう。
入坑するや否や、そこは高さ1Mもない隧道で、
未だ洞窟の可能性も捨てきれない。
続く奥には少し光が漏れている。もう少し進んでみよう。
そして数M進むとそこには太い坑木が・・・。
これは紛れもなく、鉱山の坑道跡だ。
しかも付近には小さな氷筍が散らばる。
小さな氷筍である。
その左数Mで本坑は貫通しているので、
恐らく気温が高く、あまり氷筍も巨大化しなかったのかもしれない。
朽ちた坑木の先で、本坑は激しく埋没している。
坑口を2か所持ち、Y字型に掘り進められた坑道が、
埋没して対面する坑口2か所だけを残して風化したようだ。
坑内から入坑口付近を望む。
高さが無く、ずっと中腰での探索は非常に苦しい。
そろそろもう一方の坑口から出坑しよう。
もう一方の坑口は北面で、
降雪が流れ込んでいる。
動物の足跡が多数ある。
吹き込んだ降雪を乗り超えて、
外界へ脱出した。
出口は入口と10M程度しか離れていない。
ここからは更に西面を目指す。
一部、かつての鉱山道路のような平場があるが、
基本、廃道だ。
急な斜面を見下ろす。
この東の谷間も鉱床のはずだが、切り立った崖が少し見える。
登れることを確認した後に、一気に滑り降りる。
下った先には岩場の亀裂がある。
内部が続いているのか、人工的なものか、
見定めるために入坑してみよう。
入坑するとそこは狭い窪みで、
人工的な感触は少ない。
しかし、少し奥に続いており、試掘跡かもしれない。
内部には降雪に埋もれた氷筍がある。
岩盤は人工的に掘削したようにも見えるし、
自然の洞窟のようにも見える。
つららの垂れさがる坑内を登る。
付近はオーバーハングに崖が崩れている。
やはり人工的なものかもしれない。
氷筍の点在する坑内。
内部は深く続いておらず、
斜面に並行しての穴となっている。
氷柱を避けて、
外部に脱出する。
更に上流部を覗いてみよう。
谷筋には数本の沢があり、
時には遥か下でスノーブリッヂとなり非常に危険だ。
スノーシューを斜面にめり込ませて、滑落しないように北面を目指す。
遥か下部の渓流沿いの斜面に何かある。
よく見ると黒い穴のようだ。
しかもかなり大きいような気がする。
マウスon
苦労して下るとその穴は非常に巨大なものだった。
しかも内部には巨大氷柱が存在する。
内部はどうなのだろう。果たして渡渉できるのか・・・。
足元の積雪は岩場に被さったブリッヂでしかなく、
いつ崩れるかもしれない。そして川面までは3m程の高さがある。
ザイルを張って降下してみよう。
巨大坑道に向けて降下を開始する。
雪の斜面に段差を造り、
ザイルを頼りに少しずつ下る。
かなりの時間をかけ、ようやく川面に降り立った。
見上げる坑道は大きく、
滝のように多量の融雪の雫が舞い降りる。
数段に分かれた坑口には、
氷柱と氷筍が重なり、そして内部には更に穴が続いている。
これは紛れもなく人工的な坑道跡のようだ。
巨大氷筍と思えた塊は氷柱が落雪したものだった。
大きな氷筍が林立し、
その上段には不気味な黒い穴が続く。
右手の上段には氷筍の森が広がる。
ここのものは大きく成長し、
背丈程ある。
氷筍が続く。
滴る雫で溶けつつもある。
氷筍の時期としては限界なのかもしれない。
汚泥の斜面を登り、上部に続く坑道を目指す。
脇の氷柱を見る余裕もなく、
やたらと崩れやすい斜面の謎はこの後、解けることとなる。
登りながら坑口付近を見下ろす。
解けつつある氷筍たちを見ながら、
更に上部に登る。
登りきった上部にはなんと地底湖が存在した。
自然のダムで堰き止められた高い位置に存在する地底湖。
驚きの光景だ。
坑道内には動物の頭蓋骨が落ちていた。
キタキツネだろうが、
なぜか坑道内にはよく落ちている。
洞内湖は水深2m近くもありそうで、
とても進むことはできない。
このホールは小体育館程度の規模があり、天井も高い。
再び崩れやすい斜面を降下する。
ここは言わばフィルダムの堰堤のようなもので、
どんどん崩れるのも無理はないかもしれない。
なんとか到達できた巨大坑口。
氷筍に地底湖、巨大氷柱と目白押しの探索だった。
再び道なき山中を下った。
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