地産地消の取り組みについて 〜現状・展望・そして食育との関係〜

                 (栄養士科) 河合 有香、佃 雅美、中尾 智美、                          藤岡 佳絵、宮本 真紀子、三好 周子                  (担当教員) 北村新藏 【目的】   現代の食環境は、流通技術等の進歩により様々な食材を用いて自由に料理を楽しめるようになった反面、生活習慣病  の増大や食への関心の低下などの新たな問題を抱えている。これに対して「地産地消」は、日本型食生活や伝統野菜の  復活といった観点から、豊かで健康的な食生活を取り戻すための重要なキーワードである。我が国では2005年5月に「  地産地消の促進を目指す行動計画」が策定、6月には「食育基本法」が制定され、国の個々に対する取り組みが本格的に  始まった。そこで、現在の「地産地消」の実践状況を調査すると共に、地産地消と食育との関わりについて考察するこ  とを目的とした。 【方法】   小学生までの子供を持つ保護者(総計270名、京都市内の保育園園児の保護者173名、その他地域の小学生までの子供  を持つ保護者97名)を対象にアンケート調査を実施した。統計処理はχ2検定で行った。 【結果および考察】   有効回答者数は270名、男女比は男性9%、女性91%、年代は20代14%、30代71%、40代14%、50代1%、出身地は都  市部74%、郡部26%であった。買い物をする時に産地を気にする69%、気にしない31%と、7割近くの人が産地に関心を  示していた。つぎに、地産地消の認知度について、地産地消を知っている15%、聞いたことがある25%、知らない60%と  認知度は低かった(図1)。また、地産地消を知っている又は聞いたことがある人のうち、地産地消に賛成87%、反対1%、  興味なし12%と、大多数の人が地産地消に賛成で、その理由は主に、生産者の顔が見えることによる安心や安全、鮮度が  よい旬のものが食べられる、食育につながる、地域の活性化につながるなどであった。反対又は興味なしの理由としては、  地元では生産できる品種が限られている、よその土地のものでも品質がよいものを食べたいなどが挙げられた。地産地消  を実践する上での障害としては、高価格、欲しいものが欲しい時に手に入らない、種類が少ない、農薬使用状況が不明、  都市部では入手困難などが挙げられた。そして、地産地消が食育につながると思う88%、つながるとは思わない5%、わ  からない7%と、食育とのつながりを感じている人は多数を占めていた。一方、地産地消を知らない人のうち、地産地消  に少しでも興味がある81%、興味なし19%、更に、地産地消を今後の生活に取り入れたいと思う77%、思わない23%で、  今回のアンケートにより地産地消を知り、これを肯定的に捉える人も多かった。       地産地消図1   地産地消図2   地産地消の実践度では、言葉は知っているが実践していない87%、実践している13%で、実践している人は少数であっ  た(図2)。実践方法は、地域の青空市やスーパーで地元産を選ぶ人が77%で大部分を占め、その他は自宅で飼育・栽培する  農家から直接買う、宅配サービスの利用などが挙げられた。  今回の調査において、地産地消の認知度や食育との関わりへの認識度について、性別、年代、出身地の違いによる有意差  は認められなかった。これはアンケートの質問内容が、回答者の年齢、性別等の違い以上に「食育を必要とする同世代の  子供を持つ親」と言う共通の立場に大きく反映されたことに因ると考える。地産地消という言葉の知名度は低いものの、  食物の産地を気にする人が多かったことから、国産品か輸入品かのレベルであったとしても、ある程度食に対する意識は高  まっていると思われる。また、地産地消が食育において、旬や食を取り巻く環境などを伝えるために大きな役割を果たすこ  とは認識されているが、価格面や入手困難なことから、現実には安価な輸入品にも頼らざるを得ないことがうかがえた。  地産地消の取り組みを普及させるために私達栄養士が出来る事として、まず認知度を高めることが重要であり、ブランド  野菜だけでなく、日常的に口にする食物を地元産で賄うことも地産地消であることをアピールしたい。地産地消が普及する  ことで、学校教育での食育だけでなく、家庭や地域を巻き込んだ食育環境の活性化が期待できると思われる。

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