高齢者における食生活の推移について          ― エイジングと食生活行動(外食)についての考察 ―

               (栄養士科)  坂口 真理子、上村 優佳、黒川 香織、高田 瞳                        松尾 今日子、松岡 梨絵、山崎 絵美                     (担当教員)  北村新藏 【目的】   現在、日本において世界に類を見ない高齢社会が進行しつつある。そして、加齢とともに消化器官の衰え  や歯を失うことにより咀嚼力が低下し、食嗜好が変化していくのが現状である。そこで、本研究では、高齢  者を主眼において、加齢による食嗜好の変化を聞き取り調査やアンケート調査等により調べ、高齢者の食嗜  好の特徴を若者と比較し、高齢者にとって適切な食事とはどうあるべきなのか栄養学的な見地からも、考察  することを目的とした。 【方法】   アンケート調査は、高齢者福祉総合施設ももやまおよび、在宅高齢者を訪問し計111名に行った。また、食  嗜好の特徴を若者と比較するため、本校の学生264名にもアンケート調査を行った。また、それらの結果をイ  ンターネットなどの資料を参考に、年齢に相応した食嗜好について考察した。 【結果および考察】   アンケート結果より、高齢者は若者に比べパン・甘いお菓子・肉・豆・卵・揚げ物を食べる割合が少なかっ  た(図参照)。   また、好きな食感については、高齢者45%の人が「やわらかい」に対して、若者では65.2%の人が「歯ごた          高齢者の食嗜好           図:高齢者と若者の摂食状況    えがある」という回答であった。それに比較して、高齢者は野菜・果物・塩辛いもの・牛乳・魚・海藻を食べ  る割合が多かった。そして、好きな味については高齢者55%、若者43.2%の人が「甘味」という回答で両者に  最も好まれていた。「辛味」については、高齢者5.4%、若者40.9%と回答に大きく差が出た。そのほかにも、  調味してある食べ物にさらに調味料をかけると回答した人は、高齢者に多かった。間食については、高齢者 1 1.7%、若者11.4%が「ほとんどしない」という回答で著しい差は見られなかった。  よく食べる間食の内容は、高齢者33.3%の人が「せんべい」に対して、若者では47.7%の人が「スナック菓  子」、42.8%の人が「チョコレート」という回答であった。  以上のことから、パン・甘い菓子については、やわらかい食感で好まれると思われたが、現在の若者と違いパ  ン・甘い菓子を食事として喫食しないため摂取量が低いと考えられた。豆・肉・卵などのたんぱく質を多く含  むものは咀嚼しにくく、淡白な味でないため高齢者はたんぱく質の摂取量が少なくなると思われた。同様に、  揚げ物についてもあっさりした淡白なものを好むため、脂質の摂取量も少なくなっている。野菜・果物・海藻  など繊維の多いものも咀嚼しにくく、不足傾向にあると思われたが、加熱調理することによって軟らかくなり  食べやすくなるため摂取量が多くなったと思われた。また、味蕾は加齢とともに萎縮し、数が減少するため味  覚が低下し食塩などを大量に使って味を濃くする傾向が見られる。間食についても脂質の多いスナック菓子や  チョコレートではなく、脂質が少なく味の濃いせんべいが好まれていた。時間をかけしゃぶっているかに見え  るせんべいもおいしさを回顧している食べ方だと考えられる。このことにより、高齢者には時間を急がせる食  べ方は禁物であることが考えられる。   前述したことを考慮した高齢者の食事は次のようなものと考えられる。咀嚼力や嚥下力が低下しているため、  噛み切れない・飲込む力が弱い・むせやすいなどの問題があるので、食べやすい大きさに切る必要がある。   しかし、あまりに細かく切ってしまうと、見栄えが悪くなり食欲も低下するので隠し包丁を入れるなど、見た  目を良くする工夫が必要である。

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