遺伝子組み換え食品についての考察

         (栄養士科) 辻 泰子  西野 沙奈衣  辻田 奈央子  中井 清恵                 鍋倉 恵美  増岡 保子  山本 愛子  吉川 友美          (担当教員) 北村新藏 【目的】   遺伝子組み換え食品とは、その作物が持っていない遺伝子を組み込んで新しい性質を持ったもの  に作り替えた農作物とそれを原料とした加工品のことである。遺伝子組み換え食品には、開発途上  国での食料不足を改善するといわれる一方、人体や環境に与える影響は、安全性が確認されつつあ  る現在でも未知数とされる部分が多いようである。そこで本研究は、遺伝子組み換え食品の大豆に  ついて調査することにした。大豆は、国内自給率わずかに4%で、輸入大豆が96%を占めている。   また、2001年4月には食品衛生法にて表示義務の対象食品が定められている。このような状況の  中、私たちの食卓に身近な食材である大豆製品の表示には「遺伝子組み換えでない」という表示ば  かりが目立つ。「輸入大豆はどこで使われているのか」「本当に遺伝子組み換え大豆は含まれてい  ないのか」という疑問を解くために、私たちは、大豆製品を製造している店では、日々どのような  意識で大豆を選択されているのかを解明することを調査の目的とした。 【方法】   京都市内の町の豆腐屋さん・味噌屋さん・醤油屋さん71件に対し、大豆に関するアンケートを実  施した。実施方法としては訪問によるヒアリング調査が、豆腐10店、味噌2店、醤油1店で、それ以  外の58件(内訳:豆腐40店、味噌11店、醤油7店)は郵送にてアンケートを依頼した。回収率は、全  体で47.9%であった。 【結果および考察】   アンケートは、製造側の立場から、大豆を選択する際に何を重要視されているかという観点から、  遺伝子組み換え大豆に対する関心がどのようなものかを問う内容とした。まず、「原材料の大豆を  選択する時に、重要視されるものは何ですか。」(複数回答可)という質問に対して、最も多い         遺伝子組み換え    「品質」27%についで、「遺伝子組み換えかそうでないか」が22%、「国産か輸入か」が14%であっ  た。さらに、「その中で最も重要視されることは何ですか」という質問では「品質」が34%、「遺伝  子組み換えかそうでないか」が21%、「国産か輸入か」が15%であった。そのなかで「遺伝子組み換  えかそうでないか」を最も重要視すると回答したうち半数が醤油屋さんであり、関心の高さを覗える。   国産大豆と輸入大豆の使用の割合は、「40〜69%」が全体で25%を占め、ヒアリング調査において  も半分ずつ使用しているという声がよく聞かれた。輸入大豆を「全く使用しない」という回答が21%  に対し、国産大豆を「全く使用しない」という回答は12%で、輸入大豆は実際に多く使用されている  ことがわかる。さらに、「遺伝子組み換え大豆を使用することはあるか」という質問に対しては、「  使用することはない」という回答が全体で94%を占め、6%に「時々ある」という回答がみられた。   その他、アンケート結果から、豆腐屋さん、味噌屋さん、醤油屋さんとも遺伝子組み換え大豆を使  用することへの抵抗感は強いことがわかる(図1参照)。   ヒアリング調査からは、大量に安定した大豆を仕入れるには輸入大豆の方が適しており、そのために、  契約農家との提携で遺伝子組み換えでない大豆を厳選して仕入れることが可能であり、逆に国産大豆の  方は、安定供給に不安があり、安価な大量生産の製品にも余剰の国産大豆は使用されているという現在  の大豆流通のしくみの一端を知ることができた。  今回の調査の結論としては、製品に表示されている「遺伝子組み換えでない」という表示は概ね信頼  できるものではないだろうか。背景にある貿易や流通のしくみが今後も遺伝子組み換え大豆の行方を左  右しており、大豆以外の遺伝子組み換え作物や加工品についても同様に、栄養士として関心を持って食  材の安全性を見極める視点を持ち続けていきたい。

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