スローフード運動の現状とその展開について
(栄養士科) 出田 絵梨奈、上地 慎也、下森 久美子 中森 愛、山口 真由、横山 一樹 (担当教員) 北村新藏 【目的】 最近、食生活の改善運動のなかで、ファーストフードに対して、スローフードが話題になっている。 本研究では、スローフード運動はどのような運動で、どのような経緯で生まれたのか、この新しい考 えがどれだけ知られているか、世界でどのように浸透しているかなどを調べ、栄養士としてこの運動で、 どのような取り組み方が考えられるのかを提案したい。さらに、本校学生に対して、アンケートを実施 し、調査研究することを目的とした。 【方法】 スローフードの成り立ち、考え方は新聞、雑誌、関連のある書籍を参照すると共に、インターネット・ ホームページで「スローフード」をキーワードとして検索し、世界での運動状況などを調べた。 また、本校全学生を対象に「スローフードに対する意識調査」のアンケートを作成・実施し、その結 果も含め栄養士としての「スローフード」の進め方を検討した。 【結果および考察】 スローフードは1986年イタリアのブラで生まれた。カルロ・ペトリーニが仲間と食卓を囲んだとき、 ファーストフードの脅威という問題が話題に上り、誰からともなく「スローフード」と口にしたことが 始まりといわれている。 その後、ARCH(Associazione Ricreativa Culturale Italiana イタリア余暇・文化協会)を母体としアルチゴーラの名前で発足し、その後「スロー フード協会」と名前を変え、今日、世界的組織となった。 国際的な「スローフード」の現状として、イタリアでは国民にスローフードの考えが浸透している。 サラリーマンは昼食の時間になると、会社を抜け出し家族とともに自宅で食事をする習慣があるとい われている。 ランチタイムには『ランチラッシュ現象』が起こるという。日本では1996年に初めて「日本スローフ ード協会」が発足した。スローフードについての出版やイベントなどを開催し、「食」に対して興味を 持ってもらおうと活動している。アメリカでは、「スローフード」の考えは広まりつつあるが、もとも とファーストフードにたよっていたため、なかなか行動変容にいたっていないのが現状だ。本校学生に 対しアンケートを行った結果、食に対して興味があるかないかで、栄養関係と医療関係で、χ2検定を 実施したところ、有意水準1%で有意な差がみられた。「スローフード」いう言葉を知っている、聞い たことがあると答えた人が、管理栄養士・栄養士科は90%に対し、医療秘書科は40%であった(下の表 参照)。また、自炊するにあたって重視することは何ですか?という問いに対し、価格が一番重視され ていることがわかった。このことから、スローフードに欠かせない旬、雰囲気などに注目が置かれてい ないことがみられた。これより予想される傾向として、「食」の教育を受けている私たちでこの結果な 表:「スローフード」という言葉を知っていますか --------------------------------------------------- 項目 |管理栄養士栄養士科|医療秘書科 ---------------------------------------------------- 知っている | 195(53%) | 11(12%) 聞いたことがある | 140(38%) | 26(28%) 知らない | 35(9%) | 56(60%) --------------------------------------------------- いので、そうでない人たちはそれ以上に価格や味を優先すると考えられる。 これらのことから、私たち栄養士として「スローフード」を広めていくには、「食」に興味を持って もらうことから始め、そういった場を設け、増やしていくことが重要であると考える。 それには、「食」に携わる私たち栄養士が言葉上だけの理解ではなく、意識して行動・教育を行う必 要があると考えられる。