医療秘書科 石川 智子 今度 ゆかり 稲田 有香 大島 美貴 萱野 智美 川口 小百合 川島 昌枝 白岩 みどり 鈴木 智絵 田中 真知子 塚本 満加 土肥 明子 中江 いづ美 濱田 昭代 三好亜由美 山城 寿奈 指導教官 北村 新藏 【目的】 これまで日本では、「患者は常に医師の決定に従うものである」ということが無条件に受け容れられてきた感がある。 しかし、ここ最近、英国や米国に始まる「インフォームドコンセント」という概念が、医師と患者のこうした関係を、本質 的に変化させようとしている。 医療は、患者に充分に説明され、同意されてはじめて実施すべきである、という考え方が、どのように育まれてきたのかを 概観し、日本の医療現場の中で効果的に活用されているのかどうかを、諸々の文献や報告書等から調べることを目的とする。 【方法】 現在の有力な情報源の一つとなっているインターネットのホームページ上に掲載されている内容やインフォームドコンセン ト関連の書籍等を用いて、インフォームドコンセントとはどういう概念を持っているのかを調べた。 【結果および考察】 インフォームドコンセントとは、日本語で「説明と同意」と訳されているが、これは「理解してもらえるような十分な説明 を行ったうえよく相談し合意に達する」という意味である。すなわち、医者と患者の診療の際の医療契約上での適切なキャッ チボールが重要であることを示唆している。
年 | 内容 |
1947 | ニュールンベルグ綱領の採択 |
1949 | 世界医師会綱領 |
1964 | ヘルシンキ宣言の採択 |
1972 | 患者の権利章典に関する宣言 |
1975 | 東京宣言の採択 |
1981 | リスボン宣言 |
1983 | 生命と倫理に関する懇談会 |
1984 | 患者の権利宣言案 |
1990 | 医薬の臨床試験の実施に関する基準 (GCP) |
1994 | 「インフォームドコンセント」について (日本病院会) |
1995 | インフォームドコンセントの在り方に関する報告書 (厚生省) |
このインフォームドコンセントという用語と概念は、わが国においては、この10年位の間に急速に広まってきたが、その 起源は約50年前にさかのぼる。 表−1に、インフォームドコンセントの歴史的経緯を示した。それによると、第二次世界大戦後のナチスドイツに対する ニュールンベルグ戦争裁判の中で、戦争中に行われた生体実験への反省から、医学的な実験には「被験者の自発的な承諾が前 提であり、決定を下すことが 出来る知識が与えられ、十分な理解を得た上で、被験者本人の同意が必要である」というニュ ールンベルグ綱領に端を発している。 インフォームドコンセントは、医療側が形式的な説明をするものでもなければ、患者のサインを求めることでもない。
T.病名と病気の現状 |
U.これに対してとろうとする治療の方法 |
V.その治療法の危険度(危険の有無と程度 |
W.それ以外の選択肢としての可能な治療法 とその利害得失 |
X.予後、即ち、その患者の疾病についての 将来予想 |
それは、医の倫理に則って行われなければならない。表−2に、ガン治療の場合のインフォームドコンセントの例を示した。 表ー2をみればわかるように、この例は、他の事例にも当てはまる内容であることがわかる。 日本では、まだまだ、米国のようにはインフォームドコンセントが実施されておらず、患者の納得いく形での診療が行われ ていないのが現状である。 私たちは、この研究を通じて、今後、医師・患者双方が納得行くように、日本のインフォームドコンセントを模索し、進め ていくことが必要であると痛感した。