第1回 実験を行う上での諸注意について
第2回 器具使用法とpH測定
第3回 中和滴定曲線の作成 弱酸と強酸
第4回 リポートの書き方
第5回 食酢中の酢酸の定量
第6回 スナック菓子の成分分析 水分と粗灰分の定量
第7回 脂質の定量 ソックスレー抽出器を使用
第8回 粗タンパク質の定量 ケルダール窒素定量法による(1)、(2)
第9回 タンパク質、糖質の定性実験
第10回 確認テスト
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第1回 実験を行う上での諸注意について
T.実験を行う上での一般的注意
実験室での一般的諸注意
@実験用の白衣の着用
指輪等の装身具は付けないこと
A実験台上は整理する。
カバン等は所定の場所に保管する。
B実験ノートを各自用意すること。
紙片等にデータを記入せず、ノートに記載すること。または、その紙片を書き写さずノートに貼る。
C板書、口頭での操作事項の説明・注意は、逐一ノートを取ること。
D実験操作中は、基本的には立って行うこと。
E各実験班は、班員協力して分担を決めて作業すること。
F実験室内の諸器具、引き出し等は、勝手になぶらないこと。
G各班の備品のチェックを確認する。
清掃は全員で行うこと。
U.実験操作上の諸注意
@器具の洗浄について
A実験を始める前に必要な器具類を準備する。
水切りバット内に配置する。
B事前に操作手順、試薬調製手順を、実験ノートに図示しておくこと。実験結果は必ず一冊のノートに記録する。
C調整した試薬等は、必ずラベリングし、各班の保管棚に保管する。
・試薬調製者名
・試薬名
・調製年月日
・備考メモ
ラベリング例
D重金属塩類、酸、塩基の廃液や有機溶剤等は、所定の所に捨てる。
Eガラス器具類の破損は、必ず連絡すること。
F操作上不明な点があれば、自分の判断で操作を進めず、指導教官に尋ね、納得した上で操作すること。
G秤量の仕方、化学天秤の使用法
Hガスバーナーの原理とその使用法
V.注意事項のまとめ
・実験室に入ったら
@試薬類、ガスバーナーや実験器具等にかってに触らない。
A身だしなみをきちんとする。実験用の白衣を着用のこと。
B火器を利用するときは、近くに引火物等のないことを確認する。
C濃硫酸、濃塩酸、有毒な薬品は注意して慎重に取り扱う。
D試薬が目や口に入ったら、直ちに掃出し大量の水で洗う。
E火災が発生した場合は、大声で助けを呼ぶ。
・実験室を出るとき
@整理整頓すること。
Aガスバーナーが完全に消えていることを確認する。特に、ガスの元栓コックを閉め忘れないこと。
(バックファイアーに注意)
B水道の栓を完全に閉める。
C廃棄物を所定のタンクに移す。
Dゴミ集め、可燃性ゴミと不燃性ゴミに分けて、それぞれ所定の場所へ集める。
・注意すべき薬品類
引火性の高いもの
無機物
アンモニア、硫化水素
有機物
メタノール、エタノール、エーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトン
爆発性のあるもの
無機物
硫酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム
有機物
ピクリン酸、ニトロセルロース
有毒なもの
無機物
アンモニア、一酸化炭素、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、水銀、リン、臭素
有機物
アニリン、四塩化炭素、クロロホルム、二硫化炭素、メタノール
腐食性のあるもの
無機物
アンモニア、塩酸、硝酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム
有機物
アセトアルデヒド、ギ酸、ホルムアルデヒド、無水フタル酸
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第2回 各種汎用器具使用法とpH測定
(1)各種測容器について
食品学総論実験は、主に化学分析を行っていく訳であるが、その概略を次に記しておく。
化学分析
定性分析
定量分析
重量分析 ・・・ 定量しようとする目的の成分を分離し、その重量を直接測定する事によって試料中のその成分
の重量(もしくは%)を求める。
容量分析 ・・・ 試料溶液中に含まれている物質と定量的に反応する試薬溶液をこの試料溶液に加えていき、化
学反応の当量点まで消費された試薬溶液の容積から試料中の物質の量を求める。
機器分析 ・・・
測容器は、定量分析を行う際の汎用ガラス器具類であり、次に示す様なものがあり、目的に応じて使用していく。
測容器
ピペット類
駒込ピペット
メスピペット
ホールピペット
メスシリンダー
メスフラスコ
ビューレット
モール型ビューレット
ガイスラー型ビューレット
(2)天秤とその使用法
・村上式自動上皿天秤US型
使用する前に、次の様な確認、注意事項を守り操作を行う。
(a)操作を行う場合、ロックがかかっている状態で運ぶ。
(b)皿、皿受け、本体の番号を確認する。
(c)試料等が付着している場合は、キムワイプ等でふき取る。
(d)ロックの状態を外す。
(e)分銅加除つまみ、風袋引きツマミがゼロになっているかどうか確認し、なっていない場合はゼロに
直しておく。
測定方法は、次の順序で行う。
(1)水平器見ながら、前脚で機械を水平に備え付ける。
(2)風袋引き(TARE)で、指針を目盛版ゼロの位置に合わせる。
(3)薬包紙等、風袋を用いる場合は、フルスケールまで風袋を差し引くことが出来ます。
(4)試料を皿に載せ、指針がフルスケール内であれば、その目盛を直読し、試料がフルスケールの指示
以上であれば、分銅加除ツマミを0gから1ステップづつ多い方に回して指針が目盛版のスケール内に戻ってくる位置まで
回す。
(5)求める重量は、その時点での分銅加除ツマミの位置の数字と、目盛板上に支持された読みの和で表される。
(6)測定終了後、分銅加除メモリ、風袋引きツマミを元のゼロに戻し、ロックツマミでロックした状態にし、元の場所に戻して
おく。
・ジュピターC2-200直示天秤ビン
本器での秤量は、0.1mg(目測)から、200gまで秤量可能であるが、10mg以下の秤量は誤差が多いので出来るだけ10mg
以上の秤量になる様に試料の分量を調節する。
また、本器は、非常に制度の良い天秤であるので、試料の出し入れする場合に細心の注意を行う。
測定を始める前に、次の点を確認する。
(3)ガスバーナーとその使用法
実験室では、一般的に左図に示す様な都市は巣用ブンゼンバーナーを用いる。
本実験では、一般的な化学実験で使用されているブンゼンバーナーの改良型について、原理、およびそ
の使用方法について述べる。
ガスバーナーには、ガス量調節ネジと空気量調節ネジで、炎の状態を調節する。
まず、両調節ネジがよく閉まっていることを確認し、ガスコックを開き、ガス量調節ネジを時計方向に
徐々に回しガスを出し火を付け、ネジをさらに回し炎を高さを調節し、適当な位置でとめる。
次に、ガス量調節ネジをそのままにし、空気量調節ネジを時計方向に回し、空気量を調節する。
外炎の部分と内縁の部分の長さが、ほぼ1対1になる様に、空気量調節ネジを調節し、その状態で使用す
る。
使用後、ガス量調節ネジはそのままにし、空気量調節ネジのみを反時計方向に回し、炎の色が不完全燃焼
の黄色になった状態で、次にガス量調節ネジを反時計方向に回しガスを止め、ガスコックを閉じる。
(4)pHメーターとその使用法
水素イオン濃度の異なる二つの溶液を、薄いガラスの膜で隔てるとこの溶液間で水素イオン濃度の差に比例した電位差が生じ
る。
この原理を応用した器具がガラス電極であり、試料溶液のpHを測定できるように
考案された機械がpHメーターである。
この方法は理論的には最も正確な意味でのpH値が、しかも客観的に測定でき、試
料が溶液がいかに着色していても測定できるという大きな長所を持っている。
基本的な操作手順を以下に述べる。
(1)メーターの電源を入れ機内の電流が安定するまで(約5分間)しばらく待つ。
(2)各標準緩衝液(pH7,4,9)に電極を浸し、リードスイッチを入れる。
(3)調整ダイヤルを回して、指針が各標準緩衝液のpH値と同じ数値を示すように合
わせる。
(4)リードスイッチを切り、スタンバイの状態で電極を緩衝溶液から出し、脱イオン
水で電極の先端を洗う。
(5)電極を試料溶液に浸し、リードスイッチを入れ指針の示す数値を読む。
(6)リードスイッチを切り、電極を脱イオン水で洗い、電源を切る。
(尚、電極は使用しないときは、蒸留水中に浸しておく。)
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第3回 中和滴定曲線の作成 弱酸と強酸
中和点付近におけるpH変化の観察
(1)目的
酸・塩基反応において、中和点と云われるものは当量点であって、当量点付近ではpH値が著しく変化するが、必ずし
もpH値は7を示さない。
そで、中和点を求めるため、pHメーターを用い、標準溶液をビューレットを用いて滴下させ、滴下量とpH値の関係を
グラフにしたpH滴定曲線を作製し、実際に中和点において著しくpH値が変化することを確認する。
そのグラフから、著しく変化した時の標準溶液の滴下量を求め、その点(値)を中和点とする。
次式の中和の公式-1より、検液の濃度を求める。
N × V
Nx = ----------------- ・・・・ 1
Vs
Nx : 検液の規定濃度(N)
Vs : 検液の容量(ml)
N : 標準溶液の規定濃度(N)
V : 中和点における標準溶液の滴下量(ml)
(2)使用器具
pHメーター一式
滴定装置一式、スターラ―
各ビーカー類、各ピッペット類
(3)使用試薬
各標準液
pH標準緩衝液
結晶性シュウ酸
1%フェノールフタレインアルコール溶液
(4)実験方法
・pHメーターの調整
pHメーター電源ON → ゼロ点調製ダイヤルでpH7.00に調整 → 電極を脱イオン水で洗浄する →
(スタンバイ状態)
→ pH7標準緩衝液を → ASIMダイヤルでpH7に → スタンバイ状態にし → 電極を脱イオン水
ビーカー5割量入れ 調整する 電極を引き上げる で洗浄する
電極を浸し、Readに
する(測定)
→ pH標準緩衝液を → SENSEダイヤルでpH4 → 再度pH7で調整する
ビーカーに5割量入れ に調整する
電極を浸し、Readに
する(測定)
・pH滴定曲線の作成
1%フェノールフタレイン溶液 → 電極を浸し、Readに → スタンバイ状態に戻し → 電極を引き上げ
2,3滴を検液20.00(ml) する(測定) モール型ビューレット スターラ―で撹
標準液を滴下 拌する
→ 電極を脱イオン水で洗浄 → 以下同様に操作 → 途中、滴下量を慎重 → pH値が13付近まで
し、電極を浸しReadに にしていく 行う
する(測定) 溶液の色変化を観察
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第4回 リポートの書き方
(1)リポート項目
実験終了後、その結果を整理し報告書を作成する。
授業の実験リポートは、いわゆる研究論文の場合とは多少異なり、自己の新知見や学説を述べるものではないが、折角、
自分が苦心して得た結果を人に伝えるのであるから、学生実験の報告では、その学生がどれだけ誠実に与えられた課題と
取組み結果を得、その結果がどういう意味を持つのかを検討、整理してリポートを提出して、初めて初めて一つの実験が
完了したことになる。
また、学生実験リポートは、その実験の印象を強め、よりよく理解させると云う復習の意味を持っているので、従って、
この場合、次に示す様な項目を全て忠実に記述する事が要求される。
以下、これについて、リポートの一般的形式の項目を下に述べておく。
1.実験課題(テーマ)
2.実験者(リポート提出者)、クラス、班名
共同実験者名
3.実験年月日(気温、天候)
4.実験目的
5.実験器具及び装置
6.試料及び試薬
7.実験方法
8.実験結果
9.考察 (8,9.をまとめて、8.結果及び考察としてもよい)
10.感想(リポート提出年月日)
(2)リポート作成時の諸注意
リポート作成の際には次のような点を注意して記述する。
1.実験ノートとは別に、リポートノート(提出用)を各自用意する。
2.内容は、第三者リポートを見て、その通りに操作すれば出来るように記述する。(文章は箇条書きにはせず、主語ー
述語の関係をはっきりさせ、一つの文は短く筋を通す)
3.実験結果は、表、図(グラフ)等を用いて、出来るだけ見やすく表す。(時制は、なるべく過去形で表す)
なお、表の場合は、表-1などの表題は表の上部に書き、その表題の表現は、なるべく簡潔にする。説明を加えたい場
合は、a),b)等の記号を右肩に付けてその表の脚注としてその下に書いておく。
図の場合は、図-2などの図の題は、図の下部に記載する。(下図参照)
4.考察では、得られた結果の基づいて、この実験のテーマ、目的、および推定にに利用しながら、他のデータを踏まえ
て論じ、矛盾の無い理論的科学的考察をする。
5.単に記録的なデータの羅列ではなく、平易簡明な文章で表現する。
(3)引用文献について
本文中の方法、考察の項で、文献を引用した場合は、その引用文献は該当する場所の右肩に、1)、2)、・・・、6)
の様に通し番号を入れ、参考文献(References)の見出し語を付け、最後に記載しておく。
その場合、一般的には次の様式に従って記載する。
参考文献
1)著者名、著書名、出版社名、版数(発行所地名)、引用ページ
2)発表者名、発表表題、雑誌名、巻、号、年号、引用ページ
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第5回 食酢中の酢酸の定量
目的
食酢中に含まれる酢酸の量を、中和滴定法により求め、食品成分表値と比較検討する。
器具、試料及び試薬
器具
滴定器具一式
100ml三角フラスコ(コニカルビーカー)
駒込ピペット
20mlホールピペット
25mlモール型ビューレット
試薬
0.1N水酸化ナトリウム標準液
フェノールフタレイン指示薬
試料
食酢
食酢希釈液 : 食酢10mlを1001mlメスフラスコに入れ、さらに水を加えて100mlにフィルアップする。
実験方法
食酢希釈液10mlを100ml三角フラスコ(コニカルビーカー)に取り、指示薬数滴を加える。
0.1NNaOH標準液で滴定する。
終点を無色から微紅色に変色した点とし、その時の0.1NNaOH標準溶液の滴下量を読む。
計算
N × V × 60.05 × 10
食酢の酢酸含有量(%)= -------------------------------
S
N : 0.1NNaOH標準溶液の正確な規定濃度
V : 0.1NNaOH標準溶液の滴定値(ml)
S : 試料採取量(g) 比重を1.0と仮定する
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第6回 スナック菓子の成分分析 水分と粗灰分の定量
食品中の一般成分の測定
標準食品成分表との比較検討し、それを通して定量操作(重量分析)の基本を練習する。
1.食品中の水分含量の測定
(1)目的
必要な場合は、試料の調製を含めて水分含量を求める最も基本的な操作方法である常圧加熱乾燥法により測定する。
尚、その場合、直示天秤を用いて試料の精密な重量測定を指導する。
(2)使用器具
器具:村上式自動上皿天秤US型
ジュピターC2-200型直示天秤
恒温乾燥器
秤量ビン1)
デシケータ―
試料:粉末調製試料
(3)実験方法
秤量ビン(左図参照)の洗浄
↓
軽く乾燥
(105〜110℃、1時間)
↓
本乾燥2)
(105〜110℃、9時間以上)
↓
デシケータ中で放冷
(30分程度)
↓
恒量と仮定3)して秤量
秤量値をW0
図1:秤量ビン ↓
試料約1gを採取
↓
秤量、秤量値をW1
↓
乾燥
(95〜100℃、9時間以上)
↓
デシケータ中で放冷
(30分程度)
↓
秤量、秤量値をW2
W0、W1、W2を求め、次式により水分含量(%)を求める。
W1 − W2
水分含量(%) = ------------------ × 100
W1 − W0
1)秤量ビンは、洗浄乾燥後は全て乾いた軍手で扱い、素手では扱わない。
2)秤量ビンは、室内にある場合は全てふたをしておく事。また、デシケータ中、乾燥機中荷ある場合は、ふたを
半開きにしておく。
3)前回の秤量値との差が、0.2mg以内であれば、恒量に達したとみなすが、本実験の場合は充分に乾燥させ恒
量に達していると仮定する。
2.食品中の粗灰分含量の測定
(1)目的
食品や生体組織を焼いた時に生じる灰を粗灰分と云い、大部分は金属(Mg,Ca,Fe、・・)やケイ素の酸化物や
硫酸塩である。
この粗灰分含量(%)を電気炉法により求める。
(2)使用器具
器具
磁性ルツボ、ルツボばさみ、マッフル濾
デシケータ―
村上式自動上皿天秤US型
ジュピターC2-200直示天秤
恒温乾燥器
電気炉
試料
粉末調製試料
(3)実験方法
ルツボ洗浄 → 軽く乾燥 → 電気炉中で灼熱1) → 室内放冷 →
(105〜110℃、1時間)(650〜700℃、9時間以上)(20〜30分)
→ デシケータ中で放冷 → 恒量に達していると → 試料約2g採取 → 秤量 →
(30分) 仮定し秤量 S0 秤量値をS1
→ 電気炉中で灼熱灰化 → 乾燥機の中へ → デシケータ中で放冷 → 秤量2)、秤量値をS2
(650〜700℃、9時間以上)(105〜110℃、1時間) (30分)
S0、S1、S2を求め、次式により粗灰分含量(%)を求める。
S2 − S0
粗灰分含量(%) = ------------------ × 100
S1 − S0
1)扱い方は、水分含量を求めた際に使用した秤量ビンと同様に乾燥した軍手で扱う。
また、磁性ルツボは、どの様な時でも常にふたをした状態にしておく。
2)この場合も、長時間灼熱させるので、充分に恒量に達していると仮定する。
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第7回 脂質の定量 ソックスレー抽出器を使用
食品中の粗脂肪含量の測定
(1)目的
食品中の脂肪含量は、良脂肪溶剤、例えばエーテル、アセトン等の有機溶剤により、食品中より抽出しその抽出物の重量
を測定する重量分析により求める。
本実験では、ソックスレー抽出器を用いて、エーテル可溶物(粗脂肪)を抽出し、抽出の操作を学習する。
図1:ソックスレー抽出器
(2)使用器具及び試薬、試料
器具
ソックスレー抽出器一式(冷却器、抽出管、脂肪定量ビン)
50mlビーカー
試薬
ジエチルエーテル
試料
粉末調製試料
(3)実験方法
1)試料の採取
充分に乾燥された50mlビーカーに円筒ろ紙を入れ、直示天秤によりその重量を精秤し、その値をaとする。
次に、その円筒ろ紙の中に外部に試料をこぼさない様に入れ、その重量を精秤し、その値をbとする。
試料採取量Sは、次式の通りである。(図2参照)
試料採取量S = b − a
図2:試料の採取
2)抽出操作
脂肪定量ビン中にエーテルを約7から8割量程度入れ抽出管に試料の入った円筒ろ紙を入れ、図1の様にセットする。
電気低温水浴により、60〜70℃で加温し、エーテルを蒸発させ、抽出管にエーテルがある量たまると、サイホンの
原理により細管を通り、脂肪定量ビンに戻る。
再た加温されてエーテルのみが蒸発し、このサイクルが繰り返される。
この操作を連続16時間以上行い、完全に試料中より粗脂肪分を抽出する。
抽出する前に、空の脂肪定量ビンを精秤し、その重量をW0とする。
粗脂肪+エーテル+脂肪定量ビン
↓
湯浴上でエーテルのみを飛散
↓
脂肪定量ビンの外壁の水分をよく拭い、90〜100℃
で約1時間程度乾燥させる
↓
デシケータ中で約30分程度放冷
↓
秤量、秤量値をW1
粗脂肪含量は、次式で求める。
W1 − W0
粗脂肪含量(%) = ----------------- × 100
S
注)ジエチルエーテルは、沸点34.6°で引火性が強い。取扱いには細心の注意を払い、使用中は火気を使用しない。
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第8回 粗タンパク質の定量 ケルダール窒素定量法による(1)、(2)
(1)目的
食品中に含まれているタンパク質含量は、タンパク質を構成している主要元素のうち、窒素はそのうち約16%を占めて
いて、ほぼ一定であることを利用したケルダール窒素定量法により求める。
本実験では、今まで学んできた操作内容を基本にして、さらに試料の調製として熱分解(湿式)操作、水蒸気蒸留操作を
修得する。
(2)使用器具及び試薬
器具
ケルダール分解ビン(200ml)
メスフラスコ(200ml)
500、100(ml)三角フラスコ
試薬ビン
10,20(ml)ホールピペット
水蒸気蒸留装置一式
モール型ビューレット一式
マグネチックスターラ―
駒込ピペット
試薬
濃硫酸、水酸化ナトリウム、0.1N硫酸標準液、0.1N水酸化ナトリウム標準液
混合触媒(硫酸銅:硫酸カリウム=1:9)
混合指示薬(メチルレッド0.2g、メチレンブルー0.1gを90%エチルアルコール100mlに溶解)
試料
粉末調製試料
(3)実験方法
下図を参照。
図-ケルダール窒素定量法
試料熱分解
[C,H,O,N,S,P] ------------→ 加熱分解 → 透明になるまで → 蒸留水約20ml → 100mlメスフラス
試料約1gを精秤 ↑ ↑ 完全に分解 を加える コに入れ、100ml
ケルダール分解ビンに採取 混合触媒 濃硫酸 (濃厚な硫酸液中に にフィルアップ
2g 10〜15ml 硫酸アンモニウムが
溶解している状態)
水蒸気蒸留
→ 20mlを正確に ----→ 水蒸気蒸留 → 留分 →
蒸留間に採取 ↑ NH3+H2O
30%(W/W)NaOH10ml
滴定操作(逆滴定)
→留分 -----------------
↓
100ml三角フラスコ → 留分が約50〜60mlに → 0.1NNaOH標準液で滴定
↑ なるまで 終点暗青緑色 V1ml
0.1N硫酸標準液+2,3滴の混合指示薬
0.1N水酸化ナトリウム1mlは、窒素量に換算すると1.401mgに相当する。
窒素量(g)は次式で求める。
窒素量(g) = 0.001401×(V2−V1)×F×100/a
V1:蒸留後の0.1NNaOH標準液の滴定値(ml)
V2:空試験の 々
F:0.1NNaOH標準液の力価(factor)
a:蒸留に使用した定容後の試料液量(ml)
窒素量 × 窒素係数
粗タンパク質含量(%) = --------------------------- × 100
採取試料(g)
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第9回 タンパク質、糖質の定性実験
試料
糖質試料
1%ブドウ糖溶液
1%果糖溶液
1%乳糖溶液
1%ショ糖溶液
タンパク質試料
卵白溶液(1%タンパク質溶液)
タンパク質の呈色・沈殿反応
(A)沈殿反応
(1)酸・アルカリによる沈殿反応
濃硫酸
10%水酸化ナトリウム
(2)重金属による沈殿反応
10%硝酸鉛溶液
(3)タンパク質沈殿剤による反応
トリクロル酢酸飽和溶液
(4)アルコールによる沈殿反応
エチルアルコール
(B)呈色反応
(1)キサントプロティン反応
試薬
アンモニア水
濃硝酸
操作
タンパク質溶液3mlに濃硝酸1mlを加えると白色の沈殿を生じる。これを煮沸すると沈殿は溶解
して黄色を呈する。冷却後、アンモニア水でアルカリ性にすると橙黄色になる。
原理
チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン等の有核アミノ酸がニトロ化されて呈色すると考えら
れている。
(2)ビウレット反応
試薬
10%水酸化ナトリウム溶液
0.5%硫酸銅溶液
操作
タンパク質溶液3mlに10%水酸化ナトリウム溶液を加えて溶解させ、0.5%硫酸銅溶液を数滴
加えると、赤紫〜青紫色を呈する。
原理
これは、トリペプチド以上のポリペプチドは全てこの反応を呈する。
ペプチド結合が銅イオンと錯塩を形成するためと考えられている。
(3)ミロン反応
試薬
水銀、濃硝酸、亜硝酸ナトリウム
操作
少量のタンパク質溶液に、ミロン試薬を数滴加えると白色の沈殿を生じ、これを熱するとレンガ色の
紅色を呈する。
原理
タンパク質中のチロシンのフェノール基が存在によるものである。
糖質呈色反応
(1)モーリッシュ反応(α-ナフトール反応ともいう)
試薬
15%α-ナフトールアルコール溶液
濃硫酸
操作
糖質溶液0.5mlと15%α-ナフトールアルコール溶液を2,3滴試験管にとり、濃硫酸1滴を試験管壁に沿
って静かに加えると両液の接触面に赤紫色の環を生じる。
(2)フェノール硫酸反応
5%フェノール溶液
濃硫酸
(3)フェーリング反応
試薬
A液
結晶性硫酸銅36.64gに蒸留水500mlを加えた溶液
B液
調製剤(アルカリ性酒石酸カリウム・ナトリウム173gと水酸化ナトリウム51.6gを蒸留水500mlに
溶解させた溶液)
フェーリング試薬
A液とB液の当量混合液
操作
フェーリング試薬2mlを検液(糖質溶液)に加えて加熱すると、酸化第一銅の赤色沈殿を生じる。
(4)ベネジクト反応
試薬
クエン酸ナトリウム
無水炭酸ナトリウム
結晶性硫酸銅
調製剤
ベネジクト試薬(クエン酸ナトリウム173gと無水炭酸ナトリウム100gを温水800mlに溶かしてろ過後、
850mlに薄める。これに結晶性硫酸銅17.3gを蒸留水100mlに溶かし撹拌しながら加
えて1000mlにする。)
操作
試薬5mlと検液(糖質溶液)を混合して、2分間煮沸する。還元糖の量に応じて赤、黄または緑色の沈
殿を生じる。
(5)銀鏡反応
試薬
5%硝酸銀溶液
アンモニア水
アンモニア性硝酸銀
5%硝酸銀溶液に、徐々にアンモニア水を加えていき、沈殿が消えて溶解した直後の溶液
操作
試験管にアンモニア性硝酸銀溶液5mlをとり、これに検体2mlを加えて、温浴中で加熱すると銀塩
は還元されて試験管壁に金属銀を沈着して銀鏡をつくる。
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第10回 確認テスト
食品学総論実験テスト問題
1.実験リポートを書く場合の注意事項を項目を含めて述べなさい。
2.タンパク質の定性実験について述べなさい。
(沈殿反応ではなく、呈色反応について述べる事。)
3.中和反応を行う場合に必要な器具を列挙し、実際の操作方法を述べなさい。
4.ケルダール窒素定量法による粗タンパク質の定量実験について、原理を中心に述べなさい。
尚、解答は、A4用紙に記載し、表面に書ききれない場合は裏面に書かずに用紙を追加要求してください。
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