内分泌撹乱化学物質の現状について

          京都栄養士専門学校 栄養士科 第27期生  
                  大湾久美子  小笹 尚子 ○久保田文子  
                  小林 由果  権正 梨恵  徳丸ひとみ  濱本 真弓

          指導教官    北村 新藏

  【目的】
    内分泌撹乱化学物質(以下、環境ホルモン)は、動物の体内に取り込まれたときに、本来その体のなかで営ま
   れるホルモン作用に影響を与え、人体や野生生物に様々な障害を引き起こす物質と考えられている。
    わが国でもいくつかの調査研究が行われ、テレビ・新聞・インターネットなどによって、この問題に関する情
   報が発信されるようになった。
    しかし、最近は以前ほど環境ホルモンが話題に上ることが少なくなったのではないか、という疑問を私たちは
   持った。
    そこで、本研究において環境ホルモン問題についての意識調査を行い、今後の環境ホルモン問題を考察・検討
   することを目的とした。

  【方法】
    環境ホルモン問題についての理解を深めるために、書籍、新聞、インターネットなどから環境ホルモンに関す
   る情報収集を行った。また、環境ホルモン問題についての意識を調査するため、本校の学生および教職員に対し
   てアンケートを行った。
    アンケートは性、年齢別に、環境ホルモン問題に興味があるか、具体的な原因物質、生物への影響を知ってい
   るか、今後環境ホルモン問題に興味を持っていきたいか、など13項目について行った。

  【結果および考察】
    アンケートの有効回答数は579であった。
    アンケートの結果によると、環境ホルモンという言葉を聞いたことがある人が96%で、そのうち72%が、
   今後環境ホルモン問題に興味を持っていきたいと回答したのに対して、5%が興味を持っていこうと思わない、
   23%がわからないと回答した(図1)。
    また、年齢別にみると、環境ホルモン問題に興味があるか、という質問の回答に有意差がみられ、10歳から
   29歳では興味があると回答した人が、興味が無いと回答した人に比べて多かったのに対して、30歳以上では
   興味があると回答した人が100%という結果になった(表1参照)。

                   表−1:年代別の環境ホルモンに対する興味を持つ人数
年  代非常に興味
がある
やや興味が
ある
あまり興味
がない
興味がない
10歳〜19歳19183150
20歳〜29歳2412144
30歳〜39歳
40歳〜49歳
50歳以上
(p<0.01)
    このことから、年代によって環境ホルモン問題に対する認識度に違いが生じていることが読み取れる。     環境ホルモンについてはまだ不明な点が多いが、野生生物に様々な影響を与えていることは事実であり、精子    数の減少化等ヒトへの影響も懸念されている。     また、環境ホルモンは、内分泌系、免疫系や生殖系に影響を与えると考えられているため、長い期間で考える    と生物の種の存続に関わる重要な物質であると言える。そのため、私たちは、特にアンケートで環境ホルモンに    関心を持っていこうと思わないやわからないと回答した人、そして次世代を担う10歳代から20歳代の人々に、    環境ホルモン問題に関心を持ってもらう必要があると考えた。     また、アンケートから環境ホルモンと言われている物質のうち、聞いたことがある物質は何かの質問で、ダイ    オキシンと回答した人が圧倒的に多く、続いてDDT、PCBの順で多いという結果になった(図2)。     これは、一時期テレビや新聞などの報道で、ダイオキシン問題が大きく取り上げられたことが原因ではないか    と考えられる。     しかし、環境ホルモンと考えられている物質はその他にも多数存在し、今後さらに増えると思われる。     私たちは、食・栄養・健康を担う栄養士として、環境ホルモンについて今後とも持続して検討していきたい。
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